イゼルローン要塞のスパルタニアンの格納庫。
この格納庫近くの休憩室・・・。
若手にシミュレーションシステムを使って飛行訓練をさせていたポプランが、やっと休憩になってタオル片手に自動ドアをくぐると、既に休憩に入っていたコーネフが真剣な顔で本を読んでいた。
彼がそういう状態の場合は、大抵、趣味のクロスワードパズルに没頭している事が多い。
だからポプランは「おい・・・また、パズルか?」と呆れながら声を掛けた。
「いや、パズルじゃなくて・・・」
「え?」
「これ・・・雑誌を読んでるんだ」
「雑誌?・・・珍しいな」
予想を大きく外し、パスルではなかった事に眉を顰<ひそ>め、ポプランは何かを考えるように腕を組んだ。
「単なる暇つぶしに読んでいるんだが、どうやら、ハイネセンでくだらない事が流行っているみたいで・・・」
コーネフは雑誌から顔を上げる。
「なに、くだらない事って?面白い話なのか?」
ポプランは面白そうな事を聞くと途端に目を輝かす。
何にでもすぐに首を突っ込みたがる性格に、コーネフは、(全くこいつは・・・)と思いながらも、読んでいた雑誌を彼の前に突き出した。
「・・・ほら、この記事だ」
見せられた記事には「生前葬 空前の大ブーム!」とある。
「う・・・なにこれ・・・」
目を丸くするポプラン。
葬儀が大ブーム・・・本当なんだろうか?
「だからさ。本当にくだらない話だよ。読めば分かると思うけど」
「いや・・・読むのはいいや。内容だけかいつまんで説明して」
「ふう・・・。今はこういう世の中だろ?軍人が多くて若くして死ぬ確立も多いんだな。・・・で、そこに目を付けた葬儀屋が『自分の生きているうちに自分の一番したい生前葬』ってな感じで提案していて、これが何でだか当たったらしくて、ここ最近は大ブームになっているらしい・・・。生前葬なら自分の意見が最大限に取り入れられる訳だろ。墓も自分で選んでそこに彫り込む墓碑銘も自分で付けられる訳さ」
「墓碑銘・・・ね」
小さく呟いて、眉間に皺を寄せるポプラン。
顎に手を当てて何か考えている様子だった。
「多分、お前さんの場合は、スパルタニアンの雄姿を墓石にデカデカと彫り込んだりして、墓碑銘をありきたりな『撃墜王』とかにするんだろ?」
コーネフが言うと、ポプランは首を振った。
「うーん、それもいいけど、何だか当たり前すぎてベタな感じだな。・・・もっと意表を突いたのも面白くていいかもなぁ」
「・・・意表ね。例えばどんなのにするんだ?」
一応、話を振るコーネフ。
「うーん、そうだなぁ。まず、墓石に派手な蛍光塗料でペインティングを施して。ついでに豪華にライトアップだな。それから、メルヘンチックに『キラキラ星の住人ここに眠る』とか掘り込んでも面白いかもな。意表をついて目立つ墓になるだろ?・・・俺は、何でも派手なのが好きだからさ。あ、これは結構いいかもな。うん、気に入ったぞ」
「・・・センスなし」
コーネフはその案を一刀両断に切り捨てる。
全く、取り付く島もありゃしない。
「何だよ・・・じゃぁ、自分はどんなの考えているんだ?まさか、クロスワード柄の墓にして、『パズル王』とかじゃないよな?」
「・・・これまたセンスのかけらを感じないな。確かにパズルは好きだが、それを生業にしている訳ではない。だから、そんなのは却下だ。墓は後々まで残るし、第一、墓はキワモノじゃないからな。そんな墓を子孫が見たら、恥ずかしい先祖を持った事を後悔するだろうよ」
「じゃぁ、『イワンの馬鹿ここに眠る』とか」
「・・・おい、どういう意味だ?」
コーネフは顔を顰<しか>めた。
苛立つコーネフをからかうようにポプランは笑顔で答える・・・それも、とびきり、人の悪い笑顔で。
「あ~別に意味ない。そういう絵本を昔、子供の頃に読んだなぁ・・・って、ちょっと思い出しただけだ。それじゃ、どういう墓にするつもりなんだ?」
「・・・俺は墓石はシンプルは大理石にする。墓石は・・・そうだな。シッカリしてて丈夫なモノなら、最高級でなくてもいい。ただし、彫り込むのは『同盟軍きっての撃墜王』だな」
「あ・・・ずるいぞ!同盟軍きっての撃墜王の称号は俺のもんだ!・・・これは絶対に譲れないからな!」
ムキになるポプランに対して、コーネフは涼しい顔で応戦する。
「・・・なにを言ってる。お前さんは『キラキラ星の住人ここに眠る』にするんだろうが?さっき、『気に入った』とか言っていたじゃないか。1つの墓に墓碑銘は2つも必要ないだろう。欲張らないで1つにしておけよ、最初言ったヤツに・・・だ」
「う~・・・そういうのを屁理屈って言うんだ!!」
