「だからさぁ・・・いつまでやってるつもりなんだよ?」
「いつまでって・・・飽きるまで?」
「飽きるまでって・・・いつ飽きるんだよ?」
「当分飽きないね」
「あのなぁ・・・」
堂々巡りな会話。
ポプランは、クロスワード片手に、眉間にしわを寄せて唸り続けるコーネフを呆れ顔で見つめた。
いつもいつも・・・それしかやる事が無いのかと呆れるぐらい、コーネフはクロスワードパズルをしている。
違う意味で言えば、彼が他の事をして遊んでいる所を見た事が無いと言ってもいい。
非番の時も、そうでない時も・・・片時もパズル本を手放さないのだ。
「・・・ったく。飽きもせずに良く出来るもんだ」
「飽きるものか。毎回問題は違うし、頭を使う。俺は絶えず頭を使いたいね。誰かさんみたいになりたくないから」
「誰かさんって誰だよ?」
「・・・意味が分からなくて、今質問している・・・隣に立っている馬鹿」
「う・・・ヤなヤツ!」
「煩い!!気が散るから向こうへ行ってくれないか?あ~・・・縦の16・・・。『赤い顔をして棍棒を持っている』って言われても・・・ううう」
「あぁ・・・いつまでも唸ってろ、馬鹿!」
唸るコーネフに、ポプランは呆れてしまった。
ブツブツ言うのはいいが、とにかく煩い。
ポプランは手をヒラヒラと振りながら、格納庫を後にした。
あともうちょとでスクランブルがかかるかもしれないが、スパルタニアンの格納庫の中で、そのスパルタニアンに寄りかかってパズルに興じる神経が理解出来ない。
それよりは、整備班の女性兵士とのくだらないおしゃべりの方がマシだった。
「そうだ・・・ランゲート曹長に声を掛けてみようっと・・・。それで食事に誘って・・・それから・・・」
ポプランは、デートプランを練る方に頭が傾いた。
それで、整備士のオードリー・ランゲート曹長に、「ねえ、ねえ・・・今夜一緒に食事でもどう??行きたい店があればおごるからさぁ~」と、能天気に声を掛けてみる。
長めのウェーブのかかったブルネットで、紫の瞳。
とにかく、感じの良い美人で、人気が高いので落とし甲斐がありそうだった。
暇を持て余していたランゲート曹長は暫く考えていたが、「うーん・・・いいわよ?そういう事なら『ラッキー・スター』に行きたいんだけど?」と、少々お高めの店の名前を出す。
だが、ポプランはそれは彼の予算の範囲内だったみたいで、「良し、決まり!!予約しとくよ」と彼女の肩に手を回し、「うそ、本当に?いいの??」とランゲート曹長の方が驚いていた。
「デートの約束成功!予約もばっちり!!」
格納庫に戻って来たポプランに、「何だか凄いですよね・・・」と声をかけるユリアン。
「何が凄いって?もしかしてあいつ??」
「ええ・・・」
いつも以上に真剣なコーネフの方を見ながら、ユリアンは頷いた。
ポプランもコーネフの方を見るが、大きく息を吐いた。
「・・・ったく。1日中やってんだからな。飽きるまでやるんだとさ。いつ飽きるのか聞いたら、当分飽きないって・・・。俺なんかさ、パズルばっかりやるなんて絶対に耐えられないよ」
「デートの約束・・・成功したんですか?」
「あぁ、『ラッキー・スター』で食事するんだ。あそこは高いけど雰囲気いいから、その後も楽しみがね・・・」
「それはそうと・・・何だかいつもと形相が違いませんか?」
「何が??」
「ほら・・・」
「あぁ、あいつの事か・・・」
険しい顔のコーネフに、ユリアンが不審そうな顔をして近付いた。
ポプランもその後ろに立つ。
「解けないんですか?」
「あぁ、ちょっとね・・・」
そう言ったきり、またパズル本に首っだけだ。
ユリアンの方を見ようともしない。
「ユリアン・・・そいつには、今、何を言っても無駄だ。まるで鬼だよ、鬼!パズルの鬼!」
「あ、それだぁ~!!」
突然、コーネフは立ち上がり、ポプランの腕を掴んでブンブンと振り回した。
いきなりだったので、面食らうポプラン。
「痛い!!何だよ、一体!!」
腕を擦りながらポプランが吼える。
何で腕を掴まれなきゃならないんだ!!
「だから、答えが分かったんだ・・・」
涙目のコーネフ。
嬉し泣きというヤツだ。
「はぁ???」
「赤い顔で棍棒を持っているのは『鬼』だって気が付いたんだ。あぁ、答えが分かって良かった・・・」
「そりゃ、良かったな・・・」
にこにこと微笑むコーネフに気勢をそがれたポプラン。
彼は助けを求めるようにユリアンに目を向け、ユリアンは肩を竦めて2人を見ていた。
「本当に仲がいいよな、隊長達・・・」
部下達も2人に目を向ける。
彼等は、何だかんだ言い合いながらも、コーネフとポプランが一緒に騒いでいるのを快く思うのだった。
THE END
100のお題より、「鬼」です。
エースコンビの話です。
ネタに困ったら、エースコンビ(いや、厳密にはコーネフに)に助けてもらってます。
コーネフとポプランで、おまけがユリアン。
本当はもうちょっと別の重たいヤツを考えていましたが、結局こういうのになりました。
ポプランは、美味しい食事の後に、更に美味しい思いをする事でしょう。
彼女はそれを織り込み済みでOKしていると思うから。