「・・・・夢みたいだ。」
ギイの腕の中、すっぼりとくるみ込まれた託生に、ギイのそれこそ夢見心地の呟きが落ちてくる。
でもそれは託生も同じことで。
叶わないと思っていた想いが伝わった、その喜びが静かに心を震わせた。
「託生・・・キス、していいか?」
ギイの言葉に。
はっとして、今更ながら周りをきょろきょろと確認する。
「大丈夫。誰も居やしないさ。」
「でもっ、ここ、学校・・・。」
言い掛けた託生の言葉は、しっ、とギイの長い人差し指が唇に触れて途切れた。
「大丈夫。・・・俺を信じろよ・・・。」
そんな言い方はズルい。
それとこれとは話は別なのに・・・。
「目、閉じろよ。」
近付いてきたギイの唇に息の触れる距離で囁かれて。
いけない、と思いつつも。
まるで魔法にかかってしまったかのように瞳を閉じた。
そっと触れる温かなぬくもり。
最初は軽く、それから確かめるように。
重なった唇から伝わる確かな存在感。
こんな風に改めてゆっくりと交わしたくちづけは、静かで穏やかなのに。
ドキドキ、クラクラとちょっと苦しくて。
でも、力強い腕に安心できて。
かなり嬉しくて、とても幸せで。
だけどやっぱりドキドキが苦しくて・・・。
無限のループだ。
「・・・・託生?」
唇が離れて、ぽすんとギイの胸に埋もれてしまった託生にギイが心配そうに呼び掛ける。
「ん、平気。・・・ちょっと心臓が・・・、」
胸の中で小さく呟く託生にギイの愛しさも募る。
またもやきゅうっと抱き締めて。
「俺、何時間でもこうしていたい。」
やっと、本当にやっとのことで叶った願いなのだ。
これはギイの本音である。
「えっ、それは無理。」
「何でだよ?」
いつまでも触れ合っていたい、好きなら当然の想いだ。
託生は違うのかよ?
連れない託生の返事に唇を尖らせかけたギイであったが。
「何時間もしてたら夕食、逃しちゃうよ。」
―――確かに、それは由々しき事態ではあるが。
だが、やはり。
夕食よりも託生とのイチャイチャの方が重要だろう――
自明の理だ。
しかし、その後に続いた託生の言葉にやられてしまったギイである。
「――――それに、何時間もこうしてたら、僕の心臓が保たないよ。ドキドキで死にそう。」
それって、つまり。
それくらい俺のこと好きってことだよな?
つまり、つまり。
それはもう、物凄く好きってことか?
普段から託生の天然発言にやられ気味の自覚の充分にあるギイだったが。
早速の攻撃にクラクラである。
――だ、だめだ。
幸せすぎておかしくなりそうだ。
「・・・・・・ギイ?」
託生を抱き締めたまま大きく息を吐いたギイに、今度は託生が心配そうに呼び掛けた。
「・・・じゃあ、さ。もう一回だけ。そしたらバイオリンの練習して、で、夕食。な?」
自分の発言の威力を全くわかってない託生に苦笑しつつ。
おねだりする。
「!・・・・うん。」
やっぱりきょろきょろとして。
でも、今度は素直に瞳を閉じた託生に。
数えきれない愛しさを乗せて。
静かに唇を重ねた。