※この物語は、原作終了後の世界を描いております。ご了解下さいませ。



マリーカとケスラーは、初夏の緑の木々が涼しげな街路樹の大通りを、2人してゆっくりと歩いていた。
幹線道路に面したこの地区一帯は、おしゃれなお店が幾つもあって、若い女性やカップルに人気であった。 


 つい、数ヶ月前に2人は正式に婚約し、これからは誰にもはばかれずに堂々と2人で出かけられる・・・その喜びを、ケスラーはかみ締めていた。
 銀河帝国の元帥であり、憲兵総監という重職にある彼は、さすがに恋人とは言え、未成年のマリーカを連れ歩くのは容易ではなかったのだ。
 だが、正式に婚約したとあれば、多少の障害が消えた事になる。


 今日は久方ぶりの休暇であった。
 一応はデートだったのだが、マリーカが「あの・・・ウルリッヒ様。一緒にお散歩・・・いえ、ウィンドウ・ショッピングでもしませんか?」と言ったので、ケスラ
ーはそれに付き合っていたのだ。


 ケスラー1人では、さすがに気後れしてこの辺りを歩く事はまずないと言ってもいい。
 でも、マリーカと一緒ならば歩けてしまう・・・何とも言えないが、恥ずかしくなく歩けるのが不思議である。

おっとりしたマリーカの歩調はゆっくり目であるので、ケスラーもそれに合わせてゆっくりと歩く。


 普段は地上車<ランド・カー>で移動したり、歩いたとしても速足のケスラーは街中の様子など気にも留めていなかった。
 だが、ゆっくりと歩く事で、見過ごしていた街路樹や花壇、店の看板などを眺める事が出来る。
 それに、青空と白い雲・・・眩しい日差し。
 そんなものは、普段なら気にも留めないのに・・・何故か心が浮き立ち、つい、天を仰いでしまう。
 
 (おや、こんな所にこんな店があったのか・・・)


 ゆっくりと歩いていると、意外な店を発見したりして、たまにはこうして歩くのも良いものだ・・・と思い始めていた。
 
 ウィンドウ・ショッピングだから、決して店に入る事は無い。
 マリーカは、様々な店をウィンドウ越しに覗き込んでは、大きな飾り窓の中にディスプレイされた商品を色々眺めて、少女らしい感嘆の声を上げていた。

 「わぁ、この素敵な色のワンピース!裾のレ-スがとっても華やかだわ・・・」とか、「でもぉ・・・このドレスは私には似合わないかも!私にはもう少し可愛いデザインの方がいいでしょう、ウルリッヒ様?」などと言ってははしゃいでいたのだ。


 ケスラーはその度に、「マリーカ。気に入った服がバッグがあるのなら、店の中に入ってみるかい?」と聞くのだが、彼女は慌てて首を横に振って、急に真剣な表情を向ける。


 「いいんです。・・・外からの方が楽しめますから。それがウィンドウ・ショッピングの醍醐味なんですよ、ウルリッヒ様」


 そう言われればそういうものか・・・と納得するしかない。
 きっと、ウィンドウ・ショッピングが若い女性の間で流行っているのだろうな・・・とケスラーは自分で自分を納得させ、マリーカの後を歩いていた。


 マリーカがウィンドウ・ショッピングをしているのには理由があった。
 中に入れば、ケスラーのこと、マリーカが断っても彼女に似合いそうな服やバッグを買おうとしてしまうのだ。
 以前のデートでそういう事があって、それが思いもかけずに高価な商品であった為、彼に気を使わせているのを心苦しく思っていた。
 それで、マリーカなりに気を使って、眺めるだけにとどめていたのだった。
 そんなマリーカが、急に足を止めて真剣にウィンドウを見つめている。


 「いい感じの物があったのかい?」
 「わぁ・・・何だか変わった感じ・・・。ウルリッヒ様もそう思いませんか?・・・凄く不思議な装飾だわ」


 淡い色合いの小花柄ワンピースや、シルクのレースリボンの付いたつばの大きな帽子、水玉模様のパステルカラーのパラソル、淡いピンクのエナメルのハイヒールな

ど、清楚で可憐な品と一緒にウィンドウに幾つもディスプレイされていたのは、何故か無骨なナイフだった。
 それも、小型のナイフではなく、鈍い光を放つ、大型の折りたたみ式のナイフである。


 幾つものナイフが色とりどりのビビッドカラーのリボンで巻かれていて、最新モードの服や小物と一緒にウィンドウに飾り付けられている様は不思議な感覚を呼び起こした・・・。
 ディスプレイされている服や小物も、パステルカラーの可愛らしい物だけに、ナイフは斬新かつ挑戦的な感じである。
 とにかく、その店のウィンドウだけ、独特の雰囲気を醸し出していた。
 その証拠に、足を止めて、熱心にウィンドウを覗いているのはマリーカだけではなかった。
 幾人もの人々が、「面白いね」とか、「不思議な感じ」と言いながら、一旦足を止めて眺め、その場から離れて行く。


