宇宙暦796年7月30日。
この日、自由惑星同盟最高評議会の、とある委員長の議席が1つ空いた。
それは、「情報交通委員長」のポストである。
昨日までこのポストにあったのは、レオナルド・クリーヴスという、1年前に還暦を迎えたばかりの官僚上がりの男だった。
ベルトがはちきれんばかりにでっぷりと太り、しかもその肉が大きくはみ出して垂れ下がっている為、ベルトが全く見えない。
ズボンのファスナーまで半分しか見えないし、入るズボンを見つけるのに苦労しているのではないか?と心配になってしまうほど、見るからに不健康そうな体型の男だった。
涼しい時期でも大量の汗をかき、答弁中も心臓に負担がかかっているのか、いつだって息切れしている。
汗を拭く為にハンカチタオルが手放せない。
いつもチェック柄のハンカチタオルで顔を拭きまくるので、ついたあだ名が「ハンカチおじさん」である。
遊説先で子供達に「ハンカチおじさ~ん!」と呼ばれると、巨漢の彼は、「清き一票を!お父さんやお母さんにヨロシクね~!」と言って笑顔で手を振り、実は馬鹿にされてついたあだ名だったのにもかかわらず、最近では「誰もが呼んでくれる。このあだ名は実にありがたい」と、単純に喜んでいる。
頭部には一本の毛も無く、見事にツルツル頭のこの男の選挙でのキャッチコピーは『輝く明日へ』と『皆のハンカチおじさん』であった。
しかし、輝くどころか・・・。
彼は良くも悪くも・・・腐敗しきっていた。
人の良い、『ハンカチおじさん』として売り込もうとしていたのかもしれないが、このポストにどっかりと胡坐をかいていた。
更には、その地位を利用して、企業の談合に目を瞑り、公然と賄賂を要求する始末・・・。
そして、内部告発によって贈収賄事件の首謀者として糾弾された後に解雇となり、とうとう議員辞職に追い込まれた。
最初は容疑を否認し、内部告発者を捜そうと試みていたクリーヴス。
そして、未練たらしく地位に固執を見せていたクリーヴスであったが、世論がそれを許さなかった。
彼に関する様々な事を調べ上げて、それが新聞の三面記事に踊りまくったのだ。
次から次へと出て来るスキャンダルの数々。
彼がひたすら隠し通していた、幾人もの愛人やら隠し子疑惑まで噴出し・・・。
それが、我慢強く夫を支え続けていた、気真面目な妻の怒りに火を付けた。
レオナルドはクリーヴス家の婿養子であり、妻は、外も歩けなくなったと激怒して、彼に三行半を叩きつけた。
「妻の鏡」だの「内助の功」だのと、夫を支え続けた清楚で寡黙な女性であったから、その怒りは凄まじかった。
何と、下着一枚の姿で外に放り出されたのである。
「夏だし、汗かきなんだから、服なんてない方がいいでしょ!」
ピシャリと玄館扉が閉められ、クリーヴスが抗議をすると、「愛人にでも買ってもらいなさい。それまで貢いで来たのでしょうからね!」と全く取り合ってもらえず、クリーヴスは彼の家に張り込んでいた報道陣の1人から金を借りて、本当に愛人宅に転がり込んだが、ここでもすぐに追い出されてしまった。
もう、彼の居場所は家庭にも、愛人宅にも存在せず、誰も彼もが敵に回ったのだ・・・もう、誰からも信用されないだろう。
クリーヴスは連日連夜マスコミからも叩かれて、踏んだり蹴ったりの最後であった。
議員を辞めた後も、秘書への給与未払いが発覚したり、収支報告の不備だのが次々指摘され、愛人が彼の素行を暴露する本まで出した。
しかも、この手の暴露本が1冊ならまだしも、同時期に3人の愛人達がそれぞれ暴露本を出してしまった為、分が悪すぎた。
浮上が困難なほど、クリーヴスは叩きのめされた。
クリーヴスは、とうとう、自ら身を隠すかの如く、辺境地へ引っ込んでしまった。
この呆れるほどの男の辞任劇は、自由惑星同盟最高評議会にとって、大変不名誉な事態であった。
事実、この事が引き金となって、今やこの閣僚に対する一般人の支持率は下降の一途を辿っていた。
これまで何とか40%台をキープしていた支持率は、今や、30%を割り込みそうな勢いであり、反対に不支持率は過半数を大きく超えていた。
支持率は31.9%にまで落ち込んでいる。
なお、 現在の最高評議会の議長は64歳になるロイヤル・サンフォードで、彼は数年前に議長の座を手に入れ、自由惑星同盟の国家元首になったのだ。
再選を目指す為には・・・全閣僚、身辺はクリーンであってほしいと願っている。
しかし、現実は甘くはなく、徐々に崩壊への道を突き進んでいたのだ。
この不幸な政府への支持率回復には・・・。
一種の“清涼剤”が必要だった。
