手のひらにすっぽりと収まる・・・1枚の薄っぺらな小さなカード。
 薄くて銀色に鈍く光るそのカードは、30秒程度のメッセージなら繰り返し録音可能なメモリーカード。
 しかも、ホログラフィ-機能も付いていた。
 ヴィジホンにホログラフィーが残されている場合、それもコピーが可能なカードだった。
 小さなカードを手に、私は溜め息をつく。
 このカードは表面に幾つもキズが入った使い古し・・・。
 本当に何度も録音を繰り返した、安価な量産型のカードだった。


 「もっと高い物か、新品の物に録音しておけば良かったわ・・・」


 繰り返し録音や録画が可能と言っても、やはりそれには限度がある。
 カードに傷が付けば、音が飛んだり、ホログラフィーにちらつきが出たりするのだ。
 
 結婚式や卒業式などの祝い事に使われるカードには、高価なプラチナ製の物や、小さなダイヤが埋め込まれた物などがあって、それなり
に値は張るけれど、若い女性の間は人気が高い。
 その手のカードに彼氏のメッセージを録音しておくと、恋が成就するという噂まであるぐらいだ。
 尤も、それはメーカー側が巧みに女性心理をターゲットにした、所謂売り文句に違いないのだろうけれど。

 彼からのメッセージを手持ちの安価なカードに録音してから、元々の留守番電話のメッセージを消去してしまった事を、私は再生する度に後悔していた・・・。
 あとになってから後悔しても、もう遅いのだけど・・・。


 彼が戦地へと旅立って、宇宙港までその見送りに行って・・・。
 家に戻ったら、彼からのメッセージがヴィジホンの留守録に吹き込まれていた。

 時間的に、もっと長く吹き込めるはずなのに、とても早口で短いメッセージが残されていた。
 けれど、心のこもった・・・彼らしい不器用さが窺える優しい言葉。
 ちょっとはにかみを含んだ笑顔が、彼の生真面目な敬礼と共に、カードの上にふわりと浮かび上がる。
 我が家のヴィジホンは最近買い換えたばかりで、留守録には、最新式のホログラフィーの機能が付いていた。
 静止画ではなく、動きのあるホログラフィーで映像がかなり鮮明なのだ。
 だから、メモリーカードにデータを移し変えた時も、わざわざホログラフィー機能の付いたカードを使ったのだ。
 ただその時、手元に新しいカードがなかったので、ついつい、何度も使い込んだ古いカードに録音してしまったのだ。
 古いカードだから、いくら最新式のホログラフィーでも、画像にちらつきが出ていた。



 『ジェシカ。今日は忙しい中、見送りに来てくれてありがとう。本当に嬉しかった。帰ったら即結婚式を挙げよう。そして2人で温かい家庭を築いていこう。そうそう、結婚式にはヤンもアッテンボローも来てくれるし、一世一代、カッコイイところをあいつらに見せないといけないな。ジェシカの気に入った、あの真っ白なウェディングドレス姿を見たら、あまりの美しさに、あいつらきっとびっくりするに違いない。じゃぁ、帰って来たら、また、連絡入れるから』



 宇宙港で別れ間際、何だかぎこちないキスをしてくれた彼。
 ヤン達の視線が気になったのかもしれない・・・。


 いつでもどこでも彼の声を聞いていたかった。
 留守番電話でメッセージを聞くだけでは物足りなさを感じた。
 だから、この古いカードをを絶えず持ち歩いた。
 言わば、私にとっての心の支え・・・お守りとして・・・。

 彼がこっちに帰って来たら、これからはもっと長いメッセージを入れてくれるように言わないと・・・。
 そう思いながら、私は毎日、このメッセージを聞いていた。

 そして・・・。
 彼の戦死の報を受けた後も、私は何度も何度もこのメモリーカードを再生して、彼の姿を見続けていた。


 真っ暗な部屋に、薄ぼんやりと浮かび上がる彼の姿。
 照れ笑いを浮かべて、だけど真面目に敬礼して、早口でメッセージを喋る彼。 
 画面は多少ちらつくけれど、優しい笑顔の彼の姿。
 それなのに、もうこの世のどこにも彼が存在していないなんて・・・とても信じられない。
 ・・・だって、ほらこうして・・・私の前ではいつも彼は笑ってくれている。
 帰ったら結婚しようって・・・。
 私達は式場も決めていたし、着るドレスの手配だって済ませて、友人達には招待状だって渡してある。
 あとは、彼が戻ってくれば、万事上手く行くはずだった。
 きっと・・・。
 彼だって、まさか自分が戦死してしまうなんて思っていなかったに違いない。


