※今回のこの小説は原作終了後の世界を扱っております。その為、階級や役職等に変化がありますが、その点をご了承下さいませ。




 新領土<ノイエ・ラント>総督として、旧自由惑星同盟の首都星であったハイネセンに赴任している、アウグスト・ザムエル・ワーレン元帥。
 彼は、赴任に伴って、フェザーンにいた自分の両親、そして亡き妻との間に生まれたの1人息子を、このハイネセンに呼び寄せた。


 フェザーンに遷都が決まった時も、オーディンから家族を呼び寄せたのだが、ハイネセン赴任となるとまた、家族が離れ離れになる。
 短期間なら単身赴任をするつもりであったが、どうやら・・・ハイネセン赴任は長期間になりそうな気配だった。
 辞令交付直後は単身で赴任したワーレンだったが、新兵の演習の一環で、一時的にフェザーンに戻った際に、皇太后ヒルダの許しを得て、家族をハイネセンに
呼ぶ事にしたのだった。


 赴任して約1年・・・。
 漸く両親や亡き妻との間の一粒種の息子と一緒に住めるようになった彼は、休暇が取れると今までの分を取り戻すように、息子のアルベルトと一緒に過ごす事
が多くなり、息子を喜ばせた。
 最近息子は、今まで以上に色々な事に興味を持ったようで、祖父母にせがんであちこちに出かけているようだった。


 「父さん<ファーター>、僕、大きな帆船とか見たいんだ。休みの時に一緒に行きたいんだけど・・・」
 
 急に息子にせがまれたワーレン。
 アルベルト程の年齢の時分は、ワーレンも「帆船」が好きで、模型を持って良く池に浮かべて遊んだものだ。
 キットを買って、ボトルシップを組み上げた事もある。
 とにかく、ワーレン自身、幼い頃から船は好きだったし、息子のたっての頼みとあっては・・・。


 こうしてワーレンは、やっと取る事が出来た休暇を利用して2人で海浜公園に出かけた。
 ここには、船の博物館があり、充実した内容だと聞いたからだ。


 この海浜公園には、現役を引退した大型客船やフェリーから、漁船やクルーザー、手漕ぎの小さな船に至るまで、宇宙船ではない、海を舞台にした、正真正銘の“船”を展示してあるのだ。
 海浜公園内には、博物館以外にも、ハイネセン最大の海洋生物の水族館もあって、親子連れやカップルが多く訪れる。


 デートスポットしても有名なこの公園で・・・。

 昼食を済ませた後、売店に立ち寄ったワーレン親子は・・・デート中のユリアンとカリンに遭遇した。


 「おや、息子さんですか?」
 
 船の模型を買ってもらって大はしゃぎのアルベルトを見たユリアンに聞かれ、ワーレンは慌てて頷いた。


 「帆船が好きなのかい?」
 「うん!風を受けて帆だけで動くなんて凄いなぁ・・・って」


 ユリアンに声を掛けられたアルベルトは、大きな帆船の模型を抱えて嬉しそうに答えていた。
 まさか、こんな所でユリアン・ミンツと出会うとは・・・。
 そして、ひょんな事から博物館を4人で一緒に見て回る事になったのだった。


 
 「ねぇ、父さん<ファーター>あれ何だろう?」


 博物館に行く途中にある、公園内の桟橋に、一隻の客船が係留されていた。
 ユリアンに尋ねたところ、「あれは『フェニックス・ライト号』ですね。つい最近造船された真新しい客船ですよ。期間限定で、無料で内部を公開しているよ
うです」との答えが返って来た。
 それを聞いたアルベルトは目を輝かした。


 「父さん<ファーター>、博物館に行く前に・・・あの中を見学してみたいな」


 興奮状態の息子の希望で、先にこの客船を見学する事になった。

 そして・・・。


 「ねえ、あの線はなに??」


 急に立ち止ったアルベルトが指さしたのは、客船の横腹に書かれた線。
 ・・・喫水線である。


 「あぁ、あれは喫水線だな」
 「きっすいせん?何を表すものなの??」
 「静水面に浮いている船体の水面と接する線で、船が水に浸かっている深度を示す線だよ」
 「ふーん・・・良く分からないけど、船に腺があるなんて知らなかったな、僕」
 「どんな船にもこの喫水線はあってね。船の積載量もあれを見ればすぐに分かるんだ。船の積載量にも限界があって、規定以上の貨物を積むと海上で航海する
場合は、危険な状態になる事もある。深ければいいが、浅い場合は特にな。それを誰の目にも分かるように表示したのがあの線なんだ。今、ゴボゴボと排水しているだろう?あぁやって、船の浮力を調節しているんだよ」
 「へえ・・・そうなんだ。僕、何のしるしだろう?って不思議に思ってたんだ」
 「あの印は季節や海域によっても大きく変わるんだよ。たとえば波の穏やかな熱帯域を航海する場合は、荒れやすい冬期帯域を航海するよりも上の喫水線を用
いるし、よりたくさんの貨物が積めるんだ。重い物を積んでいるとあの線は見えなくなるが、軽い場合は線がハッキリ見えるんだよ」
 「ファーターは、宇宙の戦艦だけじゃなくて、海の船にも詳しいんだね。本当に凄いなぁ・・・。ねぇ、あのしるしは、ファーターのにもついているの?」
 「え・・・?」
 「だって、せきさいりょうの目安になるんでしょ?」
 「・・・それって、俺の旗艦のサラマンドルにもあるかどうかって事か?」 
 「うん!」


