『女の朝パート197』 | ☆らんちゃんブログ☆

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落花流水。今在る事の意味や流れを感じながら、自由に書いていきます☆

4月5日日曜日
朝、夢うつつの状態で目覚めた女は、
とりあえず、珈琲をいれた。
居間の床にちょこんと座り、
出来立て熱々の珈琲を飲もうと、
カップの縁に自分の唇を近づけようとした時、
その声は、何の前触れもなく甦ってきたのだった。
カップの中の珈琲みたいな、、真っ暗な闇の中で聞いたあの声だ。。
『写メ、、、、。写メ好きでしょ?。。』
『うん、好き。大好き。。』
カップの握りを握り締めたまま、
女は導かれるまま、惹かれるままに呟いていた。
この時ばかりは、
女の思考は全ての活動を一旦は止めて仕舞ったが、
次の瞬間には、
決して聞こえる筈のない心臓の音だけは、
己れの存在を誇示するかのように、激しく鼓動していた。
ドキドキ、ドキドキ。
女の心音が、さざ波のように拡がり、
静まり返った部屋の隅々まで自然に行き届いてゆく。




女の頭はまだぼーっとしていたが、上の写メを見ると、
どうやら自分は無意識のうちに、
スマホのシャッターを押していて、
そこには何の不自然さや躊躇いもなかった事に気がつくと同時に、
我が身に降りかかった現実が、
今はまだ整理出来ず、
到底信じ難い事だとしか認識せざるを得なかったのだった。

しかし、微かに震えの残る自分の指先と、
珈琲の、甘味とも思える大人の苦味を舌で感じると、
もうどうにも止まらない。
珈琲も写メも好きで仕方がない、
う~らら、う~らら、うらうらら~と、
一人、愉しそうに呟いていた。

4月5日日曜日の朝。
女は夢うつつの中で朝の珈琲を飲んだ。



完。