待合室の私 vs 脳内フラッシュバック劇場
「ご主人、敗血症です。かなり危険な状況です」
たったそれだけの宣告で、私は待合室にポツンと取り残された。 目の前で繰り広げられたのは、ドラマでよくある「親戚呼べ!」とか「今夜が山だ!」的な熱血展開ではなく、妙にクールで事務的なやりとり。
(……あれ?親戚、呼ばなくていいんだよね?ということは、まだセーフってこと?)
現実逃避なのか、謎のポジティブシンキングが脳内で芽生える。「医者、全然焦ってなかったし!」と、夫が危篤かもしれない状況なのに、医者のジェントルな態度に安心しようとする私。
いやいや、待て。よく考えろ。
「敗血症」って、あれだよね?ネットでチラ見した、「命に関わるヤバいやつ」ってやつ。
ドクン。
途端に、待合室の固い椅子が急に座り心地が悪くなる。冷たい蛍光灯の光が、やけに白々しく見える。 こうなると、私の脳内は待合室を飛び出し、夫の体調異変ヒストリーを早送り再生し始める。
まるで、未解決事件の再捜査をする刑事のように。
前回までのお話はこちらです
「痩せの大食い」ならぬ「痩せのダルい」
振り返れば、数カ月前から夫はずっと言っていた。
「なんだか、体がダルい」 「ダルい……だる……い」
そのダルいは、疲れている人間の「ダルい」というより、やる気ゼロのナマケモノみたいな「ダルい」だった。
そう、夫には持病がある。10年前に診断された糖尿病だ。食事管理と運動で一度は寛解したものの、ここ1〜2年、血糖値が再び高止まり気味。
「これは運動あるのみ!」と、フィットネスジムへGO。トレーナーに言われるがまま、汗水たらして頑張る夫。しかし、前回までなら運動で簡単に下がったはずの血糖値が、なぜか頑として動かない。
責任転嫁のA医院と、追い返すセカンドオピニオン
「おかしいな」と思って近所のA医院へ。ベテラン風のA先生は、
「うーん、お薬飲んでもなかなか下がってくれないねぇ。下がってくれなくちゃ、困るんだよねぇ〜」
え、困るのは私たちなんですけど。 まるで、夫の血糖値が勝手に反抗期に入っているかのような言い草。なぜか患者側に責任を転嫁してくるA先生の謎のプレッシャーに、「運動が足りないのか!」と夫はさらにジムでの追い込みを強める。
それでも、血糖値はビクともしない。
さすがに不安になり、「セカンドオピニオンだ!」と別の病院へ行ってみた。
すると、受付で病状を伝えた瞬間、医師は露骨に顔を曇らせ、
「いやぁ〜、A先生のところに行ってるんだったらウチではちょっと…」
と、まるで「同業者の縄張り荒らしはご勘弁」と言わんばかりの拒絶。 結局、診察料だけ取られ、薬すらもらえず「A医院で頑張ってね」と追い返されるという、踏んだり蹴ったりの結果に。
「痩せる=健康」という謎の安心感
そんなこんなで、結局A医院に出戻り。
その頃になると、夫の体重は目に見えて減り始めていた。ズボンがブカブカ。顔の輪郭がシャープになり、「あれ?なんか若返った?」と一瞬ポジティブにとらえそうになるくらい。
「先生、急に痩せたんですが…」と尋ねると、A先生は満面の笑みで、
「あぁ、糖尿病だから痩せるんです。こういうものですよ!」
「痩せる=健康」と刷り込まれて育った私。 「なるほど!病気が痩せさせてくれているのか!ラッキー!」と、まるで特典付きの持病だと勘違いし、勝手に納得。
今思えば、そこで「なぜ急に?」と深堀りしない、私たち夫婦の危機意識の低さが恐ろしい。
まさかの胃腸科&心臓血管内科ツアー
痩せたことに安心してからも、ダルさは続く。さらに追い打ちをかけるように、胃がムカムカし、吐き気が頻繁に起こるように。ついには、胸のあたりが苦しいような気がしてきた。
(これはもしや、ストレスか!?いや、それとも心臓か!?)
今度は胃腸科を飛び越え、いきなり心臓血管内科へ。 心電図、血液検査、レントゲン…全部実施。
結果は……「どこにも異常なし。むしろ、健康なくらいです!」と、清々しいほどの無罪放免。
な、なぜだーーーー!!
体は悲鳴を上げているのに、検査結果は「ピンピンしてます!」と主張してくる。まるで、夫の体内でコントが繰り広げられているかのようだった。
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夫のコミカルな体調不良が敗血症という深刻な事態に。皆さんの「おかしいな?」を見逃さないきっかけになれば幸いです。続編もお楽しみに!
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