「おい、コーネフ知らないか?お前達の隊長だ」
スパルタニアンのパイロット達の詰め所にやってきたポプランは、コーネフがいない事を不審に思った。
入れ違いで休憩に入ったのだが、いると思っていたこの場所にいないのだ。
ポプランから声を掛けられた3人の部下達は首を振ったが、1人が何かを思い出した。
「そう言えば、さっき見かけましたね・・・」
「おい、どこでだ?」
「ええ・・・っと。確か士官食堂におられたような気が・・・。士官食堂のコーヒーの方が美味しいとかおっしゃって・・・」
「あぁ・・・そりゃそうだ。ここの数倍はイケる味だからな」
「それで、士官食堂でコーヒー飲みながらパズルをやるとか言われて・・・そう、いつものパズル本を持ってましたよ」
「え、またかよ・・・。あいつ本当に暇なのな」
ポプランは思いっきり顔を顰<しか>めたが、3人に手をヒラヒラ振って詰め所を出た。
そして、士官食堂をひょい・・・と覗く。
確かに部下が言ように、コーネフは趣味のクロスワードパズルに真剣な表情で取り組んでいた。
何やら難しい顔をしている。
どうやら、休憩を利用してコーヒーを飲みに来たついでにパズルをやると言うよりは、ここに腰を落ち着けてしまっていた。
詰所のコーヒーは最低レベルのインスタントだが、ここのコーヒーはレギュラーで味はそこそこ良いからだ。
「また真剣な顔をしちゃって。・・・ったくさ、他にする事無いのかね」
給仕のオバちゃんにコーヒーを入れてもらい、コーネフのそばに近づく。
そして、パズルを殆どやらないポプランは呆れ顔で親友の顔を覗き込んだ。
「・・・邪魔をするな」
冷たいコーネフの言葉。
しかも、「・・・顔、近過ぎて暑苦しい」と、ポプランを押し戻す。
コーネフの飲んでいるのは、ほんの少しクリームを入れたアイスコーヒーだった。
「邪魔とか、暑苦しいとか・・・ヤな事言うなよ」
「だってその通りだろ?邪魔だし、暑苦しいから、そう言っているだけだが・・・」
「あのなあ・・・。俺達親友だろ?」
「・・・そうなのか?そいつは知らなかったな」
「・・・やっぱりヤなヤツだな~・・・それに、暗いぞ、お前。大体、その趣味はだな・・・」
「お前さんのように、ご婦人方のお尻ばかりを追い回すよりは、こっちの方がよほど高尚だと思うけど?」
クロスワードパズルに首ったけのコーネフは、ポプランの方を振り向きもせずにピシャリと言い放つ。
その態度に、一瞬鼻白むポプラン。
「あのなぁ・・・。お前なぁ・・・思いっきり勘違いしてるぞ。男が助兵衛で無いとこの世界は成り立たないんだぞ。そして、お前だって男だろうが?」
「・・・それで?」
「それで・・・って。俺は今まで、お前が女と歩いているところを見た事がない。まさかと思うけど、ヘンな趣味はな・・・?」
「ないね」
間髪いれずに即答するコーネフ。
「・・・あのね、馬鹿馬鹿しい戯言に付き合うほど暇じゃないんだ。・・・他に言う事がないなら向こうへ行ってくれ」
「何だよ、その言い方・・・」
ポプランは眉を引き上げた。
あまりにも邪険にされたので少しばかり気分が悪い。
残りのコーヒーを飲み下し、「あのな・・・」とポプランが抗議の態度を見せると、コーネフはやっとポプランに向き合った。
「言い方が悪かったか?それじゃぁ、『いやぁ・・・実にご立派な演説ですね・・・』とでも言えばいいのか?」
「・・・くはぁ~ヤなヤツ」
「・・・俺は今・・・忙しいの。本当に付き合っている暇はない」
「忙しいって・・・パズルに・・・だろ。・・・ここはひとつ、俺様が解いてやる」
「・・・いいよ」
「いいから、遠慮するなって!」
「遠慮なんかしてない」
「とにかく、貸せって!」
ポプランは凄い勢いでコーネフからパズル本を奪い取る。
「やっぱり・・・邪魔をする気なんだ?」
「うるさい!俺だってその気を出せば・・・こんなの簡単に解けるんだからな!」
コーネフは、「どうせ解けないというのに、お前さんも懲りない奴だな・・・」と、冷ややかな表情で同僚を見つめる。
「いいや、解いてやる!」
「はいはい・・・分かったよ。解けるもんなら解いてみれば?」
コーネフは、力づくでも奪い返そうとは思っていなかった。
ポプランの強引な態度に呆れながらも、ポプランが解けるかどうか・・・実は少しは楽しんでいた。
ポプランから遅れる事、数分。
休憩の為に、食堂にやって来た部下達は互いに顔を見合わせる。
「あ・・・やってる、やってる・・・」
「・・・ポプラン中佐も暇なんだな・・・」
「これからどうなるんだろ??」
部下達は事の成り行きを見守っていた。
「なんだ、タテの15か。『◎◎とはさみを上手く使いこなせたらいいですね』って何だ?はさみ・・・訳が分からん」
