「コタツ記事」という言葉があります。自力で取材や調査をせずに、既に報道されている情報を寄せ集めだけの記事のことです。外に出ず、自分の部屋でコタツに入ったまま書いただけの原稿、という意味。空き時間などについスマホでネットニュースを見てしまいますが、そのうちの多くがこの「コタツ記事」で、読んでがっかりすることも少なくありません。

 その一方で、十分な取材や調査をした記事にあたると、「さすがだな」と思うことがあります。それを感じたのはサッカーワールドカップの日本代表第1戦についてでした。この試合の終盤、1対2で劣勢の日本がコーナーキックからの小川選手のヘディングシュートで同点に追いつきました(鎌田選手の頭に当たってゴールインしたので、公式記録では鎌田選手の得点)。しかし、長身選手揃いのオランダ守備陣に対して、常識的には、コーナーキックからヘディングで得点を取ることは困難です。にもかかわらずなぜ得点が取れたのか、そこは「守備のほころびかな?」くらいしか理解できていませんでした。

 その後、朝日新聞の記事を読んだところ、オランダチームに対する分析がなされていたことがわかりました。ファンダイク選手はオランダの主将で守備の要。世界屈指のディフェンダーです。しかし、そのファンダイクといえども、試合の中で「(強いプレッシャーをかけることを)さぼることがある」という分析が事前になされていたとのこと。しかも、鎌田選手がファンダイク選手に体を当てて動きを制限し、小川選手のスペースを確保していたとのこと。加えて、コーナーキックを蹴る伊東選手が、高い軌跡のセンタリングではなく、低く落ちる奇跡のセンタリングを意図していたことも記事に書かれていました。そこまで解説されると、このゴールがなぜ可能だったかがかなりわかってきます。

 「コタツ記事」とは対極をなす「取材記事」とはこういうものなのだ、と思いました。

 

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 脚本家の尾崎将也さんが病気のために亡くなりました。私より若い66歳。残念です。

 尾崎さんの代表作としてよく取り上げられるのが、フジテレビ系『結婚できない男』(2006年、2019年)とNHK朝ドラ『梅ちゃん先生』(2012年)です。また映画監督でもありました。脚本家や小説家にも、話すのが得意でテレビ出演などの多い人と、逆に書くだけで自ら語ることの少ない人がいます。尾崎さんは特に寡黙な人で、自身がテレビ出演することのあまりない脚本家でした。その尾崎さんがテレビ出演した数少ない番組がありました。代表的なのは、2009年9月26日に放送されたNHK『ディープピープル 連続ドラマ脚本家』です。

 この番組は、尾崎将也、中園ミホ、岡田惠和という3人の脚本家が出演する鼎談形式のトーク番組でした。その中で、中園ミホさんが尾崎さんについて、次のように語っています。

 

 ほんとに私、口悪くてごめんなさいね。

 尾崎さんの本てすごくうまいじゃないですか。完成度が高いでしょ。

 だけどなんだかわかんないけど花がないな、と思ってたの。

 ほんとすいません、上から目線で。

 それを『結婚できない男』を見たときに、

 「うわーすごい、いよいよものすごい大きな花を咲かせたな」

 という気がして興奮してしまいました。

 

 「口悪い」と言いながら、実は最大級の誉め言葉につなげるあたり、さすが『ドクターX』などのヒットメーカー・中園ミホの言葉です。実際に、尾崎さんの作風は中園さんの言葉に集約されている、と言ってもいいと私は思います。

 尾崎さん作品の持ち味は、「けっして派手ではないけど、じわりとくるような温かさとユーモア」とでもいうのでしょうか。尾崎さんの手がけた多くの作品を楽しませていただきました。ありがとうございました。脚本家・尾崎将也さんのご冥福をお祈りいたします。

 

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 年齢とともに懐古的な感情を持つことが多くなってきました。そして、フィクション作品に関してもノスタルジックな作風を好むようになりました。そう書き出したのは、先日NHK衛星放送で、『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988年)を放送していたからです。イタリア映画の名作ですから、もちろん過去に視聴していましたが、放送されたことであらためてその内容が思い出されました。

 おそらく50歳代になったと思われる映画監督のもとに、郷里の母親から電話がかかってきます。もう30年も帰省していない彼は、かつて自分に映画技師の手ほどきをしてくれた老人の死の知らせを聞いて、それをきっかけに過去を思い出す…という話です。思い切りノスタルジックな作品で、若い頃よりもこの作品の味わいが深く浸みてくるような気がしました。

