八王子駅の近くにあるスタバの椅子に。
女の、とろんとした瞳の中には光がない。
何を見ているのか、何を考えているのか、誰を思っているのか、、
写メを撮りながら、女の頭にシャボン玉のような想念が一つ一つ舞った。
女は買ってきたコーヒーを飲み、メルティーチョコナッツスコーンを噛った。
美味しい~~😍❕
メルシー、メルティーチョコナッツスコーン‼️
ありがとう、スタバ‼️と形振り構わず大声で叫びたい衝動にかられたが女は声を噛み殺すことにした。
いつの頃からか、スタバと言う場所は女の日常生活の中の一部になっていた。
だから今自分が地域限定のスコーンを頼み、
これ見よがしのどうでもいい更新をすることは当然のような気がした。
不思議な事だったが、本当ところはどうでも良かった。
何故ならばと続けたいがそれは秘密にする。
秘密は隠してからこそ秘密なのだから、、、女は呟くと、一人笑った。
ただ女は驚いていた。
自分の身体の変化に。
胸がドキドキしてきたり、それまで冷たく滞っていた全身の血液が温かくみなぎってくるのを感じ、実際はその通りになり、終には自分の心まで弾みとても穏やかで継続的な幸福感を覚えていったから。
もうどうにも止まらない。
女は病みつきだと思った。
しかし、
四日前に行ったスターバックス田端店での地域限定のスコーンはクランチーチョコだったけれどその違いは何だろう?
女の思考はいつも断片的だ。
それを自覚している女は、自分の心に、
ちょっとした疑惑や困惑みたいなものが埋めいた気がした。
しかし地域限定のスコーンがどうであれ、何であれ女にはどうでも良かった。
文明利器を駆使しその真実を調べれば直ぐ解ることだろうけれど、
知った所で何の役にも立たないのは解っている。
所詮、どうでも良い自分の自尊心を満たすだけで、知った途端に雲散霧消するのが落ちである。
女はなに食わぬ顔しながら読みかけの本を開く。
しかし、
とろんとした瞳の中に光がなかったあの女。
気がつけば、
女が地域限定のスコーンメルティーチョコナッツスコーンを噛っている。
時々でコーヒーを飲むとまたスマフォの画面を叩いている。
何が女をそうさせるのだろう?
見てるこっちにはその真相が全然解らない。
しかし、
いずれ時が経ち、自分が今その状態にいることに気が付いた時には、
女の進路はまた違う方へと進み始めるのだろうか?
昨日までの生活が一変し世界が変わって仕舞うような、、、、。
女は気が気でなかった。
本の内容がちっとも頭に入ってこない。
この時、女は不安と言う種が自分の身体のどこかに植え付けられた気がした。
動悸が始まりその息苦しさに身悶えする。
軽い眩暈が女の呼吸を荒くする。
これでは本末転倒だ。
女は腑に落ちなかった。
なぜ本の内容が頭に入ってこないの?
こんなにも好きなのに、、、。
女は背筋を正すと深呼吸をする。
そして地域限定のスコーンを齧ってみることにした。
美味しい。やっぱり美味しい。
中に入ったとろとろとチョコレートとコーヒーの相性も抜群だ。
甘みと苦みの波が後から押し寄せてくるではないか。
次の瞬間だった。
女は自分が意識が覚醒した気がした。
この時ばかりは、
女の事も読みたい本の事も自分の弱さも忘れられた事に気がついたから。。
完