現在、身辺整理を心がけています。

 …と言い始めて数年経ちますが、仕事をしながらなので、断捨離を徹底できていません。なので「再び」なのです。2023年頃に、持っている本を千冊以上処分しましたが、まだまだ持ち物が多く、今はまた本を追加処分しています。たとえば、写真の『日本近代文学大事典』や角川書店の『日本近代文学大系』などを処分しました。

 そこに共通するのは、知識を本に頼っていた時代が終わったという変化なのかもしれません。私は日本近代文学、中でも特に古い明治期の小説研究から出発しました。その私にとって、『日本近代文学大事典』や『日本近代文学大系』は、なくてもならない本でした。作家名や作品名だけではなく、雑誌名やその解説などを含め、まずは大事典にかなり助けられました。「何かを調べるときにまず最初に大事典を引いてから」ということが多くありました。また、角川書店の『日本近代文学大系』の特徴は、文学作品に関する詳細な注釈が載っていること。近代文学の中でも古典といわれる坪内逍遥や樋口一葉など明治期の作品を研究するのに、まずは体系の注釈にあたり、何がこれまでの基本の読み方なのかを確認してから自分の姿勢を考えていました。

 しかしながら、大事典も体系も、この10年以上開いていません。私が明治期の小説研究に区切りをつけたこともありますが、各種の検索データが蓄積され、知識を本に頼るというあり方自体が変わりました。そのため、こうした大部な書物を用いる必要がほとんどなくなってしまったのです。

 もはや研究のあり方が変わり、こうした書物を用いなくなりました。それでも、かつて重視していた書物を処分するのは、気持ちの上でとてもつらいものがあります。せめて写真を撮って、自分の記録には残しておくことにしました。『日本近代文学大事典』と『日本近代文学大系』にはお世話になりました。ありがとうございました。

 

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 大河ドラマ『豊臣兄弟』には注目していますが、特に前回第5回(2月1日放送)における三英傑(織田信長・豊臣秀吉・徳川家康)の描き方には興味深いものがありました。三英傑といえばホトトギスにちなんだ逸話が有名ですが、『豊臣兄弟』第5回では、脚本家・八津弘幸が三英傑をどう描きたいのかが明快に示されていました。

 この回では、御前試合に出る藤吉郎(秀吉)が事前に細工をして、弱い相手とばかり対戦するように仕組んだことが描かれます。そこでまずは織田信長。信長は不正な工作をした藤吉郎をとがめるのではなく、その工作力を認めて敵方武将を調略するよう命じます。これによって、信長がカリスマ的暴君でありながら、身分や表面的な基準にこだわらない、実利を追求する現実主義者であることが描かれます。次に徳川家康。藤吉郎が家康に「出世する秘訣」を教示してほしいと願い出ると、家康は思っていることと正反対のことを藤吉郎に話します。「すべて逆のことを言うてやったわ」「織田の下侍になんでわしの考えを教えねばならぬ」と吐き捨てる家康は、心の底を簡単には見せない策略家として描かれています。

 最後に藤吉郎は、家康の言葉を真に受けて、「信長を信じて誠を尽くそう」とします。それは家康の本心とは正反対のことなのですが、藤吉郎は弟の小一郎とともに誠意を尽くし、敵方武将の心をつかみます。これによって、脚本家が藤吉郎(秀吉)を、人の心をつかむのに長けた、生まれながらの人たらしであると描こうとしていることがわかります。

 ドラマで人物を描くにはさまざまな方法があります。一番稚拙なのは「〇〇は△△な人だ」と言葉で言ってしまうことです。そうならないように人物の言動から人物像を描き出すのですが、『豊臣兄弟』第5回は見事に三英傑の人物像を一連のエピソードを通じて描き出していました。

 フィクション作品のエッセンスは、こういった人物像の描き方に込められていることがよくあります。そういうところにも注目して、今後もドラマを見ていきたいと思います。

 

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 私の勤務する大学・学部の卒業論文提出期限は12月中旬。ということは、私たち教員は、年末年始にその論文を読んでいるということです。すなわち、年末年始に休みがないということです。そして、年が明けると口述試験をおこない、評価をし、評価コメントを書き、ようやく今に至っています。

