ハイネセンへ赴任した帝国軍兵士達は、自分達の帝都以上に合理化された都市機能にかなり驚いた。


 自分達の国の方が、叛徒共よりも進んでいると思い込んでいたのだから、合理化された社会機構に舌を巻いたのだ。
 だが、それ以上に彼等を驚かせたのは人々の食生活であった。
 帝国での主食はブロートやパスタなどの小麦を使った物が主流で、米料理は殆ど食べられていなかった。
 ハイネセンには、彼等にとって、“未知”の食べ物が街中に満ち溢れていたのだ。


 ハイネセンには勿論ブロートもある。
 ベーグル、ブリオッシュ、ポンディケージョ、ナン・・・パンの種類だけを言えば、多分帝国以上の種類があると思われた。
 麺もパスタだけではなく、フォーもあれば、うどん、そば、ラーメンと、これまた多彩だった。
 そして、米を使った料理もそれに負けじと幅を利かせていたのである。
 おまけに米を使った菓子まであり、これには帝国の兵士達は本当に驚いた・・・自分達が今までに体験した事の無い味だったからだ。
 
 ハイネセンには、帝国では、まずお目にかかれない「コンビニエンスストア」という24時間営業の店が至る所にある。
 ここで飯時に売れる商品に『おにぎり』なるモノがあり、どの店舗でも必ず置いてあった。
 おにぎりは、どこのコンビニでも売れ筋の商品なのだが、これは帝国にはない商品だったから、最初から帝国軍人達に受け入れられた訳ではない。
 ただ・・・朝昼晩と人々が買いこんで行くので、物は試し・・・と、怖々と食べてみた兵士達の間で、「珍しい食感だが意外にイケる」と、徐々に浸透し始めたのだ

 
 カタチが三角形なのは、サンドイッチにも似ている。
 だが、まず見た目では中身が何であるか分からないし、コロコロしていて、形が何ともユーモラスであるのが面白い。
 どこにでも運べて、立ったまま食べていても、それが見苦しいという事が無い。
 オマケに、水分を含んだ野菜等を挟み込んだサンドイッチは手にベタ付いたり、中身が飛び出す事もあるが、おにぎりは中身が飛び出して型崩れする事も少な
い。
 物によってはサンドウィッチよりも日持ちもする。
 そして、一番の人気は・・・1つだけでも腹持ちがいい事だった。
 腹持ちの良さ・・・これが、瞬く間に兵士達に受け入れられた所以である。
 彼等は多彩な具とその味、コロンとした三角形に瞬く間に心を奪われたのである・・・。


 おにぎりが兵士達に売れる・・・。
 そこでコンビニの各店舗は、従来のおにぎりとは別に、大きめのサイズのメガおにぎりなる物を開発して導入した。
 その他にも、海苔代わりに薄焼き卵を使ってみたり、中の具材も、ザウアークラウトや、アイスバイン等、帝国でメジャーな食材を使用するなどして、帝国軍

の兵士達を引き付けるのに必至になっていた。
 この辺りのバイタリティーは元々自由主義の同盟ならではだった。

 そして、この変り種のおにぎりが、元々のハイネセンの市民達にも大受けで、今や一大ブームを巻き起こしていた。


 因みに、最近新領土<ノイエ・ラント>総督としてハイネセンに就任したレンネンカンプ提督のご贔屓は次の2つ。




 「混ぜ込みワカメおにぎり」

 「シーチキンおにぎり」


 レンネンカンプは、最近のお昼には、もっぱらこの2つを食していた。


 提督のおにぎり好きに目を付けた、ハイネセンで一番売れ筋の婦人雑誌「ハイネセン婦人公論」は、「レンネンカンプ提督の昼食拝見」という見出しで、提督の事を紹介までしたほどだ。


 レンネンカンプの、おにぎり以外でのお気に入りの昼食は、カップにお湯を注ぐと簡単に出来るワカメスープと、体脂肪を減らすと言う触れ込みの黒い烏龍茶。
 その他に、ゼロカロリーの寒天ゼリーを食べる時もある。


 「これだけで足りるのですか、閣下・・・?」


 高級な物や、多くの食材を食べろとは言えないが、デスクにおにぎり2個とマグカップに入ったインスタントのスープ、小さなペットボトルが乗っている様はあまりにも貧相だった・・・。
 とても総督に相応しいとは言いがたい。
 だが、彼は部下達に『貧相』言われている事に気付いた様子もなく、自慢の髭を撫でつけながら、「お茶もスープも健康的で良い。味も良い。卿等もお昼に食
べるといいぞ」と話しているそうだ。


 そして、一部の部下達の間では、スープをはじめとして、おにぎりの海苔もワカメも海藻だし、寒天も海藻だったので、「・・・あれは絶対に髪の為じゃないか?」と噂されていた。

 ただし、真相は定かではない。



 ただ一つ言えるのは・・・レンネンカンプが、よほどの事がない限り、好んでおにぎりを食べているという事実だけなのだ。




Das Ende




 100のお題より、「コンビニおにぎり」です。


 コンビニは、帝国には無いでしょう、やっぱり。
 フェザーンにはありそうなんですけどね。

 それでも、「自由」という観点から言えば、ハイネセンの方が凄そうです<コンビニ
 それで、舞台をハイネセンにしてみました。


 それから作中のブロートってのは、ドイツパンの事です。
 誰も出ないのではあまりにも芸が無いので、レンネンカンプ氏に特別出演して頂きました<チョイ役ですけど。(笑)


 おにぎりは、お隣の韓国でも人気だそうで、形がカワイイとか言って、テレビで紹介されていました。
 以前、ソウルに行った時、ハングルで書かれているので中身が何か分かりませんでしたが、「青いのはツナだ!」と言い張って買ったところ、ツナだったので
嬉しかった記憶が・・。(笑)<韓国旅行


 この三角形に、帝国軍の兵士達もカワイイと感じたんでしょう・・・アハハ。←苦し紛れww

 韓国ではキムチや、プルコギなんかのおにぎりがあって、日本とはまた違った味が楽しめます。
 また行ってみたいなぁ、韓国。


 どうせ読めないんだろうけど、ハングルに訳された「銀河英雄伝説」の小説やコミックスがあったら欲しいです。
 台湾で訳されたものは買ってしまいましたので^^@