「ふざけてやがる!元帥閣下は何を考えておられるのだ!ビッテンフェルト提督を軟禁など断固許せん!」
 
 逗留先のホテルの一室。
 黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊の副司令官のハルバーシュタット大将は、缶ビール片手にいきり立って吠えた。
 ホテルの部屋の冷蔵庫に入っていたそれは、程良く冷えていたが、怒りながら飲んでいるせいか、少しも美味く感じられない。


 この怒りをどこにぶつければ良いのか・・・。
 腸がぐつぐつと煮えくりかえっている。


 全く、旧同盟の首都星ハイネセンに来てから・・・ろくな事が起こらない。
 それもこれも、全てはあの陰険な・・・オーベルシュタイン元帥のせいであった。
 もし可能ならば、自分自身も元帥を殴りつけて、コテンパンに伸してやりたい。
 だが、現実に立ち返ればそれは不可能であり、だからこそ余計に腹立たしくて吠えているのだった。
 そして、飲まずにはいられなかった。 


 艦隊司令官のビッテンフェルトがまさか、軟禁されてしまうとは・・・。
 確かに、上級大将が元帥を殴るなどあってはならぬ事だが、元はと言えば・・・元帥のやり方が悪いのだ。
 懲罰の対象とは言え、誰もがビッテンフェルトに同情を覚えた。


 「あぁ、腹の虫が治まらぬわ!元帥閣下でなければ俺だとて、ぐいぐい締め上げてやるのだがな・・・!それこそ、ヴァルハラの門をくぐれぬほどに!!」


 ハルバーシュタットが吠えると、グレーブナーも「分かる、分かる!俺だって、横っ面を・・・こう、思いっきり張り倒してやりたい・・・」と悔しげな声を出した。


 殴ってやりたいと“思うだけ”だったり、殴る“イメージ”を頭の中で想像するのは誰にでも自由だ。
 だが、相手は・・・元帥で上位者だ。
 逆ならさほど問題は無いのだが、本当に行動に移してしまったのだ、我が司令官殿は。
 けれど、前後の状況を聞くと、ビッテンフェルトが怒るのは最もだと思われた・・・それ故に腹立たしい。


 ハルバーシュタットは、苛立ちながら、何缶目か分からなくなった缶ビールをあおった。
 テーブルの上には、同僚達と自棄になって開けた缶ビールの空き缶が20缶以上もゴロゴロしている。
帝国産のビールに比べて、旧同盟のビールはかなり軽め。
 何とも水っぽさを感じる。
 こんな事にも腹が立っていた。
 不味くはないが、もっと濃くて苦味があった方が・・・帝国人の口に合う。


 「とにかく・・・このままでは!あぁ、それにしても歯痒い!くそぉ~!!」


 ハルバーシュタットは最期の缶ビールを一気に飲み干した。
 そして、ギリギリと歯ぎしりをする。


 「全く・・・困りましたな・・・」


 参謀長のグレーブナー大将も頭を抱えていた。
 ハルバーシュタットとは違って、こちらは白ワインを飲んでいるが、ワインも帝国産の白ワインの方が美味しいように思える。
 どうして・・・こうも歯痒い事ばかり起こるのだろう。
 グレーブナーも、最初はグラスに注いで飲んでいたのだが、今やボトルをを持ってラッパ飲みしていた。 


 2人の悩みの種は、敬愛してやまない自分達の上官、ビッテンフェルト上級大将の事だった。
 ビッテンフェルトは先頃、オーベルシュタイン元帥に殴りかかって首を締めあげて・・・そのまま監禁されていたのだ。

 どちらが悪いかと言えば、先に手を出したビッテンフェルトに非がある。
 だが、殴ったのはたった1発。
 それも、慌てた他の幕僚達がビッテンフェルトをオーベルシュタインからすぐさま引き離したので、大事には至らなかった。
 オーベルシュタインの頬が多少腫れたぐらいで、それは大した怪我でもなかった。
 数日経てば・・・腫れは跡形もなく引くだろう。