考え込むポプラン。
実を言うと、もう5分も考えている。
他のカギから答えを導く方法もあるが・・・他のカギはもっと難しくて解けそうにない。
それでタテの15に切り替えたのだが、やはりこのカギも難しくて・・・5分経過したのだ。
「そんな簡単な問題で躓くぐらいなら、解こうなんて言うな。早く返せ」
「うわ・・・冷たい言い方・・・。お前ならすぐに分かるのかよ?」
あまりの刺々しさに、ポプランは鼻に皺を寄せた。
「答えは『バカ』だ。『馬鹿とハサミは使いよう』と言うことわざがあるだろう?ちょっとおつむの弱い馬鹿なヤツでも上手く使えば、奇跡的にパイロットになれるというありがたい・・・」
「誰が馬鹿だ、誰が・・・」
「・・・俺の目の前にいるヤツに決まっているだろうが」
「あのなぁ・・・」
「おや、自覚してない?・・・それは可哀相に。やっぱり馬鹿だったか・・・」
「おい・・・そこまで言うか、普通」
腹立たしげなポプランに、コーネフは冷ややかな笑顔を浮かべる。
「優しい俺が言ってやらねば、お前さんは自分が馬鹿だって事・・・分からないまま一生終わると思う」
コーネフは済ました顔で指をシャキン!と、ポプランの顔の前に突き出す。
「人を指差すな!」
ポプランは、ふくれっ面をしてパズルブックを放り投げ・・・本は、床にバサッと転がった。
「あ~あ・・・。大事な本なんだから・・・少しは丁寧に扱ってほしいね」
コーネフはパズル本を拾い上げて、塵を払うマネをする。
「全く・・・。モノを粗末に扱うのは非常に良くないと思う。こういうの・・・親にちゃんと躾けられなかったのかな?」
「・・・言ってろ!」
ポプランは、口を尖らせて大またでガシガシ歩くと、居合わせた部下達をも睨んで食堂から出て行った。
「あぁ、また口喧嘩・・・。だけど、アレで仲がいいんだから隊長達って、本当に不思議だよな」
「あぁ・・・あれって、腐れ縁なんだってさ」
「・・・何が?」
「コーネフ隊長が言っていた。ポプラン隊長との縁が死ぬまで続きそうだと思うと、いつも頭が割れるように痛くなるんだってさ」
「なるほど・・・。でもさ・・・隊長達って、なんか見ていて楽しいよな」
「・・・まぁな」
部下達は、何となく2人の関係が羨ましく思えたのだった。
THE END
100のお題より、「はさみ」です。
私はエースコンビが好きです。
コーネフが亡くなった後、ポプランはアッテンボローと舌戦を繰り広げていましたが、どうも、コーネフの時とは違うんですよね。
コーネフの時は遠慮が無い。
それは、同じ職種で、階級も似たようなものだったせいもあるけど。
でも、アッテンボローやシェーンコップが相手の場合は、やっぱり、あの2人の方が将官だもんで・・・。
何となくですが、彼の言動にも、ちょっとは遠慮があったような気がします。
自分では自覚していないと思うけど、少しは遠慮していたと思いますね、ポプランも。
あぁ・・・バーミリオンでコーネフが死んでいなかったら・・・。
鈴置さんは、もう1人の彼との掛け持ちで、すっごく大変だったかもしれませんけどね、もっと楽しかったと思う。
そして・・・。
ふと思ったのですが、古川さんと鈴置さんって、他のアニメでも結構共演していますが、大抵、鈴置さんの方が・・・落ち着いた役とか、年上の役だったりするんだな。
ガンダムの場合だと、ブライトさんと、カイさん。
ブライトさんは艦長で、カイは元民間人で、アムロ同様に地球防衛軍に組み込まれて、ガンキャノンの乗員になったでしょ。
私・・・カイとミハルのエピソードは、何度見ても切なくなる。
「ミハルがいなくなった・・・」と茫然自失のカイに、非常に困惑した表情のブライトさんが印象的だったなぁ。
・・・まぁ、ミハルは密航者ですからね・・・。
ブライトさんは艦長だし、困惑しない方がおかしいんだけど、あのシーンは印象的^^@
それから、「機動警察パトレイバー」でも共演していたなぁ。
古川さんが、特車二課第二小隊の篠原明日馬役で、鈴置さんが、シャフト・エンタープライズの内海課長。
この内海さんが・・・妙な人でね。
ちょっと不気味な感じの、だけど、お茶目な感じでした。
・・・ライバル的存在で良かったです^^@
因みに、その課長の右腕の黒崎さんが、メックリンガーの土師さんで、こちらは切れ者で凄かったわ。
あと、あの作品は、内海課長の部下の中に・・・「超時空要塞マクロス」で主人公の一条光を演じていた長谷有洋さんがいたんだけど、あんまり目立たなかったなぁ・・・。
そして、その内に・・・長谷さん、亡くなられて。
自宅マンションから転落・・・一応、事故死って事になっているけど、あれは・・・違うと思っている人、多いんじゃないかな?