※今回のこの小説は原作終了後の世界を取り扱っております。その為、役職や階級等が原作とは異なります事、ご了承下さいませ。
新領土<ノイエ・ラント>ハイネセンの総督である、アウグスト・ザムエル・ワーレン元帥が、年下の同僚のナイトハルト・ミュラー元帥と共に居酒屋「闘牛士<シュティーア・ケンプファー>」を出た時、既に日付は11月10日になっていた。
ここは昔、ルッツが見つけて、ワーレンとルッツの2人で来ていた店だ。
人目につきにくい場所にあるので、同僚達の中でも特に仲が良かった2人にとっては、ある意味、隠れ家的存在の店だったのだのである。
所用で11月4日に、ハイネセンからフェザーンに来ていたワーレンは、1ヶ月遅れで、8日にルッツの墓参りを済ませていた。
博学なメックリンガーが教えてくれたのだが、そういうのを「月命日」と言うのだそうだ。
遠い昔は、ごく普通に、その人が亡くなった日と同じ日に、亡くなった人を偲んでいたそうだ。
今はすっかり廃れてしまった風習だそうだが、そういう風習は、何とも心を穏やかにしてくれる気がする。
ワーレンは、1ヶ月遅れなのを気にする事なく、ルッツの墓参りをする事が出来たのであった。
そして、翌日の9日に何とか時間を作ってミュラーを誘ったのだが、10日の午前中には、ハイネセンに向けて出立しなくてはいけないのだ。
・・・都合、たったの一週間の滞在だ。
何ともせわしない。
ミュラーと飲んだ昨日は、本当に心地良く酔えた。
普段は、午後7時を回ると、値段が手頃なのでフェザーン宇宙港等で働いている港湾労働者が大挙して押し寄せる店なのだ。
つまり、静かな落ち着いた雰囲気の中で飲めるのは、開店してから2時間弱と言う事になる。
だが、2人の地位を考えてくれ、今日だけは静かに飲みたいに違いないと、マスターは表に、「本日は貸切です」という札を掛けてくれたのだ。
それで、ありがたい事に貸切状態で飲めたのである。
10日の午前10時ジャストに、フェザーン宇宙港からハイネセンへ出立の予定だったワーレンはさすがに2軒目に行く気力は無かったし、この店でじっくり飲めるのは本当にありがたかった。
それに、連日、頭の中がルッツの追悼モードだったし、色々な意味で、他で飲む気がしなかったのだ。
「悪いがミュラー、朝が早いからここで・・・」
店を出た瞬間にワーレンは切り出し、ミュラーは「そうですね。出立、早いのでしょう?」と頷いた。
「あぁ、10:00<ヒトマルマルマル>ジャストに出航だからな。全く・・・道中が長くて、滞在期間が短過ぎるのだ。せっかく皆に会えたと思っても、どうも、せわしなくていかんな」
もう少し長くここにいたいと思うのだ。
ここには、気心の知れた仲間が大勢いるから・・・。
そういった仲間と共に過ごせるのはありがたい事だと、改めて仲間の素晴らしさに気付くワーレンだった。
「まぁ、そうでしょうけど、それは仕方がないですよ。・・・息子さん、待っておられるのでしょう、向こうで」
「・・・あぁ。そうだ。最近な。アルの奴、フライング・ボールを始めてな。これが実に楽しそうで」
アルベルト・ザムエルは、ワーレンにとっては亡き妻との間に生まれた、たった1人の息子ではある。
ただ、今までは軍務が忙し過ぎて、オーディンにいた時は、自分の両親に息子を預けっぱなしにしていたのだった。
フェザーンに遷都が決まった時、両親と息子を呼び寄せてはいたが、そこでも、たまにしか会う事が出来ず、歯がゆい思いをしていた。
ワーレンは新領土<ノイエ・ラント>総督としてハイネセン行きが決まった時、最初は単身赴任をした。
その半年後、所用でフェザーンに戻った際に、「こいつは特権乱用かな・・・」と呟きつつも、皇太后ヒルダの許しを得て、両親と、妻が遺した1人息子のアルベルト・ザムエルをハイネセンへ呼び寄せたのだった。
