首都星ハイネセンの隣の惑星テルヌーゼンのとある小学校・・・。
その4時間目・・・。
今日最後の授業が始まろうとしていた。
・・・国語の授業である。
「じゃぁ、みんな!今日は作文を書いてもらうぞ~!」
先生のその言葉に生徒達は騒ぎ出す。
「え~作文!いやだ~!」
「やりたくないよ~!!」
大声で叫んだ子もいる。
その子は、先生に「そこ静かに!」と、派手にチョ-クを投げつけられた。
それがもろに額に当たり、「痛って~・・・」と言ってさすっていた。
その様子を見た隣の席の子に笑われ、思わず「笑うな!」と大きな声を出す。
「騒ぐなと言っているだろう。まだチョ-クが欲しいのか!」と先生に怒られて、慌てて口を噤んでいた。
僕は叫びはしなかったけど、心の中で(作文だなんていやだなぁ・・・)と思った。
先生から出されたテーマは、「憧れの人」で、そのテーマで1時間以内に作文を書くのだ。
先生は、「憧れの歌手でもいいし、ご両親の事でも、友達でも誰でもいい。とにかく、自分が憧れている人にについて書いてほしい」と言った。
「先生!質問してもいいですか?」と、女の子が挙手をした。
「ん?なんだい?」
「えっと・・・尊敬する人と憧れる人は違うんですか?」
先生は「尊敬している人でもいいよ。とにかく、憧れとか尊敬とかをしていて、こういう人になりたいなぁ・・・みたいな人をの事を書いてほしい」と言ったので、その子は「分かりました」と首肯した。
「じゃぁ、原稿用紙を配るぞ」
先生は原稿用紙を配った。
「原稿用紙は1人2枚だ。いいな~!」
前の子から原稿用紙が回って来て、僕は2枚取って、後ろの子に回した。
僕は喋るのも苦手だけど、作文もどちらかと言うと苦手なので、どう書いたらいいのか・・・と悩んだ。
憧れている人・・・そんな事を急に言われても分からない。
僕の両親はとっくに亡くなっていて、今は父方のお祖母さんとの2人暮らしだ。
僕は気が弱くて引っ込み思案だから、仲の良い友達もいなかった・・・。
お祖母さんは立体テレビ<ソリヴィジョン>があまり好きではないから、憧れの歌手なんていないし。
それにドラマもあまり見ないから、好きな俳優や女優もいないし・・・。
さぁ、どうしよう??
僕は原稿用紙を前にして溜め息をついた。
先生は机と机の間を行ったり来たりして、生徒に声を掛けている。
僕はペンも持たずに俯いていた。
「ウィリアム・メイヤー・・・どうした?書けないかな?」
先生に言われて、僕はハッとして顔を上げる。
「・・・えっと・・・誰でもいいんですか?」
「誰でもいいよ。生きている人でも死んだ人でも。ただし、いくら憧れていても、架空の人物だけはダメだけどな。アニメーションのヒーローとかはダメだぞ?他のみんなも、架空の人物は厳禁だからな」
その途端に笑いが起こった。
生きている人でも死んだ人でもいい・・・先生は僕の両親がとうに亡くなっている事を知っているからそう言ったのだが、僕は・・・少しホッとしていた。
そして、僕はたった1人、憧れの人がいた事を思い出した。
あの時、思い切って話が出来ていたら・・・。
あの人と握手が出来ていたら・・・。
けれど、昔の僕は今以上に僕は人見知りが激しかった。
なお且つ、引っ込み思案で、いつもおどおどしていた。
僕は憧れの人を目の前にしてどうしようもないぐらい恥ずかしくなって・・・。
憧れの人を目の前にしてドキドキして、逃げ出しくなって・・・慌てて祖母にしがみついていた。
だから本当に気持ちを伝えきれず・・・。
そんな僕の様子を見た祖母がこらえ切れずに助け船を出してくれたれど、僕は、「憧れ」の思いを相手に伝えられなかった。
だから多分・・・相手に誤解されてしまった様な気がする。
それは苦い思い出だった・・・。
僕はあの日の事を思い出しながら、ペンを取った。
あこがれのヤンていとく ウィリアム・メイヤー
今から5年前、ぼくが5才の時にお父さんが亡くなりました。
ぼくのお父さんは、どうめい軍の軍人さんで、亡くなった時、お父さんは少佐でしたが、二かい級とくしんして、大佐になりました。
ぼくのお母さんは、ぼくが2才の時に死んだので、ぼくはお父さんが戦死するまでは、母方のおばあさんと一緒に住んでいました。
けれど、そのおばあさんが亡くなってすぐに、お父さんまで戦死したので、今度は、父方のおばあさんと一緒に住むことになりました。
ぼくはそれまでハイネセンに住んでいたのですが、おばあさんはおとなりの星のテルヌーゼンに住んでいました。
