彼女の名は、フレデリカ・グリーンヒル。
 宇宙暦794年度の士官学校次席卒業の才媛である。

 銀河帝国では、軍の事務職として若干女性を採用する事はあったが、女性が男性同様の軍役に就く事は、諜報関係など、よほどの特殊な事情が無い限りはまず有り得ない。
 大体、女性が働く事を良しと思っていない男性が多いし、働いている女性の9割以上は平民だった。
 そして銀河帝国の男達は、“軍隊”を男性上位の職業と捉えており、幼年学校にも、勿論、士官学校にも女子学生の存在はなかった。


 一方、同盟軍では女性士官養成の為に士官学校は存在しており、しかも男女の別なく、共学であった。
 その中で、フレデリカは常に成績がトップクラスだったのだ・・・。



 士官学校在籍当時・・・。

 

 「グリーンヒル大将の娘だから、えこひいきによって成績がいいのだ」


 そんな陰口を叩く者もいたが、彼女の驚異的な記憶能力と事務処理能力は群を抜いていて、文句のつけようが無かった。
 更に彼女は、実技でも才能を遺憾なく発揮した。
 爆発物の処理をも難無くこなし、教官達を唸らせた。
 射撃の腕前も怖ろしく正確で、無駄な動きが無い。
 とにかく、何をやらせてもそつなくこなす。


 コンピュータによるシミュレーションだけであったが、パイロットとしての腕前も評価はAであった。
 耐Gを難無くクリアし、気分が悪くなる男子候補生がいる中で彼女はけろりとしていて、他の友人に、「遊園地での絶叫マシンが好きなのが幸いしたわね」と、にこにこしていたそうである。
 
 「もしかしたら、人間ではなく、精巧なロボットなのではないか?」


 そんな陰口を叩かれる事もあったが、言われた当人は気にした様子もなく、いつも平然としており、誰にでも親切で、人当たりも良く、快活だった。
 少なくとも、陰口を叩いている連中よりは、友人にも恵まれていたようだ。


 ただし、体力を消耗する格闘技では、男性の士官候補生に比べて、女性であるフレデリカは不利だと思われた。
 彼女はどちらかと言うと華奢な方だった。
 白兵戦の実技や格闘技では、どうしても見劣りしてしまうのだ。
 教務関係で彼女に負けて屈辱を味わっていた男性候補生の中には、格闘技などで、ぐうの音も出ないほどに痛めつけてやろう・・・などという粗野な考えの者もいた。
 女は、料理でも作って大人しくしていた方が良いのだ・・・と頑なに思いこんでいる、古いタイプ男はいつの時代でも多い。


 ・・・しかし、彼等の反撃は功を成さなかった。


 毎年冬に行われる学年別の柔道の大会で・・・。
 士官学校1年生のフレデリカは、同学年の100キロ以上もある、成績で3番目のライアン・ウォードリックを軽々と投げ飛ばしてしまったのだ。
 
 組んだ瞬間にフレデリカから、優しげな香水の香りがした。


 (ふん、何だかんだ言ってもやっぱり女だな・・・)


 香水の甘い香りが鼻腔を刺激し、ウォードリックはつい油断してしまった。
 フレデリカを軽く投げ飛ばせると思ったのだ。


 そして、彼女の鼻っ柱を折ってやりたい・・・と思っていた。
 次席で、いつも自分の前ににいる目障りな女。

 父親を高官に持ち、絶対に前線には駆り出されないだろう身分。

 考えただけでも腹が立つ。
 ・・・いつか、ギャフンと言わせてやりたかった。


 ウォードリックは大声を上げて技を仕掛けたが、仕掛けられた方のフレデリカは全く動じなかった。
 それどころか、うっすらと微笑みさえ浮かべて、床に足を踏ん張ると、自分の方に引き付けて、一気に相手を抱えあげた。
 勿論、抱えられたウォードリックの方は一瞬、何事が起こったのかとパニックに陥った。
 彼女は笑顔のまま、後ろに倒れながらその勢いで肩越しに彼を思いっきり投げ飛ばしたのだった。
 ・・・『裏投げ』という捨て身の業だった。


