「・・・なぁ、知っているか?13って数字は不吉なんだって」
 「不吉・・・?なんで?」
 「なんでって聞かれても・・・。昔から言われているんだよ」
 「あぁ、それなら聞いた事があるぞ。確か・・・。昔の聖人だかなんかに弟子がいて、12人はまともだったんだけど、13人目の弟子が裏切ったとかなんとかだったはずだ」
 「うん、俺も聞いた事がある、それ。・・・子供の頃に読んだ絵本に載ってたな」
 「ふーん・・・。それで、どんな裏切りをしたんだ、その13人目の弟子って・・・」
 「内容までは詳しく覚えていなけど・・・自分の仕えていた聖人を敵に売ったんだ。そんでその聖人は殺されたと思う。それが原因なんだと思うけど、13って数字は昔から、裏切り者の数字とか言われて、不吉の象徴のように言われているんだ」
 「裏切りねぇ・・・。俺も不吉な数字なら知ってるぞ。確か・・・666って言うんだけど」
 「・・・666ぅ~??」
 「聞いた事がないぞ、それ・・・」
 「うん、この世の終わりを予言したらしい本か何かに、この数字が書いてあったらしいよ」
 「預言書・・・そんなのがあったのか」
 「・・・それでその数字は悪魔を表しているんだってさ。確か、大昔に・・・頭に666って数字が刻み込まれた子供が生まれた事もあったらしいよ・・・。刺青とかじゃなくて生まれた時から子供の頭にあったらしいんだ、数字が・・・」
 「頭に数字がある子供・・・見たくね~な、それ」
 「げ~・・・想像したら気持ち悪くなってきた~・・・」
 「それ・・・実話じゃないと思う・・・アタマに数字の入った人間が生まれるかよ!」


 新設された同盟軍の第13艦隊の結成式に行った兵士達は式典が始まるまでの間・・・。
 兵士達はあれこれとヒソヒソ話をしていた。
 だって・・・暇だったから。
 
 新しい司令官がこれまでの慣例を打ち破って、階級が少将であるらしい・・・。
 また、その司令官はあの『エル・ファシルの英雄』であるらしい・・・。
 そして、新設された艦隊は、通常の半個艦隊であるらしい・・・。
 極めつけは・・・艦隊番号が不吉な数字の13であるらしい・・・。


 兵士達は、とにかく、ヒソヒソと噂しあった。
 「13」だの「666」だのが不吉なんていうのはこの際関係は無い。
 たったの半分の6400隻から構成される艦隊なんて今までに無いから、皆が不安になっているだけなのだ。
 それに司令官は通常、中将なのに、少将に昇進したばかりのまだ20代の若者だと言うから不安なのだ。
 言わば、不安を何かに転嫁して解消したいだけだった。


 「20代で少将だろう?」
 「若いよな・・・俺の親だって、将官になったのって50歳を過ぎてからだったぞ・・・」
 「将官になれたのならいいじゃないか・・・うちの親なんて、大佐のまま定年だった・・・」
 「生きているのならどっちでもいいよ。俺の親なんか、おれが10歳の時に戦死したからな。二階級特進して少佐になったけど・・・生きていて欲しかったと思うよ」
 「・・・すまん・・・」
 「生きて定年を迎える者より、戦死者の方が多いもんな・・・圧倒的に」


 兵士達は、ヒソヒソ話を続けていた。
 ヒソヒソ話が続けられるのは・・・理由があった。


 会場には第13艦隊への配属が決まった兵士達が集合し、舞台の壇上には上層部のお歴々が居並ぶ。
 元帥やら、他の艦隊の司令官達。
 会場に集まった兵士達は通常の軍服だが、ステージ上のお歴々は、皆、バリっとした礼服に身を包んで畏まって座っている。
 また、ステージの左右の花道にはオーケストラピットが設えられていて・・・軍楽隊が控えている。
 多分、「自由惑星同盟国歌」を演奏するのだろう。

 結成式は、いつ始まってもいい状態である。
 ところが・・・。
 プログラムに明記してある開始時間になっても、一向に式典が始まる気配が無かった。
 時間になっても始まらない・・・これがヒソヒソ話が出来る理由である。


 「しっかし・・・なんで始まらないんだ??」
 「あぁ・・・絶対におかしいぞ」
 「なんでだ?お前理由が分かるか?」
 「・・・そんなの知るかよ」
 「おい、見てみろよ。椅子が1つ空いている。あの席って・・・この艦隊の司令官の席じゃないか?」
 「ええ!!?空いているって事は・・・肝心要の司令官が来ていないって事か!?」
 「まさか・・・」
 「幾らなんでもそんな馬鹿な話があるかよ・・・」
 「でも・・・空いているじゃないか」
 「うーん・・・謎だね」
 「もしかして来ないつもりだったりして」
 「・・・そんな司令官の下で働かなきゃいけないのか・・・俺達」
 「冗談じゃないぞ・・・」


