オーディンから来た帝国人がフェザーンに来て買い物に行くと、大抵の人はその店舗が異様に大きな事に驚く。
 しかも、その店舗が至る所にあるので衝撃の度合いが大きいのだ。


こんなに乱立してて、商売が成り立つのだろうか?と考えるようだ。

 だが、フェザーンは商業国家的な自治領・・・競合して、互いに切磋琢磨して、スーパーはそれぞれ独自のカラーを出し、生き抜いているのだ。
 だがら、他店よりも高いと指摘されれば値段を下げたり、朝市だの、夕市だのを行ったり、絶えず、顧客の心を捉える為に、キャンペーンも抜かりはない。
 意見箱を置いて、顧客のニーズに答えようとする。

 帝国では、どんな店舗でも、「売ってやっている」というのが見え見えな商売スタイルだったりするが、店舗によっては、幟に『お客様は神様です』と染め抜かれた物を掲げたところもあった。


 こういうのを目の当たりにして、帝国人達は、「さすがは、商業都市・・・フェザーンだな」と、誰もが納得する。
 そして、それこそが、帝国が自治領としてここを認める所以なのだ・・・と、再認識するのだ。


 オーディンでは大型店舗は数えるぐらいしかない。
 大抵、店は・・・個人経営だ。
 勿論、大型店もあるにはあるが、食料品だけの専門店であったり、家具屋であったりする。
 何もかもが揃った雑貨店では、大型店はあり得なかった。
 それら全て・・・とは言わないが、殆どが競合相手がおらず、殿様商売。
 値引き合戦など無いので・・・安売りを目の当たりにしたファーレンハイトは、すっかりフェザーンが気に入ってしまった。



 フェザーンで最大の大型スーパーは、地下3階、地上7階建てだった。
 フェザーンには、スーパーチェーンは数社があったが、その中でも一際目立つのがこの大型店。
 マークには鳩のイラストが描かれており、名前は『Itoyokado Phezzan』という。


 『Itoyokado』の意味が良く分からないが、このスーパー、『犬が歩けばItoyokado Phezzanにあたる』と言われるほど、フェザーン各地にある。
 幹線道路沿いに大きな駐車場を完備し、屋上には格安で飲めるビア・ガーデンまであったし、屋上庭園もある。
 買い物に来た親子連れの為に、保育室まで完備している徹底ぶり。
 既に、店舗の域を超えて、そこが1つの街であるかのような錯覚さえ覚えるほどだ。

 そして今・・・フェザーンは、自治領から・・・銀河帝国の新帝都となり、今まで以上の活気を見せていた。



 「ザンデルス・・・。フェザーンに一番多く存在する、例の大型ス-パーの名前の意味をちょっと調べてみたんだが・・・」
 「え・・・?ご自分で調べられたんですか、閣下?」
 
 私は目を丸くした。
 どうやら、閣下は・・・この店が気に入ったらしい。

 「この会社の創設者は、フェザーン初代自治領主だそうだ」
 「え・・・初代の自治領主なんですか!?」
 「あぁ、その男は地球出身の大商人だったらしくて、レオポルド・ラープという名前だったらしいぞ。彼はコンピュータを駆使して・・・自分の新しい店の名を付けたそうだ」
 「はぁ・・・」
 「どうやら、地球の全盛期時代に繁栄を誇ったスーパー名を幾つかインプットして、コンピュータが無作為に選んだのを採用したらしい」
 「無作為にですか。案外、単純と言いますか・・・」
 「まぁ、そうだな・・・」
 閣下は苦笑されて続けられた。
 「聞きなれない名前が多いからあまり覚えていないが、他の名前に、ウォルマートとか、カルフールとかいうのもあった・・・かな。これらは全て地球に存在していた大型店舗の名称だそうだ」
 「地球にあったスーパーですか」
 「あ・・・思い出して来た。コラとか、ラルフスとか・・・コンティネンテやオーシャン、テスコ・・・なんてのもあったな。他には・・・うーん・・・ジャスコとダイエー、あとセイユウだったかな・・・」
 「何だか聞きなれない名前ですね・・・。閣下・・・良くそんなに沢山のスーパーの名前を覚えましたね・・・」
 「全くだ。役にも立たないのに覚えてどうする・・・という感じだがな。つい、覚えてしまった・・・」
 「あの・・・まさかと思いますが、これらの店舗と地球教が関係あるなんて事は・・・」


