そう言って。
日本への飛行機に乗り込む僕を見送ってくれたギイ。
それは約二週間前の出来事。
「託生にさ、会いたいから。すげぇ頑張ってるんだぜ。」
受話器越しのギイの声。
これは二日前。
眠る前の電話での言葉。
「だから、待ってろよ。」
の言葉に、照れ臭かったけどちゃんと返した。
伝えられることの幸せを知ったから。
伝えられる時に伝えたいと思ったから。
「ずっと待ってるよ。僕だって・・・頑張るよ。」
言葉にするのは恥ずかしくて。
これが精一杯だったけど。
いつか君と居られる日が来るように。
僕も頑張ってるって伝えたかった。
それなのに。
「くれぐれも、浮気はダメだからな。」
なんて、ギイの意味不明な釘刺しに驚かされた。
「ナニソレ?そんなのするわけないでしょ。」
僕は誰かさんとは違って地味で目立たないんだから。
そんな相手もいなければ、そんな時間もないし。
(・・・それに。僕はギイしか見てないんだから。)
だから全く心配ありません。
「託生のことは信じてるさ。けど、おまえわかってないからさ。」
僕の言葉に心配そうに返すギイ。
確かに僕が時々間抜けなことしちゃうのは認めるよ。
けど。
わかってないって、ちょっと酷くないでしょうか。
「とにかくっ、全く心配ないんだから。僕もう寝るからね。お休みっ。」
眠いのも手伝って電話を切った。
事実無根の不毛な詮索を完全否定して。
話はそれで終わったはず・・・なのに・・・?
今日。
大学の正門に何故か人垣が出来ていて。
???
何かあるのかな?なんて不思議に思いながら通りすぎようとしたところ。
「託生!」
聞き覚えのある声に呼ばれて振り返れば。
人垣の中心部。
正門に寄り掛かっていた人影が僕に向かって手を大きく振っている姿を発見する。
物凄い存在感を放っているその人物は僕と目が合うととても嬉しそうに笑った。
うわー。
すごく嬉しそうだなぁ。
あっ、なんか・・・。
尻尾がついてるみたいに見える、のは・・・気のせい、気のせい。
なんて。
ぼんやりと思っていたら。
その人物は遠巻きに取り巻いていた人垣を掻き分けて僕へと到達すると。
ぎゅうっと僕を抱き締めた。
それはもう、人目なんて完全にスルーして。
「えっ、ちょ、な、なんで?ギイがここに?!」
びっくりして慌てる僕にクスクスと軽やかに笑って。
僕を解放する。
『言っただろ。待ってろよって。』
・・・・確かに言ってた。
けど、ほんとに来るなんて。
しかもこんなにすぐ。
ぽかん、と言葉の出ない僕の肩を軽く抱き寄せて。
『じゃ、託生の部屋に案内しろよ。』
って催促されて。
ハタ、と気付く。
『・・・・・・なんで英語なの?』
つられて僕も英語で訊ねる。
もしかして、何か企んでるとか??
『別にー?折角託生が英語話せるようになったんだから、使ってないと忘れちまうだろ?』
そ、そうなんだ?
うーん?
なんだか納得しかねる気もするのだけれども。
いいだけ注目を集めたまま、ここにいつまでも居たくはない。
物凄い視線が背中に刺さりまくるのを感じつつ、その場を引き上げたのだった。