会長就任後、ろくに休みもとらず仕事へとのめり込むギイを見かねての島岡の言葉だった。
島岡の微妙な立場も理解している。
ギイと裕明とに板挟まれて、苦しいものだったのだと。
だが、理解しているからと言って許容出来るものではなかった。
・・・あの頃はまだ、ギイには全てが敵にしか見えなかったのだ。
「いや、大丈夫だ。今は悠長に休んでる場合ではないし。」
島岡の気遣いさえもがギイをイラつかせた。
―――親父の手先だったくせに。
そんな風に考えてしまう自分にこそ最もイラつく。
ザラザラと荒れた内心を、だが、ポーカーフェイスで完璧に隠していたつもりだった。
けれども。
島岡には通じていなかった。
「嘘ですね。貴方は大丈夫ではありません。今はまだ誤魔化しきれていますが・・・いずれ貴方は破綻してしまう。」
必死に隠してきた事実をあっさりと追求されて。
ギイの目の前が赤く染まった。
―――誰のせいで!
「・・・誰のせいでそうなった?俺は今の現状を何一つ望んでなどいなかったのに・・・!」
そう。
望んだのはただひとつ。
託生と共に生きること。
何を失ってもいい。
託生の傍に居られるなら何を引き換えにしてもよかった。
それなのに。
話し合うことも抗うことも赦されず。
こんな境遇に誰がした!
「申し訳ありません。」
ギイの無言の訴えに、島岡は深く頭を下げた。
島岡の下げられた頭はいつまでもそのままで。
ギイは激昂を溜め息と共に大きく吐き出した。
「いや、解ってる。・・・八つ当たりだ。悪かったな。」
疲れの滲んだその一言に。
島岡が堪らず反論する。
「何故、呑み込むんです?!もっと言ってください。"おまえのせいだ"と、責めたらいい。・・・貴方が壊れるより責められた方がはるかにマシです。」
圧し殺した叫びがギイを打った。
「・・・すみません。貴方を責めるのは筋違いでしたね。」
苦く沈黙した島岡が、再び口を開いた。
迷うように伏せられていた視線が覚悟を決めてギイを見詰める。
「・・・・思い出したのですよね。」
その言葉にギイの肩が僅に揺れた。
「気付いて・・・?!」
島岡にも隠していた事実。
それを知られていたことに驚いた。
知っていながら父親へと報告しなかったことにも。
「・・・いつからギイ、貴方の側に居ると思っているのです。すぐにわかりますよ。」