陽射しが照りつける太陽の下、
ありのままの姿をさらけ出す事が出来なかった女は、
おんなの提案により、
『だったら陽が沈みかけた夕暮れ時なら大丈夫じゃないかしら?』
と言う言葉に素直に従い実際にそうしてみる事したのだった。
後日この話を聞かされたオンナは、
この時ばかりは千言万語を費やしても表現し得ない感情に支配され、
途端に、今すぐこの目の前にいる女を抱きしめなくてはならないと、
心から思わずにはいられなくなり、
事実そうしたと言うのだった。
差もなくば、この女は一生、
太陽の光を浴びる事もなければ、
太陽の下を歩く事すらも出来なくなって仕舞うと、
咄嗟の判断だったと言う。
あかん。
いくら何でも普通に生活をし、
払いたくもない税金も納めている者ならば、
先ずあり得ないことだ。
それに女がまた、太陽の光が射し込まない所、
いわゆる、
逆戻りになる可能性だって充分にあり得た。
それはそうと、意を決して、
やっと表に出ようとした時の女の覚悟は、
きっと並大抵の事ではなかったはずだし、
それに殆ど場合、
目に見えない所での努力が必ずしもあったはずだ。
女が一体何をしたと言うのだ?
素直におんなの提案に従い、
陽が沈みかけた夕暮れ時に、
ありのままの姿をさらけ出しただけだったと言う。
更にはおんなに対し、
何の疑いも疑問もなかったと言うのではないか?
それでは余りにもこの女が哀れ過ぎる。
だから私は今すぐにでもこの女を抱きしめたのだ。
信じられない。
おんなの頭がどうかしているのかしか今は考えられない。
それとも何?女に対し別の恨みでもあったと言うのだろうか?
それだったら納得はつくけれど、
こればかりはおんなと直に逢って、
実際に話を聞いてみなければ解らないことだ。
おんなが会う会わないは別として。
しかしちょっと待てよ。
もしかすると、
この女の頭のほうがどうかしてしまったのかもしれない。
長年太陽の光も浴びずに過ごしてきたせいで。
しかしいくら記憶を辿ろうとも、
私と女が結びつくものは正直なにもない。
それは、女の場合は特にそうだ。
ただ、今解ることは、
何の衣類も身につけずに、
夕暮れ時の薄い時間に一人裸で歩いていた女を、
私が抱きしめ、
何故か公然わいせつの身になって、
太陽の光が射し込まない、
薄い部屋に押し込まれている私が今ここにいる事だ。
どうやら、これから取り調べが始まるらしい。
あなたの名前は?
生年月日は?
職業は?
あんな時間に一体何をしていたのか?
本当の事言ったって誰も信じてくれないだろう。
だって目撃者も証拠写真もないのだから。
完。