 ところで、私はこの作品から、『男はつらいよ お帰り寅さん』(2019年)を思い出しました。この作品は、『男はつらいよ』シリーズの50作目。つまり、主演の渥美清死後20年以上経ってから制作された、シリーズ最終作です。小説家となった満男(吉岡秀隆)が初恋の相手・泉(後藤久美子)に再会し、寅さん(渥美清)と過ごした日々を回想する内容で、こちらもとてもノスタルジックな作品です。

 ちなみに、この『男はつらいよ お帰り寅さん』を見て、「今までの映画を切り貼りした総集編みたいな映画だからなあ」という否定的な感想を言っていた友人がいました。それは確かですが、私がこの作品が『男はつらいよ』シリーズで一番好きな作品です。シリーズはこの作品のためにあったと言ってもいいとさえ思っています。それは、寅さんがいなくとも、満男の中に寅さんの思い出がすべて生き続けている、そういう世界がシリーズの集大成だと思うからです。

 そんなことを考えていたら、この『ニュー・シネマ・パラダイス』と『男はつらいよ お帰り寅さん』が、私には重なって見えてきました。成功した中年映画監督の幼少時代に、彼に映画のことを教えてくれたのは老映画技師のアルフレードでした。小説家となった満男の幼少時代から、彼の悩みや迷いにつきあってくれたのは叔父でテキ屋の車寅次郎でした。そして、今は亡きその大切な存在を悼むのが『ニュー・シネマ・パラダイス』と『男はつらいよ お帰り寅さん』だとしたら、この2作品は同じテーマを共有しているように感じます。

 そしてもう一点。この2作品は、映画の中に多くの実在の映画が登場することでも共通しています。『ニュー・シネマ・パラダイス』では多くの古い名画が、『男はつらいよ お帰り寅さん』には過去の『男はつらいよ』シリーズ49作品の名場面が、それぞれ豊富に引用されています。その内容は異なるとしても、どちらも映画が過去の古い映画へのオマージュであるという重要な点で共通しています。

 年齢がいってきたからか、こうしたノスタルジックな作風の作品に心を動かされることが多くなりました。

 

※『ニュー・シネマ・パラダイス』には複数のヴァージョンがあり、今回放送されたのはいわゆる「インターナショナル版」と呼ばれる短いヴァージョンの作品でした。

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 長年通い続け、このブログに何度も書いている小林浩一シェフの料理をいただいてきました。今小林シェフの料理を食べられるお店は、大田区蒲田にあるフレンチ&ワインバー『マルス・ファンタスティカです。最初の突き出しから、信じられないような丁寧に手のかかった料理がふるまわれました。メイン料理がすばらしく美味しいのはいつものことですが、その前の2皿の工夫と手のかかり方が尋常ではありません。メイン並みの料理を4皿いただくような満足感を味わいました。鱧(ハモ)やソラマメなど季節感あふれる食材も多く使われ、何度通っても毎回新しい味わいを楽しませていただきました。

 

茄子と里芋のジンジャー風味 ハモ・ウニ・カニ・アワビを乗せて

 

ジビエ(鹿・猪・鴨)のテリーヌとフォアグラ・トランペット茸のテリーヌ アスパラソバージュ添え

 

そら豆とアサリのポタージュ

 

糸ヨリのソテー ベルモット酒のクリームソース

 

熊本牛のステーキと牛ホホ肉の赤ワイン煮

 

デザート(バスクチーズケーキ・ガトーショコラ・抹茶とホワイトチョコのケーキ・苺)とコーヒー

 

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 『今夜、秘密のキッチンで』の初回だけを見たときに、私は次のような感想を書きました。

 

「さあ女性の皆さん、この作品で癒されてください」というメッセージが前面に出すぎて、私はちょっと引いてしまいましたが、本当に癒されるならそれは幸せだろうと思います。(4月11日本ブログより)

 

 ちょっと意地悪な感想を私は書きました。だから、初回だけ見て、あとは見るのをやめようかとも思いました。しかし、「もう少しだけ見てみようか」とも思い直し、いわゆる「ながら視聴」で仕事しながらみたところ、第7回の今週まで見続けています。家庭でつらい思いをするあゆみと、昏睡状態から幽霊のようにあらわれるKeiとの関係を、いつの間にか応援したくなっていました。

 また、この作品にはサイドストーリーも描かれます。父娘二人だけで暮らしてきた林太郎と娘の小春。しかし、娘の二十歳の誕生日の朝に親子喧嘩をしたまま、林太郎は交通事故死してしまいます。この話のために本線が進まないような面もあるのですが、それでも見ているうちに、林太郎と娘を一緒に見守りたい気持ちが湧いてきてしまいました。

 初回の印象から変化して、毎週この作品を欠かさずに見ています。なんだかじわじわと浸みてきました。今やすっかり、この作品世界に説得されてしまったようです。

 

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