<機密文書持ち出しの容疑でトランプの邸宅を家宅捜索したFBIの行動は、トランプ支持層の結束をもたらし、トランプ次期大統への道を拓くかもしれない>
ここ数カ月、ドナルド・トランプ前大統領が、2024年の大統領選挙で立候補する可能性を示唆する報道が活発化している。FBIは8月8日にフロリダ州パームビーチにあるトランプの邸宅「マールアラーゴ」を家宅捜索したが、これはトランプに、大統領選出馬を発表する格好の舞台を提供することになるかもしれない。【動画】FBIの手入れを知ってマールアラーゴに集まったトランプ支持者たちトランプ邸から押収された資料から何が出てくるかを国民が注目するなか、専門家は、今回の家宅捜索はトランプにとってあながち悪いことばかりではないだろうと予測する。大統領選への出馬を発表する時期をうかがっている候補者にとって、FBIの捜索は助けになるかもしれないのだ。ヒューストン大学のブランドン・ロティングハウス教授(政治学)は、「トランプの支持者はトランプに忠実で、不平不満ではちきれそうになっている。FBIの手入れは、支持者を政治的熱狂に導く最適なイベントだ」と本誌に語った。トランプ邸の家宅捜索が行われた8日、トランプ邸の周辺は大騒ぎになり、彼の支持者と仲間はトランプの味方として結束し、連邦の法執行機関に対して怒りを表明した。「トランプを支持し、連邦政府による『行き過ぎ』に反対する右派の反応の激しさと素早さは、たいしたものだ」イギリスのジャーナリスト、ジョン・ソペルはこうツイートした。「トランプにとって、ホワイトハウスを去って以来最高の日だ」「不当な迫害」のイメージトランプは家宅捜索を確認し、これをウォーターゲート事件と比較した声明を出し、「検察の不正行為、司法制度の武器化、そして私が2024年の大統領選に立候補しないことを望む急進左派民主党による攻撃だ」と語った。今回の家宅捜索とそれに対するトランプの対応は、2016年の選挙戦での成功を有権者に思い出させる形になった。当時の選挙運動でトランプは「勝ち目のない戦いに挑むファイター」というイメージを打ち出していた、とロティングハウスは言う。FBIの捜索を政治のせいにすることで、トランプは過去6年間に築き上げた「障害を取り除いて問題を解決する」アウトサイダーというイメージを強化することができるだろう。民主党の元大統領候補アンドリュー・ヤンは8月9日、トランプ前大統領と「腐敗した政府の体制」を対置することが、トランプのアピールの「基本的な」部分だとツイートした。「今回の家宅捜索で、これをトランプに対する不当な迫害と見る何百万人ものアメリカ人の確信が強化される」と、ヤンは指摘した。ロティングハウスは、今回の家宅捜索は、トランプを支持する人々を熱狂させる可能性が高いが、FBIに対するトランプの反撃が「より広い有権者層の動きに影響する可能性は低い」と述べた。
捜索の成果がカギ
何があってもトランプの味方をすることで知られるトランプの支持層は、2024年の大統領選で共和党候補になる人物にとって「献身的」で「活発」な大事な支持層だ。だが、次の大統領選で重要な共和党支持者は彼らだけではない、とロティングハウスは言う。「共和党の他の活動家の一部は、特にトランプが家宅捜索を受けたことから、トランプよりも他の候補を好むかもしれない。強硬なトランプ支持者以外の共和党員の多くは、捜索の影響の重大さを考慮し、トランプを支持することについて、いくらか慎重になるだろう」共和党の戦略担当者ジェイ・タウンゼントは本誌に対し、FBIの捜査についてはまだ不明な点が多いが、クリストファー・レイFBI長官は2017年にトランプに指名され、共和党が多数派の上院で賛成多数で承認された人物であることに留意すべきだと語った。「今大騒ぎしているのは、2020年1月6日の米議会襲撃事件を調査する下院特別委員会は新事実など見つけられないと断言していた連中だ」と、タウンゼントは言う。「FBIが何を探していたのか、何が見つかったのか、それが何を証明するのか、もっと明らかになるまでは、この捜索がもたらす政治的な影響を推測するのは難しい」共和党の戦略家アレックス・パットンは本誌に、今後24時間が「正念場」になると語った。FBIの捜索で何も見つからなければ、トランプにとって朗報となり、みずからを弁護するうえでさらに有利になる可能性がある。