 ・・・今回の戦争は人員を増員しているという話だったし、軍機に触れるから、彼は私にはどんな作戦か細かい所までは教えてはくれなかったけれど、それでも、『作戦上、こちらの方が有利な勝ち戦さ』と言っていたのに。
 それなのに・・・何故、彼はこの世の何処にもいないのか?
 どうして、戦争を賛美知る人がニコニコと笑っていられるのか?
 私には彼等の精神構造が全く理解出来ない。
 私は微笑む彼の姿を直視する事が出来ずに、再生をストップすると、強くカードを握り締める。


 つい、力を入れすぎて強く握った為に、カードが曲がってしまいそうになった。
 涙がとめどもなく溢れ出る。
 政界に身を投じた私を『強い女』とか、『鉄の女』と呼ぶ人もいるけれど、決してそんな事はない。
 私は決して強い女ではない。
 彼を失った直後はカードを何度も何度も再生し、彼の遺体すらない冷たいお墓の前で、彼の名を呟いては、泣いて泣いて泣き続けて、何
度も眠れない夜を過ごした、ごく普通の弱い女なのだ・・・。

 あの蛇みたいな男の前に立った時も、私は会場に入る直前まで、メモリーカードの彼の声を聞いて、高鳴る鼓動と心を落ち着けようとしていた。
 私が大事だと思っている人は・・・たった1人の友人を除いて、皆、悲惨な運命に飲み込まれてしまった。


 もはや・・・黙って成り行きを見ているだけなんて、そんな後ろ向きな事を私は出来そうもなかった。
 ここは民主主義の・・・自由の国だったはずではないか。
 一部の・・・ほんの一握りの軍人達や政治家達が、自分自身の利益の為に国民を扇動して死地に向かわせていい訳がない。
 もっと私達国民は、真剣な気持ちで立ち上がらねばならないのだ・・・。
 権力に屈する事のない、自由の旗を掲げて!!
 ここには言論の自由があるのだから・・・。
 アーレ・ハイネセンが目指した理想を具現化した、“民主共和主義”を謳う国家なのだから・・・。

 自由惑星同盟・・・ここは自由の国だったはずなのに。
 何でこんな世の中になったのだろう?
 
 何かしたい・・・立ち上がろう!
 そう心に決めてからは、私はあのカードの再生をやめた。


 もう、過去を見るのはやめよう・・・。
 彼だって、自分の笑顔の先で涙を流し続ける女の姿なんて、絶対に見たくないはずだもの・・・。
 しっかりと前を、遥かなる未来を見据えて、今、やらなければならない事を探さなくては・・・。


 ・・・私は行く。

 もう、泣いたり、迷ったりしない。
 ジャン・ロベール・・・そして、ヤン。
 私は広い宇宙からすれば、本当に小さな存在でしかないから、果たして何が出来るか分からないけれど、それでも・・・何もしないよりは、
自分の出来る事を・・・やれるだけやってみたいと思う。
 だから、宇宙<そら>の彼方で見守っていて欲しいの・・・お願いね、ジャン・ロベール・・・。



 ・・・宇宙暦797年6月22日。
 真っ青な空が広がった絶好の天気・・・。

 ジェシカ・エドワーズは、ほんの少し迷った末に、メモリーカードの内容を全て消去して、1人、家を後にした・・・。




THE END



 
 もうじき、6月22日が来ます・・・架空の物語ですが、忘れてはならない、スタジアムの虐殺。
 ジェシカ・エドワーズ・・・アニメではちょっとコワイ感じがしましたが・・・。
 実際に、ジェシカの声が怖いと言う人がいますが、同じ声優さんで怖い感じがしたのは・・・ガンダムのキシリアでしょうか。
 まぁ、私的には、彼女の方が絶対に怖いよ・・・躊躇なく、実の兄のギレン・ザビを撃ち殺したし!
 アスターテ会戦が彼女の人生を狂わせたというか、あれはターニングポイント。
 彼女も、ラップが亡くなっていなければ、政治家になる事もなかったでしょうし、いい奥さんになったのではないかな・・・音楽教師を続け
ていたかもしれません。
 そう・・・あそこへ行って亡くなる・・・なんて事もなかったはず・・・。
 そう、宇宙暦797年6月22日は『スタジアムの虐殺』が起きた日です。
 ジェシカの追悼ですね、この作品は・・・T-T
 ガベさん(曽我部和恭さん)は好きだけど・・・クーデターを引き起こした救国軍事会議のクリスティアン大佐は許せません!
 そして、2006年9月にガベさんが58歳で亡くなられて・・・もう、大ショックでした!