次の選挙の為にも、ここは何としてでも支持率低下を食い止めねばならなかった。
その為に、空いたポストに選ばれたのは・・・。
優雅で知的な美しさと、魅力ある声を持った女性議員から選ばれた。
国民に大人気のその女性は40代前半の既婚者で、本年度前半に行われた、「魅力ある女性政治家」というアンケートで、2位を大きく引き離して、ぶっちぎりの第1位に輝いていた、コーネリア・ウィンザーであった。
既婚者であるが結婚が遅かった為に、子供は5歳になる男の子1人であった。
夫は婿養子あったが、評議会とは全く縁のない職種で、ハイネセン市内の私立高校の物理学の教師だという。
ウィンザー夫人の登用ならば・・・国民はもろ手を挙げて歓迎するだろうとの予想通り、翌日から一斉に各メディアはこの人事に一定の評価を下した。
“清涼剤”の投入は成功したらしかった。
とにかく、今は彼女の美しさや、爽やかさに賭けるしかない・・・。
サンフォード議長は、自らの進退を女性に賭けるしかない事態に悔しさを覚えたが、今は背に腹は代えられぬ・・・と耐える事にしたのだった。
もう、なりふり等、構っていられないほど・・・現同盟政府は追い込まれていたのだ。
5年前に急逝した彼女の父・・・ネルソン・ウィンザーもまた政治家であり、彼女は、いわゆる二世議員であった。
祖父のレイモンドは政治家ではなく大学教授であったが、祖父の弟で大叔父のアーノルドは政治家であった。
ただし、大叔父は隣の惑星・・・テルヌーゼンの地方議員で、少々うだつが上がらなかった。
政治家を志すなら中央にいなくては意味がない。
アーノルドの甥であるネルソンは故郷のテルヌーゼンを出て、首都星ハイネセンで政治家を目指したのであった。
ネルソン・ウィンザーは非常に強硬なタカ派であった為、彼女もそう見られている節がある。
だが、今のところ、議会で表立って強硬な発言をしてはいなかった。
“能ある鷹は爪を隠す”ものだ。
いつか、しかるべき所で、才能を思う存分発揮すればいい。
彼女はその機会を、今か今かと窺っていたのである。
父が急逝した後、地盤や看板・・・を彼女は受け継いだ。
ウィンザー夫人は、政界に転身する前は、有名なアパレルメーカーの企画部長として華やかな世界で生きていた。
若い頃はモデルの経験もあり、ファッションショー用のドレスのデザインを手掛けた事もある。
学生時代は「ハイネセン芸術大学」に通っていた彼女は、大学生活の4年間・・・学園祭の花であり、「ミス芸術」の称号を手にご満悦だった。
彼女はデザインの勉強に明け暮れ、学生主催のファッションショーで、斬新なデザインのドレスを発表していた。
大学院の1年の時のショーで、予定をしていたモデルが急性胃炎の為に出られなくなり、急遽、彼女が自分のドレスでショーに出た。
これが、マスコミの目に止まり、本格的にショー・モデルとして活動を始めたきっかけでもあったが、モデル等の職業を彼女はあまり好いてはいなかった。
人気などいつ翳るか分からない。
だから、モデル業は大学院時代だけでやめてしまった。
卒業後はアパレルメーカーに就職し、「芸能界に入れば良いのに。アレだけ美しかったら、歌手でも女優でも思いのままだろうに勿体ない」との声をスッパリと蹴って、結局、芸能界に入る事は無かった。
実を言うと、彼女の頭の中には父の存在があり、将来、父に何かがあった場合は自分が政界に担ぎ出される事を念頭に入れていたのだ。
その重大時に、芸能界で愛想を振りまくだけの女でいるか、社会的地位を築くキャリアウーマンであるか・・・どちらが支持されるか。
とかく、芸能人は「頭が空っぽ」と見られる風潮がある。
彼女は、それ故に、自分の特技であるデザインを武器に、アパレルメーカーで息を潜めて、その時を虎視眈眈と待ち続けていたのである。
そんな中での父の急逝である。
彼女が思い描く政界転身のヴィジョンよりも些か早かったが、この急逝を受けて、父を支持する後援会の人達の後押しもあって、父の遺志を継ぐ形で選挙に出馬した。
「美し過ぎる議員」というキャッチコピーで選挙戦を戦い、見事に地盤を引き継いでで初当選してからというもの、いつも、シンプルだが、洗練されたエレガンスな装いで議会に現れる。
男女とも、そのさりげないセンスに舌を巻いた。
元々、アパレルメーカーで働いていたのが功を奏したのだ。
そして、学生時代にショー・モデルの経験もあると聞いて、人々は納得した。
けれど、芸能界に入らないで就職・・・なんて謙虚な人なのか。
ハイネセン市民達は、ウィンザー夫人の為人を高く評価し、熱狂的に支持する事になる。
