ハイネセンにやって来た帝国軍の兵士がまず驚くのは、街の至る所にあるコンビニであった。


 帝国では24時間営業の店などあり得ないからだ。
 コンビニ以外でも「ファミリーレストラン」と呼ばれる24時間営業のレストランチェーンが至る所にある。

 リーズナブルを売りにしている、「ハイネセン・ガスト」と、「フリー・プラネッツ・サイゼリア」がハイネセンでは大人気である。
 いつでも好きな時に買い物に行ったり、食事に行ける・・・何と贅沢な事だろう。


 因みに帝国では、飲食店の場合、モーニングサービスを行う店でも、早くても午前6時開店で午前8時半には店仕舞いする。
 この手の店は午前11時にランチの為に開店し、午後4時には店仕舞いをする。
 夕食メニューや酒を提供する店がその後に開店し、午後5時から深夜2時までと決まっている。
 銀行や病院などの行政サービス機関は、大抵午前8時から午後5時までで、商店に関して言うと、午前10時開店で午後7時閉店が多い。
 しかも、7時閉店になったのは、ラインハルトが皇帝の座に就いてからで、ゴールデンバウム王朝時代は午後5時閉店だった。
 そして、当時は日曜祝日に休む店が多かったが、最近では帝国でも、休日に店を開ける商店が増えてはいた。
 一方、ハイネセンでは、日曜祝日に店を開けるのは勿論だが、「年中無休」の店が多く、休みを取らないで身体がもつのだろうか??と、店員達を心配する兵士達もいたようだ。
 「年中無休」を掲げる店舗の多くは大手チェーン店であったが、兵士達はそこまでの事情を知らない。


 帝国では・・・大抵の商店が個人経営の小規模な物だったので、ハイネセンとは事情が異なるのだが、個人経営の店も・・・遅くまで営業しており、深夜になってもネオンが煌めき、ビルの上から下を見下ろした兵士達は、「・・・地上の星だ」と、その目映い夜景に感嘆の声を挙げた。
 帝国では、午後8時を過ぎた時点で、酒を提供する飲食店以外の店舗は閉められるので、途端に繁華街が暗くなってしまうのだ。


 だが、美しい夜景や商店事情よりも、帝国軍の兵士達の度肝を抜いたのが、街中を動き回る3つの機械であった。
 
 同盟市民なら、“あるのが当たり前”になっているこの3つの機械・・・。


 清涼飲料水自販機ロボットの『ドリンク・ヒーロー』、お掃除ロボットの『クリ-ン・エース』、記念撮影ロボットの『メモリー・マン』である。
 これらが、帝国軍人を驚かせた問題の機械であった。


 これらの3体は、カシャンカシャンと音を立てなから街を移動する。


 「おーい、ドリンク・ヒーロー!」


 ロボットに向かって声をかける。
 すると、声を発した人間を認識したロボットは、ライトを目まぐるしくチカチカさせる。


 『ハイ、ハイ、ハイ・・・』


 自販機ロボットは返事をしながら、声の主の方までやって来て止まる。
 因みに、このロボットの音声はただの機械音ではない。
 今は亡き、人気コメディアンの声を合成してあり、その独特な声音が人気の秘密なのだそうだ。 


 依頼人はボタンを押して本数を入力して、携帯通信機かコンビニや自販機全般で使えるプリベイドカードをかざす。
 そうすれば、冷たいドリンクから、温かいドリンクまで、色々な商品がが出てくる仕組みだった。
 足は車輪にキャタピラ巻き。
 だが、音はそれほど大きくはなく、騒音対象にはなっていない。
 駅前などは固定型の自販機が多いが、観光地や、歩行者天国となった繁華街ではロボット型の自販機の「ドリンク・ヒーロー」は大人気である。
 わざわざ自販機のある所まで歩く必要がないからだ。

 勿論、観光地や歩行者天国にも固定自販機は設置されている。
 ・・・とにかく、ハイネセンの街中には、自販機が沢山設置しているのだった。


 帝国で飲み物を買おうと思ったら、対面式のお店で買うしかなかった。
 それに殆どが瓶入り商品なので、缶やペットボトルの商品が手軽に買える事はありがたい。
 兵士達には瞬く間に人気になった。


 飲み物の自販機ロボット歩ではないが、記念撮影ロボットの「メモリー・マン」も同様に人気があった。
 こちらもボタンを押して枚数を入力し、携帯通信機やカードをかざすと、『ハイ、チーズ!ワラッテ、ワラッテ!』と言いながら記念写真を撮る。
 音声は、子供の声の合成音である。
 即座にプリントアウトしてくれるし、とても便利であるので、街中でも人気だが、観光地では引っ張りだこである。


