宇宙暦796年(帝国暦487年)4月19日。
イゼルローン要塞、午前8時・・・。
「全く・・・。ゼークト閣下は、シュトックハウゼン閣下の何を知っていると言うんだ??もう・・・気になって仕方がない!」
レンドルフ大尉が吼えていた。
「それに、こいつは俺の進退問題にもなりそうだしなぁ・・・ううう」
レンドルフは昨日の事を思い出して身震いをすると、がっくりと肩を落とす。
イゼルローン要塞中央司令室の、おしゃべりとお祭り好きな3人のオペレーター衆は、翌日もその話題で盛り上がっていた。
「おい、大丈夫か?まぁ、俺も気になっているけどな。それに、気になりだすと・・・」
昨日のレンドルフの様子を思い出し、同情するシェーラー大尉。
「・・・なんだ。気になって眠れないと言うつもりか?」
ノイマン大尉は、コーヒーを啜りながらのんびりと笑い、横から口を出した。
「眠れない・・・。まぁ、そんな感じだな。・・・でも、そういう卿だって気になっているのだろうが?」
シェーラーに突っ込まれたノイマンは肩を竦めた。
「・・・まぁな。いつもながらにゼークト閣下には脱帽だったな。それにしても、あの子供2人がシュトックハウゼン閣下の子供だったとは驚いたな。ゼークト閣下が言い出した時は・・・いやはや・・・って思ったからな」
「・・・そういや、卿はあの時、確か舌を出していたよな?」
「う・・・まぁな」と、シェーラーに突っ込まれて苦笑するノイマン。
「俺は、あの時、生きた心地がしなかった。だけど、孫と言っても遜色ない感じだし。特に次女はどう見たって8歳か9歳ぐらいだろう?長男だって、10歳ぐらいにしか見えなかったし。俺・・・一瞬、もしかしたら、この先、もっと危険な前線に送られるのではないか・・・と思った」
レンドルフはげっそりしている。
「・・・前線って。イゼルローン要塞だって最前線だぞ?」
シェーラーに突っ込まれたが、レンドルフは溜息を付くだけで反論する元気すらないようだった。
「・・・お陰で食欲すらわかない。今朝は何も食べてない」
それだけを言うのがやっとだった。
「・・・気持ちは分かるよ。・・・確かにあれは焦るよ、本当に」
レンドルフに同情するシェーラー。
「うーん・・・しかし、ゼークト閣下ではないが、子供があの年なら・・・。本当に頑張ったんだろうなぁ、閣下も・・・。計算すると、40歳前後で2人も仕込んだって事になるだろう?全く・・・参ったな」
ノイマンが指折り数えながら言い、それを聞いたレンドルフはまた溜息を付いて、コーヒーを啜った。
初期欲は無いが、コーヒーばかり飲んでいる。
お陰で胃が痛くなりそうだ。
そして彼は、シュトックハウゼンが、あの妻相手に頑張っている姿を想像して、思わず、身震いをした。
・・・何と言うイメージを頭に構築したのか~!!
