JR 東日本山手線沿いにある田端駅の駅ビルアトレ二階にあるスタバの椅子に。
今日は2月2日土曜日。
窓の外は晴れ。
気温が低いものの、
乾いた空と太陽の光は良く似合っていると女は思った。
椅子に腰を下ろした女。
写メを撮るとコーヒーを飲む。
女の小鼻が膨らんだ。
コーヒーが余りにも美味しくて。
そして呟いた。
朝の煩雑な仕事を終えた後のコーヒーとは、
いつも滋味深くてゴージャスでデリシャス!



ありがとうスタバ☕😌✨
デリシャスコーヒー😆☕❗
知る人ぞ知る❗😆
大声で叫びたいと思いながら自分だけの秘密として、心に留める。
そして窓の外に拡がる空を見ながら暫くボケっとする。
女は何を考える訳でもなかった。
まとまりのない感覚の中に身を置いて、
流れる時間の中で、一人戯れる事が好き💕、
と言っていいものかどうなのか、、、。
いや、そうせざるを得なかったと言うべきか、、
答えは未だに女の胸に滞っていた。
女は、
今日のスタバには色んな人がいるなぁ、と思った。
一人一人のあれこれを勝手に妄想し、拡げて見るのと面白いかもしれないと思ったが、これ程無意味な事はないと即効断ち切る。
過剰な詮索は、悲しみや嫉妬、不振や疑惑を招くだけ。それは女の持論だった。
それは見方を変えれば、
ワタシが臆病で小心だからなのかもしれない。
それとも自意識過剰なのか?無関心なのか?
どうでもいい。
いつの時代も女には色んな顔がある。
使い方違うかと思いながら、女はコーヒーを飲む。
スタバの椅子に腰を降ろして数分経った頃、
パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない。
女の頭の中であの有名なセリフが突として現れる。
女はこの時多少狼狽した。
意に反して、
自分の身体の深い所から、何かが、
ざわつき始めた気がしたからだ。
ゴウジャス。。。ゴージャス。。。
先ほど出た言葉を何回か復唱してみる。
暫くすると、
女は、自分がゴージャスなフランス王妃
マリーアントワネットになってくる気がした。
美貌、純情な反面、軽率、わがままとして世界中に名を馳せたフランスの王妃様、マリーアントワネット。
仮面舞踏会では華麗なステップを踏んでいるマリーアントワネット



ワタシはマリーアントワネット





ちょっと興奮してきた女。
気持ちを静めようと3口目のコーヒーを飲む。
やっぱり美味しいなぁと思った。
手にしてたマグカップをテーブルに戻すと、
再び顔をあげ、空に向けて視線を游がした。
そして再開する。
例え場所や人間が違ったとしても、
ワタシの中の女でも、
マリー王妃様みたいに絢爛豪華なドレスを着て、
珍味佳肴の食事を食べながら、
あらゆる手解きも受け、
暖衣飽食、威風堂々とした生活も出来そうじゃない



この状況で、ワタシが、今、
そう思ったって不自然な事はないわ。
女は、ここまで、一人どうでも良い事を呟くと、
意気揚々とした気持ちを静めるべく、
4口目のコーヒーを真顔で飲む。
そして続く。
どれだけ非難を浴びようが、疑念や嘲笑を向けられようが、
実際にワタシの小鼻は、今ここで拡がり、
匂いを感じ味を知り、
一瞬でも至福😆
一瞬でもマリーアントワネット!
と思えたのは、

自分の身体と心が、
とりあえずは、正常に機能している証なのだ。
何よりも、
空気が流れている事が当然で自然であるように、
ここでは今、不自然な空気は流れていない。
不信感、疑惑、固執、倦怠感みたいなこと。
ここまで呟くと、
女は自分の気持ちの変化を感じ、
5口目のコーヒーを飲む。
ワタシは何も悪いことはしていない、
あの時の記憶が甦ってくるのか女の表情が変わる。
記憶とは不思議だ。
どれだけ忘れようと努力しても、ある時鎌首をもたげる蛇のように、ふと現れてくる。
いつも頭の片隅に薄暗く漂い、又、霧のようで、
吹き飛ばしても、払い退けても、又、性懲りもなく現れてくる。
女は、自分の気持ちがどこまでも沈みそうになるのを堪え、
6口目のコーヒーを飲む。
しかし、女は嬉しかった。
この世の中のどこかに、
マリーアントワネットの映画や本を読み、
マリーアントワネットと自分を重ねたりして、
夢や幻、憧れを抱いた人間が、少なからずも、必ずどこかにいるはずだと信じているからだった。
悲しいかな。
ただ、皆、それを秘密にしているだけで、
それは当然な事なはずだ。
だって自然を保つには必要な事なのだから。
秘密は女を魅了した。
もし、この秘密を、
意地も立場も全て投げ出して、
洗いざらいさらけ出せれば、
どれだけ不自然な争いを起こさずに済むだろうかと。
マグカップの底がそろそろ見えてくる。
とりあえず、
マリーアントワネットみたいな気持ちで座っている女。
自分で買ってきたスコーンを齧る。
ここに目撃者も証人もいないけれど、
実を言うと、
ほんの数分前に、
女は現実を目の当たりにし哀しくなっていた。
モバイルスタバカードの自動入金がされておらず、今日は現金で支払っていたからだ。
年末に使い過ぎたクレジットカードの綻びが、
時を経てやってきたようだった。
迎合できないこの実態。
現実とは余りにも無残だと女は嘆いた。
いつの間にかカップの底が丸見えになっている。
それでも女は、マグカップを口に運ぶ。
気は確かか?
カップの中身は空っぽなのに。
しかし、女は諦めない。
現実が苦しくても、夢を持ち続ければ、
苦しい事なんて起きないなかもしれないと思ったからだ。
女は立ち上がる。
何だか清々しかった。
これから今日のお仕事が控えている。
一日ハードだけれども、
お客様に恵まれ、今のお仕事も好きだから。
完