窓の外は雨。
灰色の雲が一面を覆い雨粒がアスファルトを照らしている
女は今日もいる。
JR 東日本山手線沿いの田端駅の駅ビルアトレ二階にあるスタバに。。
ムフ

気忙しく狂わしい今日1日の始まり。
陽の光が当たらなくともここはその始まりに相応しい





小鼻を膨らませ口許までも緩ませながら、
女は椅子に腰を落ち着かせた。
今日のワタシは、
今日のようなどんよりと垂れ籠めた空を眺めても、遠くに想いを馳せボケッとする事もしなければ、
哀しむ事も悔やむ事もしない。
何故なら、
一週間の始まりで過ごしたタリーズコーヒーの時とも違い、
今日のワタシには、持ち合わせの最初の言葉があるから。。。
抱えてる事は山積みだけれど、
今はとても心が満たされそれに潤ってまでいる。
ごめんなさいね画面向こうの皆様



女は突然、どこの誰かも解らない人に向けて呼び掛けた。
それは、スタバにいるからではないの。
それは、新作のアメリカンスコーンスイートポテトを買えたからでもない。
それは、これから割りとタイトでハードなお仕事が控えてるけどそれでもないの。
ごめんなさいねいつもレッスンに参加して下さる皆様も。
女は、
誰に言うでもなく、どうでも良い事を、
一人スタバで呟いていた。
そして続く。
今朝の話しなの。
気忙しくバタバタと出向した彼を見送ったワタシ。
嵐の後に訪れた静けさを肌で感じながら、お台所のスチールいすに腰を下ろしちょっと落ち着きを戻していたその僅か数分後。
ワタシのスマフォが震えたのよ。
LINEを開くと、さっきまで一緒にいた彼からのメッセージ。
たった一言だったけど、
その言葉を見たとき、
わたしには目の前でフラッシュがたかれたようになり、景色が白く弾けたの。
次の瞬間これまでの事がフラッシュフィルムのように現れては消え、
身体が傾き目眩を感じ、大量の血液が一気に心臓に送り出された。
何か言おうとも喉の渇きを感じ唇が動かない。
『色々ありがとう』
上が彼からのメッセージよ。
痛みや悲しみ、嘆きや不仕合わせの方が遥かに多かった彼が、
わざわざワタシにそれを送りつけ、ストレートに心を示した。
ワタシは身震いが収まらなかった。
彼がようやく人並みの日常を送れ、そして乗り越え、自立したのだと確信に変わったから。
『色々ありがとう』。
『わたしの方こそ色々ありがとう』
完