だから、会えるのは1年に1回ぐらいでした。
おばあさんがテルヌーゼンにいるので、ぼくはハイネセンから、となりの星のテルヌーゼンに引っこすことになりました。
おそう式の後、おばあさんの知り合いの人とかが来てくれて、ぼくの家のタンスや机とかの荷物せいりを手伝ってくれました。
ぼくがおばあさんに「ぼくも軍人さんになって、お父さんのかたきをうつんだ」と言ったら、おばあさんはびっくりしていました。
ぼくは気が弱いし、人みしりをします。
人とじょうずに話せないし、運動も苦手です。
そして、すぐにきんちょうしたり、はずかしくなってしまうのです。
そんなぼくが軍人さんになりたいなんて言ったので、おばあさんはぼくのことを心配したみたいでした。
でも、「ウィルががんばれば軍人さんになれるかもしれないわね」と言ってくれました。
そして、いっしょにニュース番組を見た時に、「ヤンていとく」の話をしてくれました。
ヤンていとくは、昔、エル・ファシルというわく星がこうげきされた時、300万人の民間人をだっ出させた英ゆうだと教えてくれました。
みんかん人をぶじにだっ出させるなんてだれにも出来ないことだとおばあさんが言っていました。
ぼくはその話を聞いて、ヤンていとくをすごい人だなぁと思いました。
おばあさんは、番組を見ながら、お父さんだけじゃなくて、ぼくのおじいさんも、そのまたおじいさんも軍人さんだった話をしてくれました。
だから、今は気が弱くても、りっぱな軍人さんになれると言ってくれました。
ぼくは知らなかったのですが、ぼくのお父さんも、小さいころは気が弱くて、泣いてばかりいる子供だったと、おばあさんが教えてくれました。
テルヌーゼンに行く日に、うちゅうこうへ行ったら、ぼくはニュース番組で見た、ヤンていとくを見かけました。
ぼくが「おばあさん、あそこにいるのはヤンていとくだよ」と言ったら、おばあさんは「本当だわ。すばらしいことよ」と言って、ぼくの手を引いて、ていとくの所につれて行ってくれました。
アスターテ会戦で、同めい軍はまけてしまったけれど、ヤンていとくのおかげで、大きなまけではなかったとニュース番組で言ってたのを思い出しました。
ぼくは番組を見ている時に、おばあさんに、「あの人みたいになって、お父さんのかたきをうちたいな」と話したのです。
だから、ヤンていとくを見た時、おばあさんは、ぼくのために、ていとくに声をかけてくれたのです。
はじめて会ったヤンていとくは、とてもやさしそうな人でした。
ぼくは茶色のかみの毛だけど、ヤンていとくのかみはまっ黒で、ぼくのお父さんのかみと同じ色でした。
ぼくはあこがれのヤンていとくと会えて、とてもうれしかったです。
でも、ぼくはとてもはずかしくて、そして、ドキドキしてしまって、おばあさんのうしろにかくれました。
それで、ヤンていとくに、ちゃんとあいさつができませんでした。
おばあさんは、ヤンていとくに、ぼくとあくしゅをしてあげてほしいと言ってくれたのに、ぼく自身があくしゅができなかったのです。
おばあさんは僕がモジモジしているので、「なんです、ウィル、そんなことでゆうかんな軍人になれると思うの」と言ってくれましたが、ぼくはますますはずかしくなってしまいました。、
ヤンていとくは、ぼくのようすを見て、ぼくが大人になるころには平和な時代になっているからと言ってくれました。
そして、「ぼうや、元気で」と言ってくれました。
その後、ていとくは用事があったのか、遠くに行ってしまったのです。
せっかくヤンていとくと会えたのに、ぼくがそんな感じだったので、おばあさんはあきれてしまったみたいでした。
もう少しゆうきを持って、ていとくにあこがれていることをお話して、あくしゅをしてもらえば良かったと思います。
とくに、ヤンていとくはもう亡くなっているので、本当に、あの時にゆうきがあればよかったのにと、とってもくやしくてなりません。
でも、ちょくせつ、ヤンていとくに声をかけてもらえたのは、ぼくにとって、とてもいい思い出です。
ぼくは、今は軍人さんになろうとは思っていないけれど、ヤンていとくのように、色々な人からみとめられるりっぱな人になりたいと思います。
僕は時間ギリギリまで作文を書いていた。
作文はどちらかと言うと苦手だったから、書きたい事はあっても思うように書けない。
隣の席のナンシー・ブライトンは作文が得意らしいけど、どうしたら得意になれるのかな?
