恒例のテレビドラマ批評の3回目。先週以降に放送が始まった作品について、いつものように感想を書いていきます。ただし、作品数が多すぎて丁寧に書く余裕がありません。申し訳ありませんが、簡略な感想でご容赦ください。(青字部分は番組公式HPのイントロダクション文から引用しています。)

 

『10回切って倒れない木はない』(日本テレビ系、日曜22時台)

 

 幼い頃に日本人の両親を失い、韓国有数の財閥の養子となった青年キム・ミンソク(青木照)。後継者と目される活躍をしていたが、養父の死後、失脚。韓国の家から追い出される事態に。

哀しみに暮れながらも、23年ぶりに日本にやってきた。

幼い頃に父親を事故で亡くし、その経験から、貧しさを乗り越え医師となった河瀬桃子。自分と同じ哀しい想いは誰にもさせない…その信念のもと日々懸命に命と向き合っている。

そして、日本で出会うミンソクと桃子。

が、この時、二人は知らなかった。

子どもの頃、とある場所で出会っていたことを。

『10回切っても倒れない木はない』

この言葉が二人を繋いでいたことを…。

その事実に気付かないまま、23年の時を超え、国の壁も越えて、二人は惹かれ合っていく。しかし、予想だにしない試練が次々と降りかかるのだった……。

 

 私、この作品がツボに入りました。ですので、この作品だけ詳しく感想を書きます。「財閥」「出生の秘密」「復讐」「激しい愛憎」「ラブストーリー」…等々、韓国ドラマっぽい要素が満載です。でも、私、そういうの嫌いじゃないです。

 ラブストーリーというのは、主役二人に好感・共感が持てるかがすべてだと私は思っています。たとえば、前クールの『50分間の恋人』。設定は好みだったのですが、男性主人公の性格設定が一見「傲慢」「上から目線」で(実はその性格の背景がいろいろあるのですが)、そこで私は作品が好きになれませんでした。これは演じる俳優(伊野尾慧)さんとはまったく別の問題です。今回の『10回切って倒れない木はない』はそういう拒否感がありませんでした。志尊淳は、はじめ「顔がいいだけ」の俳優と思っていましたが、その後難しい役を多くこなし、今は「顔だけじゃない」という評価を確立させています。また、私は、仁村 紗和という眉毛の太い女優さんには、今までほとんど関心がありませんでした。しかし、ラブストーリーのヒロインらしくない(フェミニンな感じがしない?)この女優さんを起用したのは面白い配役で、初回を見る限り私はうまくいっていると感じました。

 この作品は秋元康の原案・企画。さすが秋元さん考案の作品は、どれも魅力があります。ただ、設定に惹かれるけれども、後半に展開するにしたがって「あれ、私の好みはそっちじゃないんだけど」と思うことも少なくありません。今回はそうならないことを願います。

 

『GIFT』(TBS系、日曜21時)

 

孤独な天才宇宙物理学者・伍鉄が出会ったのは
“車いすラグビー”の弱小チーム
そこにいたのは様々な障害がある個性豊かな選手たち──

生きるとは何か──闘うとは何か──勝利とは何か──
暗闇を生きてきたすべての人たちへ
神様がくれた
“愛”という名の“ギフト”の物語──

 

宇宙物理学者・伍鉄文人(ごてつ・ふみと)。大学で准教授を務めながら「ブラックホール」の研究をしている伍鉄。天才すぎるが故に悪意なく思ったことを発言してしまうため同業者を傷つけ、まさに「ブラックホール」のように次々と闇に堕としてしまう人物である。自身の興味のある難問を見つけ答えを導き出すことだけを生きがいとしてきた伍鉄が、車いすラグビーチーム「ブレイズブルズ」の練習見学へ。

 

さすが日曜劇場で、配役が豪華です。内容的にもつまらないはずがないとも思います。ただ、日本中で思っていることだと思いますが、宇宙物理学と車いすラグビーを結びつけるのは、かなり無理があるというか、強引すぎるなと感じました。

 

 

『エラー』(テレビ朝日系、日曜22時台)

 