こうして、彼女は父譲りの政治センス以外にも、他の女性政治家達にも受け入れられ、いつの間にかファッションリーダーとなっていた。
そのセンスから、雑誌にも度々取り上げられ、いまや、国民的人気の女性政治家だったのだ。
辞令を最高評議会議長のロイヤル・サンフォード氏から受け取る時、彼女は魅力的な笑みを湛えた。
「ウィンザー君、私はね、君なら出来ると思うのだよ。これからも君本来の力を出して頑張ってもらいたい」
「私を推薦して頂き、本当にありがとうございます。父が生きておりましたらきっと喜んでくれた事と思いますわ。議長。このウィンザー、微力ながら精一杯務めさせて頂きます」
初々しい笑顔・・・。
声楽家を思わせるような美しい声で丁寧な挨拶をし、議長に好印象を与える事に成功したウィンザー夫人。
最高評議会の中核を成す各委員長の中で、女性議員はウィンザー女史ただ1人である。
ここで上手く立ち回る事が出来たなら、同盟の政府が始まって以来の、初の女性最高評議会議長も夢ではない・・・と、ウィンザー夫人は考えた。
やっと自分の才覚を発揮出来る立場を得たのである。
彼女の父は、最高評議会議長の座に近いと言われながら、急な病に臥して志半ばにして逝ってしまった。
そして、その野望は・・・娘である、コーネリアに受け継がれていたのである。
8月6日。
この日はウィンザー夫人にとっての初めての最高評議会の会議が行われた。
辞令を受け取って今日でちょうど1週間になる。
最高評議会の会議議は、11人の評議員によって構成されている。
窓のない一室で、全ての物事が決められるのだ・・・同盟の心臓部にいるのがたったの11人の議員だけだとは。
これで、開かれた政府とは・・・。
とてもそんな事は言えない・・・が、これが同盟政府の置かれているれっきとした現実なのだ。
集合時間は午前8時で、この日は10の議題を採決する必要があった。
そして、この日の議題の1つに、軍部からの提案事項が含まれていた。
これは、青年高級士官達が直接持ち込んだ議案であった。
若い士官の案件なんて珍しいが、ラザール・ロボス元帥がこの案にかなり傾倒しているというから更に驚きだった。
よほどの案件に違いない。
ところが、ジョアン・レベロなどは過激なこの議案に嫌悪感を抱いていて、彼の友人であるホワン・ルイも、この過激な案には渋い顔をしていた。
提出された書類には、この議案の代表発案者名が明記されており、そこには「アンドリュー・フォーク」と書かれていた。
『占領したイゼルローン要塞を橋頭保として帝国に侵入する』
今後の自由惑星同盟の行く末を占う意味でも、とても重要な議案であった。
現在の最高評議会の不支持率は56.2%に達している。
支持率は31.6%で30%を切るのも時間の問題だった。
ところが、100日以内にこの議案が通れば、支持率は最低でも15%は上昇すると、会議の席上でロイヤル・サンフォード議長が発言した。
15%の上昇という話に場内がざわついた。
それだけ上昇すれば、自分達の「クビ」は免れる。
手元の端末には、彼がコンピュータに計測させたデータが浮かび上がり、ウィンザー夫人は興味深げに、そのディスプレイに見入っていた。
コンピュータの計測・・・机上の空論に過ぎないのだが、それを指摘する者は誰もいなかった。
賢明なる者はこの数値で馬鹿馬鹿しいと思っていたし、そうでない者はこの計測に賭けてみようと思っていたからだ。
せっかく単なる評議員から、最高評議会の中核をなす委員長の1人に選ばれたのに、支持率が低下してこのままお払い箱になってしまったら、その後に浮上の機会など訪れないだろうと彼女は危惧していた。
政治センスはあると自負しているが、それを買われて「情報交通委員長」になれた訳ではなく、自分が選ばれたのはこの美貌ゆえ・・・という事も自覚している。
「魅力ある女性政治家」という、「ハイネセン日報」のアンケート記事がなければ、こんな重要な委員長のポストが転がり込むはずがない・・・と分かっていた。
だから、ここは是が非でも、政治センスがある事を皆に知らしめ、なお且つ、自分の身を守るようにしなければ。
それには、軍部が提出したこの出兵案は魅力的であり、渡りに船と言えた。
今ここで軍部に恩を売っておけば、自分への支持も取り付けられる・・・。
しかしながら、ハト派の財政委員長のジョアン・レベロや、人的資源委員長のホワン・ルイはこの出兵案には、はなから反対のようであった。
確かに、これまでの出兵で財政難には陥っているが、彼等は・・・何か勘違いをしているように思われた。
消極的過ぎやしないか?
