ふわっとした…
いや、フニャッとした、の方が正しいか。
そんな智君の変わらぬ笑顔を見て、肩の力が抜けそうになった。

「あのさ、どうして…」と、喋りだそうとしてやめた。
俺の後ろには部屋を案内してくれた店員がいる。
ここが智君の行きつけの店だとしても、些細なことでも知られるのはまずい。
なので席につき、その場で酒や料理を注文して、扉を閉じたのを確認してから口を開くことにした。

「元気そうだね。焼けた?よね?肌」

「まあな。今滞在してる島の生活がめちゃいいんだよ。釣り三昧だし。それに飯も酒も美味えし。あ、でもお手入れはちゃんとしてるぜぇ」

ほっぺをさするフリをする智君。
聞いてて楽しいのだが、でも彼にしては蛇舌な方だ。
すぐに核心に触れられない場合、遠回しになり過ぎて話の迷子になる癖が彼にはある。
それならば俺の方が先導を切った方がまだいいだろう。

「んで?俺がここに呼ばれた理由を聞きたいんだけど?」

「…別に。ただ顔が見たかっただけ…って、嘘だよ。いや、嘘じゃねえけど。それもアリだけど。含んでるけど」


目元だけ視線をやると、智君は慌てたふりをして言い直した。

きっとあの件だろうな。
それくらい、想像できるし。

「松本の件だろ?」

松本呼び?
と驚いた智君。
そこでオーダー品が運び込まれた為、「まあ、いっか」と呟いてしばらく黙った。

テーブルに料理や酒が並べ終わり、出て行く店員。
ドアがきっちり閉まったのを確認した。

「とりあえず再会の乾杯しょっか?」言って、グラスを合わせた後にアルコールを口に含んだ。

「翔ちゃんの言ってること当たってる。けど、それは一旦置いといて。沢田のことなんだけど」

まさか智君から慎の名前が出るは予想もしてなくて、吹き出しそうになった、

「えっ?慎?」

「うん。あのさ。今、あいつとなんのかんなで繋がりがあるんだけどさ」







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