「フライング・ボールですか。それは楽しそうですね。あのスポーツはどちらでも人気なんですね」
「あぁ、本当にな。俺も子供の頃は得意だったからな。しかも・・・あっちには、企業経営のプロチームがいくつもあって、市民達はスタジアムで熱狂的に応援している。かつて、平民達による大規模な集会が禁じられていた我々にとっては驚くべき事だ」
「そうなんですか!」
帝国にはスポーツ関連の学生リーグはあっても、利潤を追求したプロチームはなく、大規模なスタジアムの存在も無い。
「卿は・・・」
「はい?」
つい、「結婚する気がないのか?」と言いそうになってしまうワーレン。
だが、すんでのところで思いとどまって、「いや・・・なんでもない」と、ワーレンはそれ以上を言うのをやめた。
ミュラーも、何だろう?とは思ったが、聞き返す事はしなかった。
「それじゃ、朝、ちゃんとお見送りに行きますね」
ミュラーはにこやかに言って、その場で2人は別れたのだった。
「さて・・・と、ちょっと歩くか」
今日は少々飲み過ぎたようだ。
前日は1人しみじみ・・・だったのだが、今日はミュラーが居たせいか、杯がすすんでしまい、いつものペース以上で飲んでしまったのだ。
夜風が心地好くて、何となく気が向くままに歩き始めるワーレン。
宇宙港や宿舎がある方とは反対の方向にだ。
そして、小さな公園を見付けた。
夜の公園は、人気がなく、ひっそりと静まりかえっていた。
ブランコや滑り台、ジャングルジム、ベンチに水飲み場・・・小さな砂場や池等がある、本当に小さな公園だった。
ここにこのような施設があるのは、この近くの工場で働く女性達の子供を預かった託児所が、昼間、子供達を遊ばせる為に作ったのだそうだ。
だが、一般の人達もここを利用している。
「そういやここでアルとルッツが・・・」
ワーレンの中に、過去の記憶が呼び覚まされた。
それは・・・。
新帝国歴2年(宇宙歴800年)の8月下旬の事だった。
7月29日に正式にフェザーンへの遷都が決まり、ワーレンはすぐさま、オーディンにいる両親と息子をフェザーンに呼び寄せた。
オーディンからフェザーンに移民した市民の第一陣の中にワーレンの家族がおり、「特権乱用だな」とルッツにからかわれたものだった。
そして、ワーレンは、休暇の時に、この公園にアルベルトを連れて来た事があったのである。
その時、ちょうど、同じ時期に休暇が取れたルッツが暇そうだったので、3人で公園にやって来た。
アルベルトはルッツに、『ねぇ、何となくファーターと似てるね』などと言って、すぐに懐いてしまった。
アルベルトと一緒に、池の淵で帆船の模型を浮かべて、彼の遊びの相手を嫌がらずにしてくれていたルッツ。
そして、何があったか、立ちあがった拍子に、小石に躓いてバランスを崩して池に落ちてしまったのである。
『おい・・・何をやっているんだ・・・』
呆れるワーレン。
ルッツは、『しまった、しまった・・・ちょっとバランスを崩してな』と決まり悪そうに笑った。
それから、急に大きく手を振った。
『おい、アル。ここの中、冷たくて気持ちいいぞ~!!入って来いよ!』
急にルッツが水をバシャバシャしながら言った為に、父親と同様に驚いていたアルベルトは更に驚いて目を丸くした。
『いいのかなぁ。ファーター・・・』
そう言って、アルベルトはワーレンを見た。
『・・・何だか、気持ち良さそうだね!』
そう言う息子に対して、ワーレンは、本当は『やめておけ』と言いたかった。
バシャバシャやったものだから、全身がびしょびしょになったルッツは、呆れた事にまだ手を振っている。
全く・・・どういうつもりなのだ?と、ワーレンは顔を顰<しか>めた。