 2006年はね、私には忘れられない年です・・・声優さんが沢山亡くなられたので。
 まず、2月にシュトライトの戸谷公次さんが57歳で急性心不全で亡くなられて、それが公表されずに、半年も「生きている」、「いや
亡くなったらしい」と噂のレベルで、2ちゃんねる辺りで議論されてて。
 結局、半年経って、古谷徹さんがブログ内で戸谷さんの事を書いて、やっと議論が沈静化したという・・・。
 そして、8月に入って、7月に検査入院された鈴置洋孝さんが、56歳で亡くなられて、もう、大ショック。
 55歳の誕生日の時にちょうど舞台をやっていたので、「ゴーゴーライブ」を終演後にやったんですけど、観に行っていた私はもうね
~・・・悲しかったです。
 還暦になったら、「還暦ライブをやります!」って宣言されていたのに。
 9月の半ばに、新宿のスペースゼロというホールでお別れ会を事務所主催でやって下さって、多くのファンや同業者の方々が集まりまし
た。
 主催は、ラオウやシドニー・シトレ元帥の内海賢二さん。
 鈴置さんは、賢プロダクションに所属されていましたからね。
 内海さん、最初は気丈にしておられましたけど、最後は涙、涙・・・とにかく涙。
 私も最初から泣きっぱなしでしたが、その後に、ガベさんの訃報・・・。
 その後も曽我町子さんやら、ラーナベルト(オーベルシュタインの執事役)役の野本礼三さんまで亡くなられて、2006年は呪われて
いる・・・って思いました。
 
 そうそう・・・大分前になりますが、とある舞台に出られていた小山茉美さんとお話が出来る機会がありました。
 銀の放映からは随分経つので今更ジェシカの事は言えないけど、「小山さんが担当されるようになってから、ニュースをしっかり見てま
す」って言ってみたんです。
 実際、バラエティよりもちゃんと見るようになったし<テレビ朝日系列の「報道ステーション」です。
 まぁ、「ニュースステーション」時代も、ナレがフレデリカだったのでシッカリ見ていましたが。
 小山さんは「そう言われると頑張らなきゃって思うわ!これからも宜しくね」っておっしゃって下さいましたが、本当にキレイでお優し
い方でした!
 因みにその舞台・・・青ニプロ主催の舞台だったのですが、小山さんのご主人役は何と、ジャン・ロベール・ラップの田中秀幸さんで、一緒
に行った友人も銀のファンだったので、「何だか、ジェシカとラップは結婚させてあげたかったよね」って・・・全くです。
 きっとあの世で再会して、ヤン達を見守っていてくれた・・・と思いたい。 
 






 ある日の夜遅く、仕事帰りに立ち寄った居酒屋での飲み会。
 ここに集った数人の男達は、酔った勢いである女性について語り始めた・・・。



 「彼女って美人で頭がいいけど・・・俺は、そういうのってちょっと苦手だなぁ」
 「あ、それは俺もだな。やっぱりさ、頭がいいってのにも限度ってのがあるだろ」
 「女はな~・・・ちょっとくらい馬鹿な方が可愛げがあっていいよ」
 「・・・勿論、ブサイクよりは美人の方がいいけど、美人過ぎると鼻に付くよな~お高くとまられて」
 「分かるよ。それにさ、下手にアタマがいい女だと、こっちも気を使うんだよな。だって馬鹿だと思われたくないからさ。・・・ああいう女
って気疲れする・・・」
 「記憶力がいいのもさ・・・時と場合によっちゃ、迷惑なだけ・・・っていうか?」
 「そうそう・・・結構細かい事とか覚えていて、針で突くんだ。ほら重箱の何とか・・・ってヤツさ」
 「あ、『重箱の隅を突付く』だな、それ。やられた方は・・・もう、最悪」
 「それにさ、本人には悪気はこれっぽちも無いからタチが悪いんだ・・・これは痛いよなぁ」



