女性との約束が彼女の体調不良で先延ばしになった。
 せっかくの休暇を持て余していたポプランは、自然公園をブラブラと歩いていて、“相棒”であるコーネフを見つけた。
 彼もまた今日は非番なのだった。
 そのコーネフは、ヤン提督の指定席とも言われている自然公園のベンチに腰掛けて、しきりに難しい顔をしている。
 近付いて見れば、また・・・クロスワードパズルをやっていた。


 「あのなぁ・・・お前、それしか趣味が無いのか?」


 コーネフを見降ろして、肩を竦めるポプラン。
 突然上から声がしたので、おもむろにパズルから頭を上げたコーネフ。
 ・・・声の主がポプランなので、大きく息を吐いた。


 「・・・あれ。お前さんは確かデートとか言ってなかったか?」


 実に冷やかに、そして面倒臭そうに言うと、またパズルに視線を落とした。
 それっきり、ポプランの方を見ようともしない。


 「あぁ、それがさ、急に体調が悪くなったんだってさ」
 「振る口実じゃないか?」
 「おい、俺が振られたって言いたいのか?そんなへましない。デートは明日に変更になった」
 「ふーん」
 「病院に行ったから、明日の夜なら何とかなるだろうからって。俺も夜なら何とかなるしね。それに・・・夜の方がありがたい」
 「そう・・・振られたんじゃなくて良かったな」
 パズルから視線を外さず、それだけ答えたコーネフ。
 「なんだ。言い方に棘があるなぁ・・・。それに会話しているのに、何だか無視されているような気分だ・・・」
 「・・・そうか?そう思うのは心にやましい事があるからだ」


 そう言われて、ポプランは更に渋い顔をした。
 
 「・・・俺もやるかな」
 「何を?」
 「・・・パズル」


 コーネフは大きく息を吐いてパズル本を閉じた。
 そして、ベンチから立ち上がった。
 反対に・・・ポプランがベンチに腰を下ろす。


 「ま・・・座れよ、立ってないで」
 「なんで?お前さんに付き合うとろくな事がない」
 「まぁ、そう言うなって・・・」


 ポプランに言われて、コーネフはまたベンチに座った。


 「全く・・・本当に暇なんだ?」
 「・・・別にいいだろ、そんなの!」
 「確かに俺には関係ないけどな。うるさいから・・・官舎に戻って続きをやりたいんだけど?」
 「俺が迷惑だって言いたいのか?」
 「・・・あぁ。もう、物凄く迷惑だね」
 「じゃぁ、もっと迷惑を掛けてやるよ!」


 そう言って、コーネフの手から無理やりパズル本を取り上げる。
 
 「おい!邪魔するなよ。どうせ、出来っこないのに・・・」
 
 “出来る訳がない”と言われると、ポプランは途端にムキになるのだ。
 昔から負けず嫌いだから。
 
 「まぁ、見てろって。・・・俺だって解けるぞ、こんなのはな・・・えっと、ヨコの18・・・と。なになに・・・『情報処理と情報伝達に特化している神経系を構成する細胞』だと?う・・・精神を構成している細胞・・・??難しいな・・・。何だろな・・・」
 コーネフの予想通り、ポプランは急に眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。
 「やめておけよ。どうせ出来ないんだから・・・。『俺様がといてやる!』とか言って解けた事が殆どないだろ?」
 「うるさいな!」
 「・・・ったく。それなら、ヨコの18にこだわらずに、タテの20を解いたらどうだ?」
 早くポプランから解放されたくて、思わず助け舟を出すコーネフ。

 「・・・えっと・・・。タテの20か?『空を飛ぶ想像上の生き物』・・・えっと、6文字だろ・・・あ、DRAGONかな」
 「ご名答。他はある程度、俺が解いて出来ているんだから、Rが入った訳だろ。それなら、もう解けるじゃないか、簡単に。ほら、さっきのヨコの18」
 「え・・・そうなのか?」
 ポプランは焦った声で、「何だろ、何だろ・・・」と呟く。
 「あぁ、ホントにイライラする・・・。答えは、簡単じゃないか。NEURONだよ。・・・頭が悪いってのは本当に不幸だね」
 「どういう意味だよ!」
 「・・・神経を構成する細胞のない人間。・・・即ち、単細胞人間・・・だ」
 「・・・は?」
 「だから、俺の目の前にいるヤツの事なんだが」
 「お前なぁ・・・」
 「・・・返して」
 「は?」
 「は?じゃない。・・・本だよ、本。自分で解いた方がやっぱりいいや。暇なら、散髪にでも行ったら?」
 「何で急に散髪?」
 「後ろの方とか・・・だらしなく伸びきってる。散髪にでも行ってスッキリした方が、そう・・・女の子にモテるんじゃないの?明日のデートでのウケもいいかもしれないだろ?」
 そう言われて、思わず髪を触ってしまうポプラン。
 「あぁ、そうかもな。確かにだらしないよりいいかもしれないな。へえ・・・たまには気の利いた事も言うじゃん」
 「いつも言っているよ。・・・お前さんが素直に聞かないだけだろ」
 「あっそ・・・まぁ、いいや。確かに髪を切ればスッキリするかもな・・・じゃぁ、これから行って来ようっと・・・」
 
 ポプランはベンチからゆっくりと立ち上がる。
 


 去って行くポプランの背中を眺めてパズル本を開いたコーネフは、「ふう・・・時々は素直なんだよな・・・」と呟いて微かに笑った。
 そして、パズルの新しいページをめくった。





THE END





 100のお題より「ニューロン」です。
 私、こういうお題が苦手なので、中々書けませんでしたが・・・。

 ポプランとコーネフのエースコンビで書いてみました。。
 この2人の掛け合いが好きです。


 けどね~『ニューロン』なんてタイトルで銀英伝・・・難しすぎますって。
 イヤ・・・書ける人は得意なんだろうけど、私はカタカナの難しい言葉は・・・苦手です。

 だからパズルに逃げ込んでしまいました。


 困った時はコーネフ氏に登場願って、ポプランとの掛け合いにしてしまう・・・これがお題を書く時に困った時の神頼み。
 私にとって、コーネフは「神」です。
 神にされた彼は凄く迷惑でしょうが^^@


 ポプランとアッテンボローの掛け合いも好きですが、コーネフとの掛け合いに比べたら雲泥の差でしょう。
 辛口の応酬ですが、結構、奥には温かいモノがあるんですよね。


 辞書ほどの厚みのクロスワードパズルをやるコーネフは凄いと思います、ホント。
 それにしても、クロスワードパズルを作るのが好きで良かった・・・私^^@

 最近では作ってませんが、一時期、暇さえあれば作っていましたね~・・・。

 もし、実際にコーネフがいたら、自作のパズルをプレゼントしているかも。←重症ですww