何度も何度も求めると、同じように答えてくれる。
シーツの上の彼は妖艶で、いつもの爽やかさなど微塵もない。
身体はこんなに素直なのに、どうして愛の言葉は口にしてくれないの?





予定よりかなり早く帰れるようになったようなので、翔君へ迎へに行く事を提案した。
が、即断られたので、まっすぐ自宅へ戻ることにした。
部屋の掃除やシーツを変えたりするためだ。
旅行から帰った翔君に、出来るだけ心地いい場所を提供したい。
窓を開け空気も入れ替えたいし、美味しい酒を用意しておきたい。

我ながら健気だと思う。
だけどできるだけの事をしたい。
最悪の事態だけは回避したいから。


一旦帰り全部済ませた後に、買い物に出かけた。
やはりというか、食材が足りなかったのだ。
もしかしたら留守中に帰っちゃうかな?とも思いいつつ、出かけたんだ。


買い物も意外と時間がかかり慌てて玄関を開けると、翔君の見慣れた靴を見つけた。
やっぱ遅かったか…

「ただいま。ってか、翔君お帰り」
そう声をかけるも、返事はなし。


リビングに寝そべってる姿。
カバンはそのまま置きっ放し。
髪は湿っている。
きっと帰り着いてすぐにシャワーを浴び、髪を乾かすこともなく眠ってしまったんだろう。
わかりやすい行動だ。

空調を効かせておいてよかった。
きっと心地よく、感じてくれたんだ。


横に座り、少し青白く見える頬を手のひらで触った。

「このままずっとここに閉じ込めておきたい…」


言葉に出した後、自分の口を手で覆う。
きっとこれが俺の本性なんだ。


翔君は自由が好きで、窮屈なのを最も苦手とする。
俺の腕の中だけで泳がせておきたいけど、それは到底無理だともわかってる。
わかってるからこそ、欲しくなる。
どんどん要求が多くなる。
きっと翔君は俺の本質がわかってて、だから苦しんでるんだと思う。

額を頬を触撫でてると気持ちよさそうにしていた。
しばらくして、その手を彼の首筋へ移した。

『このまま、ここに閉じ込めたい』
またもやそんな考えが浮かんだとき、思わずぎゅっと締める。
痛かったのだろう。
翔君は「うっ」と短く声を上げたが、すぐに力を緩めた為、目を覚ますことはなかった。

以前より細くなってるこの人にこのまま手を掛けたら、2人して違う世界へ行けるのかな?


思考が闇の方へと傾いてく自分に身震いした。
どうしてこんなに独占欲が強くなるのだろう。
この人以外ではこんな事考えたこともないのに。
時折、翔君は俺を狂わせていく。

自分の黒い考えを払うようにふるふるっと頭を振った。
Tシャツのまま眠ってる翔君は少し寒そうにしている。
ふーっと深呼吸をして立ち上がる。
そして彼の脇と膝の下に手を入れ抱え上げ、ベットへ向かった。