出会うはずのない二人を引き合わせた人生最大の過ち…。
罪悪感と友情の狭間で揺れ動くヒューマンサスペンス!
とある女性を死なせてしまったユメ(畑芽育)と生きる意欲を失ったその女性の娘・未央(志田未来)が真実を知らないまま友情を育む物語である。本来なら心を通わせるはずのない二人が罪と友情の狭間で揺れ動き、取り返しのつかない過ちに向き合う姿を描くヒューマンサスペンスドラマ。

 

母親がビルから飛び降り自殺したら、下にいた無関係の人を巻き添えにしてしまった…という設定がやりきれなくて、見ていてつらすぎました。ここから二人で立ち直っていくのだとは思いますが、今のところ見続けたいという動機が私には見出せませんでした。

 

『タツキ先生は甘すぎる!』(日本テレビ系、土曜21時)

 

フリースクール「ユカナイ」のスタッフ・浮田タツキは、

アートや遊びを通して、子どもたちに寄り添い、

彼らが奥底に閉じ込めた気持ちを見つけていく。

しかし、彼は、どうしてこれほどまでに、子どもに甘すぎるのか……。

増え続ける、不登校の子どもたちといっしょに、

時に笑い、泣き、迷いながらも、

多様化する生き方に希望を見出していく

感動のヒューマンドラマ

 

不登校生徒たちが通うフリースクールの話。私のような旧世代の人間には「甘すぎる」と感じることもあるのですが、それを先回りして「甘すぎる」を前面に打ち出しているところがミソだと思います。ただ、初回だけではまだ「甘すぎる」の背景が十分描かれず、設定だけで見どころが少ない気がしました。不登校を扱った作品としては、遅い時間帯放送の『さくらの親子丼』(2017~2020年)というシリーズ化された名作があったと私は思っています。土曜21時のプライムタイムで描くなら、それを超える作品になってほしいものです。

 

『サバ缶、宇宙へ行く』(フジテレビ系、月曜21時)


教師と高校生が世代を超えて、“宇宙食開発”という大きな夢に挑戦した
奇跡のような実話をもとに描くオリジナルストーリー!

本作は、福井県の水産高校の生徒たちが、世代を超えて“宇宙食開発”という大きな夢に挑戦した奇跡のような実話をもとに、青春感たっぷりに描くオリジナルストーリー。北村演じる新米高校教師の主人公が、生徒たちを見守りながら夢を応援し、ともに伴走する中で、自身も成長していく軌跡を描く。

 

実話であることからも、原作が評判になったことからも期待が持てますが、初回を見る限りは設定で終わっているようで、ややはじめの「つかみ」が足りないように感じました。「連続ドラマは初回が命」くらいに私は思っているので、この期待がしぼまないうちに楽しませてほしいと願っています。

 

『夫婦別姓刑事』(フジテレビ系、火曜21時)

 

物語の前半では、夫婦であることを必死に隠しながらバディ刑事として事件解決に奔走する主人公・四方田誠(佐藤二朗)と、鈴木明日香(橋本愛)、そして沼袋署員の日常をコミカルな会話劇で繰り広げながら、娘との“家族”としての成長も描いていく。
しかしその裏では、ある連続殺人事件が進行していた――。
物語が進むにつれ、その事件は次第に2人の過去や家族をも巻き込む予測不能な展開へと変貌していき、衝撃の結末へと向かう考察型ミステリーの幕が上がる。
コメディーと本格ミステリー、二つ顔を併せ持つ新たな刑事ドラマの誕生に注目いただきたい。

 

「コメディーと本格ミステリー」とのこと。この作品が「本格ミステリー」かどうかはさておき、笑っていいのか泣いていいのか、見ていてちょっと戸惑いました。佐藤二朗のキャラクター全開のコメディー作品かと思って見ていたら、ところどころに重い話、悲痛な話が挟まれています。しかも1話完結ではなく、話がずっと続いていくようです。2種類の楽しみ方があると肯定的に見るか、狙いが分裂してはっきりしないと否定的に見るか、意見が分かれます。私は肯定的に見たいですが、1話完結にしてほしかったなと感じました。

 

『リボーン~最後のヒーロー』(テレビ朝日系、火曜21時)

 

富と名声を極めし上層社会を突き進むIT社長が
借金まみれの下町商店街の青年に!
そこは14年前の真逆の世界…
必ず這い上がって僕を殺した犯人を見つけ出す!
人生をやり直す羽目になった男の
再生《リボーン》の物語が開幕!!