 「ふん!大した怪我でもあるまいに。その程度の事で監禁するなど・・・元帥閣下も度量が狭い。まぁ、あの人は陰険そうだからな。いや、陰険そのものか!」
 


 ハルバーシュタットはオーベルシュタインの陰険さに我慢がならずに大声で怒鳴った。
 前から虫が好かなかったが、今回の事でますます嫌いになった。
 
 「なぁ、ハルバーシュタット。まさか、閣下がこのまま粛清対象にされてしまうという事はないと思うが・・・」


 グレーブナーは不安そうな声を出した。
 参謀長の彼は、ビッテンフェルトを心から信望している。


 「ふん、分からんぞ?オーベルシュタイン元帥は、キルヒアイス元帥が亡くなられた要因を作った男ではないか。皇帝陛下にあらぬ事を吹き込む可能性だってある。そうなったらただではおかん!そうだろう、グレーブナー大将?」
 「当たり前だ!何かがあってからでは遅い。ふう。確かにこのまま・・・手をこまねいていても埒が明かぬ・・・か」
 「そうだ。早急に何とかしなければ!我々は・・・あのお方あっての艦隊なのだぞ!元帥の余計な横やりで・・・艦隊を分割なんて事をされでもしたら!あぁ、考えるだに恐ろしい!」
 「おい・・・ハルバーシュタット・・・!それはちょっと・・・」
 「分からんぞぉ??あの陰険なヤツのやりそうな事ではないか!」


 ひとしきり怒鳴った後で、ハルバーシュタットは憮然とした表情を浮かべてコーヒーを啜った。
 とっくにビールは無くなり、仕方なく部屋に備え付けてあったビン入りのインスタントコーヒーを淹れたのだ。
 このホテルのこの部屋には電気ポットが1つあるだけで・・・サイフォンや、コーヒーメーカーがない。
 コーヒーは挽き立ての豆が一番美味しいのだが・・・インスタントではその奥深さが出せない。
 おまけにクソ不味い・・・これにも腹が立っていた。


 ビッテンフェルトが、悠然と司令官でいるから、「黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊」は、「黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊」でいられるのだ。
 ビッテンフェルトが監禁されてしまったので、オーベルシュタインは、艦隊の指揮権を一時的にミュラー上級大将に委ねたらしいが、全くもって承服しかねる話だ。
 尤も、委ねられたミュラーもさすがに困惑していた。
 オーベルシュタイン元帥に対して、「黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊」の将兵は決して承知しないだろうし、艦隊の指揮官は、ビッテンフェルトだけだと言ってくれたらしい。
 だが、オーベルシュタインは、ミュラーに氷のように冷たい線を向け、帝国軍の艦隊は、皇帝の艦隊であって、ビッテンフェルトの私兵ではないと一蹴したらしい。
 そんなの・・・オーベルシュタインなんぞに言われなくとも、全員・・・肝に命じている。
 確かに我々は皇帝の命を受けた銀河帝国軍なのであって、ビッテンフェルト個人の私兵ではない・・・だが、上官を敬愛して、それのどこが悪いのだ!!!


 「ミュラー提督が嫌いな訳ではないぞ?だがな・・・俺は絶対に認めん!艦隊の司令官はビッテンフェルト閣下しかあり得ん!」 


 ハルバーシュタットは艦隊の副司令官である。
 自分の上官はビッテンフェルトただ1人・・・そう肝に銘じて今までやってきたのだ。
 椅子を蹴って立ち上がり、拳を握り締めた。


 上官が元帥を殴った事で溜飲が下がっているが、オーベルシュタインを好く者など、この黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊には1人だっていない。
 もし、ビッテンフェルトに何かが起これば、全員で報復する意思は・・・あるのだ。
 ・・・反逆罪だの、謀反と思われようとも・・・だ。
 それほどまでに、黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊の面々は、ビッテンフェルトを敬愛しているのだった。
 とにかく、この艦隊の司令官は、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト・・・この人しかあり得ないのだった。