自分自身の頭の回路に吐き気をもよおすレンドルフ・・・。
「・・・仕込んだ・・・か。露骨な表現と言うか何と言うか・・・。でも、考えたら笑えるよ・・・やっぱり・・・」
寝不足気味のシェーラーは大あくびをしながら呟いて、眠気覚ましの2杯目のコーヒーに手を出した。
ノイマンも、「・・・そう、閣下は頑張った訳だ・・・」と、コーヒーを啜りながら頷いていた。
要塞内の至る所で、この話は囁かれた。
ゼークトが部下を激しく殴り倒して意識不明の重体にさせただの、シュトックハウゼンの頭がまた禿げただの、訳の分からない尾ひれがついて、誇張されて伝えられたが、誰にも“秘密”は分からなかった。
そのまま2日が経過したが、その2日目の夕食時に、その噂の“秘密”が暴露される事になったのである・・・。
司令官は、普通、自室で食事を取る事が多い。
幼年学校生の従卒が食事の度に給仕として就く。
だが、1人での食事は味気ないとか言って、駐留艦隊司令官のゼークト大将は、時々部下達と共に、士官食堂に顔を出す。
これは、将兵達にとってはいい迷惑だった。
ところが、部下との交流を図る事は、良い司令官の務めであるとゼークトは思い込んでいるのであった。
この彼の行動に対して、誰も歯向かう事が出来なかったのである。
この日も、突然現れたゼークトに対して、居並ぶ、尉官や佐官の者達は驚いて、食器を載せたトレーを持ったまま固まってしまった。
その場にたまたま居合わせたレンドルフ達も、「おい、おい・・・」と、互いに顔を見合わせてしまった。
「うわ・・・。何でここに来るんだ?閣下達が来ると、緊張で食った気がしなくなる。せっかくの楽しみが台無しだ・・・」
戦場では、“食べる事”は楽しみの1つなのだ。
煙たい上官と一緒に食事をするなど、御免こうむりたい。
シェーラーは嫌そうな顔で小さく呟き、レンドルフはやや上を向き、ノイマンも僅かに苦笑した。
しかし、状況を呪いたくなったのは、彼等の着いたテーブルの向かいに、その一行が着いた事だった。
だが、ゼークトが来たからといって、席を変えるなんて事も出来そうに無い・・・黙って食べるしかなさそうだった。
しかも、シェーラーの向かいに座ったのは、義眼のオーベルシュタイン大佐だ。
苦手なタイプの人物が目の前にいる・・・。
彼は情けない顔で隣のノイマンに救いを求めようとしたが、ノイマンはまた苦笑して肩を竦めただけ。
シェーラーは溜息を付いて諦めた・・・。
「ところで閣下・・・。例のシュトックハウゼン閣下の秘密ですが、今や、要塞内の話題を独占しているのをご存知ですか?皆、ゼークト閣下の方が凄く強いなどと言っているのですよ」
食事も中盤に差しかかった時、クインシュルツ中佐がゼークトに声を掛けた。
彼の右頬に残る青黒い痣は、一昨日、暴れるゼークトを止めようとして、モロにパンチを食らった時の勲章である。
ゼークトは、食事にはあまり手を付けずに、ザウアー・クラウトをつまみにして、ウィスキーをストレートで飲んでいる。
どうやら、天敵であるシュトックハウゼンをギャフンと言わせた事で、すこぶる機嫌が良いらしいのだ。
いや、多くの将兵の集まるこの場所で秘密を暴露するつもりなのでは・・・と、3人は感じていた。
「もぐらの事が話題に上るのは癪だが、あいつがマルガレーテをブス呼ばわりするのが悪いのだ。彼女は・・・」
ゼークトはギリギリと歯軋りをした。
「・・・ええ、閣下の亡くなられた奥方は本当にお美しい方ですよね。前にお写真を見せて頂いた時は、シュトックハウゼン閣下がおっしゃられるのとは丸っきり違っていたので・・・。本当に今回のはひどいとしか言いようが・・・」
どうやら、クインシュルツ中佐は、ゼークトの亡き妻の写真を見た事があるようであった。
だからという訳ではないだろうが、頬の痛みなんて何のその、一生懸命にゼークトをヨイショするのが涙ぐましい。
それを受けて、バルスハウト中佐も急に、「本当に、美人薄命という言葉がそのまま当てはまるような方ですよね・・・」などとお追従。
それを聞くなり、ゼークトはグラスを一気に空けた。
「そうなのだ・・・。マルガレーテの死は俺にとっての古傷で、辛く悲しい話なのに、奴と来たら・・・。くそう~!!もぐらのくせに~!!ええい!思い出しても腹が立つ」
ゼークトは、悔しげに唇を噛んだ。
「大体な、あいつは男ばかりの兄弟で、奴は三男なんだが・・・。あの家の長男は病気で急逝してな。その為に次男、奴の双子の兄が嫡男になったが、娘が1人いるだけだ。しかもその娘は病気にかかって子供が望めない。それで、あいつの親父・・・シュトックハウゼン男爵は、あいつが恥ずかしさも省みずに超超超~頑張って儲けた男児をそれはそれは喜んだらしくてな。男爵は生まれた孫に名前を付けた。何でもあの家では、家長である男爵が名前を付ける伝統があるそうだ。ところがな・・・」
ここまで一気にまくし立てて、ゼークトは息を付いた。
そして、部下がグラスに注いだウィスキーにゆっくりと口を付けた。
普段はさっさと食事を終えるオペレーター3人衆だったが、ゼークトの話が気になって仕方が無い。
話がシュトックハウゼンの事だったので、3人は普段は殆ど食べないデザートの盛り合わせなどを持って来た。
そして、それを、ちまちまと食べながら聞き耳を立てる作戦に出た。
特にノイマンなどは、甘い物が苦手だというのに、他の2人と一緒に話が聞きたいが為に、苦痛の表情を浮かべて、ブラック・コーヒーを何杯も飲みながら、果敢にデザートのザッハトルテとバウムクーヘンに取り組んでいる。
「男爵はな、15年ほど前に体調を崩されたらしい。今は全快されているらしいが、その時に、息子達に男児がいない事を悲観されていたそうだ。・・・それが原因かどうか分からんが、少々ボケてこられたらしくて、これが、奴の生まれた息子ににとんでもない名前を命名したんだ。エーリクから聞いたんだから間違いないだろうが、これが事実だと知った時は、さすがに俺も度肝を抜かれたものだ。・・・この時ばかりは、多少は奴に同情をした。呆れてな」
・・・エーリク!!?
