夢を見ているのかと思った。
でも、ぎゅっと締め付けられた心臓が、
私が生きている事をちゃんと証明してくれた。
苦しかった。辛かった。先はないと暗示しているようにも見えた。
明るくなったはずの空もどんよりし始め、
みるみるうちにぶ厚い雲で覆われた気がした。
これから雨でも降るのか?傘は必要か?
ピカピカゴロゴロ雷もなるのか?
顔を上げ、前向きな姿勢で、大好きな珈琲を飲んでいるにも関わらず、気持ちはどんどん落ちて行く。
兎も角ごめん。
言い訳でしかないけれど、
思いがけずふち子を転落させて仕舞った私が悪い。
暗黒の地底とも思われるカップの中でふち子が沈む。
目を凝らし恐る恐る覗きこんでみても、
ふち子は不自然極まりない姿で横たわっている。
ピクリともしない。
手足は完全に硬直されているが表情は変わらず柔らかい。
ふち子ごめん。嫌、ふち子姉さんごめんなさい。
足場と言う名の縁場が悪いのか、
私の置き方が悪いのか、
私の手が無自覚に震えているのか解らないけれど、
時よりあなたを落として仕舞うの。
ただ悪気はないの。悪意もないの。
でもあなたを苦しめた事に変わりはない。
珈琲を飲みながら女がなにやら呟いていた気がした。
完。
