「写真撮っても良いですか⁉️」
👂

両目をらんらんと輝かせながら女は高めな声を出す。
しかし残念

ここには問いかける相手もいないし、
わざわざ承諾を得るほどの大事な案件でもない。
でも女は待つ。
両耳をたててその時をじっと待つ。
胸に期待と言う風船を膨らませ、
決して諦めない気持ちなんかも籠めて。
あら不思議。
聞こえる筈が絶対にない声が女の耳朶に触れた。
『ダメよダメ!。この更新はらんちゃんブログファンの皆様とらんちゃんファンの皆様が見てくださってるのよ!
人の口に戸はたてられないと言うじゃない。
だから、気をつけないとだめなの。
毎回毎回同じような写真ばかり撮ってどうしたいの!?』
女は肩をすぼめてしゅんとする。
同時に口もすぼめる。
ストローの先端に小さくなったそれを寄せ、
冷たい珈琲をチューチュー吸い込む。
どこの誰と会話しているのかは不明だが、
女の写真撮りたい交渉はまだ続く。
『スミマセン。悪気はないんです



わたしはただ写真を撮りたいだけなんです。
このスタバは10年以上、あのスタバもそうだけど、スタバと言う場所にはその時々にあった色々な想い出があるの。
それに、このチョコレートチャンクスコーンは見た目以上に滋味で、人生の苦肉を表したような珈琲はその苦味をより引き立ててくれる。
そして、
これからお仕事に向かう私の小さな胸の心の緊張も、氷が勝手に溶けていくようにく解してくれたりもするの。
それに、』
『ちょっと待って‼️』
女は肩を震わせた。
(どこの誰だか知らないけど)
女の言葉を遮る声が突如割り込んだ。
『解るわその気持ち。ただびっくりしたのよ‼️今日に限って写真撮って良いですか?なんて聞くし、こんなにも長続きするなんて思わなかったから‼️
ワタシ、白眼むいちゃったじゃない』
『驚かせて仕舞ってスミマセン。。。
でもワタシ気がついたのです。
嫌、気づかせてくれたのかもしれません。
思いがけず訪れる幸運ってのが、この世の中に本当にあるんだって。
ほら、これがその証👇』
『明日から発売と言う新作のトマトとグレープフルーツのフラペチーノです☝️
宜しかったらどうぞ😋
額の方から声が聞こえて、
うつ向いてた顔をあげると、超イケメンの顔だけがあってこれを手渡してくださったのよ。
しかもめちゃくちゃな笑顔で。
笑顔って想ってる以上に人を元気にする力があるんだなって思い、ワタシも連れて笑っちゃった。
あの時のわたしは無理して笑顔作ってたのかなって。
で、頭を思い切り叩きたくなったの。
話は戻るけど、
後光を放っていたその笑顔が目と鼻の先にあるの。
手を伸ばせば届く距離にそれがあるの。
わたしにとってそれは本当に嬉しい事だったわ。
ここでは差ほど重要ではないから理由は伏せておくけれど、
それに、
世界中のスタバファンを押し退け、どう努力しても、どう頑張っても無理なものがあるように、
意図も簡単にわたしは手に入れる事ができたのよ。
救われた気がしたわ。
世界が一変した気がしたわ。
ぞくぞくしてワクワクして、、、。
だから撮りたいのよ。
トマトとグレープフルーツなんちゃらってやつを。
一度だけで良いから。
だからお願いよ、一度だけで良いから撮らせて』
女の目に(どこの誰だか不明だけど腕を組んでる姿が)うつる。
『解ったわ。
そこまで言うなら好きにしたら良いわ。
ただ貴女も世間ではもう立派な歳増女なの。
だから、分(文)を弁えて行動しなくてはならないのよ
」

完