First and Only Love 3 | usatami♪タクミくんシリーズ二次創作小説♪

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タクミくんシリーズの二次創作です。
usatami のこうだったらいいのにな~♪を細々と綴っております(〃ω〃)
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ツアー最終日のレセプションパーティー。
招待客との一通りの挨拶を済ませて一息ついた託生に傍で控えていた皇がスッと身体を寄せてきた。
「そろそろ出ますか?」
抑えられた声で尋ねられて、腕の時計に目を遣る。
開始から40分―――。
もう退散してもいい頃だろう。
託生は皇へと小さく頷いた。

皇は託生のマネージャーを勤めてくれている人物である。
佐智の事務所に所属してバイオニストとしてのオファーが来だした頃からの付き合いだ。
佐智からの信頼も厚く、冷静沈着な性格とその対応力に日頃から助けられている。
託生にとっては気心の知れた相手である。

彼の先導に従って会場出口の方に移動する託生。
その姿に、話し掛ける機会を窺っていた者たちから溜め息が洩れた。
演奏の後の疲労を思いやって声を掛けることを遠慮してくれる、その好意に感謝しつつも、彼らを失望させてしまうことを申し訳なく感じる。
小さく会釈して通りすぎようとした託生だったが。
全ての人が彼らのように慎ましい訳ではなかった。

『タクミ!』
肩を軽く叩かれて呼び止められる。
声の主は―――。
『ジョージ。』
今回のヨーロッパツアーのスポンサー、ジョージ・ブラウンである。
『もう帰るのかい?付き合いが悪いな。この後飲みにでも行かないか?たまにはゆっくりと話をしようじゃないか。』

ジョージとはこれまた既知の間柄で、ヨーロッパ圏での演奏会の招聘は彼の関係が多い。
数年来の付き合いである彼の誘いに乗りたくない訳ではないのだが。
『ごめん。今日は時間がないから。・・・また今度。』
『またそれか?前回もそう言って急いで帰っただろ?』
『そうだっけ?』
『そうだよ。』
託生のおっとりとした返事にジョージは肩を竦めた。
『息子くんが心配だから、だろ?けど、もう結構大きくなっただろ?』
『まだまだ子どもだよ。心細く思ってたら可哀想だろ?』
―――実際は章三の家に預けているのだからその様な心配はしていないのだが。
事実を話す必要はないだろう。
話せば間違いなく拘束されてしまうのだから。

『相変わらずだな。』
くくっと笑ったジョージが託生の背中に手を回して出口の方に誘導する。
二人並んで歩きながらジョージはトーンを落とした声で呟いた。
『なあ、タクミは寂しくはないのか・・・?』
問われた内容に託生はパチパチと瞳を瞬く。
ほんの一瞬の沈黙。
『僕は寂しくなんかないよ。奏太もいるしね。』
『・・・・本当に?』
『勿論。』

託生のしっかりとした頷きに。
ジョージはふぅ、と小さく息を吐く。
『そうか。・・・・じゃあ、もしも。もしも寂しくなった時。誰かと一緒に歩きたくなった時。・・・・俺のことを思い出してくれないか?』
『―――え?』

ジョージの思いがけない発言に、託生は言葉を失った。
『俺はタクミと人生を歩いていきたいと思ってる。』
―――これはプロポーズだから。 
小さく付け加えられた一言に、益々何を言ったらいいのかわからなくなる。
『返事はまたでいい。いつまででも待つよ。』
気付けば会場の外に辿り着いていた託生の肩をそっと抱き寄せる。
『だから。少しずつでいいから、考えてみてはくれないか?』
耳元で聴いたジョージの声が震えている。

―――本当は知っていた。
ジョージが自分のことを好きなのではないか、と。
だけど、言葉にして言われないことを良いことに自分を誤魔化してきた。
誤魔化して、甘えてきたのだ。
ジョージの好意には応えられない。
託生には今も、そして多分一生、心を縛られ続けるだろう人がいる。
きっと何が起こってもこの気持ちは変わらない
変えることなど出来ない。

ジョージの気持ちに応えられない以上、彼にはっきりと伝えるべきだ。
"君と共に歩いていくことは出来ない"と。

『・・・・ジョージ、』
託生が重い口を開きかけたその時、背後から声が掛けられた。
『話中に失礼。少しいいかな?』
人混みのざわめきを抜けて届いたその声は、託生を凍りつかせた。
何度も聴いた声。
どれだけの月日が経っても忘れられない声。

―――どうして?!
あり得ない。
彼がこんなところに・・・自分の前に現れるなんて。
再び会うことがあるなんて。
―――思ってもいなかったのに。

『・・・・・ギイ。』
溜め息のように小さくこぼれた名前が、託生の心を掻き乱していった。