『ホントに気持ちいいんだぞ~!』
更に楽しそうに言った為に、アルベルトは、『よ~し!!僕も・・・入っちゃおうっと!』と、ニコニコしながら豪快に池に飛び込んでしまった。
5歳の子供は、面白い事に目が無い・・・。
制止する暇もなかったワーレンは、アルベルトが飛び込んだ時の、水しぶきをモロに浴びる事になってしまったのだ。
『つ・・・冷た・・・』
思わず顔を顰<しか>めるワーレン。
だが、ちょうど池の掃除をした直後で水はキレイだったし、大して深くも無いので、子供達が中に入ってパンツ1枚で遊んでいたのも事実だった。
ましてや、真夏真っ盛りだったし。
だけど、何もいい大人が子供に強要しなくても・・・と、ルッツに抗議しかけたが・・・。
次の瞬間に発せられたルッツの言葉に、唖然、茫然となるワーレン・・・何も言えなくなった。
『卿も一緒にどうだ?』
『・・・は?』
一瞬、目が点、耳がダンボになるワーレン。
そして、追い討ちをかけたのはアルベルト。
『ファーターも入ったら?凄く気持ちいいよ~!!』
屈託の無いアルベルトの笑顔に破顔するワーレンだったが、それでも、まだ理性は残っていた。
休暇中だったから軍服ではないが、いい大人が・・・帝国軍の重鎮である2人が昼間の公園で、服を着たまま子供と水遊び・・・。
私服だったから軍人とはバレてはいないが、この状況を、もし2人の部下達が見たら一体何だと思うだろうか?と、ワーレンは辺りを見回してしまった。
だが、ルッツはそんな事を気にしていないようだった。
『たまには童心に返るのもいいもんだぞ?』
ルッツのこのダメ押しのひとことが効いて、結局、息子の為・・・と、ワーレンも池に入ってしまった。
半ば開き直っての・・・行動だ。
『俺は思うに・・・卿は結婚して子供が出来たら、子煩悩通り越して親ばかになるのではないか・・・・・・』
1ヶ月前の7月6日に、ルッツは以前入院していた病院の看護婦のクララ・アインシュタイン嬢との婚約を発表していた。
『・・・かもな。でも、子供なんてのは、その・・・なんだ』
池の中にしゃがみ込んでいたルッツはやや赤面し、頭からアルベルトに水をかけられながら困惑気味の表情を浮かべていた。
ルッツのくすんだ金髪にかかった水しぶきが、優しい陽の光を反射してキラキラと輝いていた・・・。
まさか、この2ヵ月もしない内にあのような悲劇が、ルッツの身に降りかかろうとは思いもしなかった。
ルッツが爆弾テロの為に負傷して入院したのは新帝国歴(宇宙歴800年)4月の事であった。
その入院先の病院で、ルッツは、彼付きの看護婦をしていたクララと出合い、3ヶ月の後に彼女との婚約を発表した。
「そう言えば、見舞いに行った時に彼女が検温だか何かで病室に入ってきて、ルッツの奴は少々動揺していたな・・・」
つい、口に出して苦笑するワーレン。
ルッツのそんな様子にピン!ときて、大親友の彼にやっと春が訪れた事を喜んだものだった。
ちょっと勝気そうな面を持ち合わせた彼女は、ルッツにはピッタリだと思ったものだった。
親友が幸せになるのは自分の事のように喜ばしく、煌びやかな華燭の宴を想像したりもした。
それなのに、運命の女神は何と酷な事をしたものか・・・。
婚約までして、後は挙式をするだけだったルッツは、9月下旬にハイネセン行きを決定した皇帝ラインハルトの随員の1人として帝都フェザーンを発ったものの、惑星ウルヴァシーで、皇帝一行を護って横死してしまった。
そう・・・新帝国歴2年(帝国歴800年)10月8日の事だった・・・。
帝国元帥に叙されたとしても、生きていなければ、愛する彼女を抱く事も出来ないだろうに・・・。
大神オーディンは、首都星のオーディンを捨てて、フェザーンに遷都した事を快く思っていなかったのか?