 一方、「クリ-ン・エース」には喋る機能も商品を出す事もないが、街の美化の為に黙々と掃除をこなす。
 とにかく、落ち葉や紙くずが落ちていれば、ウィン・ウィン・・・と音を立ててやって来ては、これまたライトを目まぐるしく点滅させ、それがゴミだと判断されると、さっさと掃いて捨ててしまうのだ。
 稀に道路に財布や鍵等が落ちている場合は、本体にある別の収納ケースに保管し、その瞬間に『拾遺物有り』との情報と映像とが警察に転送されるのだ。
 
 因みに、これらの機械は24時間・・・働きっぱなしでも文句一つ言う訳ではない。
 エネルギー源であるが、街中のロボットは日中、太陽光で充電していたので、エコなロボットと言える。
 
 そして・・・。
 実は、帝国軍がハイネセンにやって来た当初は、これらのロボットには、偵察機能があるのではいかと疑われた。


 「疑わしい物は撤去すべし」


 不審な機械である事は確かである。
 しかも、街の至る所にある。
 その為に、本当に撤去されかかったのだが、市民達からのブーイングが大きかった。
 つまらぬ事で暴動に発展しても困る帝国軍は、全ロボット対象に検査を行う事にした。
 その結果、特に問題がない事が分かると、ロボット達はまた街中に放されたのである。
 ・・・それは、レンネンカンプが赴任していた時代であるの話である。


 
 3つの機械の内、「クリーン・エ-ス」は家庭用やオフィス用もあった。


 「そんなにいい物ならば・・・うちでも使ってみるか」


 既にかなりの家庭や職場で、この機械が愛用されていると聞いたロイエンタール。
 そこで、「クリーン・エース」を試しに自分のオフィスに導入してみたのだった。 


 「クリーン・エース」は障害物があると、自己の眼で見て判断する。
 動かせるようなら、本体の真横に取り付けられたマジックハンドのようなモノで動かして掃除し、また元の位置に戻す機能があった。
 だから、テーブルの下や、椅子の下もキレイなのだ。
 面倒くさいから丸く掃いておしまい・・・なんて横着は絶対にしないのだ。
 誤魔化したりする人間よりもよっぽどか優秀である。

 それに、『動かすな』などと言う張り紙がしてあれば、その命令には絶対に従う。
 掃除の範囲も設定も出来る。
 音声も認識出来るので、掃除するなと言っておいたのに勝手に掃除した・・・などという、人間にありがちな愚行も犯さない。
 なお、家庭用やオフィス用には拾遺物を通報する仕組みはないが、ゴミとは別のケースに保管されているのは同じだった。


 『失くしていた物をお掃除ロボットが発見してくれた!』


 それが売り文句となった、立体テレビ<ソリビジョン>のCMで流されていた。


 黙々と掃除に勤しむ「クリーン・エース」。
 完璧に掃除をすると、本体上部の大きなライトが赤からグリーンに変わる。
 本体中央部分のディプレイに同盟公用語だったが『Cleaning end(掃除終了)』の文字を点滅させて、次の部屋へと移動する。
 機械なのに、隣の部屋に入る前に独特のブザー音を鳴らし、入っても良いか確かめる心配り(?)も出来る、オレンジ色のニクイ奴なのだ。
 家庭用やオフィス用の「クリーン・エース」も太陽光での充電が可能であったが、電源が切れると、自分自身でコンセントの元へ行き、勝手に充電をしていたりする。
 小さくてもとても賢いのだ。


 24時間、文句一つ言わずに掃除に勤しむ機械。
 まさに「年中無休」で頑張るのだ。
 それを見やりながら、ロイエンタールはベルゲングリューンに「おい・・・卿はあの機械をどう思うか?」と聞いてみた。

 書類を差し出しながら、ベルゲングリューンはやや肩を竦めた。

 今日も「クリーン・エース」は黙々とチリを集めて掃いている。
 そう、毎日、毎日・・・黙々と掃除に勤しんでいる。


 「何とも言えません・・・。実はこちらに来てから、初めてアレを見た時は驚きました。掃除機ぐらいは帝国にもありましたが、完全に自動のタイプは見た事がありませんでしたので・・・」
 「掃除機か・・・。掃除機ならば、うちの屋敷にもあったな。使用人達が使っていたからな」
 ロイエンタールは独身だったが、父親から受け継いだ屋敷は広大だった為、料理人と、家政婦など、幾人か使用人を置いていたのだ。
 ただ、掃除機は人間が使う物。
 「クリーン・エース」とは全く違う。


