銀河帝国軍が誇る、難攻不落のイゼルローン要塞・・・。
 その建設当時から、この要塞には2名の大将が配属され、それは半ば伝統のようになっている。
 その2名とは、要塞司令官と駐留艦隊司令官で、因みに駐留艦隊は1万5千隻からなる大艦隊だ。


 イゼルローン要塞の大きさは直径約60キロメートル。
 分厚い流体金属層に覆われた人口天体で、銀河帝国首都星オーディンからの距離は凡そ6250光年。
 この要塞は、それまで固有の惑星を持たなかった、孤独な壮年期の恒星アルテナの軌道上に建設された。
 その関係から、これを「太陽」と仰ぐ“人口惑星”と呼べなくも無い。
 地理上、銀河帝国と、それと敵対する自由惑星同盟のちょうど中間部にある為、最重要の性格を持った要塞であった。
 ・・・とにかく、この要塞を巡って、銀河帝国と自由惑星同盟の間には、過去、6度に渡って、不毛な戦闘が繰り広げられていた。
 それでも、この要塞が自由惑星同盟の手に落ちなかったのは、要塞主砲の「トゥール・ハンマー」の凄まじい破壊力にある。
 この絶大なる威力を持つ要塞主砲あればこそ、イゼルローン要塞は「難攻不落」でいられた訳である。


 現在、要塞司令官を努めるのは、トーマ・フォン・シュトックハウゼン大将で、駐留艦隊司令官は、ハンス・ディートリッヒ・フォン・ゼークト大将である。
 年齢はともに50歳。
 互いに長身だが、シュトックハウゼンは、ゼークトよりも一回りも胴回りが細く、痩せ気味である。
 彼は、貫禄がある、如何にも軍人然としたゼークトと比べ、やや、貧相に見える自分の容姿を気にしているようだった。
 シュトックハウゼンもゼークトも、その名が示す通り貴族であり、家柄も殆ど同じで、ともに男爵家の三男という立場である。
 その為、士官学校在籍当時から、お互いを激しくライバル視していた。
 シュトックハウゼンは少々嫌味ったらしい性格だったが、豪放で猛将タイプのゼークトも負けてはいない。
 かなり似たような境遇の2人であったが、最大の相違点は、シュトクハウゼンが3人の子持ちで、さらには可愛らしい孫も1人いるのに対して、ゼークトが独身であるという点であろう。
 ただし、ゼークトも最初から結婚しなかった訳ではない。
 実は20代の初め頃に、大恋愛の末に結婚している。
 だが、その新妻が、新婚5ヶ月にして、風邪をこじらせての肺炎で急逝してしまったのである。
彼は妻を愛していた。  
 その為、その後は結婚そのものに見切りを付けてしまう。
 周囲からどんなに再婚を勧められようとも、その後は頑なに独身を貫き通しているのであった。
 
 2人は、銀河帝国の最重要拠点のイゼルローン要塞の守りを任された、「共同統治者」であるにも係わらず、昔と全く変わらず、ソリが合う気配がない。
 それどころか、顔を合わせれば、誰もが鼻白むほどの凄まじい嫌味の応酬を繰り広げるのであった。
 そして、そのソリの合わなさは、互いの部下達にも色濃く影響していた。
 要塞守備兵達の目には、駐留艦隊の将兵達の事は、危険が及ぶと、「親」であるイゼルローン要塞の主砲を当てにして、一目散に逃げ帰って来るだけの「どら息子」と映っていた。
 駐留寒帯の将兵達は、猛将ゼークトの下、楽しげに危険な火遊びに興じる。
 そして、最後の土壇場で、「親」である要塞を頼るのだ・・・。
そのくせ、「俺達は卿等よりも偉いんだからんな」と言わんばかりのデカイ態度を取るのだから、その精神が分からない・・・。
 要塞守備兵達は、戦闘が始まる度に、「・・・全く腹立たしいよな」と、心の中で駐留艦隊の将兵達を罵っていた。
 「ふん!痛い目に合えばいいのさ!」
 守備兵達の中でも過激な連中はそんな事を言っていたが、いくら、駐留艦隊の将兵達が嫌いであっても、戦闘に絶対に勝たなくては意味がない。
 「死ねばよい」ではさすがに冗談にはならないが、「痛い目」とオブラートにくるんで言う事で、過激な冗談と片付けられていた。
 ・・・とにかく、敵が、「トゥール・ハンマー」の射程内に入った時の、駐留艦隊の後退のスピードは恐ろしく速く、まさに、「どら息子」振りを証明しているようなものだったのである・・・。
 一方、その「どら息子」の駐留艦隊の将兵達は、「要塞」という安全な場所を確保して、一歩も危険宙域に出て来ない要塞守備兵達が大嫌いであった。
 ぬくぬくした安全地帯から、「あれしろ、これしろ」と、命令だけを下すのが鼻持ちならなかった。
 だから、駐留艦隊の将兵達は、要塞守備兵達を「宇宙もぐら」と呼んであざ笑っていたのだ。
 しかし、内部分裂まで至らなかったのには理由がある。
 ここが、帝国軍にとって最重要拠点であり、それを自分達が支えているのだという共通の“誇り”と、「自由惑星同盟」と称する、共和主義の“叛徒どもに対する闘志”によって、辛うじて両者の間には架け橋が存在していたのである。
 そして、互いに罵りあいながらも、戦闘の度に功を競い合って譲らず、それが、結果的に良い意味での団結力へと昇華し、おびただしい戦果を上げていたのだった。