クララ嬢が、もう、一生結婚しないと宣言したという噂を耳にした時、ワーレンは複雑な気持ちに陥ったものだ。
親友の死を知った時、ワーレンは持っていた書類を取り落とし、ハウフに「閣下!大丈夫でございますか!」と心配された。
その時の事はあまりにもショックであまり覚えていないのだが、ハウフの話では、ワーレンは小刻みに震えていたらしい。
そして、「ルッツが戦死・・・ルッツが・・・」と呟いた後で、我に返ったワーレンは、慌てて「それで皇帝陛下は!?」とハウフに確認したそうだ。
皇帝陛下の身の安堵よりも、ルッツの死にショックを受けていた自分・・・なんともはや・・・である。
「まぁ、クララ嬢の気持ちは分からなくもないがな・・・。ルッツほどの男はそういるものではないからな。それに俺だって、ヴィオレットの事は今でも愛しているし、今更再婚をする気もないからな・・・」
ベンチに腰掛けて回想していたワーレンは、ふう・・・と大きな息を吐いた。
母親や、母の妹や父の姉などが、甥とその息子の将来を心配して、あれこれと再婚話を持ちかけて来た事を思い出す。
それこそ、しつこいくらいに。
その度に、「今は忙しくてそれどころではありません」と答えて、再婚話攻撃に耳を貸さなかった。
実際、「アムリッツァ会戦」や「神々の黄昏<ラグナロック>作戦」の頃にその話を持って来られて、閉口したものだ。
こちらが死ぬ程忙しい目にあっている時期にばかり現れる親戚に辟易した。
「落ち着いたら聞きますから。本当に忙しいんです。いい加減に私の立場を分ってもらいたいですね」
しつこい親戚には、そう釘を刺した。
だが、それは建前であって、本当は妻の死のショックが大きかったのだと、今になって思う。
軍人である自分の方が死ぬのは早いと思っていたのに、彼女の方が大神オーディンの元に召されてしまうとは・・・理不尽過ぎて腹が立った。
そして・・・彼女をあまりにも愛し過ぎていたワーレンは、安易な再婚話に乗り気になれなかったのだった。
「そう言えば・・・ミュラーの奴、コンスタンツェ嬢とは談笑していたな。珍しく話に花が咲いていた。あの2人・・・案外、似合いかも知れん・・・」
ワーレンはつい、口に出してしまった後で、「いや・・・年が離れ過ぎているか」と、苦笑を浮かべる。
19歳のコンスタンツェと、とうに34歳になっているミュラーとでは、15歳の年の差がある。
15歳の年の差の夫婦なんて珍しくもないが、その年頃の少女が年上の男性と付き合うのにはかなりの障害がある。
大抵は同年代の彼氏がいたり、片思いなんかをしていたりするものだし、趣味や価値観もかなり違う。
それに最大の障害は親だ。
年の離れた男に娘を嫁がせたいと考える親はいない・・・事もないが、少数派だろう。
ただ、同僚のケスラーは20歳以上も年下の少女と婚約して結婚していたから、年の差のあるカップルは、全くあり得ない話ではないが、これはあくまで、“特殊なケ-ス”と考えた方がいいだろう。
「それにしても、一体どんな原因で手痛い失恋をしたのだろうな・・・。ここまで頑なに恋愛を拒むとは、よほどの事に違いない」
ミュラーは同僚や、回り人間から誰かを紹介されたりする度に、「小官は中尉時代に手痛い失恋をしましてね。それから後は恋愛も、結婚する気も失せてしまいました」と言っては、その手の話から逃げている。
時々、「恋人募集中です」と口にする事もあったが、その殆どは冗談で、本気で言っている訳ではなかった。
最初の内は、単なる逃げ口上かとも思っていたが、何度も言われると、本当に“何か”があったに違いないと悟った。
振ったにせよ、振られたにせよ、相当ショックだった“何か”がだ。
それにしても、中尉時代となると20歳前後の事だろう。
本当に何があったのだろう?
