遥かなる旅の始まり   (江戸  水戸)

  (ナレーション)
江戸への出張の夜 飲み代を支払う事が出来ず 帰りの 陸蒸気 の切符をも換金した 

うさ助三郎 と うっかりれおん 
水戸まで歩いて帰る事になり おまけに路銀も無く 道端の草を食する事になりました が

艶姫    おー ここが 浅草寺 であるか


源三    姫 大きな ちょうちん がぶら下っていますよ


艶姫    まねした電器  おーちゃんと名も入っとるわ

寅やん   よー そこの お姉ちゃん ちょっと寄って行っておくんなましい

艶姫    そこのテキ屋 わらわに何か用か


源三    姫 その言葉じゃ 一般人から怪しまれますよ
 
寅やん    さくら 兄ちゃんはねぇ

源三    ただの アホでしょ

寅やん   おっと そこの うさぎさん  それを言っちゃぁあ おしめぇだよ

艶姫    先を急ぐんでな では さらばじゃぁ


役人1   おー やっと東京  もとい 江戸に着いたわい


役人3   もう 2等車 おまけに急行の旅はこりごりじゃ


役人1   くそったれ 源三さえ島抜けせねば こんなエライ旅 せんで済んだんじゃ


役人3   役人2号も 汽車に踏み潰されんでも良かったものを


役人1   とにかく 先を急ぐぞ


6号線 もとい 水戸街道をテクテクと歩く アホウの二人連れ
 
れおん   助さん まだ荒川越えたとこですやん


うさ      そろそろ 柴又の帝釈天前じゃのう


れおん   でも 寄ったところで団子の一本も買えませんよ


うさ      寅とか言う奴 情けに弱いらしいのう


れおん   でも 今日は浅草寺で商売してる日ですよ


うさ      ついておらんのう そこの河川敷で つくし でも食そうか

  (ナレーション)
江戸より茨城へ 松戸 柏 あびこ を過ぎ
水戸街道を一路 水戸へと歩を早める 三組の二人連れ
そして 利根川を渡らんとする大利根橋で事態は動いたのです

 
 

 

 

 


役人1   おう もう利根川ではないか チト休んで行こうか


役人3   今日はポカポカ陽気 そこの川原で昼寝もよいぞ


役人1   そうじゃのう 昨晩は どえりゃい目に遭ったからのう


役人3   おみゃぁ 尾張 の出身かいの


役人1   あんにゃぁ あだずは 広島 だぁ


役人3   もう よいわ 頭が変になりそうじゃぁ


役人1   アホにアホ 言われるもんの身にもなってみぃ



源三    さぁ 姫 早く参りましょう 間もなく利根川にて御座います 


艶姫    そうじゃのう源三 水戸は直ぐそばじゃのう



うさ      れおん どうじゃ 街道てくてく旅 もよかろう


れおん   そんなん 路銀あっての話ですやん


うさ      文句を言うな 武士は喰わねど高楊枝 と言うではないか


れおん   自分は町人であります


うさ      勝手な奴じゃのう 武家と言ったり 町人と言ったり どっちじゃ はっきりせい

 


