『女の朝パート92』 | ☆らんちゃんブログ☆

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落花流水。今在る事の意味や流れを感じながら、自由に書いていきます☆

女が時刻を確認した時、時計の針は8時37分を示していた。
これと言って約束を交わしていた訳ではなかったが、
女は出来るだけ早く、オンナがいる、
JR東日本山手線沿いにある田端駅に隣接された駅ビルアトレ二階のスタバに向かいたいと想っていた。
家を飛び出して1時間15分。
まぁまぁだなぁと、女は1人呟き納得すると、
何事もなく田端駅を下車できた喜びを、
JR東日本に向け感謝し、
そのままスタバへと向かったのだった。

これまで、何回も訪れ、
土曜日の朝限定で訪れてきた田端のスタバだったが、
この日の、女の目的はただ一つだった。
昨日、スタバに行く前に立ち寄った古本屋さんで、
どうしても買いたかった本を見つける事も買うことも出来ず、
この先どう生きてゆけば良いのか?と言う事を、
オンナに相談するためと、
その時、自分の心に沸いた恨み辛みや、
無駄だったとも言える肉体的な努力と精神的な苦痛を、
オンナに解きほぐして貰おうと思ったからだった。


女の身体のどこかでは、
あれから一夜空け、
昨夜の、蝶よ花よと言わんばかりに、
あちこちから注がれるおビールでお腹と心を満たしていた訳だが、
昨日に限ってはその場かぎりの幸福しか味わえず、
まるでアリ地獄のような真っ暗な闇が、
胃袋のなかで巨大な渦を巻いているようで、
今朝になってもすっきりしないもやもやを抱えていた。
要するに、忘年会シーズンによくあるような、
誰もがするかもしれない、
胃もたれや胸焼けを女は起こしていたのだった。



ともあれ、
女の視界にいよいよスタバが入って来たとき、
女の心は一気に高ぶった。
もうすぐでオンナに会えるのだ。
女は嬉々としてスタバの店内に足を踏み入れる。






丁度その頃、
おんなはマグカップの写メを撮り終えたばかりだった。

うん、今日も逆光だ。でも仕方がない。
田端のスタバではいつもそうなってしまう。
しかし気がついたらもう撮り終えてしまっている訳だから、
⬆️の写メが止まっているように、
ワタシの指もどうにも止まらないのよ。

嗚呼、時間とは何て残酷なものなのだろう?
事に、ワタシがスタバで撮る写真が増える程、
スタバはワタシが年増になってゆく事を、
いつも無言で教えてくれる。
それであって、
スタバで過ごす時間はいつもあっという間で、
ワタシの前をただ黙って通り過ぎて行く。

自覚があるのかないのか解らないけれど、
おんなが1人呟いていると、
女の姿が見えたのか、
おんなは椅子を女に譲る為席を空けた。


素敵!本当に素敵!
女が椅子に座るなり、オンナが、呟いた。
肉体に対する喜ばしい感覚はこれまでもしばしば体験してきたけれど、
今日程、こんなに自分の身体を愛しく思う事はなかったわ。
スタバの椅子の座り心地がよいから?
それとも窓の外に拡がる風景が壮大で美しいから?
それとも、、、。

オンナは感動していた。

今日の空は青白く、爽やかに晴れ、
空気はとても冷ややかで、乾燥もしているけれど、
今日と言う日が迎えられた事と、
今年一年健康に過ごせてきたと言う歓びが、
生きている実感を沸かせ、見事にスタバ時間と溶け合ってはなかろうか?


オンナは、自分の胸の高鳴りが、
先ほどよりも強くなってくるのを感じ、
心からわくわくしてきたのだった。


その時だった。
オンナは、自分の肩が何者かの手によって、
トントンと、叩かれた事に気が付き、
自ら身体を反転した。

オンナが眼にしたのは、
満面の笑みを浮かべ、
オンナを見下ろしている女の顔だった。



完。