だが、何故、恋愛に対してそこまで引いてしまっているのか、当の本人が頑なに理由を語ろうとしないのに無理やり聞きだして、過去の傷口に塩を塗りこむような無神経さをワーレンは持ち合わせてはいない。
あの無骨で遠慮のないビッテンフェルトでさえ、ミュラーには、失恋の事を含めて、その手の話題を振らないのだ。
1度、飲んだ席上で、酔っ払ったビッテンフェルトがミュラーに対して、「・・・卿が結婚しないのは、まさか男好きって事はないよな?」などと言いだした事があった。
生真面目なミュラーには、その手の冗談は通じない。
「小官は至って健全ですが。・・・そう見えるとは心外ですね」
ミュラーはそう言ってその話題を退けたが、何がそこまで彼をストイックにさせているのだろうか?
異常なほど無口なアイゼナッハが、如何にして細君を口説き落としたのか?という謎と同じくらい、ミュラーの恋愛の対する頑なな態度も、同僚達にとってはやはり長年の謎なのであった。
「まぁ・・・こればっかりは他人が口出しする事でもないしな・・・。そっとしておく方がいい。・・・きっと、いつか時間が解決するだろう」
ワーレンはゆっくりとベンチから立ち上がった。
その直後に、胸ポケットに入れてあった携帯ヴィジホンがけたたましく鳴り、ワーレンは溜息を付いた。
「閣下、今どちらです?宿舎のホテルにいらっしゃらないから心配して・・・」
副官のハウフ中佐からだった。
生真面目な副官のハウフの口調は・・・本当に上官を心配してのものだった。
「・・・公園だ」
「え・・・公園ですか??」
「あぁ、それでどうした?」
「いえ、積荷作業が少々手間取っていましたが、午前0時には全工程を完了しました。問題なく出立出来ますのでご安心下さい」
「・・・ん、そうか」
時計を見ると、午前2時に近い。
宿舎に戻って、一眠りをした方が良さそうだった。
「分かった。これから宿舎に帰って一眠りして・・・。そうだな、07:30<マルナナマルサン>に迎えに来てくれるか?」
「承諾<ヤー>」
「あ・・・と。その時な、悪いが二日酔いの薬を持って来てくれるか?」
「・・・かなり飲まれたんですか!?」
ハウフの声のトーンが高くなる・・・驚いている様子だった。
それに心配のエッセンスが加わる。
「大丈夫なのですか、閣下・・・」
「まぁな。ミュラー相手についつい杯がすすんでしまってな。一応念の為だが、用心に越した事はない」
「・・・お持ちします」
「じゃぁ、頼む」
上官が『かなり飲んだ』事に驚くハウフの顔が映っている携帯ヴィジホンを切って、ワーレンは軽く伸びをして頭を切り替えた。
そして、もと来た道を引き返したが、ふと、回り道をしようと方向を変えた。
歩いても大した距離ではないし、酔いを醒ますには・・・うってつけだった。
やがて辿り着いたその場所は・・・ルッツや同僚達が眠る場所。
既に門は閉ざされているが、園内は・・・僅かながらにライトアップされ、真っ白な大理石の墓石が闇夜にちらほらと、幻想的に浮かび上がって見える。
「ルッツ・・・またな」
ワーレンは小さく呟くと、遠く丘の方に見える、ルッツやシュタインメッツ、ファーレンハイトらの並ぶ墓の方向を向いて敬礼した。
「・・・そうだ。ヴァルハラにはラインハルト陛下もおられるのだろうから・・・。あぁ、ロイエンタールもオーベルシュタインも、キルヒアイス、ケンプやレンネンカンプも・・・ヴァルハラには集結しているか。そうだな・・・陛下を中心に、皆でヴァルハラ征服をしておいてくれ。俺達がそっちに行った時に・・・更に住み良いようにしてくれているとありがたい」
宇宙暦804年(新帝国暦6年)11月10日午前10時・・・。
ワーレンは、居並ぶ同僚達に見送られながら、息子や両親の待つハイネセンへ向けて出立した。
Das Ende
ルッツの追悼企画で書いた話の続きです。
半分ボツっていたのですが、ちゃんとした形に出来て良かったです。
タイトルは・・・ドイツ語で「亡き友人の為に」です。
ルッツ・・・ちゃんと結婚して子供がいたら、きっと子煩悩だ!・・・と勝手に思い、ワーレンの息子を引き合いに出し、彼に子供っぽい、水遊びをさせてしまいま
した。
作中のルッツの言葉ではないですが、たま~には、童心に返るのも良いかも?
