緩やかに湯気の立つマグカップを少年へと手渡せば、思いきり顔をしかめられた。
「・・・・・なに、これ?」
―――何って・・・
「ホットミルクだけど?」
見ての通りの。
俺の返答にしばし無言の少年だったが。
「僕もそっちがいい。」
チラリと俺の手元のビールを見上げて宣った。
「ばーか。未成年はビール飲んじゃダメなんだぞ。」
「・・・・僕のこと、何歳だと思ってるの?」
笑いながらの俺の言葉にムッとした顔で訊ねてくる少年。
―――少年、だよな?
「・・・いくつなんだよ?」
「ハタチ。」
―――うん、嘘だ。
騙されないぞ。
「わかった。とりあえずソレ飲め。」
「あっ、信じてないだろ?!」
「はいはい。信じる、信じる。」
俺の適当な相槌にどうやらヘソを曲げてしまったらしい。
少年はマグカップを掌に包み込んでムッツリと黙り込んでしまった。
―――やれやれ。
再びキッチンへと踵を返して奥の棚からブランデーの入ったボトルを持ち出した俺。
「じゃあ、特別に。」
ボトルを傾けて琥珀色の液体を少年の手の中のホットミルクに注ぎ込む。
「はい、どーぞ。」
少年は俺の顔をチラッと見て。
それから手の中のホットミルクを見詰める。
そしてそっと舐めてみて・・・。
くくくっ、
コイツ、猫みたいだ。
「・・・おいしっ、」
―――や、ヤバイっ、
なんだか猫耳と尻尾まで見えてきそうだ。
俺は我慢出来ずについ、笑ってしまう。
「・・・なに、ニヤニヤしてるんだよ。」
またもやムッとした顔に逆戻りした黒猫・・・もとい、少年が不機嫌そうにこぼす。
しかし。
「美味しくて良かったネ。」
にっこりと微笑んで言ってやると予想外の事が起こった。
かぁ~、っと紅く染まった頬。
え?
もしかして照れてたりするのか?
生意気なガキだと思ってたけど、なんだ。
意外と可愛いとこもあるじゃないか。
そう思ったのも束の間。
「ね、ソレ。もうちょっと入れてよ。」
コイツ。
調子に乗るなよ!
「ダーメ。これヴィンテージものなんだからな。お子様には勿体ない。」
「なんだよ。ケチ。」
やっぱり可愛くない。