 「ともかくだ。ここで吠えているだけではどうにもならん。1度・・・正式に元帥閣下に面会を求めようではないか。それから、ビッテンフェルト閣下の事も非常に気になる。元気でおられれば良いが。面会や差し入れが可能かどうかも確認しなければ・・・な。とりあえず、軍務尚書の側近の官房長のフェルナー少将に渡りをつけようではないか。なぁ、そうしよう、ハルバーシュタット」


 グレーブナーは怒りが頂点に達したハルバーシュタットよりも、やや冷静だった。
 そして、彼は、ホフマイスターにも声を掛けた。


 「おい。我々はこれから面会を求めに行くが、卿はどうする?」


 それまで黙って、2人の上官を見守っていたホフマイスター中将は大きく頷いた。


 「勿論、ご一緒させて頂きます。このまま・・・ビッテンフェルト閣下に何かあったら、小官は「また優れた上官を失う」事になりますから。それだけは・・・絶対に許せません。あってはならぬ事です。たとえあの元帥閣下が相手であっても、これだけは引く気はありませんよ」


 言葉は丁寧ながら、怒りに満ち溢れたホフマイスターの言葉。
 それを聞いて2人は顔を見合わせたが、「なるほど、良く分かった。それでは我々と一緒に行こう」と、ハルバーシュタットはホフマイスターの肩を軽く叩いた。


 「そうだな。卿が一緒に来てくれれば・・・こんなに心強い事は無いな」


 グレーブナーにも笑顔を向けられ、ホフマイスターはほんの少しだけ肩を竦めたが、「一緒に行くのは当然です。小官も艦隊の一員なのですから」と力強く答えた。


 ホフマイスターは、「回廊の戦い」の前哨戦時には、アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト上級大将率いる艦隊の幕僚だった。
 あの戦いでは、焦れたビッテンフェルトの黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊が勝手に動き出してしまった為に、それに釣られる形でファーレンハイト艦隊も動かざるを得なくなった。
 その結果、性急に動いたビッテンフェルトの割を食らう形となったファーレンハイト艦隊は・・・壊滅的打撃を受けてしまった。
 司令官の戦死という最悪な結果に、生き残った艦隊の幕僚達は、「こんな結果になったのはビッテンフェルトのせいだ!」と大憤慨したのだが、更に憤慨したのは、残存艦隊が、黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊に組み込まれる事になった事だった。


 「回廊の戦い」の事がネックになって、最初の内は慣れ合わなかった旧ファーレンハイト艦隊の面々だったが、ビッテンフェルトの為人<ひととなり>を知ると、やがて・・・この黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊が何故、ここまで上官を敬愛するのか、分かってきたのだった。


 そして、いつの間にか・・・旧どうこう言う前に、すっかり黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンイター>艦隊の中に溶け込んでいる、自分達の現在<いま>に気付き始めていた。


 だからこそ、ホフマイスターは「また優れた上官を失う」と危惧する発言を自然に出していた。
 旧ファーレンハイト艦隊の面々にとって、過去の事は、過去として水に流した結果であり、実に良い傾向だった。


 こうして3人は、連れ立ってホテルを後にしたのだった。




 「え、ハルバーシュタット大将と、グレーブナー大将が元帥閣下に面会しに行ったって?また無謀な事を・・・」


 黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊副参謀長のオイゲン少将は、司令官のビッテンフェルトの副官のディルクセン准将から話を聞いて頭痛を覚えた。
 
 「ええ、そうです。そうそう、ホフマイスター中将も同行なされました。本来なら小官は司令官閣下の副官ですから、御三方に同行すべきなのでしょうが、事が事だけに・・・。それで、副参謀長閣下にご相談を・・・と思いまして。如何致しましょうか?」


 それを聞いて、オイゲンは胃まで痛くなって来た。
 慌ててポケットから錠剤の胃薬と頭痛薬を取り出して口に放り込んで飲み下した・・・。
 水無しでも飲める錠剤は彼の必需品だった。