 同一の職場に、2名の大将の存在・・・。
 指揮系統をまとめ、1人が両方を兼ねる・・・という案は幾度となく出されていたが、その度に反対意見が出されて、立ち消えとなっていた。
 高級軍人の職が1つでも減れば、それだけあぶれる貴族が出る・・・。
 肩書きを誇示したがる貴族は多い。
 実際に、軍の上層部に圧力をかけて来た門閥貴族もいたと言うから、貴族や軍の高官にとっては“大問題”だったのだ。
 それに、両者の対立で、要塞内が震撼するような出来事も今まで皆無だったので、そのままになっていたのだった。
 確かに士官学校時代はライバルとして競ってはいた。
 だが、それほど不仲だった訳ではない。
 その関係に修復不可能なヒビが入ったのは、ある事件が起こったからだ。
 この事件を境に、2人は犬猿の仲になってしまった。
 そして・・・その後は、不仲なままである。
 それは永遠に続くように思えたし、おまけに部下達にまで、その仲の悪さが影響してしまったゼークトとシュトックハウゼン。
 だが、内部分裂に至るほどの喧嘩はしていない。
 そう・・・仲の悪さは深刻な問題ではあったが。



 イゼルローン要塞中央司令室・・・。
 司令室でスクリーンを見つめるシュトックハウゼンとゼークト。
 彼等は、互いに、なるべく相手を見ないようにしていた。
 姿を見てしまえば、ついつい相手をして、文句の言い合いが避けられないのは分かりきっている。
 それを避ける為に、むすっとしたままで、わざと、あらぬ方を向いていたのであるが、それははたから見ると、不自然極まりなかった。
 普段の2人は互いの執務室にいる。
 相手の執務室に顔を出すのを毛嫌いしていたからだ。
 だが、たまたま、高級士官用のサロンが2人の執務室からは等距離にあった事から、そのサロンの一角を改造して、防音装置を取り付けて「会見室」にしていた。
 同じ要塞にいて、TV通信もどうかと思われたからだ。
 そして、ゼークトが要塞内で一番嫌っている場所は、シュトックハウゼンが指揮を執る中央司令室であった。
 この場所は、シュトックハウゼンとその部下の息がかかっていると頑なに思い込んでいるゼークト。
 だから、滅多に顔を出さない。
 しかし、会見室でも事足りない場合などは、ゼークトは、渋い表情を貼り付けて中央司令室にやって来る。
 
 「おい・・・閣下達、また顔を合わさないようにしているぜ・・・」
 オペレーターのレンドルフ大尉は、端末を叩く手を休める。
 そして、同じくオペレーターのシェーラー大尉に声を掛ける。
 「でも、長続きする訳がない。どうせ、すぐに文句の言い合いになるはずだ。火を見るより明らかだろうが」
 シェーラーは溜息をついて答えた。
 毎回、2人が顔を合わすと、派手な火花が散るのだ。
 その度に、この場にいる者全員がびくびくして、事の成行きを見守るのだ・・・自分達にとばっちりが来ない事を祈りながら。
 「・・・だな。なぁ、何分くらいで言い合いになると思う?」
 2人の大将達の方をちらりと見やるレンドルフ。
 「うーん・・・5分くらいかな」とシェーラー。
 「俺は3分ぐらいと見たね・・・」とレンドルフ。
 一発触発が起きそうな、異様な緊張感が漂う空気を感じ取ったレンドルフは、やや首を竦めた。
 やがて、我慢の限界を超えた司令官達の嫌味の応酬は、キッチリ4分後に始まったのだった・・・。

