First and Only Love 17 | usatami♪タクミくんシリーズ二次創作小説♪

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タクミくんシリーズの二次創作です。
usatami のこうだったらいいのにな~♪を細々と綴っております(〃ω〃)
覗いていただけてら嬉しいです(’-’*)♪

留学期間は飛ぶように過ぎて。
日本への帰国の期日の迫ったある日。
託生は意を決してギイを訪ねた。

会わせてはもらえないだろう・・・そんな託生の予想は呆気なく裏切られた。
ギイの実家の執事はごくごく丁重に託生を迎え入れてくれた。

「義一様のご学友の方ですね?承っております。こちらのお部屋でどうぞお待ち下さいませ。」
「あ、ハイ。」
流暢な日本語で恭しく告げられ、慌ててペコリとお辞儀した。
もっと刺々しい対応を覚悟していただけに、完全に拍子抜けした託生である。
「ギイと僕とのこと、知らないのかな?」
口中で小さく呟いてみる。
そうなのかもしれない。
でなければ、こんな柔和な応対はしない気がする。

だが。
後のギイとの再会で、託生の疑問は解き明かされることとなる。
託生にとって最悪の結末を以て―――。


しばらく待った末に閉ざされていた扉が開かれる。
視線を向けたその先にギイがいた。
堪らなく焦がれた人。
その人の姿を認めて、託生は思わず座っていたソファーから立ち上がった。

あの別れから約二年・・・。
あの頃よりぐっと逞しく、男らしさの増したギイの美貌。
こうしてもう一度会えた、その喜びに託生は滲んでくる瞳をしばたかせた。
「・・・ギイ。」
震えてしまいそうな声を押し出して呼び掛けて。
そして返ってきたギイの返事に身を凍らせた。

「久しぶりだな、葉山。」
彼はそう言ったのだ。
託生、じゃなくて、葉山。
そんな呼び方ギイはしない。

「?どうかしたか?」
表情の強張った託生に訝しげな瞳を向けてくるギイ。
演技でも冗談でもなく、本当に不思議そうに見詰めてくるその瞳に視線を合わせることが出来ない。
詰めていた息をぎこちなく吐き出して、何とか平静さを保った。

そうして少し話した結果、託生は認めたくない結論に至った。
ギイの中で自分はただの友人。
沢山いた祠堂の同級生。
クラスメートのうちのひとり。
そういうことらしい。

とても納得出来ることではなかったけれども、ギイの話しぶりからしてそうとしか取れなかった。
話の辻褄は合っているし、折々の出来事も話した範囲では齟齬はない。
だが、ただひとつ。
違っているのは、葉山託生が崎義一の恋人だったという事実。
その確かなはずの事実が全てギイの中では消え失せていた。

―――信じられなかった。

何故?
心の中で誰にともなく問い掛けて、先ほどの執事の応対に思い至る。
追い帰す必要もなければ邪険に扱う必要もない。
葉山託生はもう、崎家にとって邪魔者でもなんでもない。
気に掛ける必要のない存在なのだから。

「葉山は今、ジュリアードに留学してるんだって?凄いじゃないか。祠堂の頃からバイオリン弾いてたもんなぁ。」
柔らかな笑顔でそう話し掛けてくるギイのその声が、表情が、辛い。
自分は知ってる。
覚えてる。
ギイが恋人である託生へと向ける貌を。
甘い声を。
それは今の目前のギイのそれとは全く異なるものだ。
友人仕様のそれらは、託生に認めたくない現実を突きつけてくる。

何を話したか―――。
激しい動揺からそのほとんどが記憶に残ってはいない。
けど、ギイの表情は覚えている。
何の苦しみもない晴れやかな表情。
「俺、前からやってみたかった研究に携わっててさ。それが結構面白くて。やりがいがあるんだ。」
真っ直ぐな眼差し。
ポーカーフェイスの得意なギイの瞳の色を読むことは難しいかもしれない。
けれども。
託生にはわかる。
希望に満ちて輝いているその瞳から、ギイの今が言葉通りに充実しているのだと。

託生は小さく息を吸ってお腹に力を入れた。
声が震えてしまわないように。
うっかり涙が零れたりしないように。
「・・・そっか。頑張って。」
それがこの時の託生の精一杯だった。




ギイの家から逃げるように帰り着いた自室。
扉を入ると同時に声を上げて泣いた。
今までずっと我慢してきた分、きっと一生分くらい泣いてやった。

「こんなのあんまりだ・・・っ、」
嗚咽混じりに絞り出した震える言葉は、託生の偽らざる本音。
一番大切なことが初めから無かったことにされてしまった。
話し合うチャンスもなく、一番大切なものを踏み荒らされて。
それでも、もう、何も出来ない。

「・・・・・ギイ・・・っ。」
―――伝えられなかった。
何も―――。
もう、ギイには届かない。
永遠に―――。


あの日から。
託生はギイを追い掛けることを諦めた。
ただ、彼を忘れた日は一日も無かった。
ギイが自分をただの友人だとしか認識していなくても。
例え昔のことを何ひとつ覚えていないとしても。
それでも託生が愛するのは、やはりギイだけ。
どんなに苦しくてもギイを想い続けることしか出来ない。
叶わない想いでもいい。
知られないように、ただただ密やかに。
奏でるバイオリンの調べに想いを乗せてきた。
それだけが託生に残された唯一のギイへの愛の告白だから。