スパルタニアンのパイロット詰め所。
一応出撃準備は済んでいる。
後は上からの合図が出れば、即座に飛び出して行ける状態だ。
だが、今のところは偵察機による哨戒だけで、これといった指令も無い。
いくら出撃準備が済んだとは言え、勝手に出る事なんて出来ないから、パイロット達は愛機間近の詰め所で待機していた。
「うーん・・・。タテの7がこれだから、ヨコの11は・・・っと・・・」
何やら難しい顔で呟くコーネフにポプランは呆れ顔となる。
「おい、さっきからなにブツブツ言ってんだ?・・・まるで新手の念仏みたいだぜ~!」
そう言いながら隣にいる相棒を見るポプラン。
だが、途端に顔を顰<しか>める。
「・・・またパズルかぁ?お前・・・ホントよく飽きないよなぁ・・・」
ポプランはクイズだのパズルだのが苦手だった。
立体テレビ<ソリヴィジョン>のクイズ番組を見るのは好きだったが、書籍タイプのクイズを解く気はサラサラない。
どうも本を読む事は、学校での事を思い出してしまうのだ。
「なぁ、俺、話しかけているんだけどなぁ」
ポプランはコーネフにちょっかいを出すが、真剣にクロスワードパスルと向き合っているコーネフは全く相手にしない。
顔を上げもしない。
「・・・おい、無視かよ!」
そう言うポプランに対して、コーネフはやはり顔を上げないまま、「・・・うるさい」とだけ言う。
「・・・うるさいって・・・ヤなヤツ」と、露骨に顔を顰<しか>めるポプランに対して、「だって、本当の事だろ?」と冷やかに言うコーネフ。
パズルに熱中している時に声を掛けると不機嫌になるのだ。
2人の間には、今、戦闘中だという緊張感のまるでなかった。
「うーん・・・。あ・・・そうか、分かった!」
「なんだぁ・・・?あぁ、答えか・・・」
ホッとした表情を浮かべるコーネフに、「・・・で、答えは何だったんだ?」と聞くポプラン。
いつもサラサラと解いているコーネフが難しい顔をしていたのが面白かったのだ。
無視をされた仕返しに、ちょっとからかってやりたい気分だ。
それを知ってか知らずか、くそ真面目な表情で答えるコーネフ。
「・・・あぁ、答えか・・・。4文字の音楽用語だ」
「音楽用語??」
「そうだ。カギが『音が積み重なって出来たコードの中で基礎となる音を表す用語は何だ?』だったんだ」
「へ?」
「へ・・・じゃない。これがヨコの11のカギだったんだ。解けるか?どうせ分からないだろうけれどな」
『どうせ分からないだろうけれど』と“どうせ”の部分を強調するコーネフ。
ポプランはこれにカチンときた。
そして、今まさに答えを書き込もうとしているコーネフに向かって「貸せ!」と怒鳴る。
・・・と同時に、凄い勢いでパズル本を取り上げた。
「おい!何をするんだ!」
コーネフは血相を変えて、ポプランを睨み付ける。
それを無視して、ヨコの11・・・色々考えたが答えが全く分からなかった。
ポプランは、カッキリ5分も考えたが答えが分からず、とうとう降参するとコーネフは鼻で笑った。
「解こうとした事だけは褒めてやるよ。でも、やっぱりな解けなかったな。分からないなら最初から素直に言えばいいのに。答えは『ルート』だ。スペルはROOTだ。これは覚えていて損はないぞ」
コーネフは冷たい視線をポプランに向ける。
「ROOTってのは根音って意味だ。クラシックの音楽用語で・・・」
「何だよそれ・・・」
鼻白むポプラン。
「だから、音楽用語だって言ってるだろ?」
「それはさっき聞いたよ」
「・・・そうだったな。お前は軽い奴だから、流行歌しか知らないもんな。だから、崇高な古典音楽なんて殆ど聴かない・・・そうだろう?それだから、答えが分からないんだよ」
得意げなコーネフに、ますますムッとするポプランは口を尖らした。
「・・・流行歌しか聞かなくて悪かったな!どうせ俺は古典音楽なんて知らないよ!・・・ったく、つくづく嫌味なヤツだな。そいつが凄く難しいのはよ~く分かったよ。だけど・・・そのスペルだと他にも重要な意味もあるじゃないか、ほら。昔・・・散々学校でやらされたヤツだ」
「あぁ・・・平方根ね、数学の。記号は√だ」
「あ・・・知ってた?」
ポプランの言葉にコーネフは人の悪い笑顔を向ける。
「お前さんじゃあるまいし。・・・俺は極めて真面目な学生だったからね。馬鹿にしてもらっては困る」
「なんだそりゃ。じゃあ何で、出題者は音楽用語なんかを持ち出すんだ?・・・答えが物凄く分かりにくいぞ!」
ポプランは腹立たしげだ。