 「閣下・・・この機械のお陰で、掃除が行き届き、いつも清潔なのは確かです。人を雇うより・・・遥かに経費は抑えられていますし。我々の話を盗み聞きして誰かに話すという愚行も犯しませんし」
 「・・・そんな事をされたらすぐに壊す」
 ロイエンタールは表情を変えずにそう言った。
 「それに、掃除婦などを、人を雇うとなると、我々の立場上、身元調査などは複雑で非常に面倒になりますが、それがない分、楽だと思います」
 「なるほどな・・・」
 ロイエンタールは頷いた。
 「ここでは、あれを家庭で使う主婦が多いそうで、先日立体テレビ<ソリビジョン>のCMで見ましたが、1家に1台ではなく、今や1部屋に1台の時代だとか。あと、食器を洗って乾かすのも機械ですし。ブロートにしても、材料を投入すると焼き上げまで自動でやってくれるそうですし、洗濯にしても、洗って乾燥させて畳むのまで全部機械任せのようです・・・。家事を機械任せにする主婦が多いなんて帝国では絶対に考えられない事です」
 「あの・・・そう言えば、先日、効率の良い掃除の仕方を達人が伝授するという番組があったのでたまたま見たのですが、機械任せの影響か、雑巾がろくに絞れない主婦がいまして、あれには小官は驚きました。それに機械任せでブロートを焼く人が多いので、自分で発酵から焼きまで出来る人があまりいないそうです。確か、『やってTRY』とかいう番組でした・・・」
 横からそう言い出したのは副官のレッケンドルフだ。


 「・・・ブロートはともかく、雑巾が絞れない主婦がいようとは!これは、世も末という感じですな・・・」


 ベルゲングリューンは嘆きにも似た呟きを漏らし、「・・・全くだな」と、ベルゲングリューンに相槌を打ちながら、ロイエンタールは、ふと・・・親友の妻の事を思い起こした。
 家事の達人・・・。
 その称号を与えるに相応しいエヴァンゼリンがもしこの国に来る事になったとしたら、自分のする事が全くなくて困るのではないだろうか・・・?と真剣に考えてしまった。


 ゴミ箱の中身を本体に入れ、『Cleaning end(掃除終了)』の文字を点滅さる「クリーン・エース」。
 彼(?)は、ウィン、ウィンと音を発しながら部屋を出て行く。




 その姿を見送った3人は、便利なシロモノだがどうも慣れない・・・と、大きな息を吐いた。





Das Ende




 100のお題より、「年中無休」です。


 定番はコンビニっぽいのですが、コンビニは「コンビニおにぎり」がありますのであえて使わず、ロボットを出してみました。

 そして登場するのは、ロイエンタール、ベルゲングリューン、レッケンドルフの3人。
 「帝国軍人カルチャーショック」のシリーズです。
 ハイネセンでのひとコマです。


 「タクシー!」って言ったら、無人のタクシーが来る国・・・自由惑星同盟。
 実際、OVAでヤンが使ってましたよ、上記のタクシーを。

 ・・・だったら、こういう機械もあるでしょう。
 ・・・って事で物語を作りました。


 因みに機械の名前はともかく、モデルはいます・・・。
 昔人気だった『超時空要塞マクロス』のTV版に、動く自販機、お掃除ロボ、写真ロボが出てくるんで・・・使っちゃいました・・・。
 読んで「これってもしかしてマクロス?」と思った人がいたら、鋭いDE賞を差し上げたいと思います。(爆)


 あと、機械の色・・・。
 某タブロイド紙のキャッチ・コピーです。(笑)
全部のお題を銀で書く事は・・・自分でも自体かなり無理しています。


 出てくる人がロイエンタールらしくなくても、これはコメディなんです・・・って、全然笑えないけど。←馬鹿vv

 あ、ロイエンタールを若本紀夫さん、ベルゲングリューンを田中亮一さん、レッケンドルフは安宅誠さん(現 あたか誠さん)の声で読んで頂けたら・・・臨場感はあるかもしれません。
 若本さん、田中さんに比べると・・・安宅さんは、あまり声を耳にする機会がないなぁ。
 あたかさんは、「聖戦士ダンバイン」」のニー・ギブンなんですけどね^^@


 今、見直しを含めて、このあとがきコメントを編集している最中・・・。
 モスバーガーのCMが流れたのですが(2010年7月)、若本さんがナレだったので、コーフンしてしまいました・・・。

 近くにありますので・・・食べに行こうかしら・・・モス^^@


 あ、作中に出た、「ブロート」ってのはドイツパンの事です。


 それから、「やってTRY」というのは、日曜日にTBS系でやっている「噂の東京マガジン」と言う番組です。
 生ではなくて・・・収録物です。
 今はどうか分かりませんが、90年代に観覧に行った時は、赤坂で、金曜日の夜6時台に収録していました。
 その番組の中の1コーナーが、「やってとTRY」でちょっとバカっぽいコギャルとかに、街中で「肉じゃが」を作らせたりするのですが、それはもう、やめて~!!と言いたくなるようなヒドさです。
 見られる環境の方は・・・1度見てやって下さい、このコーナー・・・げっそりする事請け合いです。


 あとね、日本とかと違って、帝国も同盟も・・・建物の中・・・靴を脱ぐ習慣はないと思うので、絶対に靴に付いていた泥汚れとかあると思うの。
 「クリーン・エース」も、毎日・・・お掃除のし甲斐があると思うの~♪