 旧ファーレンハイト艦隊の出身のホフマイスター中将は、この艦隊に来てからは、孤高の存在、どちらかと言うと誰とも慣れ合わないタイプだったのに。
 今回の事はよほど腹に据えかねたのだろう・・・と推測出来た。


 「困った事になったな。・・・面会と言っても、きっと元帥閣下は会っては下さらぬだろうよ。ビッテンフェルト閣下への面会だってきっと禁止されているはずなのだ」
 「そうなのですか?」
 「あの元帥閣下の事だぞ?面会を許すぐらいなら最初から監禁などしないだろう。ともかく、我々は、あの方々に協力を要請しよう。直接の面会など・・・状況悪化を招きかねない」
 「・・・確かに」


 こうして、黒色槍騎兵<シュワルツ・ランェンレイター>艦隊で、唯一の良識派と呼ばれる慎重な性格のオイゲンは、ディルクセンを連れて、ワーレン上級大将、ミュラー上級大将の元を訪ねて面会を求めた。
 とにかく、打開策を模索しなくては・・・の心境であった。


 この2人は、ビッテンフェルトがオーベルシュタイン元帥を殴った瞬間を目撃していたし、その瞬間にビッテンフェルトに組み付いて、元帥から引き離す役目もしたのだ。
 ましてや、ミュラーは一時的にだが、艦隊の指揮権を委ねられていた・・・尤も、本人は承服しかねているが。
 だから・・・少しは建設的な意見が聞けるかもしれない。
 オイゲンはそう考えたのだ。


 このまま手をこまねいていたのでは埒が明かない・・・。
 オイゲンのその考えは、ハルバーシュタット達と一緒だったが、アプローチ法が全く違っていた。


 
 一方、オーベルシュタイン元帥に直接面会を求めた一行は・・・華々しく玉砕していた。
 どうやら、黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊は、上官の為人<ひととなり>が影響しているのか、階級が上になればなるほど、短気な猛将タイプになるらしい。
 面会は冷然と拒否され、勿論、ビッテンフェルトとの面会も出来なかった。

 橋渡しを頼もうと思ったオーベルシュタインの部下である官房長のアントン・フェルナー少将は・・・上官と同じく無表情だった。


 「元帥閣下はお会いにはなりません」


 こう繰り返すだけで、まるで壊れた玩具<おもちゃ>のオウムのようだった。
 フェルナーのこの態度に腹を立てたハルバーシュタットは、「あいつめ・・・あれしか言えんのか!」と拳をギリギリと握り締めて激しく吠えた。
 グレーブナーも、「せめてビッテンフェルト閣下に合わせてくれても良さそうなものだが、それも駄目とはな・・・」と悔しげに呟く。
 持参した差し入れが無駄になり、空しく袋を抱えているグレーブナー。


 「まさか・・・とは思いますが、拷問めいた事はなさっては・・・」
 ホフマイスターが呟くと、ハルバーシュタットは目を剥いた。
 「まさか!そこまではしないだろう・・・」と喘ぐように言う。
 「いや・・・分からんぞ?元帥閣下は陰険そうに見えるからな・・・」とグレーブナー。


 「まさかな・・・」と同時に呟いて、3人は顔を見合わせた。


 「もし、そんな事になったら・・・」とグレーブナー。
 「冗談ではないぞ!」とハルバーシュタット。
 「・・・お、落ち着きましょうよ!御二方とも!!」と慌てるホフマイスター。


 ホフマイスターに言われて、少しは冷静さを取り戻したハルバーシュタットだが、オーベルシュタインのやり方が気に入らぬ為に、本当にビッテンフェルトが不当な扱いを受けていないか気になりだし、苛立ちは最高潮に達した。


