「えーっと、ごめんなさい。無理です。」
とっても申し訳ないけど。絶対に無理だ。
「え~!なんで?!」
即答の託生に冴子は不満の声を上げる。
「葉山先生はコンクールに向けて頑張ってるんだから。他のことやってる余裕はないのよ。」
横から愛子がフォローを入れてくれる。
それだけでなく、自分にモデルなんて出来るとはとても思えないからなのだが。
「・・・先生?・・・学生さんかと思った。」
冴子が呟いた。
いや、確かに童顔だって言われることあるけど。
学生さんはさすがに恥ずかしい。
けどこれで話は終わったと安心した託生だが。
「じゃあ、一回だけ!ショーのモデルは諦めるから。一回だけでいいから私の服、着てください!」
尚も食い下がる冴子に困惑する。
「一回だけって言われても・・・第一、冴子さんの服って女性用ですよね?」
そうなのだ。
見せられた写真のモデルは愛子。
つまり女性用。
それなのに何故自分にこだわるのか。
「メンズもあるんですっ!去年はイメージに合う人が見つからなくってショーには出さなかったけど。葉山先生はイメージピッタリなんです!」
言いつつトートバッグから新たにデザインブックを取り出す。
「こんなカンジの服なんです。」
見せられたデザインのイラストは確かに先程の写真の女性用よりは大人しめのものではあった。
けど―――。
「・・・メンズなんだよね。」
「はい!」
なんだか妙にヒラヒラして見えるのはデザイン用のイラストだから?
それとも本当にヒラヒラしてるの?
判断がつかなくて黙り込んでしまった託生である。
「勿論、先生に合わせて新作で作ります!だから、お願いします!!」
「一回だけって言うんなら、今度の学祭の時に着たらどうかしら?葉山先生、今年は弾きますよね。」
デザインブックを覗き込んでいた愛子が瞳を輝かせて言った瞬間だったと思う。
このとんでもない提案がどうやら決定とされてしまったのは。