 なお、私のゼミの4年生17人の卒業論文テーマは下記のようなものでした。


松本隆「風街」論――〈記憶の中にある街〉の変遷
森田宏幸『猫の恩返し』論
『フェイクスピア』から見る野田秀樹作家論
宮部みゆき『ここはボツコニアン』にみる少年少女の越境性
小島信夫『微笑』論
『フルーツバスケット』論――二度のアニメ化を時代とジェンダーの観点から読み解く――
テレビドラマ「東京ラブストーリー」論
『メタファー』からみるゲームシナリオの持つ新たな文学性
宮崎駿『風立ちぬ』論
日本語ロック黎明期におけるデカダンスの詩学――ジャックス『ジャックスの世界』を中心に
宮崎駿『君たちはどう生きるか』論――自伝的ファンタジーが伝えたもの――
『クレヨンしんちゃん』論――理想像の受容――
湊かなえ『絶唱』論
 空間の変貌――鴨崎暖炉作品にみる現代密室トリックの真価――
宮藤官九郎と震災――「あまちゃん」を契機に考える――
井伏鱒二「山椒魚」における〈捕食/被食〉の関係性
諫山創『進撃の巨人』論

 

 私が勤務校に赴任してから36年。初期は文学作品ばかりの卒業論文テーマでした。その後、私自身がテレビドラマ研究にも力を入れていったため、学生にも文学作品以外の卒業論文テーマを許容するようになりました。すると、テレビドラマや映画だけではなく、漫画・アニメなど多様なテーマが選ばれていきました。今年などは、文学作品以外のテーマの比率が大きく上回っています。

 ほとんどの学生にとって、論文を書くのは一生に一度のこと。できるなら、学生個人個人の好きな作品、好きなテーマで卒論を書かせてあげたいと思っています。もちろん、その作品が好きだというだけでは論文は書けません。また、研究者としてプロを目指すというなら話は別で、助言のしかたが変わってきますが、そうでない限りは、したいことを思う存分するのもよいでしょう。それが研究という評価軸・評価座標で高く位置づけられるとは限りませんが、自分の本当に好きな作品に懸命に取り組んだという経験は、必ずその学生の将来に役立つものと思います。

 卒業論文制作に懸命に取り組んだ学生の皆さんのこれからが、豊かなものであることを心から願っています。

 

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 1~3月期のテレビドラマ、いわゆる冬ドラマの感想を書く3回目です。作品数が多いので、まだ書いていない作品のうちから数本選んで感想を書きます。例によって青字の部分は番組公式HPのイントロダクション文からとりました。

 

 

『リブート』(TBS系、日曜21時)

 

妻の死と共に平和な日常は一変した
妻殺しの罪を着せられた平凡なパティシエは、愛する家族を守るために
事件を捜査している刑事に“顔を変える=リブート(再起動)”
そして、真実を追い求める——

大切な人への“愛のために”運命に抗い続けるダークヒーローが誕生!
嘘と真実が入り乱れ、日曜劇場史上類を見ない怒涛のスピードで展開していく
“エクストリームファミリーサスペンス”が2026年開幕!

 

 番組公式HPのイントロダクション文はもっと長くて、どこをとっていいのかわからないくらいです。イントロダクション文が長いというのは、つまり話が複雑で一言ではいえないということです。要するに顔を変えて別人になる話ですが、私はイントロダクション文を読んで、なんだかよく理解できませんでした。第1話を見てようやくわかりましたが、それにしてもすごい話です。妻を殺した犯人という疑いをかけられた平凡な男性が、自分の捜査をしていた死んだ刑事に顔を変えてなりすます、という話です。鈴木亮平が、死んだ刑事となりすました男の二役をするのだと、やっとわかりました。フィクション作品ですから「現実にあり得ない」という批判はやめておきます。とはいえ「なんでもあり」のような作品で、早くもSNS上で視聴者の考察が繰り広げられています。私は犯罪の動機にこそ本当のドラマがあると思っている人間なので、制作者のしかけた謎をSNS上で考察合戦するような楽しみ方にはあまり興味が持てません。考察合戦好きの皆さんにお任せしたいと思います。