 司令官が来ていない事が会場中に浸透しつつあった。
 それで、あちらこちらでヒソヒソ話が始まる。
 ステージ上に1つだけ空いた椅子。
 ・・・これがかなり目立つのだ。

 国防委員長のヨブ・トリューニヒトが時々その椅子の方を見る。
 ・・・愛想笑いを浮かべるのが得意な男だが、かなり不機嫌そうだった。

 何故、表情が分かるかというと、後方の席にもステージを見せる為に、いくつもの巨大スクリーンがあったからだった。


 「おい、どう思う?司令官が来ていないって前代未聞だよ・・・」
 「国防委員長の顔を見てみろよ」
 「笑顔だけど、目が笑ってないな・・・」
 「・・・怒ってるな、あれは・・・」
 「司令官がいないなんて、普通じゃないな。ますます・・・怪しいって感じ?」
 「あ・・・もしかしたら、13って数字が力を持ってきたってところかな?」
 「まさか・・・司令官が直前になって逃亡・・・ってのはないよな」
 「馬鹿だな・・・そんな事をしたら逃亡罪になるぞ。でも、司令官が来ないのは確かに不吉だな」
 「でも不吉さから言ったら、13よりも666の方かもかもしれないぞ」
 「え・・・なんで?」
 「数字が大きい分、とんでもなくい事が起こるんだ」
 「たとえば?」
 「そうだな・・・最初の攻撃で666隻がいっぺんに沈められるとか、666人が瞬時に戦死してしまうとか・・・」
 「げ~最悪じゃん、それ」
 「うーん・・・そんな事になったら嫌だな・・・」


 「お前等・・・いい加減にしろ!」
 「そうだ・・・不吉な事を言うな!」


 前の席の士官から怒鳴られてお喋りをしていた者達は・・・首を竦めた。


 やがて、慌てふためいてやって来たヤンが壇上に立つ。
 こういう場に不慣れなのか、どこかぎこちない感じだ。
 式典のスピーチというものはとかく、意味も無くだらだらと長くて退屈なものが多い。
 ところが、ヤンのスピーチはこれまで聞いた事も無いぐらい短くて、あっという間に終ってしまった。
 聞いていた者達は・・・拍子抜けしてしまった。
 
 「・・・スピーチ・・・これで終わり??」


 そう呟いた兵士達が多かった。
 余りの短さに、壇上にいた、他のお偉いさん連中は苦虫を潰したような表情でヤンを睨んでいる。
 指定の席に付いたヤン提督は本当に司令官らしく見えない。
 良く見れば、ベレーやスカーフが若干崩れてもいた。
 お偉いさん達とは対照的なヤンの様子は、将兵達から見れば、何だかとても愉快でもあった。 


 正午過ぎに漸く式典が終わって、三々五々帰途に着く兵士達は、ヤンが只者では無い事を感じ取っていた。


 「そういや・・・陸戦部隊にいる俺の従兄弟の話じゃ、この艦隊に『薔薇の騎士<ローゼンリッター>連隊が配属になったって言っていたっけ・・・」
 「え・・・あの?白兵戦技術は物凄いけど、元々・・・敵の亡命貴族の子弟を中心にして創設された部隊だろう?一筋縄でいかない連中で、物凄く扱いにくいって聞いた事があるぜ?」
 「・・・うん、扱いにくいってのは俺も聞いた事ある。だから、特定部隊に組み込まれてなくて、あそこだけ別連隊になってるんだろう?」
 「それが正式に第13艦隊に入るのか。・・・そりゃ凄いわ。・・・けど、荒くれ者って評判の連中をどうやって手なずけたんだろ?」
 「さぁ・・・。けどさ、なんかあの司令官は話の分かりそうな人だったよな。案外、第13艦隊は・・・不吉じゃないのかも」
 「・・・うーん、逆に13個のラッキーとか、666回のラッキーがあるのかな?」
 「ラッキーのオンパレードってか?確かにホントにラッキーな感じがする司令官だよな。なんたって・・・ほら、エル・ファシルの英雄だし!」
 「・・・あ、そうだった!!」
 「それに、アステーテで大敗しなかったのは彼の手腕だって言っていたよ。俺の従兄弟は第2艦隊の分艦隊に所属していたんだけど、冷静にC4回路のコンピュータを立ち上げるように指示したんだって」
 「・・・で?」
 「そこに戦術シミュレーションがインプットされてて、その通りに動いたら・・・瓦解しなくて済んだって言ってた」
 「・・・やっぱり英雄なんだな」
 「エル・ファシルはまぐれでは無かったって事だ。・・・あぁ、俺・・・ホッとした・・・」
 「俺もだ」
 「うん、俺も・・・ホッとした」