 「こうなったら、ワーレン閣下、ミュラー閣下にお縋りしよう。なぁ、ハルバーシュタット?」
 グレーブナーに呼応するかのように、ハルバーシュタットは大きく頷いた。
 「あぁ、その通りだ。よし・・・卿等、行くぞっ!善は急げだ!」



 こうして、3人はワーレンとミュラーに面会を求めたが、すっかり頭に血が上っていたハルバーシュタットは、ビッテンフェルトがもし処罰を蒙るような事があったら・・・と、2人に詰め寄った。
 まるで、脅迫されているような感覚に陥ったワーレン。


 「ことばをつつしめ、ハルバーシュタット大将。卿は、吾らを脅迫するつもりか」


 放っておけば、どんどん熱くなるこの男を何とか窘めたワーレン。
 ハルバーシュタットはまるで、小型のビッテンフェルトのようだった・・・。


 「黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊は階級が上がるにつれ、司令官の影響をもろに受ける」とは噂では聞いた事があったが、噂どころか、本当に影響を受けている事に苦笑を覚えるワーレン。


 ワーレンに諌められ、やっと冷静さを取り戻したハルバーシュタットはすっかり青ざめた。
 彼は慌てて非礼を詫びたが、ワーレンとミュラーには、彼が心から上官を心配している事が分かったのである。
 そして2人は、彼等をここまで駆り立てる、オーベルシュタインのやり方を恨めしく思った。


 ミュラーとワーレンが「悪いようにはしない」と言ったので、3人はやっと冷静になり、「それでは・・・何とぞよしなに」と言って立ち去った。


 台風一過・・・。
 残されたミュラーとワーレンは同時に溜め息をついた。
 ミュラーはすっかり喉が渇き、コップ一杯の水を飲んで、ワーレンに声を掛ける。


 「オイゲン少将と言い、ハルバーシュタット大将と言い・・・ビッテンフェルト提督は本当に部下に慕われていますよねぇ」
 「そうだな。タイプは違えど、皆・・・ビッテンフェルトを敬愛しているって事だろう。そう思える上官に出会えて彼等もあいつも幸せ者だな」とワーレン。
 「もし、我々に何かあったら・・・部下達は骨を折ってくれるのでしょうか?」
 「・・・どうかな。俺は自信はないが、卿は・・・期待しているのではないか?」
 「そう見えますか?まぁ、悪い事はしていませんから、副官のドレヴェンツ辺りは真っ先に来てくれとは思いますが」
 「あの副官はそのタイプだな。うちのハウフもそうだといいんだが・・・。まぁ、実際に、地球では部下に世話になったから、我々も、部下には恵まれていると思うぞ、ミュラー」


 ワーレンはほんの少し笑顔を見せたが、すぐに表情を引き締めた。


 「さて・・・と。これからどうするかな・・・とにかく、騒ぎを大きくしたくない。全く、頭痛がして来た・・・」
 「そうですね・・・我々は、出来る事をやりましょう。打開策が見つかればいいのですが・・・」


 2人は先の事を考えると頭痛が治まらず、また同時に溜め息をつくのだった。





Das Ende




 100のお題より、「部下」です。


 「部下」というタイトルを見た時、「え、部下?」って。

 つまり、司令官とかじゃなくて、その部下の事を書けばいいのかぁ・・・って。

 それなら、熱い血潮を持つ奴等で書こうと思い、帝国の中でも劇的に暑苦しい・・・いや、熱く滾る魂を持った人達を書く事にしました。

 「司令官の為ならエンヤコラ!!」な彼等を・・・。


 さてさて・・・。


 ミュラーとワーレンには悪いのですが、この後・・・大事件が起こります。
 4月6日に、オーベルシュタイン元帥の指揮下にある憲兵隊と、黒色槍騎兵<シュワルツ・ランツェンレイター>艦隊の面々が・・・衝突してしまいます。
 「ダウンディング街騒乱事件」です。
 一髪触発の事態・・・市街戦になりそうな気配で。
 