だが、コーネフはどこ吹く風。
ポプランに先程よりも更に意地の悪い笑顔を向ける。
「・・・どうせ知らなかったんだろう、音楽用語の方を?数学だの平方根なんてカギ出したら、すぐに分かってしまって、こんなにつまらないパズルもないだろうね」
「つまらないって・・・」
「つまらないね、そういうのは。出題者は、カギも色々と凝るんだ、解く方に分かりにくくする為にね。ほら、俺が解いているのは、『上級者の為のパズル』で、初心者用ではないからね」
コーネフは、わざわざ掛けてあった文庫本用のブックカバーを外す。
そして、『月刊・上級者の為のポケットクロスワードパズル』と書かれた表紙をポプランの鼻先にずずずい・・・っと突き出した。
「お前さんが解くなら、初心者用よりももっと簡単な『入門編』とか、『子供用』がいいかもしれないな・・・」
「くそっ!勝手に言ってろ!」
コーネフに逆にからかわれた事を知って、途端に不機嫌になるポプラン。
ふて腐れている様は、まるで子供みたいだ。
コーネフは溜め息をつく。
まだ出撃命令は出ていないから、コーヒーぐらいは飲めそうだと自販機からコーヒーを2つ取り出す。
そして、「ほら・・・機嫌直して飲めよ」と、1つをポプランに差し出す。
コーネフから熱いコーヒーを差し出されると、ポプランは最初はしかめっ面をしていたが、大きく息を吐き出してそれを受け取った。
「素直でよろしい」
「う・・・また嫌味かよ・・・」
「お前・・・それ毎月買ってるのか」
ポプランは本を指差す。
「あぁ、頭の体操になるからね。・・・お前さんもやれば?」
「遠慮しとく・・・嫌味な人間になりそうだから」
「なんだそれ・・・」
「理由は聞くな。・・・答えたくない」
「まぁ、どうでもいいけど・・・」
そう言いながら、コーネフは飲み終わった紙コップを握り潰してダストシュートに放り込んだ。
「あともう少しで出撃なのに・・・」
「あんな調子なのに撃墜数は凄いって、あの2人、やっぱり只者じゃないよな・・・」
部下達は調子の良い舌戦を繰り広げる、2人の隊長を見ながら呆れ果てていた。
隊長達は仲が良いんだか悪いんだかよく分からない・・・。
敵との戦闘を前に、まるでウォーミングアップをするかのような舌戦。
だが、司令部からの発進命令を受けると表情は一変する。
慌てて愛機に乗り込み、凄まじい勢いで飛び出して行くのだ。
THE END
このタイトルを見た時、一瞬虫唾が走りました。
数学が大嫌いで、赤点ギリギリだったので、平方根って聞いただけで、あう・・・もうイヤです。
100のお題の中で、このタイトルだけが異様でしたよ。
まぁ、「π」とか「β」とか「γ」とかじゃなくて、まだ良かったけど。
何しろ連立方程式さえも今では解けないし(すっかり解き方を忘れた・・・)、不等式も分からないし、図形の証明とか涙が出ます、出来なくて・・・。
小学校の頃から出来なかった為、中学も悲惨、高校も悲惨・・・。
今考えたら、赤点だったのによく大学まで行けたもんだな・・・と。
高校は最低レベル(最低レベルの普通科です)の所に行ったので、誰も教科書の内容に付いて行けず、高2になってもまだ高1の数Ⅰをやっているような状態。
高1の時は、殆ど中学のおさらいだったような。
だって、誰も直線のグラフが書けないし、方程式も分からないし、因数分解すら出来ないから・・・先生が呆れ返ったんですよ。
なので、数Ⅱの教科書に書いてあった微分積分とかいうのは・・・結局習いませんでした。(お前達では覚えられないって・・・先生に言われた)
最近のクイズ番組で、学習系のクイズとかあるじゃないですか。
私は、国語系と、歴史系は成績が良かったので、この手の問題になるとアタマはフル回転。
勿論、凄い速さで答えを導き出し、一緒に見ているダンナに、「すげーなー・・・俺は分かんないのに」って言われます。
ところが、計算系の問題になると、頭がフリーズすると言うか、シャッターか、緞帳が下りるというか・・・。
全く何も考えられなくなるのです・・・。
完全にブラックアウト。
あまりにも極端なので、ダンナに「・・・どういうアタマの構造?」って聞かれます。
さぁ、私にもサッパリ分かりません。
本当に脳の構造を調べて欲しいです。
声のデータにしても、アタマのどの辺りに蓄積されているのか知りたいですし。
因みに、クロスワードパズルは解くのも好きなのですが、実は作るのが好きだったりします。
コーネフさんが実在したら・・・パズルを作ってあげたいです・・・爆!