そして、改めて、民主主義とはなんぞや?・・・と考えてみる。
国民に選ばれた議員によって政治が行われ、専制君主政治の銀河帝国に警鐘を鳴らすという大義名分が、我々にはある。
帝国の圧政と脅威から全人類を救う義務を行わずして、なんの民主政治か。
今ここで立ち上がらねば、いつ立ち上がれるというのだろう?
ヤンという名の知将が、“難攻不落”と言われているあの鉄壁の要塞を奪取に成功した。
この“奇跡”を利用すれば、我々には約束された勝利が転がり込むのだ。
そして、この事は、支持率アップにも繋がるはずなのだ・・・。
今は、きれい事などを言っている場合ではない。
「どれほど犠牲が多くとも、たとえ全市民が死にいたっても、なすべきことがあります」
自論に酔いしれたようになっているウィンザー夫人のこの発言に呆れたジョアン・レベロは噛みついたが、ウィンザー夫人は鼻で笑って完全に無視した。
午後の採決の最終議案が、軍部の出した議案だった。
採決の結果、出兵案は賛成6票、反対3票、棄権2票で、辛うじて過半数を超えていたので可決された。
棄権の二票・・・これを投じたのは、法秩序委員長のマルケス・ノートン、それと、地域社会開発委員長のアルバート・モンスリーであった。
彼等は息子を2月のアスターテ会戦で亡くしており、賛成も反対も・・・出来なかったので棄権票を投じたのであった。
因みに2人の息子は、ともに第6艦隊の旗艦「ベルガモン」の乗員であったらしい。
反対票を投じたのはジョアン・レベロとホワン・ルイである。
これは最初から予想されていたのだが、驚く事にもう1人が反対票を投じていたのだった。
それは、軍部に一番近しい所に位置する、国防委員長のヨブ・トリューニヒトである。
これには議長やそれ以外の議員達は驚きを隠せないようだった。
反対票を投じた、ジョアン・レベロや、ホワン・ルイですらその表情を曇らせ、ヨブ・トリューニヒトを見ていた。
なにしろ、ヨブ・トリューニヒトは、自他ともに認める強硬派の主戦論者として知られていたのだ・・・。
それが反対の姿勢を取るとは一体どういう事か。
誰もが疑問に思ったが、声に出したのはウィンザー夫人であった。
「何故、反対なさいますの。私、てっきりあなたは・・・」
眉を吊り上げるウィンザー夫人のこの言葉に対して、トリューニヒトは表情を変えずにこう言った。
「私は愛国者だ。だがこれはつねに主戦論に立つことを意味するものではない。私がこの出兵に反対であったことを銘記しておいていただこう」
トリューニヒトはそう言って会議場を後にしたのだが、会議場の外に待ち構えていた大勢のマスコミに捕まった。
いや、自ら進んでマスコミの中に割り入って、その対応に当たった・・・という方が正しい。
「出兵に反対したそうですが・・・」
「支持率が低下しているそうですが・・・」
「この侵攻作戦をどうお考えですか・・・」
さまざまなメディアのマイクが向けられ、矢継ぎ早に質問が投げかけられる中で、トリューニヒトは、「今の状況での出兵は・・・命取りだと思ったものだからね」と笑顔を振りまいた。
そして、「閣僚の中には『どれほど犠牲を払って、たとえ全市民が死んでも行うべき』などと発言し強硬な人もいたが・・・全市民が死んでもやるべきとは思えなかったんでね」と発言した。
「死んでしまったら・・・国が滅びるのだよ。分かってないねぇ」
そう言いながら、笑みを浮かべる・・・爽やかに白い歯を見せながら。
これにはメディアがすぐに飛びついた。
「誰です、そんな事を言ったのは?」
「・・・あぁ、新任の委員長の1人ですよ」
それだけ言って車に乗り込もうとたトリューニヒトであったが、去り際に急に思い出したかのように、「まぁ、反対はしたが・・・決まった事だし、決まった以上は全力で取り込みますよ。だが、諸君。どうか私が出兵案に反対票を投じた事だけはきちんと銘記していただきたい」と笑顔で発言した。