 

『パンチドランクウーマン』(日本テレビ系、日曜22時半)

 

女刑務官はなぜ、道を踏み外したのか。

あなたと一緒なら、地獄に堕ちても構わない。

 

 日本のテレビドラマは軽めの作品が多いのですが、前述の『リブート』といい、この『パンチドランクウーマン』といい、かなり重いです。拘置所に努める、規則に厳しい無感情な女性刑務官が、なぜか道を踏み外して男性容疑者を脱読させる話のようです。韓国ドラマ風といってもいいかもしれません。「脱獄まであと××日」というサブタイトルがあるように、女性刑務官と男性容疑者の脱獄が先に示されていて、そこに至る過程をまずは前半の見どころにしているようです。う~ん、「イケメンとなら一緒に破滅してもいいわ」という女性の潜在願望を集約しているという目論見なのでしょうか。私には破滅願望がないので、すみませんが、そのパッションを共有することができませんでした。

 

『ラムネモンキー』(フジテレビ系、水曜22時)

 

コンフィデンスマンJP』、『リーガルハイ』の古沢良太、最新作が開幕!
反町隆史×大森南朋×津田健次郎。初トリプル主演で挑む熱血コメディ!?
記憶の断片に潜む失踪事件の謎が、3人の大人を再起動!?情熱を取り戻せ!

 

 イントロダクション文を読んでもどんな話なのかよくわかりませんし、そもそもタイトルからしてなんのことが理解できませんでした。第1話を見たところ、かつての同級生の中年男性3人が過去の出来事の謎を解き明かしていく設定で、イントロダクション文には、「1988青春回収ヒューマンコメディ」「ミステリー要素もプラス!?」ともありました。

 私は回顧的な設定、ノスタルジー色を持った作品は以前から好きです。そうなんですが、「ヒューマン」で「コメディ

で「ミステリー」ですか……。ちょっと詰め込みすぎに感じますし、「ノスタルジー」の雰囲気は少ないので、あまり私の好みではありません。ただし、「昭和ネタ」「おじさんいじり」の部分は、けっこう笑えて共感もさせてもらいました。

 

『50分間の恋人』(TBS系、日曜22時台)

 

AIだけが親友の変わり者イケメン×仕事に夢中な堅実女子

チグハグな二人のズレきゅんラブコメディ

お弁当をきっかけに心通わせるも、

実はライバル会社の社員だった!

バレたらクビ?突如二人は秘密の関係に……

 

 ラブコメはわりと好きなのですが、これはまた「なつかしさ」満載のオールドファッションなラブコメで来ましたね、というのが第一印象です。「男は高圧的、女はけなげ」「男は仕事ができる、女は料理上手」「偶然の最悪な出会いから少しずつ理解しあっていく男女」と3拍子そろったオールドファッションな設定です。さらには「仇同士の家・組織に属する男女の恋愛」というロミオとジュリエット的な設定まで加わっています。これはもう、前世紀までの遺産を全力で継承するかのような、一周回って超意欲的な作品なのかもしれません。どこまで遺産を継承するのか、いっそ見届けてやりたいという願望が沸いてきました。

 

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 1~3月期のテレビドラマへの感想・2回目です。先週以降、今クールドラマが続々と始まっています。数が多いので、プライムタイム作品から書いていきます。例によって、青字の部分は、番組HPのイントロダクション文から抜粋しています。

 

『パンダより恋が苦手な私たち』(日本テレビ系、土曜21時)

 

令和に生きる私たちが抱える悩みを

”動物の求愛行動”から解決していく

かつてないエンタメドラマが開幕!

 

笑って、泣いて、前を向く

新感覚アカデミック・ラブコメディです!

