客人のために、いそいそと準備してる女性の後ろ姿。
やることもなく部屋の飾り物を見てると、彼女は嬉しそうな恥ずかしそうな顔していた。
少し甘めの部屋の香りが鼻を掠め、なんだか感情がふわふわとすした。

ああ、女の子ってこんなだったな、と。

別にその子に好意を持ったわけではなく、懐かしさを感じただけなんだけど。

紅茶を一杯だけ頂き、その部屋を早々に出た。
帰路についてる時、翔君と再開する前に何人か付き合った女性達を思い出したりしていた。
今まで俺は翔君にずっと夢中で、浮気はもちろん心移りするなんて微塵も事もない。
それは翔君もなのだろうけど。
でも今回は不可抗力とは言え浮気に近いし、もっと言うとあれが初めてではない。
しかも相手は友達以上、恋人未満の特別な奴。
翔君がそれなりに心を許してる相手だ。


……

気に入らないからと、そいつとすっぱり縁切れとは言えない。
ただ、俺の気持ちがわかるなら。
あんな事があったのなら、少しは自分から動いてくれてもいいんじゃないだろうか。
なんて事は思っていた。

モヤモヤした気持ちで部屋に戻ると、彼はよりによって沢田と電話してて、しかも帰った俺に気が付かない。
通話してる顔をしばらく眺めてたら、それまで抑えてた色々な思いが頭の胸の中でパンと弾けた。




「……この気持ち。説明してもきっと分かってもらえねえだろうな」


撮られた事を上層部から注意をされ、すみませんと頭を下げ反省してるいるかのようなパフォーマンスをして事務所を出た。
何もしてないけど、事務所的にはそういう問題じゃない。
撮られたことがダメなのだ。
ずるずると歩き、移動車で待機していたマネージャーと合流。
仕事場へ向かった。
車の窓から見える青い空は澄んでいてとても綺麗だが、陽の光が眩しすぎてサングラスを付けた。


心の浮気と、体の浮気。
どっちの罪が重いんだろうな。



なんて考えていた。