 男達に、こそこそと陰口を叩かれている彼女の名はフレデリカ・グリーンヒル。
 未だ男社会の色が強い軍の中で、女性でありながらも士官学校を次席で卒業した才媛である。
 才色兼備、容姿端麗・・・彼女を褒めようと思えば、いくらでも美辞麗句を並べられる。
 そつが無いし、とにかく、男顔負けの才女であり、おまけに、軍の高官、グリーンヒル大将の1人娘なのだ・・・。
 彼女の士官学校時代の成績を見れば、親の七光りで出世した訳ではないは一目瞭然だったが、現在、統合作戦本部情報分析課に勤務する
彼女は異色の存在だった。
 まず、そのキリリとした美貌と声。
 彼女を見た多くの男性達は、誰もが思わず「お!いい女!」と言ってしまうほど、彼女は人目を引くのだ。

 ・・・とは言うものの、彼女は軍の高官の娘。
 ごく普通に手が出せる相手ではなかった。


 彼女の父親のグリーンヒル大将は軍人にしては無骨さはなく、どちらかと言えば温厚な紳士タイプで、噂では、かなり気さくな人らしい

 それでも下っ端の軍人達にとっては、おいそれと声を掛けられる訳ではないので、大将の前に立てば、それ相応の緊張を強いられて、借
りてきた猫みたいに縮こまってしまう。
 大将なんて、煙たい存在なのだ、下級兵士にとっては。
 だがら、フレデリカに対しても相当気を使うし、迂闊に手を出して痛い目を見たくもない・・・これが男達の本音だった。
 
 フレデリカの勤務する、“統合作戦本部情報分析課”というセクションは後方の内勤で、前線とは対極にある。
 危険と隣りあわせではないから、結構ぬくぬくした良い環境だった。
 
 「この部署は危険じゃないからな。俺は彼女は美人だと思うがプライベ-トでは声は掛けない。絶対にしない」
 女好きのハンクス大尉は断言した。
 「え・・・大尉、何でですか??」
 ハンクス大尉が女性に手が早いのを知っているウェットン少尉は怪訝そうだ。
 「ふん。下手に彼女に声などを掛けてみろ。反感を買うだけさ。イヤそれどころか、その後が恐ろしいぞ。変に関係でも作ってから大将閣下にでも知られてみろ
。娘を傷物にされたとか言われて、ここの勤務から外されて、前線送りだ。そんなのは最悪じゃないか」
 「・・・あ~確かに」
 「ああいう、美しいが、難しいモノは、影からそっと鑑賞するに限る」
 こうして、たとえ手の早い者であっても、彼女をこっそり覗き見ては満足する・・・そんな感じの士官達が多かった。
 
 さて、軍人の家庭で育った女性はどちらかと言うとお堅い。
 規律を重んじる軍人が多いからで、フレデリカも最初はお堅いと思われていたが、いざ話をしてみると、意外と快活で人当たりも良かっ
た。
 だから、配属された直後は、先輩の女性士官達にも上手く溶け込んでいるようだった。
 新人なのに的確でそつの無い仕事振り・・・。
 普通は嫌われそうだが、彼女は明るく振舞い、常に先輩を立てる。
 それで、高官の娘で、次席卒業の才媛だから鼻持ちならないのかと思ったけれど、意外と謙虚なのね・・・と、誰もが彼女に好意的になって
いった。
 それに結構飲めるクチである事が分かり、男女問わずに、仕事の帰りに飲みに誘われるようにもなった。
 だが、配属されて3ヶ月もしない内に、彼女はあまり誘われなくなってしまう。
 いじめにあったり、除け者にされた訳では無いのだが、誘われなくなった理由は、彼女の脅威の記憶力と視力にあったのだ・・・。


 記憶力や視力は、仕事の面で発揮されれば言う事はない。
 だが、彼女は飲んだ席での他愛無い会話をも逐一覚えていたり、一度会った人の顔などをしっかり覚えていたり・・・とにかく、結構色々な
事を記憶していた。

