爽やかな五月晴れの朝。
カーテンの隙間から差し込む眩しい陽光に瞼をぎゅっと絞り込む。
ついでに布団をもそもそと頭まで被り込もうとした託生を、更なる叱責が襲った。
「あ~っ、もうっ!だからっ、起きろって言ってるだろ?!」
怒声と共に、みのむしよろしくしっかりと引っ被られた託生の布団がバサリと剥ぎ取られる。
「今日からヨーロッパツアーだろ?!早く支度しないと。皇さん、来ちゃうだろ?!」
「ん~、今、何時?」
ごもっともなその言葉に対する寝ぼけ声での質問。
「7時だよ。」
「ん~・・・・。あと5分だけ・・・。」
いつものセリフに。
奏太のこめかみに青筋が浮かんだ。
「――――――今すぐ起きなかったらキス、するぞ。」
不穏なオーラを纏ったその唸り声に。
そして言葉だけではなく態度で表すかのように、小さく丸まった託生の上に覆い被さってくる奏太に。
託生の目がバチッと開いた。
「わわわわわわっっ、起きたっ、起きたからっ、」
朝に弱すぎる、寝ぼすけな託生に、ここまではっきりと反応されて。
奏太は密かに溜め息を噛み殺した。
が、それはとにもかくにもさて置くとするべき現状なのだ。
「なら、さっさと起きて。朝飯食って出掛ける準備しろ!」
"とうさん"などと呼びつつも、威厳の欠片も感じられないこの扱いに。
託生は少しだけ肩を落とす。
けれども次の瞬間にはふんわりと柔らかく微笑むのだ。
「・・・・・・なんだよ?」
脈絡なく笑われると居心地が悪い。
例えそれが花が咲いたような可憐な微笑みだとしても。
そして、その微笑みに見惚れて心臓が小さく跳ね上がってしまっていたとしても。
「ん?いや、大きくなったなあ、と思って。」
「またそれ?そりゃ、育ち盛りだからな!」
「ん・・・。そうだね。」
そう言いながら、感慨深く奏太を見詰めてくる託生。
奏太は本気でやめて欲しいと思う。
そんな風に見詰められたくはない。
もっと違う目で見て欲しい・・・。
「じゃ、飯、早く食えよな。マジで皇さん、来ちまうぞ?」
「うわ、本当だ。急がなくちゃ。」
気まずく視線を逸らした奏太の隣で起き上がった託生がパサリとパジャマを脱ぎ捨てる。
露になった上半身に。
奏太は慌てて方向転換した。
「これ、荷物?玄関まで運んどく。」
「あ、ありがと。」
シャツを着ながらの託生の返事を背中で聴いて、奏太は託生の部屋を出た。