ゼークトの口から、「エーリク」という名前を聞いた途端、ノイマンはコーヒーを咽そうになった。
やっぱり、シュトックハウゼン閣下の双子の兄の、エーリク・フォン・シュトックハウゼンとゼークトは知り合いだったのだ・・・。
「家業からなのか、男爵は海釣りが趣味らしいのだ。その影響でエーリクも釣りをするそうだが・・・。まぁ、そんな事はどうでもいいが、何ともぐらの息子に『ボニート』と名付けたのだ」
それを聞いた瞬間に、クインシュルツ中佐、バウスハウト中佐は、お互いに奇妙な顔をして見合わせた。
「あの、閣下・・・本当にその名前なのですか?」
あまりの衝撃だった・・・。
聞き間違えたのではないか・・・と思いながら、クインシュルツ中佐はゼークトに恐る恐る聞いた。
普段は殆ど表情を変えない義眼のオーベルシュタインですら、名前を聞いた瞬間に、眉根を寄せたほどた。
「間違いなものか。エーリクは奴の兄だからな。しかも・・・長女の息子、つまり、奴の孫・・・。男爵にとってはひ孫になるのだが、これには、『ドルシュ』と名付けたと言うのだ。ここまで来ると、男爵がボケたと噂されるのも仕方が無い気がしてくるな。・・・馬鹿者だろうが?そうは思わんか?」
「・・・確かに尋常ではないですね・・・」
クインシュルツが大口を開けると、ゼークトは豪快に笑った。
バウスハウトは大きく頷いて、「それにしても・・・驚きました。凄い名前ですね」と生真面目に答えた。
「だがな。名前なんてどうでもいい。俺が腹が立つのは、男爵家にとっての待望の男児だから、未来の男爵位を継ぐのは奴と、男爵が勝手に決めてしまった事なんだ。エーリクからすると面白いはずはない。エーリクの方が兄なのに病気の娘が1人だから、後を継がす訳にはいかないと男爵が言ったんだそうだ。まぁ、仕方が無いが、家名を潰す訳にもいくまいからな」
「でも、大抵、後を継ぐのは長子と決まっているのではないでしょうか?女性で爵位を持つものもいるはずですが・・・」
「・・・遺言がなければ、そうなるかもしれない。・・・何と男爵は正式な効力を発揮する遺言を既に作っていて、それには奴への爵位譲渡が書かれているんだそうだ。長男は病気で没しているし、エーリクの子は女性でしかも病の身。だから、男児を儲けた三男の奴が将来男爵になると言うのだ・・・!少しでも男爵位を継げればエーリクも納得するはずだが、遺言書のお陰でそれは消えてしまったらしい」
同じ三男同士なのに、シュトックハウゼンが男爵になるのが相当頭に来ているらしいゼークトはギリギリと歯軋りをした。
「もぐらはわざとらしく父親に取り入って、爵位を自分に・・・と狙っていたのだ。・・・そうでなければ、父親が奴に爵位を譲るとの遺言を書く訳がない。奴が無理やり書かせたのかもしれないだろうが?兄弟なのにやる事が汚いと、エーリクがひどく怒っていた。・・・馬鹿馬鹿しい話だがな」
「・・・凄い話ですね・・・」
クインシュルツも、バウスハウトも爵位のない下級貴族の出身で、爵位を巡っての身内同士の争いなどなかったので肩を竦めていた。
「エーリクは、父に取り入るもぐらのそういう態度が気に入らんらしい。息子が生まれてから、それまで休暇があっても帰りもしなかった実家に頻繁に顔を出すのだそうだ。・・・そして、ここでも写真などを見せて浮かれているそうだ。その態度・・・最低だろう?しかし、息子や孫があの名前では・・・な。成人して宮廷に伺候する時分には、こんな変な名前では物笑いのタネを振りまくだけだろうよ。全く、あやつの気が知れぬわ。さて・・・と、もう戻るとするか」
一気に話し終えたゼークト。
無造作にナプキンで口の周りを拭うと、さっさと席を立って、出口に向かって歩き出した。
