「あぁ、やっちゃった...」


その日は、夏休みではあるが、登校しなければならない日だった


本島の学校に行くには、朝一番の船に乗らねばならなかったのに、


起きてみると、陽は上り、時計は午前9時をまわっていた


「寝坊するなんて......」


頭をかかえる彼だったが、


その頃、彼が向かうはずだった本島、広島は、焼け野原だったのだ


原爆に辛うじてあわなかった彼は、その後、教師となり、私や私の兄の恩師となった


そして、先生は、現代文学作家の研究者の第一人者にもなった


広島の原爆で亡くなった方々は、9万人とも、16万人ともいわれる


その方々、一人一人に、先生のような未来があったはずなのだ


戦争は、絶対あってはならない