『たまって箱』 | さらばうさこキティミュージカル〜ダンスはスンダ 一期一会 最後の聖戦編〜

『たまって箱』

ムニャムニャムニャ……



ムニャムニャ……





ハッ………


いつのまにか寝ちゃってた。



どのくらい寝てたのかな?


ちょっとおなかすいたな。


何か食べるものないかな?









ん………









あれっ?









ちょっと………








ここ、どこ???















えっと……たしか……



















海っ!!
そうだ、海っ!!





砂浜で

遠くからやって来るやつと
こっちから遠くへ帰っていくやつを

かわりばんこに
かわりばんこに

ずっと見てた。




あんなに広くて、
でっかくて、
永遠にあるって、
いつまでもあるって、

そう思ってたのに……











水が一滴もない。











こんなことってある?












そういえば、

反対側に見えてる一本松さんも、
ひまわり畑のひまわりさんたちも、

なんだか元気がないなぁ…





いったいどうしちゃったんだろう?















ん?






何だろ、この箱?










中は………























からっぽで何も入ってないや……











ん~……









思い出せ……

想い出せ……

重い出せ……


























ハッ……

そういえば!!






僕には、すごく大事な人がいたんだ。

その人からこの箱をもらったんだ。

すごくあったかくて、
ふわふわで、
春のお日様みたいなあの感覚。







あれ?


でも、なんか痛い……



なんでだろ……
想い出そうとすると、
胸の左奥の方がチクッてなる。。。





へんなの?








あぁ…でも、

ずっと

ずっと

ずっと

ずっと

1日25時間、その人のことばかり考えてた気がする。




寝ても覚めても

ずっと……

ずっと……











あれ?





でも、あんなに考えていたのに……





肝心なあの人のことは……









何だか、よく想い出せないなぁ………













そうだ……




ちょっと、歩いてみよう。



何か、想い出せるかもしれないし。















てくてく………
てくてく………





あっ、
この公園、見覚えがある!!


あのすべり台。
あのブランコ。


あの人の髪のにほひが
風にながれてた……














てくてく………
てくてく………





あっ、
この動物園、見覚えがある!!


あのペンギンさん。
あのシロクマさん。


あの人の優しい笑顔につられて、
みんな笑ってた…














てくてく………
てくてく………





あっ、
このクレープ屋さん、見覚えがある!!



あのイチゴがいっぱいのったやつ。
あのアイスにチョコがたっぷりかかったやつ。

あの人のはしゃぐ声に
とろけて一緒に躍ってた…








あれ?


雨かな?



何だか雫が溢れてきて

止まらないや……







いたいキモチ半分。
ぬくいキモチ半分。





どうすれば止むのかな?

どうすれば虹がかかるかな?








あっ、そうだ!!



あの箱。





なんかちょっと想い出せるかも?











ポツ…ポツ……


ポツ…ポツ……





箱の中に雫がたまってく。








ピチョン…ピチョン……


ピチョン…ピチョン……





雫と滴がくっついて
箱のキモチが溢れてく。






箱の中を雫と滴が埋めつくすのは
そんなに時間はかからない。










あれ?



これ、誰だろう?


知らない人が、箱の中にいる。




箱の中の鏡のように透き通った水面には、誰かが写り込んでいる。








この人……




泣いてる。








どうかしたんですか?




何かあったんですか?






…………………………








あれ?
おかしいな?



向こうの人も
同じ質問してくる。





なんか向こうの人見てたら、
僕もつられていつのまにか泣い…て………







あっ………















気がついた


想い出した


知らされた












そっか………














これは

僕なんだな。













ずっと目をそらしてた

ずっと見ないふりしてた

ずっと感じなかった

ずっと閉ざしてた

ずっと耳をふさいでた

ずっと呼吸の仕方を忘れてた

ずっと受信しなかった








でも…













『僕はまだ泣ける。
生きているんだな。』