それを合図に部下達も慌てて席を立ち、一行はゼークトの後について、慌しく士官食堂を後にしたのであった・・・。
士官食堂に居合わせた人々は、ゼークト一行が嵐の如く去ると、あちらこちらで大きく咳き込んだり、息を吐いたり・・・と、急にざわめき始めた。
苦労の末に、皿にいっぱい盛っていたデザートを完食したノイマンが、レンドルフを突っついた。
「なぁ・・・俺達も、そろそろ持ち場に戻らないと・・・」
「あ・・・そうだな」
3人は慌てて食器類を下げ場まで持って行く。
今日は夜勤だし、急いで中央司令室に戻らないと不味いのだ。
「うーん・・・それにしても・・・。俺、暫くの間、『ボニート』と『ドルシュ』が食えなくなりそうだ・・・」
レンドルフが溜息混じりに呟いた。
「俺もだ・・・。まったくとんでもないネーミングをするものだな・・・。俺はまともな親だった事を感謝する。イザークなんてありきたりだけど、ドルシュとかだったら、絶対にグレているかもしれない・・・」
レンドルフの意見に同意するシェーラー。
「・・・同感だな。今までは、カール・フォン・ノイマンなんて、つまらない名前だと思っていたが、これが、『フォレッレ』なんて名前だったりしたら、きっと死にたくなっているだろうな・・・」
「うわ・・・それは最悪だ。・・・俺もハインリッヒなんて平凡な名前じゃなくて、これが・・・『カーヴィアル』なんて名前だったりしたら、恥ずかしくて泣き喚いているかもしれない・・・」
レンドルフがとんでもない名前を言い出したので、シェーラーの笑いは止まらなくなった。
「ぷっくくくく・・・。2人とも笑わせないでくれ。腹が痛くなってきた。俺、カーヴィアルを食うのは好きだが、それが自分や卿の名前だったらイヤだな。今度、カーヴィアルを見たら笑いそうだ・・・」
笑い過ぎで、シェーラーは涙目になっている。
「本当だ。卿を食っているみたいで後味悪くなりそうだ・・・」
ノイマンがクスクスと笑いながら言うので、レンドルフは口を尖らせた。
「後味悪いはないだろ・・・」
その言い方がおかしかったので、3人は、また顔を見合わせてクスクス笑いを漏らしていた。
「・・・おい、何を笑っている?」
声を掛けて来たのは、シュトックハウゼンの副官のゼーゼマン中佐だ。
3人は慌てて顔を引き締める。
「・・・あの・・・中佐。シュトックハウゼン閣下は?」と、意を決して聞いてみるレンドルフ。
「ん?閣下はもうお休みになられたが・・・」
どうやら、1時間も前に就寝したらしい。
「そうですか・・・。あの・・・怒らないで聞いて下さいね。実はですね・・・」
レンドルフはそう前置きをすると、ゼーゼマンに、士官食堂での一件を語ったのだった・・・。
どうせ自分達が言い触らさなくても、明日の朝には、士官食堂発の、最新ニュースとしての“噂”が要塞内に広まるに決まっているのだ。
レンドルフから事のあらましを聞き終わったゼーゼマン中佐は、こめかみを押さえて、大きく息を吐いた。
「何と言うか・・・。卿はどう思う?」
傍らにいたレムラー中佐に意見を乞うてみたが、レムラーは思いっきり顔を顰<しか>めた。
「どうと言われましても・・・。これでは明日の朝には、この話で持ちきりになるのは必至でしょうな。どうも、頭が痛くなる話ばかりが続いて・・・」
その意見に、ゼーゼマンは頷いた。
「全くだ・・・」
今夜の間に、一気に要塞内に広まるであろう噂。
この手の話は、疾風<はやて>の勢いで広まるのが常なのだ。
「明日、閣下のご機嫌は・・・ふう・・・」
ゼーゼマンはシュトックハウゼンが激怒するであろう事を考えて、苦虫を潰したような顔をした。
多分・・・怒りのとばっちりをまともにかぶるのは、シュトックハウゼンの副官であるゼーゼマンなのだ。