役人1   おい 見てみろ あの二人連れ


役人3   艶姫 と 源三 ではないか


役人1   ここであったが百年目 行くぞ3号

源三    さぁ 大利根橋です 早く渡りましょう


艶姫    利根の川原の 大利根月夜 っとくらー


源三    姫 呑気になんちゅう歌 歌ってますのん

役人1   待てい そこの二人連れ


役人3   源三だな ここで会ったが百年振り


源三    すんまへん わし ボス 言いまんねん 源三とちゃいまっせ


艶姫    そちは 源三ではないか 嘘はいかんぞ


役人1   間抜け な姫よ 自分で身元を明かしよって


源三    ありゃぁ 姫 バカ正直に 何と言う事を

艶姫    こりゃぁ 源三 姫に向かって バカ とは何事じゃぁ

役人3   バカ もここまで来ると国宝級じゃのう


役人1   源三 おとなしくお縄を頂戴するんじゃぁ


役人3   さあ 姫もいらぬ おせっかいを焼かずに帰るのじゃ

源三    嫌じゃぁ わしはじぇったいに捕まらんぞ


艶姫    無礼なっ その手を離すんじゃ

役人1   おのれ 大人しくしておれば 手こずらせやがって


役人3   ええーい こうなりゃ 力づくよ

源三    えーい 止めれ 止めるんじゃぁ 手を離すんじゃぁ


艶姫    こりゃぁ どさくさに何処を触っておるんじゃぁ


源三    離せー 離すんじゃー やめれー


艶姫    誰かー 誰か おらぬか 痴漢じゃぁ

れおん    助さん いま女の叫び声が聞こえませんでした


うさ      おう そう言えば 

  
              あーーー  あの橋の上じゃ


れおん   早く 行きましょう

うさ      こらー そこの二人組み 白昼堂々と何をしとるんじゃぁ


源三    そこの お武家様 お助け下さい


艶姫    おい そこのロップイヤー 早くわらわを助けるのじゃ

れおん    何ですのん この姉ちゃん人に物を頼む頼み方 知りませんやん 


うさ      そうやのう 腹も減ってるし 行こか  ほな しゃいなら

源三    姫 物には頼み方ってあるんですよ お願いしますよ

艶姫    しようがないのう ほな頼むとするか


           そこの お武家様 お願いです どうぞお助け下さいまし

れおん    助さん どうします


うさ     代も武士じゃ  儀を見てせずは 勇 無き也  と言うでのう


れおん   じゃぁ 助さん 一丁もんでやりますか


うさ     そうじゃのう それっ 姫 パフパフじゃぁ

艶姫    こりゃぁ どさくさに紛れて気持ち良くなる事をするでない

うさ      そこの狼藉者 水戸藩 指南役


             佐々木助三郎 こと うさ助三郎が成敗いたす

れおん   指南役? 助さん いつからそんなに偉なりましたん


               確か 御老公 と同じ 宴会役 のはずじゃ


           それと こと は止めなはれ 不法滞の三国人みたいですよ

うさ      れおん 内幕をバラすでない このうっかり者が  アホー

れおん    こりゃぁ 爆弾 何べん言わすんじゃぁ


                アホ に アホ 言うなー  アホー 

うさ      先にお前から成敗してくれるは   どっかーーーーーーん

源三    うわっ 何と言う事を 

うさ      よっしゃぁ 次は お前等じゃぁ 地獄を見てまいれ

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

役人1   ま ま  待ってくれ ほれ銭なら渡す 命ばかりは


役人3   くっそー 源三めが 目の前にしながら


役人1   源三 艶姫 覚えておれよ


役人3   刺客は わしらだけでは 無いでの 


               生きて 大久野島 へ帰れると思うなよ 

うさ     命だけは 助けてやるゆえ はよう立ち去れ

艶姫    佐々木殿 確か 水戸藩のお侍さんだと


うさ     いかにも 水戸藩宴会方 佐々木うさ助三郎 と申す

源三    姫 これは天の助けで御座いますよ


艶姫    ところで 佐々木殿 水戸の御老公様 にお会いしとうござるが

れおん   うさ子 はんでっしゃろ いつでも会えまっせ


うさ     して 御老公に何の御用でござるか まさか酒席のお誘いとか


れおん    助さん 今までの話だと もめ事ばかりですやん


うさ     そうじゃのう 何で日本全国から厄介な話を水戸まで持ってくるんかいのう 


れおん   そのかわり 日本中を旅して美味しい物にもありつけますやん


うさ      そうであったのう これで給金も貰えるしのう


れおん   蝦夷に行った時の 出張手当 凄い額でしたよ


うさ     そうじゃのう 悪い事も無いわいのう


れおん   今回は 広島みたいですよ


うさ     と 言う事は 瀬戸内の魚 に 広島の酒 旨いらしいでな


れおん   三原の タコの山葵和え 絶品らしいですよ


うさ      あいやー 判った そこの二人 かなり子細があるとみえる


            御老公 の下へお連れもうす  して 相談事とはいかような

艶姫    じつは カクカクカク  シカシカシカ  と言う事でな

うさ      何ー 幕府援助金で私腹を肥やしておるとな

源三    これが証拠の録音にて御座います

うさ      おのれー 鈴木芸予之守 許してはおけぬ

れおん    助さん 一刻も早く 御老公にお伝えせねば 

御老公に事の子細をお伝えするべく 水戸街道を急ぐ が

うさ      ちょ ちょ ちょっと待たれい


艶姫    いかがなされた 佐々木殿


うさ      実は 腹が減ってのう もうダメじゃ


源三    姫 そういえば我らも まだでありましたよ


れおん   今日は つくし しか食べていませんものね


うさ      そうじゃ 先ほど 役人共が寄付してくれた金子があったのう


れおん   うわっ 大金ですやん


艶姫    しかし 元はと言えば 横領した金であろうぞ


うさ      横領金を使ったとあれば 同罪になるしのう


源三    きっと 給料として貰った金の一部分ですよ


うさ      そうじゃ そうじゃ 使てまえじゃ

れおん   ここ土浦にも まる屁 の 暖簾が出ていますよ 助さん


艶姫    まる屁 といえば 南氷洋で鯨を獲っている そうな

はな     いらっしゃいませ ようこそ 我が まる屁 へ

この一言で始まる 宴会の始まりだったのです
そして この1行が連続出場の記録を更新したのであった

牛久を過ぎれば 右手に 霞ヶ浦が広がり
土浦で もうそばまで 来ているのでした

ここまで来れば 水戸までは あと僅か
御老公に証拠の録音をお届けせねば と
急ぐ 艶姫と源三なのでありました

うさ    わしらは 余り早う会いたくはないぞ

 
 
 
それじゃあまた逢えたらいいね
 
               うさうさ  うさ子