・・・マスコミはこぞって、このトリューニヒトの発言を記事に書いた。
そして、新任の委員長は贈収賄事件で失脚したクリーヴスの後任の人間しかいない事を知る。
彼等は、彼女がただ綺麗なだけのお飾り人形ではなく、好戦的な人間である事を知った。
マスコミは、ウィンザー夫人の強硬な主戦論について、例の発言を含めて書きたてた。
更に、かつて、強硬なタカ派であった、彼女の父のネルソン・ウィンザー氏についてもこぞって書き、「二代目も鷹だった」と記事は締めくくっている。
言論に自由が許されている自由惑星同盟では、どんな些細な発言であっても明らかになってしまう。
マスメディアが正常に機能している事こそ、自由惑星同盟なのであって、ここは民主主義の正義がまだ残っていると言えるだろう。
発言に関して言えば、「身から出た錆」であり、「口は災いの元」であり、ウィンザー夫人は言い逃れが出来なかった。
ただ、彼女を叩いたのはごく一部で、その他大勢のマスコミはまだ彼女の味方であった。
それが一変したのは、帝国領への侵攻作戦後であった。
帝国侵攻作戦は大失敗に終わり、同盟軍はアムリッツァに於いて、帝国軍に対して大敗を喫した。
その失敗の責任を取る形で最高評議会のサンフォード議長は辞任を表明し、反対票を投じた3人と棄権をした2人以外は議員辞職を余儀なくされた。
マスコミは今回の出兵に対して、ウィンザー夫人が強硬姿勢を見せていたという、より突っ込んだ内容の談話を関係者から既に入手しており、彼女を執拗に追いかけた。
例の、「どれほど犠牲が多くとも、たとえ全市民が死にいたっても、なすべきことがあります」という彼女の言葉がマスコミに踊った。
しかも、閉ざされた空間の議会の様子を録音したテープがニュースに流されたのだ・・・もはや、言い逃れは出来なかった。
まるで、芸能人の熱愛報道並みの取材合戦だった。
連日、ワイドショーは「地に落ちた女神」だのと言って、彼女の動向を伝えていた。
「この件についてどうお考えですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「無視されるおつもりですか?あなたは出兵に対して強硬な姿勢を見せていたとの事ですが・・・今日の大敗を予想しておられたのでしょうか!」
報道陣を無視して走り去ろうとしたが、如何せん・・・人数が多過ぎて、彼女の行く手を阻む。
そのしつこさに腹を立て、彼女は集まっていた報道陣に対して真っ赤になって怒鳴った。
「私もサンフォード議長も・・・潔く議員を辞めるべく辞表を出しましたわ!責任を取ったではありませんか!これ以上・・・お話しする事はありません!」
「しかし、あなたがお辞めになられても・・・戦死した人達は帰っては来ないのですが、そこのところをどうお考えなのですか?」
「そんな事・・・出兵案に賛成したのは私だけではありませんわ!全て・・・議長のせいですわ!」
責任を取ったと口で言いながら、全ての責任をサンフォード元議長に押しつけるウィンザー夫人。
この記者とのやりとりが、ワイドショーだけではなく、立体テレビ<ソリヴィジョン>のニュースで繰り返し流される事になった。
市民達は自分達が支持していた美しい議員が、実は真黒に薄汚れた女だという事を、ここに来て初めて気付かされたのだった。
・・・こうして、父と自分の積年の野望であった『最高評議会議長』になれる事もなく、ウィンザー夫人は政治の世界から消えていった・・・。
そう・・・“奇跡”は起こらなかったのである。
THE END
自由惑星同盟の女性政治家のコーネリア・ウィンザー夫人です。
ハッキリ言って・・・マイナーです。
100のお題から、「奇跡」です。
最初は、「魔術師ヤン」とか「奇跡のヤン」と呼ばれているヤン提督で書くかな・・・と思ったのですが、別の点からアプローチして、ウィンザー夫人にしてみました。