それが分るからこそ、頭痛がする。
「全く・・・。ゼークト閣下も困ったお方だ。いらぬ事で波風立てられるのだからな。・・・いいか、卿等。明日はその話をするの禁ずる。ただでさえ、このところのやり合いで閣下の機嫌は悪かったのに、これでは、ますます悪くなられてしまうではないか。家族写真が届いて上機嫌だった閣下をあそこまでいたぶった上に、更にとは・・・!!全くゼークト閣下も何と言う理不尽な事をなさるのであろうか・・・。これ以上、閣下の神経を逆撫でする事もなかろう。・・・おい、他の者も話さないようにな!」
3人と、その場にいた他の将兵達も、無駄な努力だとは思いつつ、明日の早朝からシュトックハウゼンの最大級の怒りの被害を最も被る事になりそうなゼーゼマンに同情し、神妙な顔で頷いたのであった。
翌朝のシュトックハウゼンは、不機嫌色で染められた、分厚い衣を幾重にも身にまとっていた。
「う~・・・ゼークトの奴を呪ってやりたい・・・」
歯軋りしながら呟く姿は異様であったが、かと言って、ゼークトの所に出向いて、文句を言う気力は無いようだった。
・・・プライドが許さなかったのだ。
「くっそぅ~!!何か、あいつをコテンパンにしてやれるような良い方法はないものかな・・・。おい、ゼーゼマン。卿は何か良い方法を知らんか?そうだな・・・奴がすぐにでも病気にでもなって退役してしまいそうな、即効性の高い呪いの方法なんかがあれば最高に良いのだが・・・」
(仕返しでもするつもりなのか・・・?)
ゼーゼマンは呆れたが、呪いの方法など全く知らないし、解決策を何も思いつかなかった。
ブツブツと口の中で呪詛を言葉を呟くシュトックハウゼンに、ゼーゼマンは深呼吸をした後に意を決して進言を試みる。
「閣下・・・ゼークト閣下に仕返しをなさるおつもりなのですか?」
「ふん、当たり前だ。奴をギャフンと言わせないと、気が晴れない!この怒りを奴にぶつけたい!」
「・・・ですが、言いたい者には言わせて置けば良いではありませんか?怒ったところで血圧が上がるだけで、何も良い事はありません。取るに足らぬ者のたわごとだと思って放って置けば良いと考えます。閣下は、ゼークト閣下と比べて、精神的にも立派な大人なのですから、子供のたわごとだとお思いになられて、聞き流して置けば良いのです。小官が思うに、これは、ゼークト閣下のひがみであろうと思いますし・・・」
「・・・ひがみ?」
意外な言葉に、シュトックハウゼンは思わず聞き直した。
「そうです。閣下は男爵家の三男であられますが、今のままだと兄君に代わって爵位を継がれるご様子とか。正式なご遺言状があるのでしょう?そして、閣下のご子息が爵位を継ぐ可能性が高いではありませんか。そうなれば、宮廷での閣下の注目度も上がりましょう。一方ゼークト閣下も男爵家の三男であられますが、こちらは、奥方もお子様もいらっしゃいません。・・・となれば、兄君やそのご子息達に不測の事態でも起こらぬ限り、到底、爵位は望めません。勿論、宮廷に伺候する事も出来ない訳ですから、これは、絶対にゼークト閣下のひがみなのです」
ゼーゼマンは一気にまくし立てた。
「あぁ、そうだ。奴の2人の兄には子供がそれぞれ3人ずついて・・・。長男のところは3人とも男だったな・・・」
「・・・それならば、長い眼で見ましたら、やはり閣下の方がゼークト閣下に比べられて断然、貴族社会においては優位ではありませんか。そう・・・『負けるが勝ち』の精神だと思われますが・・・」
たとえ今は負けたように見えていたとしても、長い目で見たら、決して負けてはいないのだ・・・。
シュトックハウゼン閣下の方がゼークトに比べて立派な大人なのだ・・・と、ゼーゼマンは必死に力説した。