ルッツとワーレン・・・似ているので、(息子までが言ったし)ワーレンにルッツを語らせる・・・のは、とても楽ですね。(書きやすいという意味で)
ただ、あまり捻りが無いのですが・・・。
・・・あまり追悼になっていませんが、11月・・・になっているのは理由があり、ワーレンは仕事の都合で11月にフェザーンに来て、11月8日の「月命日」に墓参りをして・・・と言う、時間の流れです。
いっそのこと、ワーレンの日記風にして、彼の1週間を書くかしら??・・・爆!(うわぁ、面倒くさそう・・・でボツ!)
いや・・・この話は、そもそも、ルッツの追悼の為に書いた作品なので、ワーレンの一週間では、ルッツの存在がぼやけてしまうのでダメですね。
さて、ミュラーが34歳って事は、ワーレンは37歳なんですよね。
原作を読み始めた時は、私はアレでしたので、さすがに30代は未知の世界でした。
同盟のアッテンボローが30歳になって嘆くシーンがありますが、自分が30代になると、なるほど・・・と思いました。
さて、ミュラーは9月生まれで、ワーレンは7月生まれで・・・そういうのを調べるのは凄く楽しいですね。
・・・と言っても、誕生日の設定はコミックスによるものなので(田中先生の了解を取っているだろうけど)、原作にはない設定ですね。
それによると、オーベルシュタインは『こどもの日』の生まれなのですが・・・妙にオカシイです。
そして、何度も書きますが・・・私の友人や、ワーレンがどんなに心配しようとも、ミュラーとコンスタンツェ嬢とのお付き合いはありません。
なので、第三部目は・・・勝手な事を考えるワーレンはいますが、コンちゃんを登場させてません。
それにしても、どんな失恋だったんだろうなぁ。
中尉時代って事は、ミュラーが、フェザーン駐在武官だった頃の事だろうとは思うのだけど・・・。
あぁ、でも、フェザーン駐在武官の話は、OVAのオリジナルだっけ・・・。
そう言えば、知人がその当時の事を小説にしていたっけ・・・もう、サイトを閉鎖してしまいましたので読めませんが。
さすがに、彼女に振られたからといった理由で、ここまで女性不審と言うのも変な話なので、きっとね~結婚詐欺まがいの事をされて、純情なミュラーが立ち直れないぐらいに散々な目に遭ったって感じかな。
それも、1度や2度じゃなくて3回ぐらいあったとか。(爆)←その3回とも全て、ミュラーが気付いていないだけで、同じ組織が仕掛けていたとしたら・・・
もう、サイアクですよね。
まぁ、そんな感じで、女性を魔物と思うようになって、深入りは避けているとか?