 投げられたウォードリックは、フラフラと立ち上がって激しく叫んだ。


 「嘘だ!!何かの間違いだ!!こんなのは・・・あり得ない!!今のは絶対にまぐれだ!!」


 だがフレデリカは着衣の埃を払い、彼に対して涼しい顔を向けた。
 「背負い投げ・・・そうね、一本背負いをされるよりは・・・この方がまだ幾分かマシだと思ったのだけど。・・・ねえ、あなた、私に・・・思いっきり投げられたかったの?」
 フレデリカの不敵な笑みにウォ-ドリックはたじろぐ。
 「う・・・背負い投げだと・・・」
 「きっと・・・女だと思って甘く見てたんでしょ?ごめんなさいね。私・・・柔道は得意なの。あ・・・それより・・・。あなた、怪我しちゃったみたいね。・・・すぐに救護の人を呼ぶ?」
 フレデリカは優しく声を変えたが、相手は顔を引きつらせて後ずさった。
 「い・・・いい!自分で行く!なんのこれしき・・・!」
 不幸な事に、彼の腕はだらしなく垂れて・・・そう、骨折していたのだ!
 痛みをこらえながら、ウォードリックは救護班の元へ駆けて行く。
 これを見た他の男達は、互いに顔を見合わせた。
 
 「・・・全くあの女は凄いな。美しく優しげな見かけに惑わされたら・・・痛い目を見る。そう思わないか、ホワイトスミス」


 友人のラルフ・マックイーンに言われて、「・・・まあな」と答えるホワイトスミス。
 2人の様子を眺めていた、主席のヘンリー・ホワイトスミスには、ウォードリックの浅はかさが馬鹿馬鹿しかった。
 「・・・彼女も彼女だが、あれだから、ウォードリックは上にいけないんだ」と呟いた。
 
 その場にいた全員が、才色兼備、文武両道に秀でたフレデリカの恐ろしさを再認識したのであった。



 フレデリカ・グリーンヒル。
 この格闘技の一件で、彼女に近付こうとしていた男の数が益々減ったそうだ・・・。




 THE END




 ・・・士官学校を次席卒業。
 女性で凄いですよね・・・。
 でも、それって・・・。
 色々な事を考えていて、きっと格闘技なんかも強いに違いないと思いました。
 だって、次席でしょ。


 優しく笑っていても、何かあったら、男を投げ飛ばすくらいの技を持っていて・・・ヤワラちゃんみたいなのを想像して下さい。←マンガの方ね。(あ・・・今度、選挙に出る某選手に他意がある訳ではありません・・・)


 100のお題のタイトルの『肩越し』はこれまた書きづらいタイトルでした。
 まさか柔道になろうとは・・・爆!!


 それから、次席卒業って事は、主席もいると思い、主席と、彼女の次席の士官学校生もオリジナルで作りました。
 あ・・・主席の友人も。


 話の主流には関係ない人だから、勝手に作れるんだけど、オリキャラ。

 フレデリカって、苦手だと答える人が結構いるんですよ。


 私の友人もダメだって言っていました。

 私はそれほど嫌いではありませんが、ヤンが風邪をひいた時に、自分で作った訳でもない料理を持参した話を原作で読んだ時、思わず、「なんだそれ・・・」って思いました。
 料理オンチでもいいんだけど、アレは何だか感じ悪かったなぁ・・・。
 ユリアンには正直に話していましたけどね・・・。


 まぁ、声が榊原さんじゃなかったら、あまり好きになってないだろうな。
 でも、ヤンは彼女を信頼していたようだし、いいんだけど。


 あとね、ヤンに「挟む物ばっかりだね」って言わせてしまったり、少しは勉強しろよ!!って思いましたね・・・。←ヲイ、うさけ・・・。これで好きなキャラって言うのは無理があるんじゃね?


 私も料理は上手くないけど、フレデリカよりマシです。
 この間、我が家で私の作ったご飯を食べた実家の両親曰く、「美味しい!!」だそうで、少なくとも結婚前よりも腕は上がっているらしいです。