 本当にどうだっていい事を・・・シッカリと覚えていたのだ。



 ある日の午前零時過ぎ、職場に1人の女性が半狂乱で飛び込んで来た。
 この日は、部署の人間の殆どが残業で職場に残っていた・・・勿論、男女の関係なく。


 「うちの人はどこよ!!」


 ドアを開けるなり、女性は鋭い金切り声を上げる。
 この時間はちょうど休憩中。
 居並ぶ士官達は、一体全体何事が起こったのか・・・と、ポカンとしていた。
 ましてや、こんな真夜中に・・・何事か!?といった風情だ。
 髪を振り乱した半狂乱の女性は・・・情報分析課のジェストン大尉の奥さんだった。
 栗色のセミロングの女性が、髪を掻きむしりながら鬼の形相で床を踏み鳴らして、大声で叫ぶのだ。
 どちらかと言うと美人だが、こういう形相をすると美人も美人に見えなくなるから不思議だ。
 あまりの事に、その場の全員が鼻白む。


 「一昨日の夜、一体誰と出掛けたの!!!しらばっくれるんじゃないわよ!!」


 バッグを振り回し、泣きながら叫ぶ夫人に、「一昨日は・・・残業で遅くなったと言ったじゃないか」と宥める夫。
 職場にまで泥沼を持ち込まれて、ほとほと困っている様子だった。
 今日だって残業だと言ってあったのに、どうしたものだろうか・・・と、ジェストン大尉はこの場から逃げ出したい心境になっていた。
 回りも、そんな彼に対して、“触らぬ神に祟りなし”と、遠巻きに見物しているだけだ。
 そして、爆弾発言。


 「あら・・・一昨日の残業ですか?大尉、一昨日は定時で切り上げられてお帰りになられましたよね?それに一昨日の夜は・・・深夜に金髪の髪の長い女性と一緒だったはず・・・。私・・・確かに大通りで大尉をお見かけしましたけど」


 ニコニコした笑顔で爆弾発言をするフレデリカ。
 同僚達はフレデリカのこの発言に真っ青になり、ゴクリとつばを飲み込んだ。


 (おいおい・・・普通は、たとえ見ていたとしても、今、この時に、そういう事は言わんだろうが!!)


 誰もが、罵りあうジェストン大尉夫妻を見やりながらフレデリカを睨みつけたが、彼女は何も感じないのか、さっさと仕事に戻ってしまった。
 そして、驚くべき速さでキーボードを叩き、データを入力していく・・・夫婦喧嘩なんか見てやしない。
 
 ジェストン大尉が奥さんに、派手に数回、平手打ちを食らわせられているのを見ていた他の同僚達は、そのうちに、フレデリカに自分達
の秘密もどこかで握られるんじゃないかと思い始めたのだった。


 「彼女とは・・・深く付き合わない方がいいかもしれない」
 「そうだ・・・。少し・・・距離を置こう」


 こうして以前より彼女との付き合いを制限しだして、滅多な事を彼女の前で話さなくなったのだった。

 フレデリカは女性達からも疎まれ始めていた・・・理由は、男性達とほぼ一緒である。
 しかし、完全な村八分となる前に、彼女の異動が決定した。
 今度新設される、第13艦隊の司令官の副官・・・そう、前線勤務が決まったのだった。
 因みに第13艦隊は、アスターテ会戦で壊滅状態だった第4艦隊と第2艦隊の残存艦隊で構成されていて、通常の約半分の6400隻あ
まりの艦隊である。



 「凄いよな。女だてらに前線とは・・・怖くないのかね?それにしても、娘の前線行きをよく、グリーンヒル大将が許可したもんだよなぁ。あ・・・そうだ。あれって半個艦隊なんだろう?」
 「それが、その半個艦隊の第13艦隊の司令官は・・・あの、エル・ファシルの英雄らしいよ。知ってるか?艦隊司令官って普通は中将以上だろう
?だけど少将に昇進したばかりで司令官になるんだとさ。・・・どうも、軍も英雄には甘いと言うか、弱いと見える」
 「え、あのエルファシルの!?そりゃ凄いじゃん・・・」
 「彼女・・・司令官の副官になるんだとさ。・・・あれじゃないか。いい結婚相手を探す為の箔付け。きっと大将閣下が娘の為に手を回したっ
ていうか、お膳立てでもしたのかも。温厚って聞いていたけど、コレが事実ならいやらしいよな」
 「なるほど~そいつはあり得るかもな~・・・」