さてさて・・・。
この一連の「Ein Requiem」シリーズですが、最初からルッツの追悼で書くと決まっていた訳ではありません。
ただ、自分の好きな聖飢魔Ⅱの2つの歌を聴いた時、何かしらに使えると漠然と思っていただけです。
なので、1作目と2作目に関しては割合と書きやすかったのですが、3作目はちょっと考えてしまい、書きかけのまま、放置してしまいました。
それは、追悼曲の話にするには、もう、無理だったので・・・11月10日の朝に出立となると、夜はもう、ワーレンは旗艦サラマンドルの中ですから・・・時間的に無理だし、ワンパターンはイヤだったし。
さて、どの時点で放置していたかと言うと、ワーレンとミュラーが分かれる寸前までで終っていました。
さすがに勿体無いな・・・と思い、書いたのがこの作品です。
先の2つは少し手を入れた改稿物であり、3作目は新作・・・ここが肝心。
一番苦心したのは、まず、ワーレンが家族をフェザーンに呼んだのはいつか?と、ワーレン親子とルッツが公園で遊んだのはいつか?で。
何しろ、最初に書いた時から随分経っている為、時間的認識が欠けていて。
勿論、書いていた時も、原作を片手に年表っぽい物を書きだしていましたが、それをもう1度やったという感じでしょうか?
とにかく、細かくて面倒くさいのですが、これはとても重要で、重要と言えば、息子の年齢も。
まぁ、これについてはOVAでも出てきますが、ワーレンが地球に向かう話の時に、 4年前に妻と死別・・・と出てきます。
それで、宇宙歴799年にアルベルトは4歳と言う事になる訳で、そして、奥さんが亡くなったのは795年という事ですね。
難産で・・・でしたからね。
そこから計算を始めたのですが、翌年、ラインハルトはフェザーンを正式に首都にするので、家族を呼ぶ。
公園で遊ぶ為には、ルッツが元気でなくてはならないので、テロの怪我が癒えた800年8月末に決定。
実はこの時期しかないんです・・・2人の接点。
何故なら、その前年はワーレンは地球に行っていますし、ルッツ自身はイゼルローン要塞にいて接点が無く、その後は、「回廊の戦い」があり、平和的時期で、尚且つ、2人がフェザーンに・・・だと、どうしても800年の8月前後しかないんです。
7月29日に遷都が決まり、8月末には家族がフェザーンにいますから、オーディンからの移民の第一陣にワーレンの家族がいた事にすれば問題解決です。
尤も、ルッツに言わせれば、「特権乱用」と言う事になるのですが、ワーレンは帝国の重鎮たる上級大将ですから、このぐらいは特権乱用には当たらないでし
ょう^^@
そして池で遊ぶには夏でなくてはなりませんし、これも8月にする事で解決出来てしまいました。
いやぁ、接点があるのが真冬でなくて本当に良かった。(真冬だったら雪遊びに変更すればいいだけの話ですがね)
また、7月6日にルッツは婚約を発表していますので、クララが話の中にまぎれていても無理が無いし。
そういうのを原作を引っ張り出したり、エンサイクロペディアで確認したりして、何とか話を構築出来て本当に良かったです。
そして思うのですが、銀河英雄伝説の次世代の物語を書くとなると、フェリックスとアレクだけではなく、登場させるのはやはり、ワーレンの息子になる。
別の友人のサイトでもワーレンの息子が登場しました・・・名前は勿論違いますが。
それから、次世代の物語に絶対に登場してくると思われるのは、ケンプの2人の息子とアイゼナッハの息子。
そして、多分、将来的にマリーカが生むであろうケスラーの子供とか。
ワーレンがハイネセンにいる事を考えると、何かしらのきっかけで、キャゼルヌ家の次女と、アルベルトが出会う可能性だってあるでしょ?
年齢的には、アルベルトと近いと思うんだけどな・・・。
キャゼルヌ家の次女は、その名前が原作でもOVAでも付けられていなかったので、ある意味、謎の少女ですよね・・・。
長女がシャルロット・フィリスですから、そうだなぁ・・・次女はルーシー・メイとかどうかな?
何故、ルーシー・メイかと言うと、「南の虹のルーシー」が好きだから・・・ただそれだけの理由ですが、「ルーシー・メイ」の名前の響きが好きなのです^^@