「・・・僕のことだよ。」
慌てて確認してくる利久に恥ずかしそうに顔を俯けて。
頬を紅くして答える託生。
――――ええっ?!
確かに。
この祠堂ではそういうこともよく起こると聞いてはいる。
だが、知り合い、いや、親友がそんなことになるとは!
しかもこの親友は天然記念物並みのおっとりさなのだ。
これはいけない。
絶対に良くない!
何があったか知らないが、助けなくては!!
「・・・相手はっ?」
そうだ、肝心の相手の名前を聞かなくては。
利久の気合いの籠った質問に更に顔を赤らめて。
「・・・・・・・・ギイ。」
ぽそり、と呟かれたその名前に利久は深く納得してしまった。
ああ、そうなのか、と。
それなら仕方がないよな、と。
ギイの超越した完璧さは祠堂の全生徒を魅了していて。
彼に憧れない者はいない、と断言できてしまう程だ。
“ギイと付き合えるなら例えノーマルの奴でも落ちてしまう”というのが祠堂に於いて真しやかに流れている噂という名の願望である。
利久だって、ギイのカッコ良さには感じるところがあるのだ。
だからと言って落ちたりはしないが、多分、きっと。
だが、ここで深く納得してしまったのは決してそのことが原因ではない。
このスーパーな男と幼馴染みだという託生。
入学当初からの親しげな様子は微笑ましくもあった。
ちょっと天然だけど穏やかで和やかな託生。
そんな彼が悩んだり落ち込んだりするのは大抵ギイ絡みのことであった。
ギイのことで一喜一憂するその様子は、今にして思えばもう、その当時からギイに恋してた、ということなのだろう。
そう思い当たっての深い納得なのだ。
ギイだって。
あれだけ出来て、周りの注目をひた集めにしているにもかかわらず。
常に気にするのは託生のことばかり。
幼馴染みで少し頼りなくもある託生のことを気に掛けるのも頷けたから気にも留めなかったが。
それも恋心だったのだと。
得心がいく。
あれだけ全身全霊で託生を大切にしていたギイだ。
勘違いや気の迷いということはないだろう。
「・・・・まあ、大丈夫か。」
多少複雑ながらも、親友の恋の成就を素直に喜んでやるとするか。
「何が?」
小さく呟いた利久に託生が首を傾げた。
「や、なんでもない。で、なんだったっけ?」
話題は最初に戻って“男同士で付き合うってどんなことをするのか”が議論のテーマとなった。
更に上がったハードルに、乏しい知識を寄せ合って話し合った結果。
「やっぱ、キスまでなんじゃない?それ以上は男同士でしても面白くないだろ?」
利久としては至極当然の結論に至る。
何しろ相手が男だと最後まで出来ないではないか。
うん、やっぱキスまでだ。
「そっか・・・ありがとう、利久。」
自信に満ちた利久の答え。
キスがゴールだというのなら、もうこれ以上心臓の心配はいらないようだ。
何しろ少し触れただけでも暴走して、死んでしまうかというくらい苦しいのだから。
これ以上はないとわかって、ほっとした託生である。
「どういたしまして。」
悩める親友の役に立てた満足感に。
利久は満面の笑顔で答えた。