 

冷酷なやりかたのビジネスに徹した経営者が不思議な現象に遭遇して変わっていく、という一種のファンタジー。私はアメリカ映画『天使のくれた時間』(2000年、ニコラス・ケイジ主演)を思い出しました。あるいは、日本のテレビドラマ『こんな恋のはなし』(1997年)にも近いところがあります。いずれも俗っぽいところがありますが、私の好きな作品で、「甘っちょろい話を素直に受け入れられるか」が鍵になります。私の好きな作品に構図が似ているので、この作品にも期待したいと思います。

 

『刑事、ふりだしに戻る』(テレビ東京系、金曜21時)

 

 恋人を亡くして以来やる気を失い、冴えない日々を送っていたアラフォー刑事・百武誠(ひゃくたけまこと)。ある日、凶悪犯を追い詰める中、現場で命を落とした――はずだったが目を覚ますと、そこは10年前の2016年、刑事としてのキャリアをスタートした「ふりだし」の日だった。
 未来が分かる“チート能力”を武器に、1度目の人生とは打って変わって刑事としても大活躍。そして、まだ生きている恋人の命を救おうと大奮闘する。するとその裏にあった警察組織の闇が明らかに…。
 もしも、悲しい運命が変えられないものだとしたら?彼は、今度こそ「人生の主人公」になれるのか? 

 

漫画配信とテレビドラマ放送が併行されるという、テレビ東京の意欲的な試み。その第4作目です。ただ、タイムリープものは近年の流行りの話型で、「またか」という感じがしなくもありません。恋人を撃たれて死なれてしまった刑事が、事件前の10年前に戻ってやり直す……という設定自体は興味深いものなので、従来のタイムリープものとの差異化を見せてくれるのか、今後に注目したいと思います。

 

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 先週は、書いたはずの投稿がアップされていないという失態を演じてしまいました。年齢とともにミスが増えて、お恥ずかしい限りです。

 気を取り直して2回目のテレビドラマ感想を書きます。例によって、青字の部分は番組公式HPのイントロダクションから引用しています。

 

『月夜行路』(日本テレビ系、水曜22時)

 

謎解きを楽しみながら

教科書でおなじみの名作文学から生きるヒントを学べる!

あの日の葛藤、選択、後悔……人生を振り返って

今よりちょっとだけ自分を愛せるようになる

笑って泣ける痛快文学ロードミステリーです。

 

 テレビドラマ研究者であると同時に文学研究者でもある私ですから、まずはこの作品に注目しました。仕事漬けの夫と反抗期の子どもにないがしろにされる主婦・沢辻涼子(麻生久美子)と文学オタクの銀座のバーのママ・野宮ルナ(波留)のコンビで、謎を解決していきます。私は謎解きにはほとんど興味がないので、サブタイトルの「答えは名作の中に」の方に関心を持ちましたが、そこは期待ほどではありませんでした。まあ、文学研究者の期待に応えるほどだったら、一般視聴者にはマニアックすぎるでしょうから、そこはしかたないところです。

 

 

『今夜、秘密のキッチンで(フジテレビ系、木曜22時)

 

「悩みを抱える主婦」×「謎のシェフ」
秘密空間“キッチン”で生まれる“ときめき”
大人のファンタジック・ラブストーリー

 

日常生活に不満を抱える主婦と“秘密”を抱えるイタリアンシェフ。そんな二人が会えるタイミング、それは夜のキッチンという秘密の空間。偶然にも二人の共通点である“料理”が互いを引き寄せ合い、ゆっくりと時間をかけて溶け合い、いつしか惹(ひ)かれ合っていく―。日々、不安な気持ちを抱いていた主人公の人生に“彼”というスパイスが加わり、特別な時間を通して心が癒やされていく。限られた空間と限られた時間の中で、お互いを認め合い、思いを育み合った先に二人の「恋のレシピ」を完成させていく!