作文が得意なんて羨ましいや・・・。
でも、僕は言葉を選びながら一生懸命に書いた。
作文を書き終わって、もう1度読み返して、誤字脱字がないかチェックした。
「はい、みんな~作文・・・書けたかな?書けてない人は居残りして今日中に書いて、職員室にまで持って来て。書けた人は、後ろの人から前の人に作文を回して。前の人は教壇まで持って来て」
先生の声。
皆一斉に作文を回す。
何人かが、「げ~居残りだぁ」との声を上げた。
僕は時間内に何とか書けた。
居残り組にはならなくてホッとしていた。
最前列の子がまとめて教壇まで持っていき、先生はそれをトントンと整えた。
「じゃぁ、今日の授業はここまで」
先生の声に、日直が「起立!」と声を出す。
皆立ち上がって、日直の「礼!」の声に頭を下げた。
先生が出て行くと、僕達は教科書を鞄に詰め始める。
・・・そして、居残りの子達と、掃除当番の子だけを残して、次々と教室を後にした。
THE END
100のお題より、「憧れの人」です。
もう、思いっきりマイナーです。
何だかやりたい放題って感じですよ。
ここに出て来たウィリアム・メイヤーですが、ウィル坊やと言ったら分かるかな?
それでピン!ときた人はコアな銀河英雄伝説のファンだと認定します。
誰かと言いますと・・・。
憂国騎士団に嫌がらせをされたジェシカ・エドワーズを宇宙港まで送って行ったヤンが、そこで出会ったのが・・・メイヤー夫人とその孫のウィル坊や。
ジェシカはテルヌーゼン行きのシャトルに乗り込んでいました。
もしかしたら、「それ、誰だよ」って人がいるかもしれません・・・それぐらい、マイナーなキャラです。
だって・・・。
その時の1回きりしか出て来ないのです。
ウィルだから、これは愛称なんだと思い、正式な名前を「ウィリアム・メイヤー」にしました。
ウィリアムだと、ウィリーとか、ビルなんかも、愛称になるんですけどね。
でも、原作にあったのはウィルだから・・・^^@
原作では、メイヤー夫人ばかりが喋っていて、肝心なウィル坊やは、夫人の陰に隠れてヤンと話をしていません。
メイヤー夫人は、夫や息子が名誉の戦死を遂げた事とか話した上に、ウィル坊やとヤンを握手させようとしています。
原作では、怯えたような、ウィルの頑なな態度に居たたまれなくなったヤンは、「その子が大人になった時は戦争は終わっていますよ」みたいな事を言って、その場から逃げ出す・・・という描写ですが、もし、実際はメイヤー夫人が無理やり握手させようとしたのではなかったら?
実は本当は、ウィル坊やはヤンに憧れているけれど、人見知りが激しくて、恥ずかしさのあまり、あのような態度に出ていたのだとしたら?
そんな事を考え、ウィル坊やの立場で、しかも、その時から数年後のウィルの立場で書いてみました。
しかも、作文という形態で^^@
そうすると、メイヤー夫人の言葉は、孫に対する助け船の言葉に変化します。
自分で書いていてびっくりしました・・・この発見には。
視線を変えた場合、メイヤー夫人の言葉が違う輝きを放つ事に気付きました・・・これは本当に意外な発見でした。
子供の作文なので、漢字ではなく、ひらがな・・・変換してしまいそうで、結構大変でした。
学校の授業風景を切り取った作品ですので、銀河英雄伝説っぽくはありませんが。
正史には全く影響がないエキストラ的なキャラクターですが、このメイヤー夫人は・・・忘れる事が出来ないキャラです。
こういう、一見、どうでもいいようなキャラが輝いている小説って本当に素晴らしいと思います。
その内に、肉屋に鶏肉を買いにくオーベルシュタインの事を、オーベルシュタインではなくて、肉屋のおかみさんの立場で書いてみるか・・・とか、ミッターマイヤーに黄色の薔薇を売ってしまった花屋の立場で書くとか・・・そう言うのも楽しいかな?って。
そう考えると、色々な人の視点で、色々な話が書けそうだなぁ・・・って。
意外な人物で書くと楽しいかも。
オーベルシュタインの執事とかね。
まぁ・・・。
本当に書くかは・・・分かりませんが^^@