 

 恋愛コラムを担当することになった雑誌編集者(上白石萌歌)が、変わり者の動物学者(生田斗真)のアドバイスで恋愛コラムを書いていく話。初回を見る限り、設定にも展開にもあまり興味が持てませんでした。しかしながら、最後にコラムの音読を聞かされてびっくり!このコラムはたしかによく出来ています。まったく相容れないはずの動物の求愛行動を視座にすることによって、人間の恋愛を考え直し、それまで悩み迷っていたことに新たな可能性を見出します。私にはそこが最大の見どころでした。

 ところで、大学の教員がフィクションに登場するときは、だいたい「変人」扱いなんですね。当たっていないともいえませんが、それってひと昔前の大学人じゃないかなぁ。今の大学は「変人」で通用するような場所ではないですからね。

 

『再会』(テレビ朝日系、火曜21時)

 

23年ぶりに再会した初恋の相手は

殺人事件の容疑者だった!

 

宿命的な再会から始まる

この冬一番切ない

ヒューマンラブストーリーが開幕

 

 よくあるミステリードラマかと思いましたが、初回を見るとかなりエモーショナルです。なるほど謳い文句は「ヒューマンラブストーリー」ですか。通常ミステリーでは、謎を解く側には犯罪への強い感情的なかかわりがありません。警察や探偵が謎を解く側であれば、それは職業としての謎解きです。ところがこの作品では、刑事と容疑者が幼なじみであるため、そこに強い感情の振幅が感じられます。私はミステリードラマをあまり好みませんが、主人公と容疑者の心のドラマとしてなら、見続けてみてもいいかな、と思いながら初回を見終えました。

 

『ヤンドク!』(フジテレビ系、月曜21時)

 

ヤンキーが友人の死をきっかけに

猛勉強を経て脳神経外科医に!

元ヤンドクターが

縦割り組織な医療現場に新風を巻き起こす!

 

 橋本環奈主演であることから、近年の主演作『おむすび』のギャル役と結びつけるコメントもSNSにかなり書かれています。それももちろん連想しますが、主人公のキャラクターから、私は『ごくせん』を思い出しました。

 こうした作品では、主人公のヤンキーぶりと周囲が対照的であることが望まれます。今作でいえば、病院が体制的・閉鎖的であるほど、主人公のヤンキーぶりが際立つというわけです。それは『ごくせん』も同じでした。しかしながら、私も組織に属する人間ですから、体制的な病院側の論理もわからなくはありません。主人公の熱心すぎる患者思いは美しいとは思いますが、教師に無限の愛と奉仕が必要だと謳った『金八先生』の世界に通じます。それがブラック企業としての学校の温床になったというのは『御上先生』で描かれたこと。私には、こうした熱心さは無謀であることと表裏一体に映り、いまひとつ共感できませんでした。

 

『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系、水曜22時)

 

主演・杉咲花×監督/脚本・今泉力哉のタッグで送る

考えすぎてしまう人のための

ラブストーリー

 

 近年はどのテレビドラマを見ても、「ああ、あの作品に似ているなあ」と思ってしまうのですが、久々に「見たことない」ドラマに出会いました。45分ほどの放送時間の中に場面が3つほどしかなく、その場面内が登場人物ほぼ2人だけの会話劇になっています。「テレビドラマは見せるもの」というのが基本にあえいます。なので場面内で話すだけ、というのはおよそテレビ的ではないのですが、あえてその原則を破っています。しかも、主人公にも他の人物にも、あまり感情移入や共感ができそうもありません。「なんか不思議なものを見せられた、でもつまらなくはなくてつい見てしまう…」というのが正直な感想です。

 

『未来のムスコ』(TBS系、火曜22時)

 

恋も仕事も夢も行き詰まった
アラサー女性のもとに
突然現れたのは“未来のムスコ”
恋人いない歴10年の私が─母親に・・・!?
未来から来た息子が巻き起こす
時を超えたラブストーリー!

 

 テレビドラマというのは、初回放送を見れば、何がしたいのか/何をねらっているのか、だいたいわかるものです。今までわからなかったのは『家政婦のミタ』くらいでしょうか。ところがこの作品は、初回を見てもよくわかりませんでした。イントロダクションを見ると「時を超えたラブストーリー!」だったんだ!う~ん、そうは思いませんでした。むしろ、テレビドラマ史の中では『彼女たちの時代』『ハケンの品格』『私の家政夫ナギサさん』のような、「女性の生き方」ジャンルのドラマなのかと思って初回を見ました。これからラブストーリーになっていくのでしょうか。

 

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