 ワーレンもミュラーも、本当に大変そうでした、この一連の話。


 騒乱に発展したのは、女連れで酒場から出て来た、黒色槍騎兵艦隊の若い下士官グループを憲兵隊が強硬に取り締まったのが原因。
 だけど、強硬姿勢に出たのは、カラの酒瓶にオーベルシュタインの名前を書いた物を蹴り飛ばしていたのを発見してって・・・。


 この後、「オーベルシュタインの草刈り」やら、「ラグプール刑務所の暴動事件」だのと、旧自由惑星同盟の首都ハイネセンでは、地上における暴動が多発します。

 その一端が、ビッテンフェルトの監禁だと思います^^@


 とにかく、最終巻の10巻は・・・テロに次ぐテロって感じで最期の最後までテロまみれ。


 究極がオーベルシュタインで・・・あぁ、彼も人間だったのか!って思いましたが、最後の最後まで冷静な人でしたね、オベさん。


 やっぱり、お近づきになりたくないタイプです・・・。 


 まぁ、私としては、ビッテンフェルトがオーベルシュタインを「きさま!」って言って殴った瞬間、原作本を読みながら、「あ~!とうとうやっちゃったよ、この人!」って思ったものです。
 そして笑い転げていた・・・。


 軟禁されている間、オーベルシュタインを呪ってやったり、悪口を散々言いまくっていたり・・・ビッテンフェルト好きだ~その性格!!


 それぐらい、可笑しかった!^^


特に昼食を運んで来た衛兵に対して質問するシーンは何回読んでも笑えて仕方がない・・・。


 「おい、お前らの尊敬する軍務尚書閣下は、まだ生きているか」
 「ご健在です」
 「そうか、変だな。昨晩<ゆうべ>ずっと呪<のろ>ってやったのだが、オーベルシュタインの毒蛇には、呪も通じないのか」


 こんな事を言われた衛兵さん達は困ったでしょうね。
 うっかり、「はい」なんて言えないし、否定してもアレだし。 
 
 それはさておき、同じ部下なのに、オイゲンとハルバーシュタット・・・違い過ぎる!!
 この辺りを勝手に書いちゃった訳ですが、原作の行間から読み解いても・・・きっとこんな会話をしていたのではないかと思う。
 原作には出て来ない、ハルバーシュタット、グレーブナー、ホフマイスターのホテルでの苛立ちを形にしてみて・・・面白かったです。
 覗き見してレポートを書いているような感覚?


 ホフマイスターを出したのは私の趣味ですが、きっと、ホフマイスターだって腹が立ったはずです・・・オーベルシュタインのやり方には。


 原作には「階級が上がるにつれ、司令官の為人<ひととなり>の影響が出る」とありましたので、ホフマイスター<グレーブナー<ハルバーシュタットの順で、豪快にしてみました。
 とにかく、ハルバーシュタット・・・荒れに荒れちゃってますね。
 グレーブナーも荒れていますが、そんなの比じゃないぐらい荒れてます^^@


 なんだかんだあって、何とかビッテンフェルトとの面会にこぎつけたミュラーは、ラインハルトの大事な時期だから私情を挟まない方がいいと諭して、ビッテンフェルトも皇帝には頭が上がらないから頷くんですよね。

 その時のセリフ・・・。


 「わかった。卿らにそう迷惑をかけるわけにもいかんだろうからな。要するに、皇帝<カイザー>の影に頭をさげると思えば腹もたたん。オーベルシュタインを人間と思うから腹がたつのだ。卿もそう思うだろう?」


 これには、ミュラーは何も言えなかったそうですが、こう言うセリフを吐くキャラって、銀河帝国の陣営にはあまりいないので、本当に楽しい。


 ビッテンフェルトが、自由惑星同盟のアッテンボローとやり取りした時も面白かったし。
 案外、ビッテンフェルトとアッテンボローは気が合うんじゃないかと思ったりして。
 お笑いコンビの「ビッテン&アッテン」とか組んだら、絶対に人気者になりそうな気がするんですけど・・・アハハハハハ。