 私は声を顰<ひそ>めた。
 地球を聖地と崇め立てて世をひっくり返そうとしている怪しい集団、地球教。
 だが、閣下は苦笑を浮かべて、手をひらひらと振られた。


 「・・・あぁ、それはないだろう。この間、偵察を兼ねて最大のスーパーに行ってみたのだが・・・」
 「え・・・もう行かれたのですか!?」
 「行ったからこそ、この店の事を調べているのだ。俺にとっては・・・安いかどうかが死活問題なのだ。高い物は出来るだけ買いたくないからな・・・。オーディンにいた時だとて、出来るだけ安く売ってくれる店でしか買わなかったからな」
 「なるほど・・・死活問題ですか」
 「そうだ。それは、卿も同じなのではないか?」
 「はい、確かにその通りです、閣下」
 「あの大型店は、朝8時から朝市という物をしているとの情報を得たので行ってみたのだ。これが・・・かなり安くて驚いた。ザンデルス、あれはいい。卿も行ってみろ。・・・本当に安くて気に入った」
 よほど安かったのがおきに召されたのか、閣下の声には力が漲っている。


 「企業理念というか、そういうのがHPにのっていたが、実に爽やかでな・・・」
 「爽やか・・・ですか」
 「あぁ、こう書かれていた」



 『我が社はこの地で創業以来、社のロゴマークにハトを使用しております。ハト=Itoyokado Phezzanと、幼い子供でも一目で分かるイメージと親しまれております。ハトの白色は誠実を、青色は清潔を、赤色は若々しい情熱を表しております。私達はお客様とともに、自然環境にも優しい、フェザーンを代表するトップ企業として一層の努力を致します』



 「なぁ、この企業理念・・・実に爽やかではないか」
 「確かに・・・爽やかですね・・・」
 「それに、環境保全にも力を入れているらしいぞ。直営農場で採れた新鮮な野菜を仕入れたり、植林事業や河川などの水の浄化事業なども手掛けているらしいそ。これだけを見ても、地球教とは関係はないと思われる」
 「そうですね。地球教はそういう事はやらなそうですね」


 私は、地球教徒達の辛気臭い、鼠色の法衣を思い浮かべて、確かに爽やかさとは程遠いと感じた。


 「だけど・・・本当の事を言うと、誠実とか清潔より、鳩からイメージさせるのは『高い栄養価』であって・・・」
 その閣下の言葉に私も同意する。
 「あ・・・確かに鳩は美味しいですからね・・・。でも高い栄養価・・・って」
 「昔な・・・仕掛けを作ってハトを捕らえて晩御飯の食材にした事があったんだ・・・。あぁ、言っておくが、子供の頃の話だぞ」


 私は閣下が幼少の頃、貴族である身もかかわらず、食うに困る家庭であられたのを思い出した。
 私も負けず劣らずだが・・・鳩を捕まえて食べた事はなかった。
 
 なるほど、それで“栄養”の話になったのだと気付いた。
 そして、私は閣下がHPの内容を覚えておられた事も驚いていた。
 よほど・・・このスーパーに興味を持たれたご様子。


 オーディンでは商店街のシャッターが閉まるのは大抵午後6時半であるが、このスーパーは23時までは営業しているのも帰宅が遅い者にとってはありがたい話だった。
 しかも、閉店間際が惣菜などは半値以下になる。


 「閉店5分前が狙い目だな」



 私は、何処へ行っても、安売りにしかご興味を持たれない閣下の、この倹約振りに感服するしかなかった・・・。





Das Ende




 100のお題より、「イトーヨーカドー」です。

コメディです、ホントにコメディでしか書けない話です。

 そして、スーパーの話となったら、私の場合、思い浮かぶのは・・・ファーレンハイト提督ただ1人。


 OVAでは、イケメンさんだし、原作でもカッコイイ感じの彼ですので、本来の彼のイメージとはほど遠いのですが、私のアタマの中では、「ファーレンハイト=貧乏=ケチ」という勝手な設定があります。


 ファーレンハイトの熱狂的なファンの方には申し訳ないのですが、そんな感じなので・・・カッコイイのにヘンな人になってるんですね、私が書くファーレンハイトは。
 尤も、ファーレンハイトが好きだからこそ、ネタとして書いているだけですので、愛が無い訳じゃないのよ・・・と。
 まぁ、他のサイトでもそういう設定でギャグ話を書いているところがありますので、私だけの問題でもない・・・とだけ断っておきます。