形勢が不利になったのを悟ったポプランは、床を踏み鳴らして大声を上げた。
「なぁ。隊長達の会話・・・不毛だよな」
「・・・ホント。いつ聞いても凄いよなぁ。第一、縁起でもない話をしているってのに、妙におかしいのは何故なんだろう・・・」
“墓碑銘”を巡って、あれやこれやと不毛な舌戦を繰り広げる2人の上官を尻目に、部下達は肩を竦めて溜息を付いた。
THE END
100のお題の「墓碑銘」を見た時に、キルヒアイスのお墓の「わが友」とかもいいなぁ・・・なんて考えました。
でもねぇ、それだとあまりにもベタな気が・・・。
何だか明るい話題にしたくて(墓碑銘なんてちょっと縁起でもないから・・・)、こんな物にしてみました。
ホント、コーネフの墓碑銘はどんなのだったのだろう。
実際に『撃墜王』と彫り込まれたコーネフの墓標の隣に、ポプランが黒マジックで大きく、『ただし俺様に次いで2番目の』とか書いちゃったりして。
そして、「ほら、これでいいだろ?だって俺が1番だったんだからさ」とか言いながら、真っ白な薔薇の花束でも手向けていたりしたらいいなぁ・・・なんて。
コーネフなら、あの世で苦笑しながら、(全く、くだらない・・・)と言いそうですよね。
・・・お粗末さまです。
エ-スコンビは本当に大好きでした。
鈴置さんのちょっと冷たさを感じる声がイワン・コーネフには合っていましたし、ポプランの方は、まさに『イゼルローンの諸星あたる』で。
古川さんが声優で本当に良かった・・・って思いました。
コーネフの死後、ポプランは、アッテンボローやシェーンコップと会話したり、ユリアンと・・・ってのが必然的に増えましたが、どうもね
、コーネフとの会話の方が楽しいのね。
だって、立場が同等でしょ?
アッテンボローは、なんだかんだ言って、上官に当たる訳じゃないですか。
職種が異なるし、微妙に遠慮もあるのかも?
まぁ、佐官が、将官にああいう口を利いたら、帝国軍だったら間違いなく上官侮辱罪(あるかどうか分からんけど)とかに問われそうです。
余談を。
銀河英雄伝説が英訳されたら、帝国軍はシェイクスピア風な訳、同盟軍は、スティーブン・キングか、ディーン・D・クーンツの作品みたいな感jで英語に翻訳・・・と田中先生のインタビューにありましたが、(帝国軍は格調高い演劇、同盟軍は軽いノリのアメリカのテレビドラマ・・・って事も言ってたな)キングもクーンツも大人気の作家さん。
私はどっちも好きなので、(さすがに原文では読めないけど)英訳・・・どうなんだろうって思いました。
因みに、クーンツ作品は日本では知名度が低いですが、「トワイライト・アイズ」と「ファントム」は好きです。
キング作品だと好きなのはいっぱいあるんだけど、「ミザリー」や「ペット・セマタリー」とかかな。
昔、知人に聞いたのですが、ドイツ語の字幕が入った銀河英雄伝説の映画版を会社の同僚が持っていたとか・・・。
その同僚さんは会社を辞めてしまったので、連絡先とか分からないらしいですが、それが本当ならちょっと見てみたいです。
海賊版だと思うのだけど、映画の銀河英雄伝説のDVDは持ってます。
字幕が、中国語と英語が選択出来るのですが、あの英語・・・とっても怪しいです。
その他のDVDは国内正規版です。
そして、実は・・・某提督役の声優さん(銀河帝国軍で獅子の泉の七元帥の中のお1人です)にも、DVDを頂いてしまいました・・・もう、お宝です。(頂いたのは第2期と第3期のBOXです)
因みにこのDVDには、「見本版」と入っていて、特典DVDのインタビューのお礼に徳間ジャパンから送られてきたとの話でした。
私は既に全BOXを持っていたので、さすがに悪いと思いまして、1度はお断りしたのですが、「でもねえ、ファンが持っているのが一番いいから」との事で。
そして、このBOX・・・その声優さんのご自宅からドーン!と送られて来ました・・・かなりビックリしました。
私がその方からBOXを頂いたというのを、ある若手の声優さんにお話したところ、「マジで!!?すげー!!」と言われてしまいました。
ホント、凄い事です・・・恐縮しっぱなしです。
韓国では韓国語に吹き替えて放送してたみたいですが、ラインハルト役の声優さんが交通事故で亡くなられたって聞きました・・・。
以前、韓国の銀のサイトで、シェーンコップの韓国版の音声を聴いた事があるのですが、声質が、羽佐間さんが韓国語を喋っているのでは?と言うぐらい渋くて、違和感が全くありませんでした。
中国語の吹き替えよりも、韓国・・・凄くいいです。