 屈託無い笑顔を浮かべて自分を見つめる息子に笑顔を返し、ワーレンは、はたしてあの艦に付いていたかな・・・と不安になった。
 喫水線の事など・・・今まで気にもしていなかったから。

 戸惑うワーレンを見てユリアンは面白そうに笑った。
 
 「・・・喫水線は、旧同盟の艦にはないですね」
 「え?」


 急に口を挟んだユリアンに、ワーレンは驚いて目を向けた。


 「付いていないのか?」 
 「ええ・・・。元々・・・同盟の艦は・・・対宇宙戦争用に造られたものですから。それに、大気圏航行は大気汚染を引き起こします。オゾン層の破壊など、環境汚染
を防ぐ必要がある為、よほどの緊急を有する事でもない限り・・・戦艦は大気圏には入れませんでした。それに戦艦自体の構造そのものが、大気圏用には造られていなかったんです」
 「・・・そうだったのか」
 「旧同盟艦は、アンテナ部分は特に摩擦に耐えられない構造ですから。大気圏航行はそれこそ最後の手段だったんです。ここを焦土とするほどの徹底抗戦でも
していたら地上に戦艦がひしめいていたでしょうね。まぁ・・・それだけは避けられましたけど。それに・・・ご存知でしょうが、宇宙に行く為には専用のシャトルを利用していたぐらいですから。艦とは言いながら、厳密に言うと地上には一隻もなく、従って、喫水線は、海の上の船にしか付いていません」
 「なるほど・・・」
 「帝国の艦にはあるんですか?」
 「どうだったかな。線があったとは思うが喫水線かどうかは・・・」


 サラマンドルの雄姿を思い浮かべながら・・・。
 返答に窮するワーレンであった。




 翌日出勤したワーレンは、仕事の合間に、副官のハウフ中佐に旗艦サラマンドルの喫水線の事を聞いて彼を戸惑わせた。
 だが、律儀な副官は1時間後、決済書類を持って来る時に、どうやら調べたらしい喫水線についての報告をしたのである。


 「閣下、ご懸念の喫水線についてご報告致します」
 「あぁ、もう分かったのか」
 「はい。調べました結果・・・我が帝国軍の戦艦には全部喫水線が付いているそうです」
 「え、本当か?」
 「はい」
 「旧同盟の艦にはないらしいが・・・」
 「多分・・・艦体に喫水線が施されているのは、我が帝国軍の特殊な事情が理由になっているのだと思われます」
 「特殊な事情・・・?」


 ワーレンは昨日のユリアンの言葉を思い出す。
 大気圏航行は環境破壊につながる・・・と言う言葉を。
 
 「分かった。話を聞こう。特殊な事情とは?」
 「旧同盟が、我々との戦闘の為に戦艦を造り出したのとは異なり、我々の場合は、皇帝の威光を辺境惑星にまで知らしめる為と、また、その辺境惑星での叛乱
を速やかに沈静化させる目的もあります。その為、惑星表面に宇宙港を持つところが多いのが特徴的です。よって、大気圏航行が可能な設計がなされております。勿論、惑星内で航行する為、環境に配慮した燃料を使用していますから、戦艦で環境破壊が起こる事はまずあり得ません」
 「なるほどな・・・」
 「惑星によっては海洋部分が多く、地上部分が少ないところもあります。その場合、海や湖に着水して、これを艦艇用ドッグとして利用しなけれなばなりませ
ん。つまり、早い話、我々の艦は、どんな過酷な環境の所にも行ける艦という事になります。その為、全部の艦に喫水線が付いているのです。これは我が軍に義務付けられているそうです。そう言えば、このハイネセンに来た時、宇宙港があまりにも小さくて驚きました。閣下はそうお思いになりませんでしたか?」
 「確かに小さいな。そうだ・・・我々には大気圏航行が可能だったのだな・・・」


 ワーレンは、改めて帝国軍の戦艦を思い起した。
 地上に係留され、大気圏から出航していた事に何の疑問を持っていなかった自分がおかしくなった。
 あの忌々しい地球へ行った時も、荒野のような過酷な大地に降り立ったではないか。
 そして・・・あの地で、初めてユリアン・ミンツと出会ったのだったな・・・。
 尤も、あの時の彼は偽名を名乗っていて、その事に気付かされたのは後年だったが・・・。
 