 どう言う意図でディスプレイされているのかは分からないが、前衛的であり、人目を引くという意味では成功している。


 「ふむ・・・ジャックナイフのディスプレーか・・・目立つな、確かに」


 マリーカの横でケスラーが呟くと、マリーカはにこにこした笑顔で長身の彼を見上げた。

 「ウルリッヒ様、ジャックナイフって言うんですか、このナイフ?」
 「あぁ・・・そうだ。まぁ、軍用の物よりは多少小ぶりだが・・・」
 「ふふふ。ジャックなら、私も知っていますよ、ウルリッヒ様」
 「ん?」
 「ほら・・・あれでしょう?ジャックナイフって、確か・・・大きな木に登る時に使うんですよね」
 「・・・???・・・木に登る時って??」
 怪訝そうなケスラーにマリーカは笑顔を向けた。
 「ほら、あれ・・・本のタイトルは忘れてしまったんですけれど・・・。子供の頃に読んだんです。確か主人公の男の子がマメの木登る時に使ったナイフが・・・。あら
、あれってもっと大きなナイフだったかしら・・・。タイトル・・・なんだったかしら?思い出せないわ・・・」


 ケスラーは物語を思い出そうとして真剣に悩んでいるマリーカを見て、この時代でも伝説となっている、連続殺人事件の『切り裂きジャック』の話をする気にはとてもならなかった。
 ましてや、あの話の被害者は・・・娼婦達だったから。
 そして、マリーカの言う話にはナイフなど登場しないし、主人公の男の子の名前がジャックである事を思い出したのだが、あえて口を挟んむのを差し控えた。
 とりあえず、物語のタイトルだけ・・・教えた方がいいかもしれない。


 「マリーカ。その話は、『ジャックとマメの木』というタイトルだったと思う。・・・その話なら、私も子供の頃に絵本で読んだよ。とても大好きな物語だったな
 そう言って、ケスラーはマリーカに笑顔を向けた。
 「まぁ、子供の頃に・・・大好きだったんですか?」
 「あぁ・・・よく母が読んで聞かせてくれたものだ。いつもせがんでいたな」
 「ウルリッヒ様にも子供の時があったんですね。・・・何だか不思議な気分です」
 「そうかい?」
 「ふふふ・・・。それじゃぁ、いつか私もこのお話を読んであげなきゃ・・・」
 「ほう・・・誰にだ?」
 「・・・んもう!ウルリッヒ様ったら!」


 耳まで真っ赤になったマリーカは、ほんの少し口を尖らして、軽やかにワンピースを翻して先にスタスタと歩き出す。


 「早く来ないと置いていきますよ、ウルリッヒ様!」
 「・・・意外と足が早いんだね、マリーカ・・・」


 ケスラーは彼女を眩しそうに見つめて、ゆっくりとその後を付いて行った。




Das Ende




 ケスラーとマリーカです。
 原作終了後の世界ですね。
 婚約時代の彼等だと思って下さい。


 およそ、デートとは程遠いタイトル・・・100のお題のタイトルです。


 そんなタイトルで、でラブラブな彼等を描く・・・冒険的試みの作品です。
 しかし、タイトル・・・ホント、ケス&マリには似合わないなぁ・・・。(爆)


 最初は、触れば切れそう・・・という感じで、フェルナーとかで書くかなぁ?とか、意表を付いて地球教徒で書いてもいいかも・・・とか、色々悩んだのですが、ケス&マリにしたのは・・・深い意味は無いです。

 ただ、何となく2人の事が書きたくなったから書いた・・・ってとこかしら。


 まぁ、あくまでコメディですので、馬鹿馬鹿しいぞ・・・と笑い飛ばして読んでやって下さい・・・原作終了後の世界だし!


 まぁ、なんだ・・・池田秀一さんと、久川綾さんの声で読むと臨場感が出るかもしれません・・・。


 それより気になる事があるんですよ。

 アニメの方・・・勝手にフィーアなんて、幼なじみを作ってたじゃないですか、ケスラーに。
 クラインゲルト子爵家の跡取り息子のアーベントの妻。
 しかも、跡取り息子は戦死しちゃっているので、未亡人になっている。


 彼女・・・アムリッツァ以降、どういう運命を辿ったんだろう??って思ったりしました。

 しかも、玉川さん・・・池田さんの奥さんだし。
 夫婦共演だったんですよね・・・。


 子供を抱えて、どう生きていくんだろう、彼女・・・。

 クラインゲルト家ってそんなに資産が無さそうに見えたんですけど。←余計なお世話かもしれないけど~・・・。