多分、銀河英雄伝説の二次小説っていっぱいあると思うのだけど、ウィンザー夫人で書く人なんて相違ないと自負してます。
ウィンザー夫人の声優さんは松島みのりさんです。
松島みのりさんの舞台を見た事がありますが、地声ですね、ウィンザー夫人は。
この方の持ち役で・・・一番のハマり役は・・・「キャンディ・キャンディ」の主人公のキャンディかな。
因みにキャンディの親友のアニーは小山茉美さんですから、ジェシカ・エドワーズですね。
そして、キャンディと同じ一族(キャンディが養女になったアードレー家の人間)には、アリステア・コ-ンウェル(ステア)がいて、ステアは肝付兼太さんなので、ホワン・ルイだったりします。(弟のアーチーはキュンメル男爵の三ツ矢雄二さん)
ついでに言うと、キャンディの初恋の人はアンンソニーで、こちらは井上和彦さんでダスティ・アッテンボローであり、その次にキャンディが好きになる、テリュース・G・グランチェスター(テリィ)はヤン・ウェンリーだったりします。
アンソニーは落馬事故で亡くなり、テリィとは破局するキャンディ。
原作でもアニメでもキャンディがその後、誰と結婚するのかまでは描かれませんでしたが、多分・・・ウィリアムと結婚かな。
このウィリアムは、ウィリアム・アルバート・アードレーで、アードレー家の総長であり、キャンディを養女にした人物。
因みに声優さんは井上真樹夫さんでしたので、銀河英雄伝説では、アンスバッハです。
ウィリアムの秘書はジョルジュで、この声は・・・戸谷公次さんでしたので、シュトライト。
アニメ比較でも書きましたが、キャンディの周りには、親戚や友人に銀河英雄伝説の自由惑星同盟の政治家がいっぱいいて。
恋関係では、キャンディは、自由惑星同盟軍の先輩・後輩コンビを手玉に取っていて。
それから、キャンディを見守ってくれている大おじ様やその秘書は、銀河帝国のブラウンシュヴァイク公の部下だった人ばっかり・・・って環境で。
そう考えると凄いわね・・・キャンディを踏まえた上でキャスティングしていたのだとしたら・・・もっと凄い。←それはないだろうけど。
ウィンザー夫人は1巻の最高評議会の会議の時にしか出て来ないので、勝手に彼の父や祖父などを構築したりしました。
あと、前任者も勝手に作りましたが、前任者が贈収賄事件で辞任したのは、原作にある通りなのですが、どういう件で・・・とは書かれていないので、勝手に作ってしまいました。
原作では、テルヌーゼンは隣の惑星ですが、アニメではハイネセンの隣の市という事になってます。
そして、ここから出馬したのがジェシカ・エドワーズなんです。
・・・そう、テルヌーゼンは中央じゃない。
ここがミソ^^@
それにしても、チョイ役に松島みのりさんを持って来るなんて、さすが銀河英雄伝説です。
普通なら、1回しか出ないような人物で、重要でも何でもないキャラだと、メインのキャストの人がちょっと声を変えて・・・なんて事があるんだけどね。
あ・・・。
レオナルド・クリーヴス、マルケス・ノートン、アルバート・モンスリーは、オリキャラですので、エンクロ見ても・・・載ってないです。
ここから先は、12/1に書いております。
ウィンザー夫人が辞任してマスコミに追いかけられるところを書いた方が良いかな・・・どうしようかな??と思っていましたが、初出版にはそれを書きませんでした。
でもね、やっぱり書いた方がいいや!って思いまして。
そして書いてみたら、スッキリしました。
美人だけど、真黒黒黒だったんですね、この人。
人のせいにして辞めちゃって・・・。
はぁ~スッキリしました★
それにね、ウィンザー夫人とトコトン厭な女に仕上げました・・・ってか、若干モデルもいたりなんかして。←え??
それから、オリジナルとは言え、レオナルド・クリーヴス氏も、ホントにイヤなヤツに仕上げました。
奥さんや愛人達が愛想を尽かすのも無理ない人ですよ、ホントに。