「何って…」

「公表することは反対。引っ越しにも消極的。おまけに仕事とはいえ浮気未遂の相手を処置してる姿を散々見せられてるし」

「いや、最後のは違うだろ。あれはお前が楽屋にいるのを選んだんだから」


「楽屋の外で想像してる方が嫌だったんだよ。沢田と全ての縁を切って欲しいとまでは言わない。だけど、俺の気持ちって考えたことある?」

「考えてるつもり…だけど」

処置とは言え、慎の身体に触れている俺を見るのは気分がいいものではなかったのだろう。
だけど、それは俺にとっては仕事だ。
患者の身体を触らずに何ができると言うのか。

あの状態を潤の仕事で例えたなら、ラブシーンになるのかな。
でも俺は潤が演技で女優とキスしても絡んでも、作品として見てるからどうも思わないし、嫉妬することはない。
それと同じだと思ってたけど、違うのか。

「俺は共演した女優達に特別な好意を持たれてないし、俺も別に好きじゃない。翔君にとっての沢田とは違う」

なるほど。
女優が好意を持ってないかどうかはともかくとして、それはそうかもしれない。
なので想像はできないけど、予想はできる。

「そもそも翔君って嫉妬することあんの?」

「あまり…ないかも。だってお前はいつも全力で俺の方を見てるのが分かるから……あっ」

じっと見てくる強い眼差しに動けない。
俺は…俺の悪い部分に気づいてしまった。
俺が潤との恋愛で不安に思わないのは、彼がいつも俺を最優先してくれるから。
ストレートな想いと溢れるほどの愛情を包み隠す与えてくれるからだ。

その点、俺はどうだろ?
受け取るばかりで与えてないのではないのだろうか?

「翔君から愛情が伝わってこない訳じゃない。だけど『好き』とか『愛してる』とかあまり言わないよね?」

「全く言わない訳じゃ…」

「身体を繋げてる時位じゃん。あれはあれですげぇ嬉しいけど。それだけじゃなくて。言葉も欲しいけど、それだけじゃなくてさ……例えば愛を測れる機会があったとしたら、俺の方が比重はるかに重いと思う。そんなのわかってるし不満に思ってないからそれはそれでいいんだ。だけどやっぱり自信がなくなるよ」

「自信?」

「翔君はいつも『嵐』を最優先させる。人とのつながりを大切にする。それはそれでいいことだけど、俺はその2つを超えたいんだよ」


すっかり暗くなった道路。
通勤時間から外れたせいか、車の進みは順調にだ。
対向車の眩しいライトとキラキラな夜景は潤に似合うな、なんて関係のないことが頭をよぎった。