 「・・・ん?何やらおかしな臭いがすると思ったら・・・。原因は卿だったか。卿は、一体どこの整髪料を使っているのだ?」
 物凄い形相でゼークトを睨み付けるシュトックハウゼン。
 ご丁寧にも鼻をつまみ、わざとらしく鼻をクンクンさせている。
 その態度の嫌味な事。
 シュトックハウゼンの態度に、剛毅なゼークトもさすがにプルプルと身体を震わしていた。
 だが、いきなり怒鳴るのは大人気ないと思ったのか、表情だけは崩さない。

 だが、怒っているのは明らかで、拳をしっかりと握り締めている。
 「・・・どこの物であっても、卿には関係なかろうが」
 腹立たしさはさておき、一応はやんわりと返すゼークト。
 「そうは言ってもだな、その悪趣味な臭いがどうも気になって仕方ない。他の者は卿よりも階級が下なのだから、可愛そうに、容易に進言が出来ないのだぞ。・・・だからこそ、私が言うしかない訳だ」
 「・・・ほ~お・・・。卿が急に部下思いになったとはちっとも知らなかった。感心、感心・・・殊勝な心掛けではないか。いや、実に面白い事を言うな。人間ではない、宇宙もぐらのくせに・・・」
 ゼークトは、手を後ろで組んでふんぞり返って、鼻持ちならぬシュトックハウゼンを思いっきり睨む。
 しかも、「宇宙もぐら」を強調して、若干、声のトーンを変えるのを忘れてはいなかった。
 「な・・・宇宙もぐらだと!?・・・こっちこそ、どら息子には言われたくない。大体卿は昔から・・・」
 シュトックハウゼンは何かを言いかけたのだが、ゼークトは話の腰をピシャリと折って畳み掛ける。
 「・・・あぁ、それならば安心して良いぞ。俺は卿の息子ではないし、これからも決してなるつもりもないからな。そうそう、知っているか?・・・俺はこう見えても親孝行で有名なのだぞ」
 「・・・ふん、今度は自慢か?」
 予想外のゼークトの言に、シュトックハウゼンは思わず眉を引き上げた。
 「・・・あぁ、宇宙もぐらには関係ない話だったな」
 「な!!わ・・・私のどこがもぐらなのだ!!」
 もぐら扱いされる事が何よりも大嫌いなシュトックハウゼンは、思いっきり、ゼークトを睨<ね>め付けた。
 バチバチバッチ~ン!!!!!
 中央司令室に、暑苦しく、しかも最大級に見苦しいオヤジ同士の凄まじい火花が散り、そして、その場に鋭い緊張が走り抜けた・・・。