 さすがの男達も、今度フレデリカの上官になる男の“噂”は聞いた事があった。
 半ば、伝説のようになっている、“惑星エル・ファシル”からの脱出劇は、つとに有名であった。


 「確か・・・アスターテでも凄い指揮を取ったって聞いたぞ。俺の従兄弟が第2艦隊にいたんだけど、負傷した司令官の代わりに指揮を取ったって言ってた。壊滅状態の我が軍で、第2艦隊がほぼ無傷なのはその人のお陰だって褒めてたな。従兄弟はこの第13艦隊に配属されて喜んでるんだ。」
 「へえ・・・凄い人もいるもんだ。さすがは英雄ってか?」 


 2日後の午前中、フレデリカは統合作戦本部のキャゼルヌ少将を訪ね、午後には、自分の上官となるヤン少将に正式に面会した。
 そして夕刻、その足で職場での送別会に出席した。
 和やかに送別会は進んだが、「すみませんが、明日の朝も早いですから・・・」と、午後10時には彼女は店を後にした。
 ・・・他の人はまだ飲み続け、この後にカラオケに行くと言っていたが、フレデリカは、自分は行かない方がいいと判断したのだ。
 彼女だって馬鹿じゃない・・・これまでの経緯<いきさつ>から、自分の置かれている立場を十分に理解していたから。


 家路へ急いでいたフレデリカは、ジェストン大尉が、例の金髪の、髪の長い女性と腕を組んで一緒に歩いているのを見た。
 あの派手な夫婦喧嘩を繰り広げた後、急に別の部署へ異動した大尉は、ヒステリー気味の妻とは正式に離婚し、浮気相手だった女性と再
婚していたのだ。

 それをチラリと見て、フレデリカは今日会ったヤンの事を考えていた。


 「・・・夢にまで見たけど、やっと会えたわね。ふふふ・・・ここまで来るのに随分と時間がかかっちゃったわ。誰が何と言おうとも、私はず~っとヤン提督一筋!絶対に浮気なんかしないもん!!」


 誰も見ていない所で、フレデリカは憧れのヤンの副官になれた事に嬉しさを隠し切れず、大きなガッツポーズを決めた。



THE END


 

 100のお題で、このタイトルを見た時、最初はロイエンタールと女性とか、シェーンコップと女性とか、ポプランと女性とか・・・色々考えたのですが、結局、フレデリカで書く事になりました。
 フレデリカ・・・記憶力がいいのも良し悪しです。
 実は友人の会社に記憶力がいい男性がいて、ホント、色々な事を覚えているらしいですのです。
 性格もさほど悪くはなく、記憶力はメチャクチャいいので、仕事面では凄いらしい人なのだそうです。
 でも、脅威の記憶力。
 飲んだ席の他愛無い話を覚えていたりして、その点では皆から煙たがられているらしいです。
 それを聞いて、フレデリカも案外・・・なんて事を考えちゃいました。
 
 フレデリカ・・・バグダッシュの事とか、覚えていましたし・・・他にも原作に出てきたな、そういう話。
 尤も、フレデリカは自分で望んだ職場に行けたから良しとしましょう・・・適材適所ってヤツです。
 それにしても、フレデリカが完璧な人間では無い事は、深く付き合えば分かると思うな。
 彼女ほど、家事オンチの人もいないでしょう・・・。
 銀には、エヴァやアンネローゼ、オルタンスさんなど、家事の達人の女性達が出て来ますが、ふと思ったのは、ヒルダは家事が出来るか
否か・・・。
 元々貴族(伯爵令嬢)ですから、食事などはお抱えシェフが作るだろうし、自分でやる概念は持ち合わせていないかも。
 では、習ったら出来るか・・・多分、無理でしょう。
 フレデリカ対ヒルダで、家事を競わせたら面白いかも・・・なんてお馬鹿な事を考えてしまいました・・・。
 
 それから、人間は誰でも成長します。
 フレデリカも最初はアレだったかもしれませんが、社会の荒波に揉まれている内に、今の彼女になったとお考え下さい・・・。←何だかご都
合主義っぽいww
 



 


 来年の年明け早々に、「銀河英雄伝説」の舞台が・・・との情報を、プロデューサーである田原さんのブログを見て知った私でしたが、脚本とか演出とかも気になるのだけど、今回は銀河帝国軍の話との事なので、もう、キャストが気になっていた訳ですよ。

 

 ・・・脚本はさぁ・・・田原さん自身が書いた方がいいんじゃないかと思うのですがね。

 だって、アニメの方の脚本家の河中志摩夫さんってのは、田原さん本人なんだしさ。

 あれだけ、銀を愛している人に脚本を書いてもらえばねぇ??


