『恋に魔法はいらない』① | さらばうさこキティミュージカル〜ダンスはスンダ 一期一会 最後の聖戦編〜

『恋に魔法はいらない』①

むかし むかし
それはまだ、人間界と魔法界が、お互いに交流をもっていた頃のお話です。


とある、小さな小さな小川に一本の橋がかかっている。その橋のすぐ下で、一生懸命何やら真剣な面持ちの少女が、一人で呪文を唱えている。
ピクル・6歳・魔法少女である。

『らっぴん ぽっぷん じゅてら~み☆』

………し~~ん………

汗が頬をつたう。
ピクルはやけになって

『らっぴん ぽっぷん じゅてら~み!!』

すると、ボロボロのやかんが ポンっ と現れる。

『あっ………』

口が開いたままぼーぜんのピクル。
が、視線を感じ、ゆっくりと瞳を持ち上げると、一人の少年と目が合った。
ひろし・7歳・小学2年である。 橋の欄干に頬杖をつき、ただただ事の成り行きを見守っている。

動かない二人――――

今のは失敗ではないと、ごまかすようにとりつくろう。

『あは…あははははは………お湯でも沸かそうっかなぁ……』

『…………………』

タラッυ(=_=;)

顔を赤らめ、うつむきかげんでやかんに手を伸ばすが、ピクルの魔法で出したやかんはボロボロで、取っ手を掴んだとたんもろくも崩れ去った。

『あっ………(゜-゜)υ』

虚しくも、ピクルの手に残った物はやかんの取っ手だけ。 カランコロンと、おんぼろのやかんまでもが、ピクルをバカにしたように笑い転げる。

『あははははは。』

照れ隠しにおもいっきり明るく笑ってみせるピクル。

『………………』

ひろしの視線が痛ひ。

『υ…はぁ……』

ピクルは肩を落とし、真っ赤な顔を隠すようにその場を立ち去った。

―つづく―