 「・・・とにかく・・・」
 シュトックハウゼンは息を整えて、ゼークトを更に睨み付ける。
 ご丁寧に、まだ、鼻をつまんでいる。
 「いやはや・・・その整髪料の臭いはとても我慢がならん。・・・臭過ぎて、私のデリケートな鼻がひん曲がってしまいそうだ。・・・卿の事だ、どうせ、貧乏臭い安物を使っているのであろう」
 ゼークトは苦虫を潰したような表情を浮かべた。
 「さっきから聞いていれば・・・本当に失礼な事ばかり言う奴だ」
 ゼークトはシュトックハウゼンを睨み付けた。
 「いいか、良く聞け!俺のは決して安物ではないぞ!『ジンメルン』のトニックとヘア・クリ-ムだ。・・・その辺の安物と一緒にされてたまるか!卿だって、使っているだろうに、いい加減な事ばかり並べ立てて!!」
 「ジンメルン」は、貴族御用達の男性用のヘア・ケアのブランドで、最高級とされている商品だ。
 シュトックハウゼンの容赦の無い攻撃に、とうとうゼークトの我慢は限界点を迎えたらしく、彼は激しく怒鳴り散らした。
 その場に居合わせた人達は、その怒号に、思わず首を竦めた。
 「・・・おい、大声で喚くんじゃない。皆が迷惑しているのが卿には分からんのか・・・。確かに使っている。それは認めよう」
 「やっぱり、使っているのだな。それならば・・・」
 「しかし、なんだな。・・・まさか、卿がそんな立派な高級品を使っているとは知らなかったな。しかし、それほど高価な物を使っていながら、ここまで臭いという事は、きっと卿の体臭に何か問題があるのだろうな。きっとそうに違いない。いやはや、これは、驚いた、驚いた・・・」
 「うぬぅ~!!!」
 勝手に体臭のせいにさせられて、黙ってはいられない。
 ゼークトは、呻きとも唸りともつかぬ声を喉の奥から絞り出して、悔しげに歯軋りをする。
 ・・・が、次の瞬間、急に口の端にニヤリとした薄笑いを浮かべて、一気に反撃に撃って出た。
 「・・・俺の事はともかくとして、卿こそ、使う整髪料を間違っているのではないか?ジンメルンの物でも、その髪にあった物を使わなければ意味がなかろう。どうも、俺が見たところ、卿の頭頂部は段々・・・そう、確実に薄くなっているように感じられるのだが。いや・・・哀れなものだな・・・」
 ゼークトが、「薄く」と「哀れ」をやたら強調した為、シュトックハウゼンは真っ赤になって怒鳴った。
 「・・・な!人が気にしている事を言うとは!ふん!髪が多いからと言って威張る事ではないぞ!」
 いきなり形勢が不利になった事を悟ったシュトックハウゼンの身体は、ブルブルと震え出した。
 こめかみ辺りが、ピクピクと引きつっている。
 「ほ~お・・・もぐらでも気にする事があるとは驚いた」
 「だから、もぐら、もぐらと言うな!」
 「ふん!!卿はそうやって嫌味ばかりを言っているから、髪が薄くなっていくのだろうよ。・・・俺は心根が優しいから心配してやっているのだがな?その優しさが分らぬとは、卿も心の狭い奴だな」
 「・・・余計なお世話だ!!ふん!!卿の心根が優しいなど、未だかつて聞いた事もないわ!」
 シュトックハウゼンは、脳の血管がきれたのではないか・・・というぐらい真っ赤になった。
 だが、勢いづいたゼークトは攻撃の手を緩めようとはせず、シュトックハウゼンにとって、最も酷な一言を投げかけた。
 「あぁ・・・そうだ。俺が優しい事の証明に、1つありがた~い予言をしてやろうではないか。卿には俄かに信じられぬかもしれないが、俺には恐るべき予知能力が備わっているのだ。卿はそのうち、頭のてっぺんの毛が1本になる運命にあるのだ。・・・どうだ、涙が出るほど嬉しかろう?」
 「な・・・何を根拠に言うのか~!そんなもの、嬉しい訳がなかろうがっ!卿は・・・卿は!愚弄する気か~!」
 「愚弄・・・?それはとんでもない誤解だ。預言者の俺には手に取るように分かるのだ。卿の輝かしい未来の姿が・・・な。ブッハハハハハ!こんなに愉快な事もないぞ。本当の事なのだからな!」
 次から次へと、シュトックハウゼンの神経を逆撫でするような事を言って、ゼークトは鼻腔を広げて豪快に笑った。
 「・・・幾らなんでも・・・言っていい事と悪い事があるぞ、ゼークト~!!」
 シュトックハウゼンはドンっと床を踏み鳴らして激怒。
 最初に、ゼークトに仕掛けたのは彼だったが、どうやら形勢は完全に逆転し、シュトックハウゼンの分は完全に悪くなったようだ。
 「・・・ふん!もぐらなんぞに負けてたまるものか!!」
 ゼークトは聞こえがよしにそう言うと、更に神経質なシュトックハウゼンの神経を逆撫でした。
 シュトックハウゼンは悔しそうに歯軋りして振るえている。
 「さて・・・と。用は済んだし、俺は艦隊の様子でも見て来よう」
 真っ赤な茹でダコのようになって、小刻みに震えるシュトックハウゼンを尻目に、勝ち誇って高笑いを続けるゼークト。
 彼はシュトックハウゼンに勝った事を喜んだ。
 そして、ドスドスドスドス・・・と大きな音を立ててながら中央司令室を後にしたのだった・・・。
 その後を、笑いを噛み殺しながら付いて行く彼の幕僚達。
 その中に、ひときわ人目を引く男が1人いた。
 ・・・他の連中とは違い、あまりにも無表情だったからだ。
 ・・・名を、パウル・フォン・オーベルシュタイン大佐という。
 最近になって首都星のオーディンから、イゼルローン要塞の駐留艦隊に赴任して来たばかりだ。
 彼は両目とも、誰もが息を飲むほどに怪しげな光を放つ義眼で、何とも不気味な存在であった。