 

 原作は黒沢明世の漫画作品。「悩みを抱える主婦」とありますが、そんな生やさしいものではなく、超絶モラハラ夫のためにほとんど心が壊れた女性の話。見ていてこちらがつらくなってしまいました。そこへ現れた「謎のシェフ」は他の人には見えないらしい。ということはファンタジーというかオカルトというか、そっち系の話のようです。「さあ女性の皆さん、この作品で癒されてください」というメッセージが前面に出すぎて、私はちょっと引いてしまいましたが、本当に癒されるならそれは幸せだろうと思います。そういう視聴者が多いことを願っています。

 

『時すでにおスシ!?(TBS系、火曜22時)

 

子育てを終え、久しぶりに訪れた “自分の時間”
戸惑いながらも「自分のため」に第二の人生を歩み始めた
彼女が飛び込んだのは、おスシを学ぶ
“鮨アカデミー”!?
個性的な仲間たちとの出会いに
刺激を受けながら前向きに生きる
笑いあり! ロマンスあり! おスシあり! の
人生応援ドラマ!
この春、新しいことに挑戦するすべての人にエールを送る
ビタミンドラマをお届けします!

 

 初回を見て、ある意味「すかすがしい」「いさぎよい」とさえ思いました。ドラマというのはたいてい「ミステリー」とか、「アクション」とか、「ロマンス」とか、何か味付けをして、視聴者の興味を引こうとするものです。この作品にはそういう「媚び」のようなものがほとんどありません。「今さら自分のために、なんて言われてもどうしていいかわからない」という主婦が寿司職人を目指す……。う~ん、視聴率はとれないだろうなあと思いつつ、この「すがすがしさ」「いさぎよさ」は持ち続けてほしいなあと思いました。

 

『LOVED ONE』(フジテレビ系、水曜22時)


明日、誰の身にも起こりうる「別れ」。そして、そこに残される想い。
『LOVED ONE』は、“法医学”という硬質な題材を通して
人を想う気持ちや、生きていた時間を丁寧にすくい上げ
“死因不明社会”の闇に静かに光を当てる、切なくも優しい物語
“遺された痕跡”を手がかりに、隠された真実とその人が生きた証を解き明かしていく―
新感覚の法医学ヒューマンミステリードラマが
2026年春誕生!


 謎解き作品は、過去に数え切れないほど作られてきました。たいていは刑事や探偵が主役になりますが、それを物理学者にしたり、解剖医にしたりして、多くの謎解き作品を飽きられないように工夫してきました。今回は、「捜査権を持つ法医学者」という設定です。アメリカ帰りの天才法医学者(ディーン・フジオカ)とセンター長の官僚(瀧内公美)がコンビを組むという話です。初回を見る限り、「謎解き」要素とそこから得られた「情」の要素を両方追究しようとしていると感じました。工夫はわかりますが、私はもともと「謎解き」には興味がなく、一方で「情」に訴える部分がこてこてに作られすぎていて、そこで好みが分かれるかなと思いました。

 

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 4月4日(土)に書いたはずのテレビドラマ批評・感想が、なぜかアップされていませんでした。アップされていないだけでなく、保存もされていません。せっかく書いたのにショック! 

 書いたのは『102回目のプロポーズ』『産まない女はダメですか』『風、薫る』の3作品の感想でした。『102回目のプロポーズ』は、期待していないのに見てしまったけど、34年を経て同じことはできないので、どう現代風にアレンジするかが見どころ、ということを書きました。『産まない女はダメですか』は、夫の人物像がまったくの謎で、ほとんどホラーになっている、ということを書きました。『風、薫る』は、悲惨な話も主人公が二人であることもいけなくはないものの、この作品には魅力が感じられない、ということを書きました。かなり覚えてはいるものの、新学期で忙しい時期ですし、思い出してもう一度書き直す余裕がありません。今回はこれで失礼します。

 

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 このブログで何度も書いている断捨離のことを今回も書きます。これまで書いたように、処分しているのは本だけではありませんが、本の中でも冊数・分量が特に多く、また感情的にも処分しにくいのが『明治文学全集』(筑摩書房、全100冊)です。この全集は1960年代から刊行が始まり、完結したのは私の大学院生最後の年、1989年でした。

 私は今では村上春樹研究とテレビドラマ研究を主にしていますが、研究者としては明治文学研究から出発しました。研究者の卵だった大学院生時代に、どうしても必要で無理に購入したのがこの『明治文学全集』でした。無理にというのは費用的にです。大学院生だった私に、当時約30万円の文学全集はきわめて高価でした。それでも明治文学研究を志す者としてどうしても持たなければならないと思い、覚悟して購入したのでした。