そう言えば最近、友達から、私の書くファーレンハイトは貧乏を楽しんでいる風なところがあって、明るい貧乏だから、「佐賀のがばいばあちゃん」みたいな感じがするって言われました・・・おばあさんですか、ファーレンハイト^^@
 でも、主婦顔負けな節約振りですね。


 いやぁ、それにしてもね、このお題を始めて見た時は、実に悩みました。
 「イトーヨーカドー」というお題で、銀河英雄伝説を書けるかどうか。
 大体、「スーパーマーケット」とか「デパート」みたいな、漠然としたお題なら、こんなに悩まなかったのですが・・・。
 スーパーの名前を限定されちゃっているので、もう困ってしまって。
 進退窮まったという感じで、中々ネタが思い浮かばず・・・でした。


 さすがにパラレルワールドを構築して、現代日本にキャラを登場させるなんて荒業は絶対にしたくないし。
 無い知恵を絞っていたら、ふとある事を思い出したのでした。
 フェザーンの初代自治領主さんです。
 そう、レオポルド・ラープ氏!!
 原作では、名前だけしか出て来なかった人ですが、初代ってのがいい。
 しかも、原作にある彼の設定がナイスじゃないかと!
 地球出身の大商人だった・・・!!
 あぁ、ステキすぎます!!
 こうなったら、これをネタに使うしかないじゃないか!!と思って書きました。
 そんな訳で、無い知恵を絞った上での苦肉の策です。


 因みにレオポルド・ラープ氏ですが、宇宙暦682年に、資金力に物を言わせて、フェザーンを自治領として銀河帝国本土に認めさせてるんですね。
 この時の資金源は不明な点が多かったのですが・・・。
 後に、地球教が絡んでいた事が判明します。

 なので、ザンデルスが、「地球教と関係があるのでは?」と発言したのは・・・実を言うと、的を射ていたのですよ、アハハハハハ。


 爽やかな企業理念を掲げた裏で・・・『Itoyokado Phezzan』は、地球教の隠れ蓑として暗躍していた・・・と。

 イトーヨーカドーさん、ゴメンナサイ・・・あくまで、『Itoyokado Phezzan』の話なので許してね・・・。 


 そしてね、こんなネタならこの人・・・ファーレンハイトでギャグるしかないってんで、ファーレンハイトの話なんです。

 もう、笑って読み飛ばしてやって下さいませ・・・。


 企業理念は、昔のHPにあった物を相当アレンジしてます。
 この小説を書いた頃はそれぞれ別会社だったイトーヨーカドーやセブンイレブン、デニーズは現在は持ち株会社となって、『セブン&ホールディングス』になってしまい、(昔はイトーヨーカドーが親会社でIYグループと名乗っていました)今、新たにハトのマークの事を調べようと思っても、さすがにマークの意味は分からなくなってしまいました。


 ラープの事を思い出してフェザーンを舞台をしたから書けたような物で、それがなかったら永遠に書けなかったかも知れません。


 因みに私の母は・・・パート社員でしたが、長年、イトーヨーカドーに勤めていました。
 簿記の資格を持っていた為、会計担当でした。


 私も学生時代はスーパーでバイトした経験がありまして、私の場合は声優じゃなくて、西友でしたけど・・・。(変換したら、声優が最初に出て来た・・・アハハハハハ)


 私の場合は地下にあるフードコートでのバイトでしたが、思い出しても笑えるのが、店長が・・・熱狂的な巨人ファンでね。
 だけど、西友は、西武系列なんで、西武が優勝したりなんかすると、西武のハッピ着て、帽子かぶって・・・応援セールとか、優勝セールをやる訳です。
 「巨人ファン以外は人間ではない」とか言いきる男でしたが、仕事中は・・・笑顔で、西武グッズを着こんで、仕事が終わると急いで脱いで帰ってました・・・おかしかったなぁ。


 作中に登場した地球のスーパーですが。
 もう適当です。


 ウォルマートとラルフスは、アメリカのスーパーマーケット。
 カルフール、オーシャン、コラは、フランスのスーパーマーケット。
 テスコはイギリスで、コンティネンテは、スペインのスーパーです。
 そして、ジャスコ、ダイエー、イトーヨーカドー、セイユウ・・・は日本。

 もうね、適当に調べて・・・^^@


 因みにすぐに頭に浮かんだのが、ウォルマートとカルフールでした・・・外資系スーパーは。