朝からコーネフはしきりに考え込んでは、時々、「はあぁ~・・・」と、深い息を吐いている。
ただならぬ様子に、ポプランも何かを感じたのか眉根を寄せる。
「・・・おい。気味が悪い。・・・何があったんだよ?まさか・・・恋とか言わないよな?」
ポプランに声を掛けられたコーネフは苦笑する。
「・・・恋ってお前さんじゃあるまいし、そっちこそ気持ち悪い事を言うな。・・・全くの大はずれだ。・・・ちょっとパズルで煮詰まっただけだ」
「おい、おい・・・またパズルなのかよ」
「悪いか?」
「別に悪か~ないけど。心配して損した」
「あ~なんだ。心配してくれたのか?」
「ふん・・・。それよか・・・煮詰まっているって事は、パズルの答えが分からないって事か?」
「まあな」
「珍しいじゃん?」
ポプランは、物珍しいものでも見るようにコーネフを眺めた。
コーネフのクロスワード好きは有名だ。
月刊の『上級者の為のポケット・クロスワードパズル』をいつでも持ち歩いているのだ。
この雑誌はサイズ的には文庫本のサイズだが、厚さはかなりある。
毎月、良くもこんな厚さのパズルを載せられるものだ・・・とポプランは呆れているが、更に呆れたのは主題の三分の二は、投稿だと言うのだ。
ポプランに言わせれば『暇人』にしか思えないらしい。
懸賞でもあって、何かが当たると言うのなら別だが、この雑誌は懸賞関係は一つもないらしく、あるとすれば、クイズが掲載された時に特製のステッカーが貰える・・・それだけなのだそうだ。
それでも、クロスワードパズルファンの中では“神”扱いされている雑誌なので、投稿者は後を絶たず、また採用者も少ないので、このステッカーはその道ではお札のように崇められているらしいのだ。
とにかく・・・この雑誌のパズルは難しい。
ポプランにはさっぱり解けないのだが、コーネフは何だかんだ言いながらも、答えを見い出し、わりとスラスラ解いている。
ところが、今回はスラスラと解けない問題があるようだった。
「へぇ・・・お前でも苦手な問題があるのか?」
横から手を出し、パズル本を取り上げるポプラン。
「おい・・・返せよ・・・」
コーネフは目を吊り上げた。
「なんだ、これ。『クラシック映画クロスワード』って」
ポプランは顎に手を当てた。
一生懸命に考えている風のポプランを見てコーネフは鼻で笑う。
「お前さんに解ける訳がない」
「なんだと!」
「まぁ、見ても分かる通り・・・そのものズバリ、映画のクイズだ。映画のタイトルを埋めていくんだけど、これが超難関なんだ。俺・・・最近のだってあまり見ないのに、このパズルのはA.D.20の頃の映画ばかりだからな」
「げ~・・・化石級の古すぎだろ、それ!まさに地球時代のじゃないか・・・」
「そう・・・このクイズを作ったのは、映画界では有名なマニアみたいでね。・・・難しいけど、解けないと上級者としてはちょっと・・・ね。分からないところはネットで調べたりして埋めている訳だ」
「うわ・・・馬鹿馬鹿しい・・・解けなくても死にはしないし、別にどうって事ないだろうに・・・」
「でも、この問題に挑戦している他のヤツに負ける訳には・・・な。そいつに解けて俺が解けないなんてのは気分が悪いんだよ・・・」
要するにパズル界にも、コーネフのライバルがいるようであった・・・。
昼過ぎになって、スパルタニアンのパイロット達が第一級戦闘態勢で詰め所に集まった時も、まだコーネフは唸っていた。
どうやら、解き初めて、もう6時間は経過していた。
「ヨコの23・・・ええっと・・・『原作はスティーブン・キング。〇〇〇〇〇 by me』・・・って、この人の原作の映画って山ほどあったような・・・」
この時代でも読み継がれているホラー小説の古典作家の名前だ。
さすがに、スティーブン・キングの名前はポプランも知っている。
「おい・・・まだやっているのかよ」
「まあね・・・飯も食ってない」
「馬鹿か・・・。そういや、さっきいなかったな。まだ食ってなかったのかよ」
「こっちの方が気になって・・・」
「呆れたヤツ」
「別にいいだろう・・・」
「何だ、分からないのは5文字か。お前さん、よく言ってるじゃん。他のカギから答えを探せって。そっちのタテの18はどうなんだよ?」
「え・・・あぁ、こっちは9文字だ。分かっている文字は『e』と『t』だけだ」
「どんなカギなんだよ?」
「えっと・・・『絶世の美女。主演はエリザベス・テイラー』だ。・・・こっちも知らんからな、そんな女優・・・古くて」
「ふ~ん・・・絶世の美女・・・か。そういや・・・大昔の女王のクレオパトラってのが絶世の美女だって聞いた事があったっけかな・・・」と呟くポプラン。
「え・・・。あ、クレオパトラ!!・・・9文字だ。『cleopatra』・・・っと。あ、ヨコの23も分かった!『stand』だ!!あ~助かった・・・。これが出来ればあとは簡単で・・・」
「そうなのか?」
「あぁ・・・でも、何で分かったんだ、クレオパトラ」
「・・・絶世の美女だから」
「あ・・・やっぱり・・・。聞くんじゃなかった・・・」
コーネフは頭痛がして来た。
ポプランほどナンパな男なら知っていも不思議ではないのだ、美女の名前。
「まぁ、俺にかかれば美女の名前なんてすぐに分かるぞ?ヨウキヒとか、オノノコマチなんて変わった名前の美女もいるしな」
「オノノ・・・??ヘンな名前だな・・・」
「ヘンでもいいの。美女ってところが重要なんだから。ところで・・・今日は何日だっけ?」
「おや、おや・・・気の毒に。ちょっとボケて来たか?」
「お前なぁ・・・そう言う言い方はどうかと思うぞ?」
「はいはい。今日は4月22日だよ」
「あ・・・そ」
「何かあるのか、今日?」
「別に・・・ただ、聞いてみただけ」
「おい・・・」
クスクスす笑うポプランに対して、コーネフは思いっきり顔を顰<しか>めた。
単にからかわれている事を悟ったのだ。
パズルを挟んで舌戦を繰り広げる2人に対して部下達は顔を見合わせた。
「隊長達って、ホント・・・好きだよな」
「緊張感がまるでない」
「あぁ・・・この光景、慣れてくると楽しいよな」
「ホント・・・馬鹿馬鹿しいけど、ホッとするよな」
もうじき出なければならない第一級戦闘体制だというのに、緊張感がまるでないポプランとコーネフ。
非常事態だと知りながらも、この光景には「平和」だな・・・と、部下達は笑いあっていた。
THE END
100のお題で、「Stand by me」です。
4月22日・・・。
この日付には何の意味もありません。
ただ、この一週間後、バーミリオン会戦にてコーネフは戦死してしまいます・・・。<艦砲射撃で吹き飛ばされて。
コーネフが好きなので、本当は避けたいな・・・の話題です。
勿論、悲しいので、29日の事は書きたくありませんが、最後の最後まで、2人はこういう調子だったと書いておきたかったのでした。
元々エースは好きでしたし、ホント、この2人の話を沢山書いたなぁ・・・って。
すっごく幸せな気分です<書けた事が!!
そして、鈴置さんが亡くなられたなんて考えたくない・・・。
鈴置さん・・・ルパート・ケッセルリンクもされていたんだよなぁ・・・あぁ、2人とも死んじゃってる・・・悲しい。