 そういう貴重な全集本ですが、今ではジャパンナレッジでのオンライン配信もあり、重くてかさばる100冊全集本は古書店にも引き取ってもらえなくなりました。そうとうな覚悟を持ってこの本を購入した私にとって、「じゃあ古紙回収に」と簡単に割り切れるものではありません。それでもそれをするのが断捨離なので、写真を撮って処分しようと思います。

 ありがとう『明治文学全集』! 私の研究の出発点……。

 

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 映画『五十年目の俺たちの旅』を見てきました。少し前の話ですが、見た場所は吉祥寺の映画館。吉祥寺はテレビドラマ『俺たちの旅』(1975~1976年放送)のメイン舞台になった場所で、映画館には「聖地・吉祥寺」と書かれた主演3人のパネルが飾られていました。私はドラマ研究者、フィクション研究者ですが、今回ばかりは研究視点は外したい気がします。あのドラマの50年後が描かれた…それだけで十分嬉しく思います。

 ちなみに、映画の脚本は、本編シリーズでもメイン脚本を担当した鎌田敏夫でした。映画の脚本も、引き続き88歳になった鎌田敏夫が書いたことを、私は嬉しく思います。鎌田の脚本に不満はあります。価値観が古いと思うこともあります。それでも、本編でメイン脚本家だった鎌田が作品世界の50年後を書くなら、それはそれで受け入れようと思えます。

 ドラマは架空の世界ですが、しかし、架空の世界とわかっていてもそれだけとは割り切れません。まるで生きている人物たちであるかのように、いや生きている人物たち以上に、その人物たちを見守りたいという気持ちが強く湧いてくることがあります。そう思わせてくれるドラマの一つがこの『俺たちの旅』でした。

 『俺たちの旅』は本編シリーズの他に、10年後、20年後、30年後のスペシャル版が放送されました。カースケ(中村雅俊)が外国を飛び回って派手に活躍していたり、オメダ(田中健)が妻の実家の地域で市長になっていたりと、私には不自然に思える展開が多々ありました。それでも、この50年後を見て、その不自然もありだったなと思えました。カースケは結局町工場の熱血社長になっていましたし、オメダは市長から知事にも手が届くのにそれを捨ててかつて住んだ思い出の家に戻ります。50年後にそこにたどり着くなら、それまでのあちこちは許せる気持ちになりました。

 特にオメダ。心やさしいけど気の弱いオメダが市長になるのは、いくら妻の実家の地盤を継いだからといっても、自然な展開とは思えませんでした。しかし、人生の終りが近づいてきたときに、地位や名誉を捨ててでもかつて住んでいた家、亡き母親と妹と暮らした思い出の家に戻ることを選ぶというのは、いかにもオメダらしい選択といえます。

 そう考えてみると、『俺たちの旅』本編以降の主役はオメダだったのではないかという気がします。「人生は楽しいものだ」といつも堂々と主張するカースケよりも、50年間一貫してグズなのに女性にもてるグズ六(秋野太作)よりも、常に迷いながら、ためらいながら、時には引きこもったり家出したりしたりするオメダに、この作品らしさがより多く詰まっているように感じました。

 この『五十年目の俺たちの旅』という映画。作品としては、序盤のサスペンス調の要素やカースケの工場の話が、作品内で回収されず、十分には活かされていないような気がしました。過去の映像が整理されないままに挿入されすぎているようにも感じました。いくつか不満はありますが、そんなことはとりあえず横に置いておきましょう。またこの世界に戻って来られた。それで十分ではないでしょうか。

 

追記

私は『俺たちの旅 十年目の再会』でオメダと短期間暮らした女性(永島暎子)とその子・克史の印象が強く残っていました。この母子は『俺たちの旅 三十年目の運命』で再登場し、その時克史は難病で長期入院中でした。オメダは市長選挙への悪影響を懸念する周囲の意見を振り払い、母子を援助します。その克史が『五十年目の俺たちの旅』に再々登場しました。まだ映画を見ていない方のために内容は伏せますが、私はその場面が『五十年目の俺たちの旅』でもっとも印象に残る場面でした。

 

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