それを聞いて、シュトックハウゼンは、そういうのもか・・・と、少しばかり冷静さを取り戻し、漸く怒りを静めたのであった。
「ふむ・・・なるほどな。卿の言にも一理あるな。私の方が、ゼークトに比べて大人・・・か。それは、まぁ、そうだろうな。・・・うん、確かにその通りだ」
元来、根が単純なシュトックハウゼンは大きく頷いた。
そして、シュットックハウゼンは、その後はその話題には決して触れようとはしなかったので、レンドルフ達、オペレーター3人衆も、決して口外しないように心に決めたのであった。
・・・少なくとも自分達の口からは。
Das Ende
シュトックハウゼン&ゼークトの帝国漫才第3弾です。
オリジナルのキャラは、レンドルフ、シェーラー、ノイマン、ゼーゼマン、クインシュルツ、バルスハウト・・・。
オリジナルばかりですが、ご了承下さい。
因みにレムラー中佐は原作にも登場致します・・・アニメでは変な髪形でした。
でも、DVD化される時にさすがにその髪型をスタッフも不味いと思っていたのでしょう・・・顔も描き直されていて、別人28号になっていました!
元ネタは・・・もうお分かりでしょうか??
長女は24歳、長男11歳、次女9歳、孫3歳で、妻の名はフローネ・・・あ、怪しい!
さて、『ボニート』はカツオです。
『ドルシュ』はタラの稚魚です。(そう・・・稚魚というのが、この場合、激ツボです!)
『フォレッレ』はマスで、『カーヴィアル』はキャビアの事ですが、鮭の卵のイクラの事も、カーヴィアルらしいです。
こうなったら『穴子』は・・・と思ったのですが、さすがに、これは辞書には載っていませんでした。
でも、どうしても必要な名前がドイツ語の辞書に出ていたので私、とっても感動しています~!!
しかし・・・タラの稚魚はビックリしました。
シュトックハウゼン&ゼークトの帝国オヤヂコンビは、私の中では最強であり、不滅なのです~!!
さて、遺言では男爵位はシュトックハウゼン大将の物・・・ですが、ここで1つ問題が発生します。
彼は同盟軍の捕虜になってしまうのです。
なので、エーリクが後を継いで、その後は・・・トーマ・フォン・シュトックハウゼンの息子に家督が譲られ・・・という事になるかもしれません。
または、ヤンとキルヒアイスが顔を合わす事になった例の「捕虜交換式」で、釈放され、オーディンに戻るかもしれません。
その場合は、爵位はトーマ・フォン・シュトックハウゼンになる可能性が。
あくまで順調に行けば・・・ですが、さて・・・どうなる事やら・・・。
娘の子は、考えてみたらば、姓は『シュトックハウゼン』ではないはずなので・・・そう、イソノではなく、フグタですものね・・・爆!
やっぱり、後を継ぐのはボニート君なのでしょうか・・・好奇心旺盛ですが、頭が悪いという噂も・・・え??
それから、私は原作を読んだ時に感じたのは、シュトックハウゼンは気が弱いって事です。
シュトックハウゼンのこの性格のお陰で、中央司令室の面々は、イゼルローン要塞攻防戦(帝国にとっては攻防戦でしょう)で薔薇の騎士<ローゼンリッター>連隊に踏み込まれた時、命を落とさずに済んだのではなかろうか?と。
だって、レムラー中佐がシェーンコップ達に銃を向けた時、即座に「降参する!」って白旗揚げちゃったもんね、シュトックハウゼン。
司令官が即、白旗だから、少なくとも、中央司令室にいた部下達は無駄死にしないで済んだ・・・訳です。
この辺りが、好戦的なゼークトと違うんですね。
2人の立場が逆だったら、また違った歴史があったのではないかと愚考します。
さて、このシリーズ・・・まだまだ・・・ネタはございます!!