 朝は不吉だとか色々言っていた兵士達も、ヤンを見てこの先に何か良い事が起こりそうな気持ちを抱いた。

 ただ・・・この会話を、もし、ヤン本人がが聞いていたら・・・。
            
 「それは買いかぶりだねぇ・・・」


 ベレーを外して、苦笑を浮かべてポリポリと頭を掻くに違いない。





THE END





 100のお題より「666」です。

 名も無き・・・自由惑星同盟軍第13艦隊に配属になった兵士達が体験した艦隊の結成式。
 OVAでもそれとなく描かれていましたが、兵士達の気分になって・・・私も話を作ってみました。


 誰がどう・・・って事はあえて書いていませんが、喋っている人数は3人ぐらいかな。
 皆でかぶせあって喋っている感じです。
 だからあえて、名前とか構築しなかった。

 この辺りが、シュットックハウゼン&ぜークトの話に出て来たオペーレーター君達と違うところ。


 因みに、私はこの数字好きですよ・・・666ね!
 聖飢魔Ⅱでは666は神聖な数字。(笑)
 『悪魔組曲作品666番ニ短調』とか・・・メチャ好きだし。

 そうそう・・・阪神大震災の時、チケット代が5666円でした。
 666円が義援金だったのを思い出しました。

 来月から年末までは聖飢魔Ⅱのミサが目白押しなので・・・大変です!
 因みに、期間限定のミサの初日は9月18日で埼玉県川口市からなんですが、いやぁ、19日のしたまちコメディ映画祭のイベントと重なって無くて良かった・・・。


 19日はね・・・羽佐間道夫様がご出演のイベントがあるの。
 ・・・去年も観られたのですが、生アフレコです・・・ナマ!
 去年は無声映画にぶっつけ本番で声を入れて行くというヤツで。

 今年もそうなのかな?
 今年は関智一さんや、中尾隆聖さん、そして、羽佐間さんの一番弟子である山寺宏一さんも出る!

 お席が昨年同様に前の方なので・・・ナマのシェーンコップを堪能出来るのね・・・もう、嬉しい!
 羽佐間さんも、70代だから・・・いつまでも頑張って頂きたいお1人です。


 聖飢魔Ⅱの方も15回ぐらいは公演に行く予定で(行き過ぎだとダンナは思っているらしいが・・・無視している)、多分、今回のは英語の歌詞が大半ではないかと。
 欧州に向けて配信したりしているんだけど、海外のファンのメイク信者とかいたら楽しいだろうなぁ^^@<私はメイクしませんが。


そうそう・・・書き忘れていましたが、頭に666って言ったらアレですよ、アレ。
 映画の「オーメン」です。
 子供の頃はかなり怖かったんですけど、今考えたらそんなに怖くないかも。

 日本の怪談の方がよっぽどか怖い・・・「リング」とか「呪怨」とか、「着信アリ」とか怖かった・・・。

 まぁ、海外の怖い映画とかって、宗教絡みのが多いよね。
 「エクソシスト」とか。
 
 それから、猟奇的なスプラッタ映画とか。
 宗教が絡んでないのもあるけど、海外のは心理的怖さよりも、猟奇的にバッサリ!!みたいなのが多くて。

 私は、スティーブン・キングと、ディーン・R・クーンツが好きなんですけど。
 最近ちょっと笑ってしまったのですが、銀河英雄伝説の舞台に関しての田中先生のインタビューに、書いてあった話。


 銀河英雄伝説を英訳したら、帝国軍の部分はシェイクスピア風に、同盟の方はステイーブン・キングとか、ディーン・R・クーンツ風って書いてあった・・・。
 そっか・・・そうだったのか!!←だから何が??


 キングの場合は、心理的にコワイのもあって、「ミザリー」がメチャ好き^^@
 映画も凄かったな・・・キャシー・ベイツの怪演振りが、怖さを更に盛りたててた・・・。

 マイナーな私は、今は絶版になっている「ゴルゴタの呪いの教会」(ベタな邦題だなぁ・・・)というオカルト小説が好き。
 フランク・デ・フェリータって人が書いているんだけど、角川文庫から上下2冊出てて、とにかく引き込まれて読んでました。
 この本は絶版になっているようです。

 それから、映画「ヘル・レイザー」の原作小説「ヘルバウンド・ハート」も好きかも。
 これは、映画「ヘル・レイザー」の監督である、クライヴ・バーカー自身の作品です。
 映画は7作品ありますが、私が観たのは・・・最初の作品だけです。
 
 まぁ、脱線はこれぐらいで。 
 今回の話は・・・多分、スランプの時に書いたんだと思う。


 駄作で申し訳ないですが・・・どうか、呪わないでやって下さい。