自分を置き換えるとしたら。
例えば潤に浮気疑惑があったとして。
あいつはそんな気はなくても何度も何度も言い寄られて、でもそれ以外は気も合うし、だから『友人』として仲良くしてて。
その『友人』はとある理由で突き放すことは出来なくて。
そんな相手と再度なんのかんのあり、でも何とか収まった。
そんな相手と電話で喋ってる潤の姿を目の前で見る俺。


…あ、無理だ。
俺なら出来れば避けたい。
潤のことは信用してるけど、それとこれとは別問題だ。


「はい…」

『翔ちゃん、ごめん』

また謝罪の言葉で始まった。
きっと幾度も繰り返し、俺が『いいよ』と心から言うまで彼は繰り返すのだろう。

「それは何に対してごめんなの?」

『襲った事。具合が悪くなって仕事場まで呼び出した事』

「それはもう良いから」

『でも怒ってるから担当医外れたんだよね?もう呼び出したりしないから』

精神面を含めたとはいえ,あの日調子が悪くなったのは事実だ。
まだ完治とまでは言えない病気を抱えてる以上、下手に我慢されると悪く可能性がないとは言えない。

「それはダメだろ?具合が悪くなったら言わないと」

『うん。反省してる。それに担当医が翔ちゃんだろうが違う医師だろうが呼び出すんじゃなく、なるべく自分から病院へ行くようにする』


慎の話を聞きながら、ダイニングテーブルへ向かい椅子に座った。
いつ潤が帰ってくるか分からないから、長話をするつもりはない。
それでも慎の声がまだに戻ってるように聞こえて、嬉しい。

「今は?調子はいいのか?

『うん。あれから冷静になって色々考えたんだ。本当にごめん』