 「ところで・・・閣下。何で喫水線の事を・・・」
 「あ・・・いや、息子が突然聞きだしてな・・・」


 前日の息子の様子を思い出して含み笑いを漏らす上官に、ハウフは「はぁ・・・」と目を丸くし、不思議そうにしていた。

 それで、ユリアン達に出会った事は伏せ、息子の話をしたのだった。


 「なるほど・・・子供は様々な事に興味を持ちますし、意外な事を聞いて来たりしますから、時々驚く事があります」

 ハウフの言葉に、ワーレンは「俺も・・・息子に指摘されるまで喫水線の事など気にもしなかったが、そうか・・・義務付けられていたとはな」と感慨深そうに言った。

 「ワルキューレにはないですが、駆逐艦、巡航艦、戦艦、空母・・・これらにはあるそうです」
 「・・・分かった。帰ったら早速息子に報告しよう」


 ワーレンは快活に笑った。


 それにしても、宇宙で戦う為の戦艦であっても、旧自由惑星同盟軍と銀河帝国軍とでは、その造られた作られた目的が全く異なっていた事を、改めて考えさせられたワーレンであった。





Das Ende





 100のお題より、「喫水線」です。


原作終了後の世界です・・・私の妄想の世界とも言うか。(爆)


 一応私の設定では、ワーレンはハイネセンに赴任って事になっています・・・ご了承下さいませ。


 喫水線とは、『船が水に浸かっている深度を示す線』です。
 こういう事に疎いので、色々調べてみました・・・ちょっとは勉強になりました。


 ユリアンを出したのにはあまり意味がありませんが、しいて言えば趣味?
この2人は面識がありますしね。

 それから、考えてみたら、ワーレンのサラマンドルは、地球に行きましたし、この艦に・・・ユリアン達は立ち入っている訳ですよ。
 サラマンドルは、鉤爪の様なモノが付いていて、あぁ、「火竜」だもんな・・・と。

 帝国軍の出航シーンは本当に地上からでしたし、ラインハルトのブリュンヒルトはウルヴァシーで湖に着水していました。
 まぁ、そんな感じですから、全部喫水線がある(義務付けられている)という事にしてしまいました・・・。
 反対に、宇宙空間での戦闘が目的の同盟の艦にはなかったであろう・・・と思い、こんな話を書いてみました。


 ただ単にワーレンを書きたかっただけかも・・・アハハハハ。
 いや、ユリアンと絡ませてみたかっただけで・・・って、アハハハハ。


 だってさ、この2人・・・地球で面識あるし、その後も顔を合わす機会がありましたからね。
 ワーレンったら、ユリアンと地球で会ったのを覚えていて、懐かしそうに話をしていましたからね。
 ユリアンは結果的にワーレンを騙していた事を謝りますが、ワーレンは全く気にした様子もなく、さすがオトナだ・・・と、ますますワーレンが好きになりまし
たね。


 夕方のニュースの特集とかで岡部さんがナレーションをされる事がたま~にあります。
 書きながら、ワーレンのセリフが岡部さんの声で聞こえてきたりして・・・←バカですW;
 勿論、ユリアンは佐々木さんですよ・・・。←だってそうでしょW;
 
 岡部さんも今年で78歳。
 
 本当に銀河英雄伝説に出ている声優さんは大御所クラスの方々ばかりなので、今後も星になる方は大勢いるでしょう。
 だからこそ、いつまでもお元気でいて欲しいと思います。


 ユリアンの佐々木望さんも大人気の売れっ子声優ですが、それでも43歳。


 銀河英雄伝説を録音している頃、佐々木さん・・・良く胃痛に襲われたって聞いた事があります。

 そりゃそうだ・・・ベテランばっかりだからね。

 しかし、今考えても銀河英雄伝説って贅沢だ・・・。
 声優さんが沢山出ているってだけじゃなくて、脇役に至るまで、1度は主役または主役級のキャラを演じた事がある人ばっかりだもんね。


 フレーゲル男爵の二又一成さんだって、「めぞん一刻」の五代君だし、ボリス・コーネフの安原義人さんは「キャッツアイ」の内海俊夫刑事だし。
 もっと脇役のトゥルナイゼンの大滝進矢さんだって、「戦闘メカ ザブングル」のジロン・アモスだったり・・・もう、そうそうたる方々ばかり。


 岡部さんはアニメは「YAWARA!」の柔ちゃんのお父さんとかですが、有名なのは特撮のは「人造人間キカイダー」(キカイダー01も)のナレーション

ですかね。
 今考えたら、「キカイダー」のそのシート付き絵本とか・・・捨てないで置いておけば良かった・・・って思いますよ・・・トホホホホ。←弟の物でしたが。
 「キューティーハニー」の絵本とかも置いておけば良かった・・・T-T


 あ・・・そうだ。
 真新しい客船の名前ですが、「フェニックス・ライト号」・・・って分かる人にはわかるし、分からない人には分からない名前。
 カプコンのゲーム「逆転裁判」の成歩堂龍一弁護士の・・・北米版での名前です。
 宝塚歌劇でのナルホド君は、フェニックス・ライトでした。


 今度・・・カプコンはレベルファイブとコラボのゲームを出すのですが、何と「逆転裁判」と「レイトン教授」のコラボ。
 ウーン・・・ナゾとムジュンのコラボです。

 それを記念して、船の名前・・・「ゴールド・フェニックス号」から、「フェニックス・ライト号」に変更してしまいました・・・キャハハハハハ。