Another Kiss・・・? 12 | usatami♪タクミくんシリーズ二次創作小説♪

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タクミくんシリーズの二次創作です。
usatami のこうだったらいいのにな~♪を細々と綴っております(〃ω〃)
覗いていただけてら嬉しいです(’-’*)♪

食事をしながらの会話は当たり障りのないことばかりで。
そのよそよそしさに僕は勝手に傷付いてしまう。
仕方のないことなのに・・・。
でもそんな気持ちを、何も知らないギイに気付かれる訳にはいかなくて。

「もう一杯、いかがですか?」
勧められるままにワインを飲み干す。
自分でも飲み過ぎてる、ってわかってたけど。
そうでもしてないと、何を喋り出すかわからない自分自身が怖かった。

だって、目の前にギイがいる。
手を伸ばせば触れられる距離に。
それなのにこの手を伸ばすことは、君に触れることは、もう出来ないんだ。

豪華すぎるディナー、だけどその味は全然わからなくて。
とにかく何とかデザートまで辿り着き、食後のコーヒーを飲みながらギイが本題を切り出してきた。

「本当に素晴らしい演奏でした。しかし、NYでの演奏は初めてだとか。・・・何か理由でも?」
探るような瞳で言われて、僕の心臓がドキリと大きく跳ねる。
「いえ、たまたま調整がつかなくて。それだけです。」
僕は何でもない顔を装って応えた。
けど、内心は冷や汗が止まらない。

昔からそうだった。
ギイは僕のこと、いつだってお見通しで。

僕のことなんてすっかり忘れてしまっているはずのギイ。
何故、急に呼び出されたのか。
一体何の話をする気なのか。
予想もつかない話の流れに、心臓の音がドクドクと煩い。

「そうですか・・・。ではまた、是非、NYでリサイタルを。その時は私をスポンサーにして貰えませんか?」
「・・・・・・えっ・・・?」
突然の申し出に言葉を失ってしまった託生の瞳を見詰めてくるギイのブラウンの瞳に。
くらり、と目眩がする。

「いや、NY公演と言わず、出来るなら葉山さん、貴方の全てをバックアップしたい。」
更に告げられた言葉には熱い熱が籠っていて。
絶え間なく打ち響く心臓の鼓動が邪魔をして、ギイの真意が全くわからない。





返事もなく沈黙してしまった託生の目の前で、スッと優雅に席を立ったギイ。
言葉が出ないまま、そのギイの動きを魅入られたように目で追う。
大きなテーブルを回り込んで託生の傍らへと辿り着いたギイを、託生はつい、縋るような視線で見上げてしまった。
慌てて視線を逸らした託生の左の掌を掬い上げるギイの掌。
その温もりに、懐かしい感触に。
託生の心は鈍く軋んだ。

「すぐに返事を貰えないのは、この指輪のせい・・・?」
掌の中の託生の、指先に在るリングを確かめるようになぞっていくギイの指の動きに、託生は堪らず小さく叫んだ。

「あっ、あのっ。そういうことは・・僕だけでは、決められないので・・・。返事は、後日で・・・。」
それだけ、何とか辿々しく言葉にした。
「そう、ですか。・・では、良い返事をお待ちしてます。」
そう締めくくったギイの掌は未だ託生の掌を離さないまま。
その熱に。
ずっとこのまま・・・。
魂の奥底からの願いが噴き出してくる。
だけど。

「あのっ、崎さん。・・・手、を・・・。離して、下さい・・・。」
ドクドクと激しい鼓動の下、紡ぎ出された切れ切れの言葉が、今の託生の精一杯で。
とてもギイの貌など見れなかった。

「これは、失礼しました。つい・・・。」
託生の微かに震える言葉を受けて、ギイはその麗しい美貌に笑みを浮かべて。
掌の中の託生を解放した。

離れていく温もりに、託生の心は引き裂かれるように激しく痛んだ。
だけど、そんな気持ちを知られる訳にはいかなくて。

「今日は楽しい時間をありがとうございました。」
―――お料理もとても美味しくて・・・。
――――いただいたご提案はまた、検討して・・・。
そんな風に続く筈の別れの挨拶。
席を立ち上がった瞬間に、ぐらりと視界が揺れた。

よろめいた託生を傍らのギイが危なげなく抱き留めた。
「・・・大丈夫ですか?」
ぐらぐらと揺れる視界の中、逞しい温もりに身を預けて揺れが治まるのを待った。

数瞬後にその逞しい温もりが何であったかを思い出して。
慌てて身を離そうとした託生を抱きとどめる力強い腕。
その力強さに更に激しさを増す鼓動はもう、コントロール不可で。
呼吸さえ苦しくなってくる。
鼻を掠めるギイの懐かしい匂いに。
押さえつけていたものが溢れだしてしまいそうになって。


「あの、もう、大丈夫です。・・・すみません、少し飲み過ぎたのかも。」
託生はギイの胸を弱く押し返す。
だが、ギイは全く動じず。
むしろ託生を抱き込む腕の力が増す。

「少し、休んでいかれた方がいいですね。」

―――部屋をとってますので。

耳元で囁かれたギイの言葉に。
託生は息を止めて硬直してしまった。