 「ふう~・・・いつにもまして、今日のは凄かったな・・・」
 緊迫感から開放され、冷や汗を拭ったレンドルフ大尉は、シェーラー大尉に小声で声を掛ける。
 「しっかし・・・シュトックハウゼン閣下の頭のてっぺんの毛が1本って・・・。想像すると笑いが止まらなくなりそうだ。・・・第一、あまりにも貧相だと思わないか?」
 想像してしまったらしいシェーラーは、目にうっすらと涙を溜め、とても苦しそうである。
 「・・・全くだ。俺も腹が痛い」
 レンドルフは、しきりに腹の辺りを押さえる。
 「ゼークト閣下も凄い。よくもまぁ、次から次へと言葉が出てくるものだと感心してしまった。だけど、こういう馬鹿げた言い合いが出来るのは、ここが安全だからだだろうな・・・」
 シェーラーは小さく呟いた。
 「・・・そうかもしれない。何事もないのが一番だ」とレンドルフ。
 「難攻不落のイゼルローン要塞・・・か。いやはや・・・本当に、ありがたいほどに安全だな、ここは」
 「・・・あぁ、本当だな」
 レンドルフはクスクス笑いながら頷く。
 ゼークトにコテンパンにしてやられたシュトックハウゼンは、さっきから中央指令室内の、鏡面加工された大型キャビネットに自分の姿を映し出している。
 そして、何やら難しい顔をしながら、自分の頭を一生懸命に触ってブルブツと呟いていた。
 「・・・なぁ、閣下を見てみろ。やっぱり、ゼークト閣下の言った事を気にされているんだな・・・」
 レンドルフに言われて、モニターを見る振りをしながら、シュトックハウゼンをチラチラ見たシェーラーは、その姿に同情したらしい。
 「男の髪は・・・永遠の悩みだからなぁ・・・」
 苦笑混じりのシェーラー。
 多種多様の特効薬が開発され、今では悪性の腫瘍ですら、早期発見では、薬だけで完治するこの時代。
 だが、「水虫」、「ぢ」、「脱毛」だけは、未だに完璧な特効薬が見付かっていないのである。
 「永遠の悩みか・・・」
 そう呟いたレンドルフの茶色の頭は、ブラシが中々通らないほど、ふさふさしていて、頭髪の悩みからは縁遠い。
 そして、シェーラーも、どちらかと言うと髪が多い方だ。
 「はぁ~・・・今は俺達も髪が多いからいいけど、これが20年も経ったらどういう事になるか・・・」
 レンドルフの呟きにシェーラーは顔を顰<しか>めた。
 「・・・それは考えたくない・・・」
 彼は自分の髪を引っ張りながら呟いて、レンドルフは彼の様子に苦笑を浮かべた。
 
 宇宙歴796年(帝国歴487年)4月12日・・・。
 「難攻不落」のイゼルローン要塞は、帝国最強の馬鹿コンビの下、まだ、「平和」を謳歌していた・・・。



Das Ende



 シュトックハウゼン&ゼークトのギャグ話です。
 私の中では、銀河帝国きっての馬鹿コンビです。
 大将のくせに、いい年をしたオヤヂのくせに、このスーパーな馬鹿振りって何なのでしょう?
 この2人は存在自体が既に漫才です。
 なので、タイトルもかなり遊んでます。(仮タイトルだったのをそのまま使用)


 シュトックハウゼンの頭のてっぺんに毛が1本!!
 これは、分かる人には分かるネタですね。
 日曜午後6時半の国民的アニメに答えが!?
 自分でも馬鹿な話だと思うけど、書きながら爆笑しちゃった・・・。
 2人の声(永井一郎氏&飯塚昭三氏)を想像しながら読んで頂ければ幸いですが。
 ・・・いやはや、今まで彼等をネタにパロディ小説を書いた人っているのですかね?
 そんでもって、この数ヶ月後に、ゼークトは壮絶な玉砕を遂げちゃうし。
 オーベルシュタインを嫌わないで、彼の進言を受け入れていたら、多少違った未来がこの2人にもあったのかもしれない。

 この2人の言い合いは愉快で暗さを(その後の悲劇も・・・)感じさせないので、実は、いくつか書いています。
 一連の小説には、主人公の2人と、オーベルシュタイン、その他、原作に登場したキャラ以外は全てオリジナルです。

 レンドルフとシェーラー、それから、この作品には登場しなかったノイマン(彼もオペレーターです)や、シュトックハウゼンの副官のゼーゼマンなど、多彩な顔触れがいるのですが、全員、私が作ったキャラですので、ご了解頂ければ幸いです。


 好評だったら、続編もUPしたいです。