 演出じゃないんだけど、そんでもって、スタッフの中に「空間デレクション」なるものがあって、これを担当するのは西田シャトナーさんらしい。


 そっか・・・西田さんなのか。


 西田さんを知らない人の為に補足しておくと、昔、関西に「惑星ピスタチオ」っていう劇団があってね。

 そこで演出をしていたのが西田さんなんですね。

 西田作品の中で好きなものを挙げろと言われたら、「ロボ・ロボ」は絶対に外せないぐらい好きです。

 当時は、平和堂ミラノさんも演出されたりして、この2人が中心になって活動していましたが、平和堂さんは2003年に亡くなられました。

 劇団自体は既に解散して、それぞれが別の道を歩んでいますが、劇団に在籍してて、今、大活躍している人だと、佐々木蔵之介さんじゃないでしょうかね。


 さて、銀河英雄伝説のキャストに話を戻す。

 多分・・・この舞台、ストレートプレイではないと思う・・・ミュージカル要素の「歌」があると思うのね。


 ・・・で、ラインハルトとキルヒアイス。

 ラインハルトは原作でも180㎝以上の身長があったので、183㎝のこの俳優さんなら◎です。

 演技力はさておき、金髪のヅラに、青いコンタクトレンズ・・・絶対に入れて欲しい。

 そして、キルヒアイス。

 身長172㎝・・・コレを見た瞬間に、ジークが縮んでしまった・・・と思いました。

 赤毛ののっぽさんで、190㎝という設定が消えました。

 ライさんよりも11㎝も低いって・・・あぁ、あとは演技力に期待です。


 オーベルシュタイン・・・コレは意外でした、ホント。

 でも、年齢的にはいいんじゃないかと思います・・・20代の若手では、あの独特の雰囲気は出せないでしょうし。

 身長も176㎝・・・いい線いってます。

 それに、プロのミュージシャンで、ミュージカルの経験もあるから、安心して観ていられそうです。

 ・・・目に妙にチカチカするコンタクトでも入れてくれたら、あとはもう言う事はありません。←是非に!!


 ミッターマイヤー・・・うーん、どうなんだろう。

 でも、ミュージカル経験やダンス経験を考えると妥当な人選かも。

 身長174㎝なら、まぁ、悪くは無いです。<ミッターマイヤー自身175㎝なんだから。


 最後に、今日発表されたロイエンタール。

 写真を見た限りでは、あぁ、コレはイイ!!と素直に思いました。

 私はメンクイではありませんが、女性受けしそうな顔立ち・・・そう、かなりのイケメンさんです。

 オマケに、相当舞台をされているので、その事では文句を言えない。

 ただ・・・身長が!!!

 ミッターマイヤー役の俳優さんより1㎝低いのはどうかと・・・何だか、微妙な・・・。

 だって、ロイさんの身長は184㎝だよ??<11cmも低いのって・・・う~ん

 これはもう、演技力でカバーしてもらわないと。

 そして、この方もコンタクトレンズしてもらわないと・・・ねえ?

 黒い右目と青い左目。

 どちらにしても、これだけのイケメンなら身長が低くても・・・大丈夫かもしれなひ・・・。


 あと、音楽なんだけど、三枝成彰さんなんだよな。

 三枝さんのオリジナルなんだろうか?

 それとも、三枝さんが指揮するオーケストラによるクラシックなんだろうか??

 私は出来れば・・・後者を期待したい。

 まぁ、クラシックでなくてもいいし、三枝さんのオリジナルでもいい。

 でも、帝国軍軍楽曲は絶対に入れて欲しい・・・それは、この舞台のあとに制作されるであろう、同盟軍編にも言える・・・同盟国歌は客席で、同盟の人間として歌いたいです。


 さぁ、アンネローゼや、メルカッツ、フリードリヒ四世は誰になるんだ??

 アンネローゼは、元ヅカの方とか、四季辺りの方がいいなぁ。

 メルカッツとフリードリヒ四世も、テレビで活躍している方ではなくて、舞台経験のある、シブイ方を期待します。